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「お客さまの日常へ溶け込みたい」メルペイPMが語るクーポン機能の裏側

2019-5-17

「お客さまの日常へ溶け込みたい」メルペイPMが語るクーポン機能の裏側

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「おにぎりが11円で買えるぞ!」。それは、メルペイが初めてクーポンを配信した際、Twitter上で多く見られたお客さまのリアクションでした。

今年3月、スマホ決済サービス「メルペイ」内でクーポン機能がリリースされました。クーポン機能とはその名の通り、支払い前に表示することで対象商品が値引きされるというもの。第一弾ではセブン−イレブンのおにぎりが11円で買えるクーポンを配信。現在は、ローソンの「からあげクン」と「まちカフェコーヒー(Sサイズ)」が半額になるクーポンを配信しています。

このクーポン機能の開発をリードしていたのは、キャンペーン施策などをリードするメルペイGrowthチームのプロダクトマネージャー(以下、PM)、今木彩翔(いまきあやか)。「何もないところからサービスをつくり上げていくのが好き」と語る彼女が、クーポン機能で見せたこだわりとは何だったのか。開発の日々で起こったことは? インタビューが進むにつれて浮かび上がってきたのは、今木の「新しいお金を生み出すサービスや仕組みをつくりたい」という野望でした。聞き手は、AML System/CS Toolチーム(以下、AML/CS)チームのPM、丹野瑞紀です。

クーポン機能のターゲットは「メルペイで支払いができるお客さま」

丹野:さっそくお聞きしたいのですが、そもそもメルペイのクーポン機能はどういった経緯から誕生したのでしょうか?

今木:クーポン機能の大前提は「より多くのお客さまにメルペイを使っていただく機会をつくる」です。というのも、メルペイはテレビCMやWEB上でのプロモーションを行っていますが、それだけでは訴求しきれないお客さまもいらっしゃいます。そこで、そういった方々にもアプローチするために、クーポンやキャンペーンを実施することになったんです。

今木彩翔(メルペイGrowthチーム)

丹野:多くのお客さまに響くクーポン機能にするため、意識したことは何ですか?

今木:やはり「メルペイを通じて確実にキャッシュレス体験ができる仕組みづくり」ですね。そこでターゲットを「メルペイで支払いができるお客さま」に絞り、クーポン情報が表示される設計にしました。

丹野:「メルペイで支払いができるお客さま」とは?

今木:具体的には「メルカリでの売上金やポイントを持っているお客さま」「iDやコード払い機能を使えるスマホ端末を持っているお客さま」です。クーポンをきっかけに、メルペイで決済する機会をつくり、そこからメルペイのアクティブユーザーへつなげるという狙いがありました。

丹野:この機能は、クーポンをめくれるUIになっていますよね。細かいインタラクションにこだわりを感じました。

今木:ありがとうございます! メンバーはみんな、ただ機能開発をするのではなく「ちゃんと使ってもらうためにはどうすればいいのか」「メルペイを使いたいお客さまが正しく使えるには?」と考え抜きました。当初は「本当に使いますか?」というダイアログの表示を考えていたのですが、無機質になってしまう気がして。少し遊び心を加えたい気持ちと、クーポンをめくることで「メルペイを使うぞ!」という意思があるような動作を加えたくて、今の仕様にしました。同時に特許も取得しています。ただ……。

丹野:ただ?

今木:実はリリース後、他チームから「めくる動作が少しわかりにくかった」という声があったんです。クーポン機能で利用率も上がっているので、定量的に見ても「わからないから使われていない」という反応はなかったのですが、お客さまによってはトリッキーだった可能性も否定できません。そのため、今後「めくる」はなくすことも考えています。

丹野:新しいUIは、世の中に公開するまで反応が読めないところはありますね。とはいえ、Twitterで検索してみると「メルペイのクーポンで○○を買った!」といったツイートもたくさん見受けられます。狙い通り、多くのお客さまに使っていただけたのではないでしょうか?

丹野瑞紀(メルペイAML/CSチーム)

今木:ありがたいですね! 実は、第1弾を配信したときは、あまりお客さまにリーチできなかったんです。その反省を活かして、第2弾のクーポン配信期間の終盤に「そろそろクーポンの期限が切れます」というプッシュ通知を出しました。その効果もあり、第1弾に比べて、第2弾はクーポン機能で支払うお客さまがさらに増えました。このように、クーポン機能はPDCAを回しつつ、グロースする段階に入ろうとしているんです。

メルペイの魅力は「メルカリでの売上金を有効活用できること」

丹野:そもそも、今木さんはなぜメルペイへ?

今木:前職では、PMとして新規事業などを担当していました。大好きな仕事だったのですが、3年ほど経ったころ、自分はちゃんとスキルアップできているのかどうかがわからなくなるタイミングがありました。自分のスキルが上がったからプロジェクトを進められるようになったからなのか、それとも、社歴とともに人間関係や情報に精通したことでプロジェクトを進められるようになったのかと……。

丹野:僕自身も感じていることですが、PMは個人としての成果物が見えにくく、自分のスキルレベルを客観的に評価するのが難しいですよね。

今木:そうなんです。デザイナーやエンジニアとは違って、目に見えるアウトプットがあるわけではありません。うまくいったプロジェクトがあっても「チームが良かっただけ」と言われてしまう可能性すらあります。そこで、すべてをリセットするような環境下でもう一度新しいことに挑戦したいと思い、メルペイに転職しました。前職でもフィンテック領域に少し関わっていましたし、メルペイ自体もおもしろそうだったので。

丹野:どのあたりにおもしろさを?

今木:メルペイには「メルカリの売上金」という最強のキャッシュイン手段があります。つまり、決済機能単体だけではなく、お金を生み出す属性がすでに含まれているんです。私がおもしろいと思っているのは、まさにそこ! これを起点に、新しいお金を生み出すサービスや仕組みをつくれるんじゃないかと感じています。

丹野:スマホ決済のみならず、「売上金」をどう有効活用するかに興味があったんですね。

今木:そうです! 入社後は、メルペイの決済機能のコアとなるトップ画面やコード払い機能などの開発を担当していました。前職での知見を活かしつつ、ほぼ何もない状態からサービスづくりに関われたのはよかったですね。ぶっちゃけてしまうと、私自身、すでにできあがったサービスにあまり興味がなくて。ゼロからサービスをつくりあげていく過程が好きだったので、とてもいい環境でした(笑)。

PMとして、あえて「横断型チーム」で挑んだ理由

丹野:メルペイに入社して、PMの役割について前職との違いを感じた点はありましたか?

今木:前職では「プロダクトマネジメント」部分を主に担当していました。しかし、メルペイでは「プロジェクトマネジメント」のスキルも、より求められるように感じましたね。これは、私自身が複数のチームを横断的に調整しながら、プロジェクトを進行していたからかもしれません。

丹野:前職時代と比べて役割の範囲が広がったということだと思いますが、良い手応えは得られましたか?

今木:うまくできているかと言われると、正直わかりません。私自身、PMとしてプロジェクト全体の進行管理をすることや複数のチームを横断的に担当することは、今回が初めて。うまくいかなかったこともありました。特に反省しているのが、自分が直接関わっているチーム以外のメンバーとの連携不足です。メルカリとメルペイは1つのアプリ内にありますが、組織上では分かれています。そのため、メンバー間でやりとりするには組織をまたぐことになるんです。当初はその距離感をうまく掴めず悩みましたが、今はオフラインでも話す機会をつくり、スムーズにやりとりできるようにしています。

丹野:メンバーと認識の齟齬が発生しないようにコミュニケーションするのは、PMとして大事な仕事ですよね。メルペイの場合、機能ごとにチームが分かれていることもあり、コミュニケーションの難易度が少し高いかもしれません。

今木:実は、今回のような「複数のチームを横断的に担当すること」は、私からマネージャーにやりたいと申し出たことでもありました。私はPMとしてこだわりたいことの1つに「メンバーと協力しながらプロジェクトを達成する」があります。その想いもあり、プロジェクトに関係するチームが横のつながりで連携できるようにしていました。

丹野:クーポン機能は外部パートナーと連携しているので、ビジネスデベロップメントやマーケティングチームとも密にやりとりしていたかと思います。各所からの要望は、どのように優先順位をつけていたのですか?

今木:クーポン機能に関しては、要望があった段階で開発メンバーに共有し、作業工数の見積もりを松竹梅でランク付けしていました。そのなかから「スペック的に最小限になったとしてもリリースしたいかどうか」について、マーケティングチームとすり合わせ、ネクストアクションに落とし込んでいましたね。

クーポン機能の次の挑戦は「仕組み化」

丹野:「0→1」から「1→10」のフェーズになって、PMとしての仕事の進め方は変わりましたか?

今木:より仕組み化を意識するようになりました。クーポンもキャンペーンも、ある程度の決まった枠組みがあります。その枠組みをうまく使って、ミスをなくしつつ、誰でもつくれるようにしたいですね。そうすれば、「クーポン施策をやりたい!」と言ってくださる加盟店さまが増えてもすぐに対応できるようになります。

丹野:クーポン施策のトライ&エラーをくり返せるような仕組みをつくる、ということでしょうか?

今木:そうです。クーポン機能は加盟店さまが明確に決まっていない段階からプロジェクトが始まったので、わざと仕組みをつくっていませんでした。これまでは手作業だったところを自動化することで、一気に複数のクーポンをつくれるようになると考えています。

丹野:今木さんは「新しい挑戦をしたくてメルペイにジョインした」とのことでしたが、今、その欲は満たせていますか?

今木:満たせていますね。Growthチームでは今、メルペイのクーポンやキャンペーン施策を担当していますが、開発規模がそれほど大きくないのでPDCAをクイックに回せています。最近だと、「クーポンをちゃんと使えているかどうかわからない」というお客さまのためにハウツー動画を制作しました。出演者は、チームメンバーたちです(笑)。「ハウツー動画が必要だ!」「よし、つくろう!」となれるところがスタートアップっぽくて、とても好きですね。

 

丹野:一体感があっていいチームですね。

今木:はい、いいチームです。私がPMをしていて一番嬉しい瞬間は、提供しているサービスや機能がお客さまの日常へなめらかに溶け込んでいると感じたときです。クーポン機能では、買おうと思った商品のクーポンを使ったらメルペイにつながって「このサービス、便利じゃん」となってもらいたい。この状態を実現するには、今よりもっと違和感のない設計にしていく必要があります。まさに今、「どうすれば実現できるのか?」についてエンジニアやデザイナーたちとアイデアを出し合っているところなんです。

丹野:先ほど「クーポン機能はグロース段階に入った」と話されていました。最後に、今木さんがこれから挑戦しようとしていることを教えてください。

今木:クーポン機能はさまざまなクーポンを出すことで効果検証しつつ、この施策自体をグロースさせていく段階へ進もうとしています。メルペイのミッションは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」。すでに使ってくださっているお客さまはいますが、まだまだほんの一部だと思っています。選ばれる決済サービスになるためには、もっと愛されるようなサービスにしなければならないんです。もっと多くのお客さまの琴線に触れるようなキャンペーンを仕掛けていきたいですね。

今木彩翔(Ayaka Imaki)

サービス企画職としてLINE株式会社に新卒入社。入社後、LINEバイトでのサービス企画とグロースハック業務を経験後、LINEデリマ新規事業の立ち上げに携わる。その後金融事業に携わり、2018年よりメルペイにPMとしてジョイン。Growthチームにて、キャンペーンやクーポンを担当。Twitterは@ayacky27

丹野瑞紀(Mizuki Tanno)

NTTアクセス網研究所でロボット制御に関する研究開発に従事し、その後バーチャレクス・コンサルティング、サイボウズを経てビズリーチに入社。インターネットサービスのプロダクトマネジメントに10年以上携わる。2018年より、メルペイにPMとしてジョイン。個人としてあらゆる企業のPMをインタビューやイベント開催など、日本におけるプロダクトマネジメントの普及活動も行っている。Twitterは@mizuki_tanno

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