はじめに
こんにちは、データサイエンティストのshmatsudaです。
突然ですがみなさん、KPIはどう決めていますか?
これって結構揉める話題ですよね…
ちゃんと作ったつもりでも、思わぬ点を指摘され「納得感がない」と言われてしまうことは良くあることだと思います。
今回はメルカリで「納得感のある」KPIを決めるために工夫したことをお伝え出来ればと思います。
話の背景:USでインストール数が激増
メルカリUSでは7月末にインストールが激増し、アメリカのApp Store 3位になりました。このチャンスを活かすべく、全社をあげてユーザー体験の向上を追求しています。
ところでメルカリは主要な指標としてLTV(Life Time Value)を設定しています。ユーザー激増を受けて、メルカリではLTVをどのように上げるかについてゼロベースで考えることにしました。
LTVを上げよう!・・・その前にKPIを決めよう
いざLTVをあげよう!と言っても、指標としてLTVだけウォッチしていると下がった時に原因の追求が出来ません。
なので、「LTVを構成する他の指標」を考え、それを同時にウォッチする事が良く行われます。(LTVをKGIと置き、それをKPIに分解する、というやつですね)
納得感がないって何なのか
ところで誰かが作ったKPIを眺めて、「たしかに分解は論理的には正しいんだけど、なんだか納得感が無いなあ…」と思われた方、あるいは逆に自分が作ったKPIを「納得感が無いなあ…」と言われてしまった方もいるのではないでしょうか?
この「納得感が無い」とは何なのでしょか。私なりに考えてみると、
KGIには何通りのも「分解の仕方」があるが、KGIの理想の上げ方は限られている
ことに原因があるのでは、と思います。
どういうことでしょうか?
例を上げて考えてみましょう。
KGIを「売上」と置き、売上をKPIに分解するシーンを考えてみます。
すると、実に様々な分解の仕方があることに気づきます。
- まず新規 / 既存ユーザーに分けて、単価と人数を考えて…(以下略
- まず商品別に分けて、単価と売れた個数を考えて…(以下略
- etc…
視点を変えて、「サービスの理想像」を考えてみましょう。
たとえば私がある老舗旅館で働いていて、常連客を大切にし売上もあげたいなあ、と思っているとしましょう。
すると、上記(1.)の分解は良いのですが、(2.)だと納得感がないなあ…となりそうです。
何故ならば、私は「A室2泊3日パック」経由の売上よりも、「常連が何人来たか」を知りたいからです。リピート率などもわかると更に良さそうですね
つまりKPIの納得感は論理的に正しい分解、かつ、サービスの理想像との距離を測れるかできまるのだ、ということです。
(論理的に正しいだけでは納得感があるとは限らない、とも言えます)
ところで経験のある方は頷いていただけると思うのですが、納得感のあるKPIを決めることって結構難しいですよね。次はその難しさの理由について考えてみます。
納得感を得るのが大変である2つの理由
端的にいうと私はこう思うのです。
①納得感は真偽の判断が出来ないため、ステークホルダーの熟議によって決めたいが、
②その時間確保が難しい
1つずつ見て行きましょう。
①根本的な難しさ:「納得感」は真偽の判断が不可能
「論理的に正しいKPI分解」は真偽の判断が出来るのでいずれ決まります。しかし「納得感」は真偽の判断が出来ません。
どういうことでしょうか?
上記の旅館の例だと、「常連客を大事にしたいんだよね〜」というのは正しい or 間違っているという問題では無く、「こうしたいんだよね」という意志です。
そして、その意志は人によって違う事がままあります。
旅館のKPI決め会議を想像すると、
「常連大事にしたいんだよね〜」
「いや、とにかく売上を優先したい」
「A室の稼働率が最近悪いから上げるべきだ」
と議論が割れる様がイメージできます。
「こうしたいんだよね」は真偽の判断ができないので、この会議を論理的に収束させることは難しいでしょう。なので結局ステークホルダーが話し合って落とし所を探ることが必要だと私は考えます。
ただ言えるのは、サービスの理想像が普段から共有できていれば落とし所は探りやすいということです。
②事務的な難しさ:ステークホルダーの時間の確保
2点目の難しさは非常にシンプルです。
MTGに呼ぶべきステークホルダーは誰でしょうか?言うまでもなく経営陣です。
そしてサービスに責任を負うプロデューサーです。
これにデータサイエンティスト・マーケティング等が加わる場合もあるでしょう。
このスケジュール確保は想像するだけで大変そうですね。
今までの3行まとめ
- KPIの分解は、「論理的に正しければ納得感がある」とは限らない
- 納得感のあるKPIとは、サービスの理想像からの距離を観測出来るということだ
- サービスの理想像は真偽の判断が出来ず、ステークホルダー間で落とし所を探したいが時間の確保が難しい
結局メルカリはどうしたのか
つまり、ステークホルダーを集めて話合う時間を設ける事ができればよいのです。
私たちの答えは…1泊2日の合宿です!笑
今回の合宿会場。海辺の別荘を貸し切りました
KPIを決めるぞ合宿!参加者編
ステークホルダーを集めます。
今回は取締役 / 執行役員・プロデューサー / データサイエンティストという布陣です。
合宿の発案自体が取締役からあり、非常にスムーズに実施を決める事ができました
普段USに居るメンバーにも集まってもらい、新鮮な議論ができました
KPIを決めるぞ合宿!準備編
合宿は特に「納得感」を確認し合うことに重点を置きました。
その時間を有効に使うため、事前に大まかな数値を調査して行きました。
例えばメルカリであれば、
- USとJPの数値の比較
- LTVの直近の傾向
- LTVの簡単な分解
- etc
これはテーマによって変わりますが、大局的な状況が分かれば良いと思います。
※あまり細かく調べ過ぎすぎると合宿で話が横道にそれるかもしれません
KPIを決めるぞ合宿!実際何をしたのか
1日目
私たちの目的は納得感を得るためですので、ほぼデータを触らず議論に終始しました。
この写真を取った後ひたすら議論議論…
ソファーに移動して議論議論…大分暗くなってますね
2日目
1日目の結果を元に、KPIのモックを作っていきます。
ベランダにて。もくもく作業
この際、数値の定義などは大まかに決めて行きますが、細かい点にこだわるよりはとにかく作ることを優先し、作ってレビューして改善して…というサイクルを実施しました。
最終的には、「このKPIで行こう!」というところまで決まり、合宿の目的を達成できました。
KPIを決めるぞ合宿!おまけ
KPIについてずっと話すのはやはり疲れる作業です・・・ので、深夜はごきぶりポーカーというカードゲームで遊びました
みんな初心者だったのですが、かなり楽しかったです!
取締役 v.s. データサイエンティスト 白熱の心理戦
さいごに
メルカリの雰囲気に興味を持ってくださったかた、ご連絡ぜひ待っております。プロデューサーもデータサイエンティストも足りておりません。どんな職種も募集中です!