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ファクトとデータは事業側、絵作りはクリエイティブパートナー。「やさしいメル﨑」で実践した、AI-Nativeな”共創”のかたち

2026-6-10

ファクトとデータは事業側、絵作りはクリエイティブパートナー。「やさしいメル﨑」で実践した、AI-Nativeな”共創”のかたち

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メルカリは、プロダクト・人・組織の3本柱でAI-Native Companyへの変革を進めています。社員の100%が何らかのAIツールを使い、開発スピードは前年比64%向上。社内独自の分析ツール「Socrates」をはじめ、AI活用は全社のあらゆる領域へ広がってきました。

その流れの中で、マーケティング領域から生まれた象徴的な事例が、2025年12月から配信しているブランドキャンペーン「やさしいメル﨑」です。企画から制作・分析まで、全工程にAIを組み込んだAI-Nativeな制作フロー。ブランディングと獲得の両立も実現しています。

その裏側にあったのは、メルカリとサイバーエージェントによる”共創”のプロセス。今回は、本キャンペーンを推進したメルカリのSenior Marketing Manager / AI Marketing Leadを務める石渡 貴大(@yanyan)と、共創パートナーのサイバーエージェントのご担当である吉田 健吾さんに話を聞きました。

この記事に登場する人

  • 石渡 貴大(@yanyan)

    Senior Marketing Manager / AI Marketing Lead。2025年4月に入社し、ブランド・ダイレクト領域のマーケティングを担当。

  • 吉田 健吾 (CyberAgent・吉田さん)

    株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 AIクリエイティブ部門 クリエイティブプランナー。「やさしいメル﨑」では、キャラクターデザイン・シナリオ制作・AIによる動画生成を担当。

「やさしいメル﨑」というキャンペーン

まず、「やさしいメル﨑」がどんなキャンペーンなのか教えてください。

@yanyan: メルカリの「お客さま同士の優しさ」を表現するクリエイティブで、取引相手に対する安心を感じていただくことを目的にしています。

メルカリはお客さま同士で成り立っているプラットフォームで、かつほとんどの取引は満足度の高い取引が行われているんです。そうした側面をもっと多くの方に知っていただきたい、というのが出発点でした。

▲「やさしいメル﨑」本編動画

全20本のバリエーションがあるそうですね。

@yanyan: はい。1本あたり約10秒で、3本つなげて30秒版にすることにもできる設計です。各動画は「やさしいメル﨑、メル﨑は優しい」というナレーションが軸。丁寧な梱包や発送時の心遣いなど”実際にお客さまから寄せられた”優しいエピソードを切り取って紹介しています。メル﨑はメルカリのお客さまの一人として、出品時の優しい行動を体現するキャラクターなんです。

配信はYouTube広告として限定公開で実施しており、2025年12月から2026年1月にかけて第1回、2026年4月から5月にかけて第2回キャンペーンを行いました。第2回ではメルカリ公式Xアカウントでのキャンペーンに加え、TikTokやYouTubeなど媒体を広げながら展開しています。

「99.7%の善意」をメッセージとして届ける

キャンペーンの起点になった発想は、何だったのでしょうか。

@yanyan: メルカリが安心・安全なプラットフォームであることを伝えるうえで、事業者である僕らメルカリにできることには限界があります。「こういう機能があります」「こういう体制でやっています」という伝え方は、お客さまからすれば距離が遠く、届けきれない部分があるんですよね。だからこそ、もっと身近なエピソードを大事にしたいと思いました。

CA・吉田さん:「メルカリ」で完了した取引のうち99.7%は「良かった」という評価だ、というデータがあると話を聞き、僕もあらためてメルカリが人の善意で成り立っているサービスなんだ、と感じることができました。そのデータをもとに、クリエイティブに落とし込んでいきました。「あんしん鑑定」のような機能を訴求する方向性もあった中で、最終的に選んだのがこのエピソード、という形ですね。

@yanyan: エピソードとして届けようという判断は、マーケティングチームの総意でした。これまであまり実施してこなかったタイプの発信でチャレンジングな試みでもありましたが、全社的にも重要なメッセージだとあらためて決め、制作へと踏み切りました。

AIで動かす前提のキャラクター、「メル﨑」

メル﨑というキャラクターのコンセプトは、どのように固まっていったのでしょうか。

CA・吉田さん: やりたかったのは、みんなが知っているキャラクターでありながら「誰かはわからない」という存在。某探偵マンガの”犯人”のように、誰かなんだけど誰かは特定できない。その”誰か感”を担保するために、名前は苗字のような響きにしようと話し合っていきましたね。

メル﨑の「﨑」は字体も特殊ですよね。

CA・吉田さん:名前の漢字を間違えられることって多くの人が経験する「あるある」だと思うのですが、いちいちそれを指摘しない優しさというのがあると思っていて。 その感覚をメル﨑にも与えたかったんです。山崎の「崎」に間違えられても怒らないほど温厚で優しい、という存在として。

@yanyan: 実際にSNSでも、3割ほどの方は「﨑」で書いてくださっていて、きちんと見てくれている方がいるんだ!と嬉しくなりました。本来、ハッシュタグで効果測定を行うので、表記ブレしないようなフレーズに揃えるのが鉄則。でもこのキャラクターに関しては、そうした揺らぎ自体が個性として面白いのかな、と判断しています。

デザイン面にもこだわりはありますか?

CA・吉田さん: キャラクターデザインで気にしたのは、生成AIらしさを感じさせないことです。AIで生成するアニメーションで難しいのが、指の本数や形の崩れです。それらを最初から避けるために、シンプルなシルエットと表情で設計しました。アウトプットが1本の動画ならそこまで気を配らなくてもいいこともあるのですが、20本の動画を破綻させずに作り続ける必要があった。そのためにも”AIフレンドリー”であることは初期から重視していたポイントです。

▲キャラクター設定資料

@yanyan:どういうキャラクターにするかは、初期に僕らも何度か議論を重ねていて、最初はクマなどの動物のキャラクターだったんです。 でも、メル﨑自体が“メルカリにいるお客さまの集合体“のようなものなので、匿名のお客さまを表現しようと話し合った結果、人の(ような)キャラクターになっていった、という裏話もあります(笑)。

▲初期のキャラクター設定資料

Socratesが拓く、AI-Nativeな制作フロー

「やさしいメル﨑」は、企画から制作・分析まで全工程にAIが入っていると聞きました。

@yanyan: 制作はもちろん、企画段階でもメルカリの社内向けデータ分析AIエージェント「Socrates」でお客さまのレビューを抽出して、ストーリーに落とし込む部分にもAIを使っています。

20本のシナリオは、どんなふうにアイデアを出していったのですか?

@yanyan: メル﨑のシナリオは、サイバーエージェントさんに作っていただいたもの、自社マーケターが人間として考えたもの、そして自社でAIを使ってアイデアを出したもの、と複数のアプローチが混ざっています。 AIを活用してのアイディア出しは、取引完了後にお客さま同士で書いていただいたレビューをもとに、AIが「企画に使えそうなレビュー」を判定して拾い上げる流れです。

実際に20本のストーリーを配信して検証したのですが、一番数字が良かったのは、AIが考案したパターンでした。

CA・吉田さん: 僕らやマーケターの方々が考えたものよりも、AIが作ったストーリーのほうが数字が良かった。あの結果は、僕らとしても新鮮な驚きでしたね…。

エピソード選びで苦労した点はありましたか?

@yanyan: 99.7%のやり取りの中から、どの優しさをどう伝えていくか。20本分のシーンを選び抜くプロセスは、かなり難易度が高かったです。例えば、商品に手紙が添えられていると嬉しい。けれど、それをお客さまにフローとして推奨したいわけではないんです。出品経験のない方が「こうしないといけないんだ」と感じてしまうのも違う。メルカリとしてのスタンスと、事実としての訴求とのバランスが、悩みどころでした。

好意度1.5倍、想定を超えた手応え

配信後の反響について、印象的だったポイントはありますか?

@yanyan: 正直、もう少し厳しいコメントも来るかな、と身構えていました。ですが、結果的にはかなり多くのコメントがポジティブな方向に振れていて、これは僕らとしても嬉しい驚きでしたね。

なかには「AIはあまり好きではないけれど、メル﨑は好き」というコメントもあって。生成AIを使ったクリエイティブには独特の難しさがある中で、一定の納得してもらえるようなラインを引いて出せたのかな、と感じています。

二次創作やパロディも自然発生したそうですね。

@yanyan: はい。メル﨑のナレーションを真似て投稿してくださる方も出てきて、もうメルカリの文脈ですらない、ただのメル﨑ミームも広がっています(笑)。

CA・吉田さん: ああいう動きに繋がるのは予想外の嬉しい出来事でしたね。こうしたSNS軸のキャンペーンは、なかなかポジティブな評価を得られる割合がそう多くないのですが、今回の配信においては他のクリエイティブと比較しても1.5倍程度の好意度が見られ、メル﨑というキャラクターが受け入れられて安心しました。

メルカリだからできるAI-Nativeなマーケティング

このAI-Nativeな制作フローは、他社にも展開できる型なのでしょうか?

@yanyan: 今のAIはまだ長尺の動画を作るのが苦手で、5秒や10秒の細切れの動画を量産していくのが得意、という特性があります。今回のメル﨑は、そうしたAIの「今できること」を踏まえつつ、企画フェーズでもSocratesでレビューを抽出してAIに考えてもらうところから、全工程にAIが入り込んでいる点が特徴。Socratesのような社内ツールが誰でも使える環境を持つ会社はまだ多くないので、テクノロジー企業であるメルカリの強みを出せているのではないかな、と感じています。

クリエイティブパートナーから見て、メルカリという会社はどう映りますか?

CA・吉田さん: AIに対する感度は、非常に高いと感じます。社内でこうしたシステムを開発されている会社は多くないので、かなり最先端をいかれているのかな、と。お客さまのデータ数も商品数も膨大で、そこに紐づくデータも膨大な中、それをいかに活用していくかが、僕らクリエイティブパートナーとしての腕の見せどころでもあります。会社全体がAI-Native化されていて、サイバーエージェントの文化にも近いものを感じますし、スピード感も非常に似ているとも感じました。

今後、メル﨑というキャラクターはどう発展していきそうですか?

@yanyan: 議論はまさに今行っている段階で、さらに20本を追加するのか、例えば「メル河」のような新キャラクターを登場させるのか、次の展開をまさに検討しているところです。メル﨑は出品側の優しさを体現するキャラクターなので、購入する側の優しさを描いていく方向性もあるのではないか、とか。メルカリ公式キャラクターの「ミケ」「ロップ」「ゼニー」とは違って、メル﨑はもう少し自由度高く動けるキャラクター。安心・安全のメッセージを伝え続ける役割を、これからもしっかり担っていってほしいですね。

YouTube Works Awards Japan 2026 Best Use of Google AI部門 “Gold” を受賞

— YouTube Works Awards Japan 2026というのはどのような賞なんですか?

@yanyan:YouTube Works Awards は、YouTube で高い広告効果を獲得した動画広告を表彰する、Google 主催の広告賞です。

中でも、Best Use of Google AI部門は、YouTube 広告のキャンペーンプランニングもしくはクリエイティブ制作、またはその両方で、Google AI を効果的に活用し、優れたビジネス成果を達成した革新的な YouTube 広告キャンペーンが表彰される部門です。

— 受賞の感想を教えてください。

@yanyan: このような素晴らしい賞をいただくことができて本当に嬉しく思っています。また、このプロジェクトに関わってくださったサイバーエージェントの皆さん、社内メンバーにも、この場を借りて感謝を伝えたいと思います。

審査員の方からのコメントでも、「AIでお客さまのインサイトを抽出し、制作に繋げる」という一連のフローを高く評価いただきました。メルカリが全社で取り組んできたAI-Native Company化により、社内のデータ活用とマーケティングがシームレスに繋がってきた結果だと捉えています。

止まらないAIの進化に負けないよう、今後も私たち自身もクリエイティビティを高められるよう努力していきます。

CA・吉田さん:この度は受賞おめでとうございます !我が子のように可愛く思っている”やさしいメル﨑”で受賞できたことをとても幸せに思います !

AI-Native Company化に向けてメルカリで働く多くの部署の皆さまの熱量が、今回の受賞に繋がったのだと感じます 。

サイバーエージェントチーム一同、メルカリさんの成長の一翼を担えるように、業界をリードするようなAI活用事例を生み出し続け、更なる広告効果の最大化に向き合っていければと思います!

写真:タケシタ トモヒロ


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