
2026年7月2日、メルカリはサービス提供開始から13周年を迎えました。
その記念すべき日に、メルカリグループのメンバーが一堂に会し(海外拠点のメンバーはオンラインなどで参加)、「FY27.6 Group Vision & Roadmap Presentation(新年度の経営方針発表会)」を開催しました。
掲げたグループテーマは『AI-Native for Hypergrowth』。AIを前提に、プロダクトも、お客さまも、組織も、私たち自身もHypergrowth(普通ではない急成長)させる、という意味を込めた力強い宣言です。
本記事では、その背景にある昨年度(FY26.6)の歩みの振り返りと、新年度(FY27.6)に挑むメルカリの方針と想いをお届けします。
※ 当日はUS BusinessやCorporateからの発表も行われましたが、本記事ではGroup・AI・Japan Businessの3つのDirectionに絞ってご紹介します。
振り返り:「Back to Startup × AI-Native」が、確かな手応えに
「昨年度、私たちは『Back to Startup』と『AI-Native』を掲げてきました」
ステージに立った代表執行役 CEO 山田進太郎(@suadd)は、1年の歩みをこう振り返り始めました。
2年前のBack to Startup宣言により、一人ひとりの意識変革、ナレッジマネジメントの進展、組織を越えたコミュニケーションの活性化を通じて、サイロ化は解消に向かい、組織は「Move Fast(はやく動く)」な熱気が戻ってきたと@suaddは語ります。

そして、期初に宣言したAI-Native化においても、全社の業務棚卸しとAIツールの導入を一気に進めてきました。いまや全員が日常的にAIと協働する姿が当たり前になり、プロダクトへのAI機能の組み込みも素早く進み、お客さま満足度の向上に直結しはじめた、と続けます。
@suaddは「日米で事業の成長率が引き上がり、ついにスタートアップのように急成長できる会社に立ち戻ってきました」と総括。また、グループが運営する鹿島アントラーズの優勝にも触れ、メルカリも勝ち続ける「常勝集団(Winning team)」でありたいと語りました。
Group Direction:「AIで圧倒的なHypergrowthを」 @suadd

スクリーンに掲げられた新たなテーマは『AI-Native for Hypergrowth』。
AIによって単なる生産性向上や業務効率化に留めず、AI-Nativeを武器に、普通ではない急成長(Hypergrowth)を目指していきたい。@suaddはそう話しました。
@suaddはAIの進化を「これまでのビジネスの前提や競争のルールを根本から塗り替える大きな転換点」と位置付けます。
「過去の成功パターンの延長線で戦う必要はありません。今が攻めに転じるタイミングです」
そして@suaddは、新年度の方針を2つの軸で示しました。
- AI-Nativeによる組織と個人の可能性の解放 これまでは限られたリソースのなかで何に振り向けるかを絞る必要があったが、新年度は多数のAIエージェントが自律的に業務を進める状態へと業務プロセスを進化させ、組織をフラット化。一人ひとりの時間とエネルギーを価値創出に直接シフトさせ、組織全体のキャパシティを大きく拡張するフェーズへ。
- お客さま価値を最大化し、Hypergrowthへ AI-Nativeによる変革はすべてお客さまへの価値提供のためにあり、その結果として生まれた事業成長・売上・利益を、さらにお客さま・プロダクト・人材へ再投資していく。このサイクルを、これまでとは桁違いのスピードと規模で回す。

今、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる(Circulate all forms of value to unleash the potential in all people)」というミッションの達成を大きく引き寄せられる、ワクワクする局面です。
力強い成長に転じた今だからこそギアを上げ、これまでにないスピードと大胆さで、世の中に価値を届けていきましょう。AIもものすごいスピードで進化していて、プロダクトも組織も今までのルールが通用しなくなり、どんどん変えていくことになります。恐らくこれまで以上にカオスになると思いますが、会社としても個人としても、急成長できるチャンスでもあります。
「AIで圧倒的なHypergrowthを」
その言葉で、@suaddはパートを結びました。
AI Direction:個人のツールから、AIエージェント前提の働き方へ @kimuras
続いてステージに上がったのは、執行役員 CHRO(Chief Human Resources Officer) 兼 CAIO(Chief AI Officer) を務める木村俊也(@kimuras)。プレゼンテーションの冒頭で、1年前のRoadmap発表会にて、マーケティングチームのメンバー自身がAIを活用してキャンペーン動画を作ったり、社内資料がAIで作られたり、チームメンバー同士が高速にプロトタイピングしながらサービスをつくったりといった未来像を提示していたことを振り返りました。
そこから1年。「その多くが、もう現実になっています」と@kimurasは語ります。
メルカリ社内のAI-Native文化が確立され、全社員AI利用率は100%に到達。

さらにAI Pods(AIを中心に据え、開発プロセスを少人数体制で回す取り組み)のPoC(Proof of Concept、概念実証)を実施し、それが再現可能な徹底的にAIを前提とした開発プロセス「型」になってきたことを示しました。
期初に掲げたAI-Native宣言から、2026年6月1日に発表された@kimurasのCHRO 兼 CAIO就任も含め、AI-Native企業のポジション確立に向けての第一歩を踏み出しましたAI-Native Companyのポジション確立に向けて確実に前進を続けています。
また、期初に立ち上がったAI Task Forceが33領域・3,800超の業務プロセスを可視化し、効率化余地を特定したことで、期初に試算した年間約100万時間の効率化ポテンシャルに対して約49.5万時間相当の効果を生み出したと振り返ります。
2025年10月にはAI Governance Teamを新設し、セキュリティ・リーガル・プライバシーの3観点でAI利用の基本ポリシーとガイドラインを明文化。相談フォームひとつで横断的に問い合わせできるワンストップ窓口も用意したと@kimurasは紹介します。

この1年は確かな自信になった一方で、ここまでたどり着けたからこそ、乗り越えるべき壁にも気づきました。
「AIを『個人が使う便利な道具』として使っているうちは、どこかで頭打ちになる。一人ひとりが速くなっても、業務の流れや組織の形が以前のままでは、AIのポテンシャルを本質的に活かしきれない。」
その手応えと気づきを踏まえて、次の一手が提示されました。
「個人のツールから、AIエージェント前提の働き方へ」
新年度、メルカリは業務フローや組織構造、人事制度を「AIエージェント前提」に根本から作り替えると@kimurasは表明します。私たちが一つひとつ積み上げてきた日々の業務を、AIエージェントと分担しながら進める形に変えていくことで、メンバーの時間を既存業務から解放し、生まれた時間を「よりクリエイティブで未知なるテーマ」への挑戦に使えるようになります。
これまでの延長で「時間があればやりたかった」ことではなく、お客さまにこれまで以上のスピードで新しい価値を届けたり、AIがあるからこそ、これまで不可能だと思っていた事業展開へ踏み切ったりしていく。そういった世界観を実現していきたいと考えています。
組織のかたちも変わります。役割と領域はますます流動化し「業務の越境」が前提条件になり、役割を変えるメンバーや、新たな挑戦をするメンバーも増えていくだろうと語ります。ツリー型の組織は徐々にフラットで自律的な構造へと進化すると@kimurasは続けます。
@kimurasはこの変革を「ひとことで言えば『前提の入れ替え』」と表現します。今の仕事の進め方も、チームのかたちも、ぜんぶ「人がやる」前提でできているが、それを「AIエージェントがやる」前提に組み替える。「AIを使う」から、「AIを前提で組織を設計する」ことこそが、この場で最も伝えたかったことです。

さらに、AIエージェントを駆使して圧倒的な成果を生み出す個人やチームが、これまで以上に大胆に報われる評価制度確立に向けて、AI Task Forceを期間限定のプロジェクトから常設のレギュラー組織へと改組し、AIとHRを一体化した組織で進める意思決定をしました。
新年度はより一層、人と組織の仕組みとしてAI-Native化を定着させると@kimurasは言葉を重ねます。
そして、この変革を全社の共通言語にするのが「4つの行動レベル」です。
- Lv1:個人が AI を「使う」
- Lv2:個人が AI エージェントを「使いこなす」
- Lv3:チームで AI エージェントを「共有する」
- Lv4:組織横断で AI エージェントに「委ねる」

新年度の目標は、全チームがLv3を完了させ、組織全体がLv4へ移行していくことです。それによって、「人に聞く前に、まずエージェントに聞く」世界を目指すと@kimurasは語ります。
ガイドラインを遵守するだけでなく、自らのAIエージェントが『社会にとって正しい価値を提供しているか』を自律的に問い続けるプロフェッショナルでありましょう。カオスを楽しみ、高い倫理観を持って、ミッション達成を加速させる。それが、新年度のAI Directionにおけるマインドセットです。
JB Direction:築いた基盤を成果に変え、Hypergrowthへの起点を創る年 @mark
JB(Japan Business) Directionの発表を担ったのは、執行役 SVP of Japan Businessの山本真人(@mark)です。冒頭で「昨年度を『仕込みの年』と公言してきたが、想定を上回るスピードで成果につながり、非連続な成長に向けた基盤を築けてきている」と振り返りました。

Marketplaceは安心・安全とコア体験の徹底改善でプロダクトの土台を締め直し、「超メルカリ市」をはじめとしたマーケティング施策と噛み合ったことで、2QにはGMV YoY成長率は+11%と2桁成長へ回帰。駿河屋との資本業務提携によりエンタメ・ホビー領域での在庫連携とグローバル展開の基盤づくりにも着手しています。
@markはこの反転について、2年前のロードマップ発表会で「あらためてお客さま体験を磨き直そう」と呼びかけたことにも触れました。グロースの種に見えるものを一度手放してでもお客さま体験を追求し切ったからこそ数字を伸ばせた。その成功体験を組織全体で共有できたことが、大きな支えになったと語ります。
Fintechはメルカリバンク・複合決済などの順次リリースで体験をアップデート、メルカリ以外のお店やサービスでの利用が、メルカリ内での利用を上回るまでに成長しました。お客さまにとってメルペイが「日々のメインの決済」になり、Fintechが名実ともにグループの事業の柱になった1年だと@markは語ります。メルコインもコインチェックとの業務提携などのさまざまなプロジェクトをやり切り、ウォレット構想と暗号資産領域を本格始動させています。また、広告事業についても、順調に取り組みを進めています。新規事業領域では、規律あるモニタリングのもとBoldな挑戦を続けつつ、難しい撤退判断も含めて得た学びを、次の挑戦へと生かしていきます。

JBの昨年度の振り返りの後には、今年度の方針についても話されました。今後の発信にて、メルカリグループの事業が目指す先についてもお伝えしていきます。
JBパートの結びとして@markは、新年度への意気込みを語りました。
いま、ちょっと周りを見回してみてください。これだけの人数が仲間として、ここにいる。それを久しぶりに実感できる瞬間です。今日のこの風景を、ぜひ胸に刻み込んでほしい。AIと一緒に進めていきますが、物事をパッションを持ってやりきる仲間は、ここにいるみんなです。
AIをただの効率化で終わらせず、僕たちのパッションをHypergrowthにつなげていきましょう。そして、時代の先頭に立っていきましょう。
まとめ

「Back to Startup」と「AI-Native」で得た確かな手応えを土台に、メルカリは攻めに転じる。新年度のテーマ『AI-Native for Hypergrowth』は、その意志の表明でした。AIを前提に、プロダクトも、お客さまへの価値も、組織も、私たち自身もHypergrowthさせる。その出発点が、この日に示されました。
メルカンでは今年度も、事業・組織・ひと、さまざまな角度から、メルカリの歩みと現在地をお届けしていきます。
写真:chan-kuma
