メルカリの新卒採用担当者が、新卒メンバーの入社当時から現在までを探っていく特集企画。ファーストキャリアとしてメルカリを選んだ新卒メンバーたちは、今何を思い、どのようなキャリアを手にしているのでしょうか?
特集第1回目は、海外から来たメンバーであるHuang Ji-Cheng(以下、@Tony)とSu Wei-Long(以下、@Sting)が登場。ともに台湾出身エンジニアでもある2人が、母国でリリースされていないメルカリへの入社を決めた理由とは? また、今よりも新卒メンバーの受け入れ体制が確立していなかった当時のメルカリで、どのように情報をキャッチアップし、エンジニアとしてのスキルを身に付けていったのでしょうか。聞き手は、彼らの採用を担当していたHRBP(人事担当)のLizです。
「メルカリ?」「何それ?」
ー2人とも、メルカリがサービスを展開していない国から来日していますよね。@Tonyは新卒、そして@Stingは大学卒業後に母国のスタートアップで勤務していましたが、メルカリの海外新卒選考会をきっかけに入社しているため「新卒メンバー」として今日の取材に参加してもらいました。さっそくですが、2人にとってメルカリの決め手は何だったのでしょうか?
@Tony:もともと日本で働くことに興味がありました。日本のお祭りも大好きで、いい文化だなぁと思っていましたし。ただ、当時メルカリのことは全然知りませんでしたね。大学のジョブフェアで初めて存在を知りましたが、正直、そのときも面接を受けたいと思っていませんでした。
ーそこからなぜ、メルカリを選んだのですか?
@Tony:日本で働く際の条件は2つありました。1つ目は、スタートアップ文化があること。2つ目は、エンジニアリングに注力できる開発環境があること。いくつか目星を付けていた日本企業もあったのですが、他にもないかどうか調べていたんです。そこで、海外選考会で知ったメルカリも調べてみたところ、どんどん惹かれていきました。インターン時代にEコマース開発をしていたこともあり、メルカリのようなフリマサービスもやってみたかったんですよね。そして新卒選考を受け、2017年に入社しました。
ー@Stingは大学卒業後に台湾のスタートアップで少し勤務していた経験がありますよね。そこからなぜ、海外新卒選考会を経てメルカリに入社することにしたのでしょうか?
@Sting:僕はとにかく刺激的な環境で働きたいと思っていました。でも、国内だと想像以上のキャリアを築けないように感じ始めて……。会社には申しわけなかったのですが、すぐに退職しました。そして、海外で働くことを視野に入れて仕事を探し始めたんです。でも、そのときはまだ日本で働きたいと考えていませんでしたね。噂によると、日本は通勤時の満員電車がハードだと聞いていましたし(笑)。
一同:(笑)。
@Sting:最初は、アメリカやヨーロッパを中心に仕事を探そうとしていたんです。しかし、即戦力を求める傾向が強いアメリカやヨーロッパは、海外新卒に対してあまり寛容的ではありませんでした。それに比べて、日本は新卒採用に積極的。それもあり、日本企業にフォーカスを合わせたのです。
ーそして、メルカリの海外新卒選考会にたどり着いたんですね。
@Sting:メルカリは、僕が選考を受けた日本企業のなかで一番面接がスムーズでした。というのも、面接が終わってすぐ、オファーの連絡をくれたんです。ダウンロード数も多く、アメリカでもサービスを展開している。これからも幅広いお客さまに使ってもらえる可能性があるところもいいなと思ったんです。
ー選考スピードが一番の決め手だった?
@Sting:そうですね。そこまで早く決断してくれたのだから、僕も誠実に、そして早く決断しなければならないと思いました。候補者に対する尊重のようなものを感じたんです。でも、働く環境がわからず不安で。オファーをもらった日の夜、海外新卒選考会の運営をしていたエージェントさんに頼んで、すでにメルカリに入社していた@Tonyを紹介してもらいました(笑)。
@Tony:そうそう。エージェントさんから「メルカリでの環境を知りたがっている人がいるから、話してあげて」と言われたんですよね。それが@Stingでした。勤務時間や開発体制、福利厚生など、ネットを調べただけではわからない情報を詳しく話した覚えがあります。
@Sting:ですね。おかげでメルカリは、僕が当初イメージしていた日本企業とは異なることがわかりました。そして、2018年に入社したんです。
「日本語ばかり」による情報格差をどう乗り越えた?
ーそして2人はメルカリに入社。しかし、当時は、今以上に英語を話せるメンバーも少なかったと思います。今でこそ社内資料は両言語での記載が当たり前になりつつありますが、特に@Tonyが入社した2017年はまだ言語の壁も分厚かったのでは?
@Tony:「大変だった」の一言に尽きますね(笑)。一部で社内資料などの英語化が始まっていたものの、肝心なところはすべて日本語。今以上に英語での情報量が少なく、質問するときも「どう聞けばいいのか」と悩みました。でも僕の場合、同じチームに英語と日本語を話せるメンバーがいたので、いつも彼に助けてもらっていましたね。
ー業務に関しては、どのように情報収集していたのですか?
@Tony:わからないことは、両言語を話せるメンバーにその都度聞くようにしていましたね。また、会議の前日は、チーム内で話し合ったプロジェクトに関するドキュメントや、他のチームから寄せられた改善依頼がまとまっている要望ページを翻訳しながら調べるなどして、何が起きているのかを把握するように意識していました。
@Sting:両言語を話せるかどうかも必要ですが、質問に対してすぐ答えてくれるエンジニアが周囲にたくさんいるというのはよかったですよね。というのも、僕のメンターは入社してすぐ「来週から旅行だから、わからないことがあったら周りのメンバーに聞いてね」と言って旅立ってしまって……。
ーえっ!
@Sting:いきなりの実戦状態(笑)。でも、僕はサバイブする環境が好きなので、逆にラッキーでした。質問することで他のiOSエンジニアと話す機会が増え、彼らの知見や知識をどんどん吸収できたんです。@Tonyのように、一足先に海外から来たメンバーたちと話すきっかけにもなっていました。
ー海外から来たメンバーも含め、メルカリでは新メンバーへのオンボーディング体制を急ピッチで整えているところです。2人が入社したときは、どうだったのでしょうか?
@Tony:僕が入社したときは、オンボーディングという概念もありませんでした。僕自身も「海外から来た新卒メンバー」というより、即戦力として見られていました。もちろんありがたいのですが、やはり慣れるまではけっこう大変でしたね。当時は今よりも英語を話せる日本人メンバーも少なかったので、オンボーディング体制を整えること自体が難しかったんじゃないかなと感じています。今はオンボーディングのプロセスもありますし、各チームがそれを意識するようになっています。これはとてもいいことですよね。
@Sting:そうですね。特に新卒メンバーは配属先が決まっているわけではありません。ですが、今はいろいろなチームがプレゼンして「何をしているのか」をクリアにしてくれたり、エンジニアリングマネージャーが相談相手となってやりたいことを決められるプロセスが誕生しています。これがあることで、新卒として入社する側も安心できるんです。
「海外から来た新卒メンバー」からテックリードへ
ー 気になるのは、スキル面です。メルカリに入社して、成長できたと感じる瞬間はありますか?
@Sting:メルカリに入社したばかりのころは、iOSでのフレームワークやアーキテクチャを理解するのに数ヶ月かかりました。でも、周囲のiOSエンジニアたちがペアプログラミングなどを通じて、基礎や応用を叩き込んでくれて。おかげで、今は他のメンバーにも解説できるようになりました。
@Tony:僕はメルカリに入社してから、マイクロサービス開発などに初めて関わりました。特に、バックエンドエンジニアとどのように連携しているのかなどを体験できたのは、とても勉強になりましたね。
ーなるほど。特に@Tonyは今、テックリードという役割を担っていますよね? これによって、仕事のやり方などは変わりましたか?
@Tony:エンジニアの一人として働いていたときは、好きなようにコードを書いていました。でも、メルカリのテックリードは、開発環境を整えるほか、メンバーのコードを管理する役割もあります。そのため、他のメンバーが書いたコードをリリース前にレビューするんです。そうすると「どういったマインドセットで書かれたものなのか」など、コードを書いた背景も理解しなければいけません。なかでも「決めること」が難しくて。
ー決めること?
@Tony:テックリードはどういった技術を用いて開発するのか、設計するのか、品質を保つのかを中心に意思決定しています。しかし、「どの技術がいいか」については、正解があるわけではありません。これに関しては、いつも試行錯誤しています。また、他のエンジニアたちと基本的には日本語で話しますが、技術の話をするときは表現が難しくてどう伝えればいいのかわからなくなることも多いです。そのため、最近では難しい話になりそうなときは英語、さらに伝え方に悩みそうなときは絵を描きながら話すようにしました。今のところ、この方法でうまくいっています。
「成長できる感動」を与える側になりたい
ーメルカリには今、30カ国以上のメンバーが集まっています。2人は今後、メルカリでどんなことに挑戦していきたいと思っていますか?
@Tony:テックリードになり、いちエンジニアだったころに比べて明らかに「コードを書く」以外のスキルが求められています。これは僕にとって嬉しいチャンスでもあるので、テックリードとしての役割を担えるようなりたいです。そして、今よりもっと技術を学んで、的確な判断をできるようになりたい。そのためにも、もっといろいろな経験を積みたいですね。
@Sting:今、関わっているプロジェクトも楽しいのですが、そこだけにコミットしていては、メルカリというサービス自体を理解できないと思っています。もっと全面的にメルカリを理解したいので、今後は自分のチーム以外のプロジェクトにも参加していきたいですね。そして、サービスだけでなく、会社全体がわかるようになれればと思っています。あとは……。
ーあとは?
@Sting:僕が入社したとき、周囲のメンバーたちが一つひとつの質問に丁寧に答えてくれました。そして、それを理解するたびに自分が成長していくように感じられていたんです。僕も新しいメンバーの質問に誠実に答えつつ、彼らの成長に寄与したい。そして、当時の僕が受けた「成長できる感動」を、新しいメンバーに提供する側になりたいですね。
@Tony:そうですね、それは目指したい!
ーありがとうございました! 言語や異文化の壁など、技術での経験値の差を乗り越えながらもエンジニアとして成長し続けている2人の話に勇気づけられました。今後もよろしくお願いします!
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Huang Ji-Cheng
台湾出身。台湾の国立交通大学でコンピューターサイエンスを学び、ネットワーク工学の修士号を取得。2016年にはヤフー台湾ホールディングスでインターンを経験。その後、2017年8月にバックエンドエンジニアとしてメルカリに入社。現在はテックリードを務めている。
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Su Wei-Long
台湾出身。大学卒業後、台湾のIoT系スタートアップにiOSエンジニアとして勤務。「海外のスタートアップでコーディングをしたい」と思い、2018年にメルカリに入社。iOSエンジニアとして、サービスのグロースなどに携わる。旅行好きで、日本語は小説『君の名は。』で勉強した。
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Cheng Tsz Kiu
香港中文大学心理学部を卒業後、新卒として株式会社東芝へ入社。2016年4月に株式会社東レに転職し、留学生採用を担当。その後、2017年12月にメルカリに入社し、グローバル採用とDiversity & Inclusionプロジェクトを立ち上げる。2019年4月からはHRBPを担当している。