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「ないことが当然」を「あることが当然」に変える。メルカリCSEの解決力

2019-4-15

「ないことが当然」を「あることが当然」に変える。メルカリCSEの解決力

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「経営課題をエンジニアリングで解決する」。2018年1月の設立以降、そんな揺るがないミッションを掲げ、経営課題にコミットしてきたチームがあります。それが「Corporate Solutions Engineering」チーム(以下、CSE)です。

人事評価や会計、メディア、コミュニケーションツールなど、大きく4つの領域で起きる、様々な課題と向き合い、堅牢なシステムをゼロから開発。メルカリのコーポレートをより強い組織へと牽引する重要な役割を担っています。

そんな新たな課題やニーズを探り、なくてはならない価値を創りあげてきた彼らは、設立から1年を経た今、何を考え、何を成し得ようとしているのでしょうか。今回は「人に関わるシステム」を手がけるCSEのPeople Productsチームから、マネージャーのwadatch、エンジニアのfivestar、そしてプロダクトマネージャー(以下、PM)のinto、funassyにインタビューを実施。「ないことが当然」を「あることが当然」に変えた、苦悩と挑戦の日々を振り返ります。

経営課題をエンジニアリングで解決することの本質

ーまずはCSEチーム、設立1周年! おめでとうございます!

全員:ありがとうございます!

ーちょうど1年前のインタビューでは、チームの立ち上げの経緯や目標について伺いました。今回は、設立から今日までを一緒に振り返っていきたいと思います。まずは率直な感想を聞かせてください。

wadatch:一言で表すならば、非常にカオスな1年でした(笑)。時間があっという間に過ぎていきましたが、本当に濃厚な日々だったと思います。2018年1月にCSEが設立され、間もなくして人事評価システム「Reviews」を開発することが決まり、それから人とチームのデータベース(基盤)「Teams」、そしてインセンティブのマネジメントシステム「Benefits」など、組織やチームを横断して独自のシステムを開発してきました。

wadatch(Corporate Solutions Engineeringチーム マネージャー)

fivestar:この1年を振り返ると色々あったと感じる一方で、変わらないこともありましたね。立ち上げ当初にも話しましたが、私たちはシステムを開発するだけのチームではなく、経営課題に対してエンジニアリングを用いて解決していくチームです。このスタンスは設立当初から一貫して変わりませんでした。システムや機能が完成したとしても「それが本当の正解なのか?」「経営課題に直結しているのか?」など、自問自答を繰り返しながら一つひとつ改良してきた実感があります。

ー手がける領域やメンバーについては、どのように拡大していったのでしょうか?

wadatch:設立後、このカオスな状況をsotarok(元メルカリ CSEマネージャー柄沢聡太郎)やfivestarをはじめ、少数メンバーでは対応できないことにすぐ気付きました。「Benefits」の開発プロジェクトが動きはじめた2018年7月頃、既存メンバーだけでは手が回らない業務も具体的に出てきたタイミングで、intoさんやfunassyがジョインしてくれたんです。この頃から、より多様性のあるチームになったと感じますね。

into:僕が入社したのは2018年の7月で、インセンティブ制度を成立させるために、システム開発が必要とされているタイミングでした。要件を整理し、開発に着手していたなか、10月末に制度を急遽変更すること、そして年内から制度の運用が開始することが決まりました。プロジェクトチームと経営陣が、より良い制度にするために大胆な意思決定をしていくのを肌で感じ、「これがメルカリか!」と驚いたことを覚えています。その時期は同時に「Reviews」のブラッシュアップの真っ只中でしたし、評価制度の変更もありました。振り返れば激動の日々でしたね。

into(Corporate Solutions Engineeringチーム PM)

ーすごいタイミングでの入社ですね。メルカリのスピード感を維持しながら、システムをつくりあげることは容易なことではないと思います。ご自身のなかで、特に意識して取り組んだことはありますか?

into:おっしゃる通り、異常なスピードであることはもちろん、質の異なるボールがあらゆる場所から飛んでくることも少なくありません。そんなとき、常にチームから言われていたのは「システム開発は手段のひとつだ」ということでした。

ーそれはどういう意味でしょうか?

into:「そもそも課題は何なのか?」「そのためにどんな解決策が考えられるか?」「もしかしたらシステム開発以外の解決策(手段)があるのではないか?」など、関わる当事者と様々な議論を重ね、その結果として必要なら「システムを内製する」という答えを出す。内製する手段を携えているのはこのチームの強みですが、どんなに速いスピードを維持しなければならなくても、きちんと根っこを解きほぐすことが大切だと考えています。

funassy:僕もintoさんと同時期に入社したので、その点は強く共感しますね。あと経営課題にメスを入れることって、会社全体を巻き込むことなので、ものすごい体力と覚悟が必要なんですよ。

ーCSEだけに加担するのではなく、全社的に課題感を共有する必要がありそうですよね。

funassy:そうなんです。まさに「経営の課題感を社内にどう浸透させるか」が重要だと思っていて。そのキーになるのは、言うまでもなく経営層との連携です。「経営課題をテクノロジーで解決する」という経営の強い意志があったからこそ、社内を巻き込みながら、強いシステムをつくることができたと思いますね。

funassy(Corporate Solutions Engineeringチーム PM)

ー例えば、どういうことでしょうか?

fivestar:例えば、小泉さん(メルカリ取締役社長兼COO)の意志が強かったのは、評価システムの構築です。「プロダクトやサービスに紐づく組織ではなく、会社に紐づく組織をつくりたい」「そのために組織にきちんと向き合い、人を正しく評価したい」という小泉さんの強い意志があって。その想いが後押しとなり、開発されたのが「Reviews」でした。

ー経営の強い意志が、メンバーの働きやすさを促進するためのシステムに生まれ変わり、その結果として「Reviews」や「Benefits」「Teams」が誕生したわけですね。一方で、既存ツールに頼ることなく「自分たちでツールをつくりだす」という選択をしたことは、なぜでしょうか?

fivestar:現在、社内やチーム内には多様なプロジェクトがものすごいスピードで走り続け、それと同時に組織やチームも変わり続けています。そんな独自の変化を遂げているメルカリのような会社にフィットする既存ツールなんてないんですよ。独自の問題は、独自のソリューションをつくればいい。これまでになかったシステムを会社の成長スピードと同等か、それ以上のスピードで開発していく。これこそがCSEが内製する理由であり、意義だと考えています。

wadatch:本当にそうですよね。むしろ内製か外製など関係なく、本質的なソリューションにだけ目を向けることが大切だと思います。

ーなるほど。

fivestar:CSEは社内システム屋ではなく、「経営課題をエンジニアリングで解決するチーム」です。そこには「受け身に陥らず、常に能動的に仕事をするというチームのマインド醸成」、そして「メルカリのCSEらしい、独自のブランドを築く」という意味が込められています。そういう意味で、この1年は「成果を挙げることで、自分たちの役割を確立すること」という目標を達成し、メンバー全員のマインドやパフォーマンスを高めることができました。CSEの取り組みに興味を持ってくれて、実際に入社してくれたメンバーがいることも、チームの成長を感じることができた出来事でしたね。

fivestar(Corporate Solutions Engineeringチーム エンジニア))

「Respectful」「Open」「Global&Diverse」がもたらす効果

ーCSEチーム誕生から1年、多種多様なメンバーが加わってきたと思います。チームにはどんなカルチャーがあるのか、教えていただけますか?

wadatch:僕たちが大事にしているのは「コミュニケーション」の一言に尽きますね。設立当時、チーム内に 「Respectful(尊敬し合うチームをつくる)」「Open(ためらうことなくシェアする)」「Global&Diverse(多様性を受け入れる)」という3つのバリューをつくり、それを行動指針として日々の業務に取り組んでいます。チームが設立し、半年あまりでメンバー数は急増。国籍も豊かになり、言語も日本語と英語の両方を使うようになりました。あえてチーム内にバリューを持たせることで、コミュニケーションが円滑になり、より仕事に集中することができていると思います。

ーメルカリのバリュー(Go Bold,All for One,Be Professional)に加え、チームバリューもつくるとは良い取り組みですね。他のチームにとっても役に立ちそうな、大切な言葉ばかりです。

wadatch:これらのバリューをsotarokやfivestarなど、初期メンバーが正しく浸透してくれたおかげで、議論で衝突が起きたとしても解決に向けて、ポジティブに取り組めていると思います。

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ー単にメンバーの数が増えるのではなく、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まると、「何となくの理解」で進めてしまいがちですよね。

wadatch:まさにそうなんです。そもそも各メンバーが、お互いのスキルやレベルを完全に把握しているはずないですからね。あえて「お互い分かり切っていることでも、必ず確認して進めましょう」と周知しています。できる限り「阿吽(あうん)の呼吸」や「暗黙の了解」はなくそうと、それぞれが口に出して伝えるだけでなく、それをできる限りチームメンバーが集まる場で話し、意識を高めました。その結果、チームのカルチャーとして醸成されたと思います。

funassy:一般的に「阿吽の呼吸」が素晴らしいという文化もありそうですが、チーム内では「ハイコンテキストすぎる!」などと、ネタになっている気がします(笑)。

wadatch:確かに(笑)。

fivestar:そもそも「コミュニケーション問題」も経営課題のひとつなんですよね。それがチームにバリューを設けた理由でもあって。コミュニケーションそのものの在り方だけでなく、一人ひとりのマインドにも問題があるかもしれない。各メンバーが会社やチームのカルチャーについて、よく理解する必要があると思ったんです。

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ーCSEチーム内でのコミュニケーションは、他チームと一緒にプロジェクトを進めるときにでも活かされそうですね。

into:そうですね。異なるチームが連携するかたちでプロジェクトを進めていますが、僕たちは組織が異なろうと「課題を一緒に解決するワンチーム」だと思っています。なので、例えば「こんな機能つくれますか?」という相談が届いたら、まず「なぜ、その機能が必要だと思いましたか?」と、背景を教えてもらうようにしているんです。もちろん想像できることもありますし、相手にとってはわかり切っていることかもしれませんが、背景から確認をするようにしています。先ほども少し触れましたが、機能はあくまでも手段です。「このことで悩んでいる」という背景を知らないと、何も提案できませんからね。他のチームであっても、どんなプロジェクトであっても「何となく」の理解は絶対にしないように心がけています。

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funassy:システムを開発せずに課題解決できれば、それはそれで成功です。なので、開発することだけにこだわらないようにしていますね。当然、開発してしまうと運用も大変ですし、新たな独自ルールをつくってしまうことにもなる。現場のチームは、言うまでもなく全員がその道のプロフェッショナルです。彼らに「Why」を追求しながらも、エンジニアリング以外の手段も含めて提案できるよう、僕たちも日々学ぶ努力を怠ってはいけないと思いますね。

「あることが当たり前」が理想のゴール

ーでは少し話しを変えて、CSEのゴールについて伺いたいと思います。「経営課題を解決する」と一口に言っても、何をもって解決なのかわかりにくいですよね。実際に複数のシステムを開発、ローンチしているCSEチームですが、「経営課題を解決したな」と実感するのは、どういう瞬間なのでしょうか?

wadatch:これまでなかったシステムがローンチされ、それが日常に溶け込んでいる状態がゴールと言えるかもしれません。「Teams」や「Reviews」は、もはや「あることが当たり前」になりました。「Teamsを見て何か考える」という行動が常態化しているわけです。これこそ「解決」の定義なのかもしれません。何より、いろんな職種のメンバーが自分なりの使い方をしてくれているのは、開発サイドとして非常に嬉しいです。

ーメンバーからのフィードバックのなかで、意外な提案やリアクションはありましたか?

funassy:沢山いただきますよ。例えば「Teams」に対して、「個人のSlackページにそのまま飛べるような機能を付けてほしい」という提案をいただきました。「なぜ、その機能が必要なんですか?」と聞き返すと、「Teamsのなかにあるカレンダーで、個人のスケジュールを確認したあと、そのままメッセージを送りたいんですよ。」と……。それを聞いて「なるほど! 確かに、誰かのスケジュールを確認するときの多くは、その人とコンタクトを取りたいときなので、そのままSlackでメッセージを送る行為は自然の流れだな」と、深く納得したことを覚えています。単に情報を可視化するだけでなく、リアルな行動と機能を紐付ける。この例はほんの一部ですが、メンバーからの提案がきっかけとなり、実際に様々な機能が実装されています。

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fivestar:当然ですが、エンドユーザーが隣の席に座っているというのがめちゃくちゃいいですよね(笑)。自然とフィードバックしてくれるのは、メルカリのいいカルチャーだなと思います。

成功事例を重ね、世界で戦えるCSEチームへ

ーそれでは最後にCSEの今後について、みなさんが考えていることを聞かせてください。

fivestar:この1年で「People Products」の基本的なシステムがかたちになりましたが、もっともっと社内全体で活用してもらうための方法を考えなければなりません。メルカリで働くメンバー全員がハイパフォーマンスを発揮できる情報基盤をつくりたいですね。また、バックエンドのアーキテクトとしては、データをより活用できるようなシステム開発にフォーカスしていきたい。それができれば、チームとしても会社としても、次のステップアップにつながるはずだと考えています。

wadatch:中長期な話になりますが、社内での事例をしっかりと社外にも発信していきたいと考えています。「People Products」は未完成な組織とはいえ、多くの成功事例を積み上げてきました。国内における「社内IT部門」は、ともすれば「受け身のIT」と捉えられかねない側面があり、個人的に危機感を持っています。経営課題に積極的にコミットしている事例を数多く生むことで、業界そのものをアップデートしていきたい。そして、いつかテックカンパニーのひとつの解として、「メルカリCSE」を世界に打ち出していきたいと思っています。

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ーfunassyさんとintoさんはいかがですか?

funassy:そうですね。これからは人員管理やタレントマネジメントの最適化に力を入れてきたいと思っています。fivestarさんも触れていましたが、メルカリにとって2019年はデータをいかに活用するかがテーマです。適切なデータ履歴の管理、レバレッジの効くデータをAPI化して、各チームが自由にデータを使える状態にしたいですね。今年1年の目標です。

into:僕はPeopleの領域に集中しつつ、CSEの取り組みの仕組み化も考えたいですね。経営や組織の課題は山のようにあるはずですが、人数や拠点も増えるとどうしても把握できないことが増えてしまいます。それらの声をきちんと集め、しっかりと向き合い、一緒に解決していきたいと考えているので、仕組み化は大きなテーマです。あとはやはりデータの活用。特にPeopleの領域については、既に多くのデータが集まってきています。これらを活かし、いかに人の成長やキャリアを後押しできるかについて考えていきたいですね。それが個人的にもチームとしても、次の一歩につながるチャレンジになると考えています。

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プロフィール

wadatch

Corporate Solutions Engineeringチーム マネージャー。株式会社SRAを経て、2006年にグリー株式会社入社。決済・広告システムや社内システムの開発・運用を行う。その後、株式会社サイカ、フリーランスを経て、2018年1月にメルカリ入社。現在はCorporate Solutions EngineeringチームにおいてPeople Products、Accounting Products(会計システム)、コーポレートサイトなどの開発・運用マネジメントを担当する。

fivestar

Corporate Solutions Engineeringチーム エンジニア。2008年にアシアルに入社。2011年にクロコスを設立し、翌年にヤフーに売却。ヤフーにてメディアプラットフォーム開発や技術戦略策定を担う。2015年よりAncarにてCTOを務めたのち、2018年1月にメルカリへ入社。現在はPeople Productsチームのバックエンドアーキテクトを担当している。

into

Corporate Solutions EngineeringチームのPM。2010年にNTTコミュニケーションズ入社。サービス企画、新規事業企画等に関わる。2013年にグロービスにてデジタルコンテンツの開発やラーニングプラットフォーム事業企画・開発の責任者を務めたのち、2018年7月にメルカリ入社。現在はPeople Productsチームにて評価システム「Reviews」やRSU管理システム「Benefits」のプロダクトマネージャーを担当。

funassy

Corporate Solutions Engineeringチーム PM。2011年、株式会社ミクシィに新卒入社。アドテクチームの立ち上げや、ゲームアプリの国内外全てのWeb広告出稿統括を行ったのち、中国事業展開の責任者を担う。2018年7月、メルカリに入社。現在はCorporate Solutions EngineeringのPeople Productsチームでプロダクトマネージャーを担当している。

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