2019年2月20日、スマホ決済サービス「メルペイ」の本格始動に先駆けて開催された「MERPAY CONFERENCE 2019」。
メルカリ代表取締役会長兼CEOの山田進太郎、そしてメルペイ代表取締役である青柳直樹のあとに登壇したのは、メルペイ執行役員VP of Business Developmentの山本真人。山本から語られたのは、メルペイのセールスを戦略に関するこれまでとこれからについて。いくらお客さまにとって優れた決済サービスだとしても、お店に導入されなければ意味がありません。一体、メルペイはどのようにサービスを拡大し、人々のライフスタイルを変えようとしているのでしょうか。プレゼンテーションでは「地方自治体との連携」や「メルカリやメルペイの統計データの活用」など、多様なキーワードが次々に飛び出しました。これまでセールスチームをリードしてきた山本が考える、今後の展望、そして野望に迫ります。
お店側がメルペイを使いたくなる3つの理由
乱立するオンライン決済サービス。すでに多くのサービスが台頭している現状で、メルペイはどのように拡大していくのでしょうか。まず山本が語ったのは他社の決済サービスとの違いについて。メルペイが、お店側にとって「使われる決済である理由」は3つあると山本は話します。
「お店でメルペイが使われる理由は3つあります。1つ目は、月間1,200万人を超えるメルカリユーザーのお客さまがそのままメルペイを使い始めていただける点。2つ目は、メルカリのお客さまは年間で約5,000億円の売上金を有しており、この売上金を実際のお店でご利用いただける点。そして、3つ目はメルペイがよりご利用いただけるようにメルカリのデータを最大限活用しているという点です。」(山本)
山本が、それぞれの理由について深堀りしていくと他の決済サービスとの違いが見えてきました。
「そもそも月間1,200万人を超えるメルカリのお客さまにメルペイをお使いいただけること自体、とても意味があります。ですが、メルペイのユニークな点はその数だけではありません。ポイントは、メルカリのお客さまの多くが売上金を持っている点です。通常、新しい決済サービスを使い始めるためには、さまざまな準備や手続きが必要です。たとえば、アプリをダウンロードしたり、新たにアカウントをつくったり、利用にあたってお金を事前にチャージをしなければいけなかったり……。しかし、メルカリではすでに年間約5,000億円というお金が生まれ、それぞれのお客さまの口座に入っているわけです。つまり、面倒な入金の手間をかけることなく、メルペイを使い始めていただける。ここが他の決済サービスとの大きな違いであり、特徴です。」(山本)
山本は、メルカリの売上金が「月々の収入」とは別のところから発生するお金であることもポイントだと話します。「別のお金」とは一体どういうことなのでしょうか。
「使わなくなったものをメルカリで売っていただいたことで得た売上金は、ある種の臨時収入ともいえるでしょう。お客さまにとっては大胆かつワクワクした気持ちで使っていただけるお金だと考えています。」(山本)
山本真人(執行役員VP of Business Development)
たとえば、「もう着なくなった洋服が思ったよりメルカリで高く売れたから、気になっていたお店で美味しいものでも食べてみよう」「子どもが大きくなって必要なくなったベビーカーがメルカリで売れたから、子育てをしてくれたお母さんに『お疲れさま』の気持ちを込めて美容院に連れて行ってあげたい」といった体験が生まれやすいと山本は話します。そして、メルカリの統計データの活用についてもこう話しました。
「新しい決済サービスが生まれて、お店側が抱く疑問はおそらく『このサービスは本当に使われるのか?』だと思うんですね。特に中小規模のお店ほど、導入を躊躇(ちゅうちょ)されると思います。だからこそ、メルペイではメルカリの売上金がどのエリアに多くあるのか、メルカリのアクティブなお客さまがどこにいるのか、どの年代の方がどの程度の売上金を保有しているのかなど、統計データを用いることで、どのエリアにどのようなお店でメルペイを使っていただきやすいのかについて判断できるようになる。だからこそ、メルペイとしてはお店の数を追うだけではなく、使われる決済を目指して拡大をしていきたいと考えているんです。」(山本)
地方自治体との連携、低額なランニングコスト……メルペイ次の一手
「実際に多くのお店がメルペイの価値に理解していただいています」、そう話す山本が続いて語ったのは、具体的なセールス拡大に向けた戦略について。キーワードは「地域密着」です。
「今後もより多くの店舗でご利用いただけるように、セールスの展開を進めているところです。その際には大規模なお店はもちろんのこと、街にある一つひとつのお店にも使っていただけるよう、より地域に密着したアプローチを図っていきたいと考えています。」(山本)
山本は地域密着のアプローチを図っていくための具体的なプランについて明かしました。キーになるのは「地方自治体との連携」。キャッシュレス普及に向け、今後は全国の自治体とタッグを組んでいきます。
「全国各地域での利用拡大に向けて、地方自治体さまとのキャッシュレス普及に向けた連携も強化していきます。現時点では、神奈川県さま、鎌倉市さま、岐阜市さま、神戸市さま、仙台市さま、千葉市さま、福岡市さま、そして箕面市さま。8つの自治体さまと連携に向けた協議を行なっていく合意をいただいています。もちろん今後も連携を進める自治体さまは拡大していく予定です。」(山本)
「地方自治体との連携」とひと口に言っても、施策はさまざま。地域によって特性も異なります。具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。
「たとえば、福岡市さまとはリサイクルをテーマとしてキャッシュレス推進、仙台市さまとは起業家支援とキャッシュレス推進、千葉市さまとは国家戦略特区の枠組みを活用した施策とキャッシュレス推進、鎌倉市さまとは特定のエリアにおけるキャッシュレスの普及など、『キャッシュレス』を切り口にして地域課題を解決していきたいと考えています。」(山本)
メルペイを足がかりに、地域課題を解決していく。官民連携の新しいケーススタディーになっていくといえるでしょう。その一方で、加盟店さまへの負担には最大限の配慮が必要だと語ります。
「導入に際し、初期費用も固定の月額費用も一切いただかないことにしました。お店側には純粋にメルペイを使っていただいた際の手数料のみで、ご利用いただけるようにします。手数料は1.5%。これはクレジットカード等の既存の決済手段と比べて非常に低廉な利用料金だといえるでしょう。ポイントは、この手数料は一時的なキャンペーンでないということ。安心して長期的にご利用いただけるように、メルペイでは初期費用、月額費用を0に、手数料も1.5%として、さらに使われる決済を目指したいと考えています。」(山本)
地方自治体との連携、そして低額なランニングコストなど、さまざまな取り組みにチャレンジするメルペイ。さらに山本は、オンラインでの施策について語りました。
「これまで話した通り、すでにメルペイではオフラインの店舗での決済手段としてご利用いただいております。これに加えて、オンラインでの支払いにも利用いただけるように準備を進めているところです。ネットショッピングにおいてもメルペイが使える。目指すのはそういう世界です。」(山本)
ネットショッピングでもメルペイが利用できるようになれば、ユーザーであるお客さまにとってもお店にとっても利便性はますます高くなり、キャッシュレス普及の追い風となっていくはず。山本は、最後にメルペイが目指すべき将来像について明かし、プレゼンテーションを締めくくりました。
「いずれはメルペイのネット決済で購入した商品の決済情報をもとにワンタップでメルカリに出品できるようにしていきたいと考えています。売ることを前提に商品を購入するお客さまの消費行動の変化にあわせて、メルカリ、メルペイともにブラッシュアップしていきたい。今後メルカリやメルペイの統計データを駆使して、お店側の売上に貢献していくような構想も考えています。実現すれば、より魅力的な商品の開発やマーケティング施策などに活用いただけるはず。ユーザーであるお客さま、そしてお店にも貢献できる決済手段になれたらと思っています。」(山本)
二次流通を担うメルカリがあるからこそ、一次流通での消費行動が促進される。メルペイが架け橋になることで、単なる決済サービスとしての範疇を超えるサービスが実現されるのではないでしょうか。メルペイの今後の展開に、ぜひご注目ください。
プレゼンテーション
- プロフィール
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山本真人(Masato Yamamoto)
2004年、東京大学大学院学際情報学府 修士課程修了。NTTドコモを経て、2008年よりGoogle JapanのEnterprise部門 Head of Partner Salesを務める。2014年にはSquare JapanにてHead of Business Development and Sales、2016年からはApple JapanにてApple Pay 加盟店事業統括責任者を務める。2018年4月より現職。