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初仕事は国連管轄フォーラムでの発表。メルカリによるルールづくりの新体制

2019-6-6

初仕事は国連管轄フォーラムでの発表。メルカリによるルールづくりの新体制

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メルカリには、政府や民間団体など多様なステークホルダーとともにルールメイキングに取り組む「政策企画チーム」と、ブロックチェーンやインターネット基盤技術などを研究する研究開発組織「R4D」があります。「一見すると距離がありそうな両チームが、もしも手を組んだら……?」なんて想像を実現するように、あるプロジェクトチームが誕生しました。それが、Tech Governanceチーム(以下、Tech Gov)です。

Tech Govチームのミッションは「メルカリの“少し先の未来”を見据えて、テクノロジーや関連する政策のグローバルスタンダードをつくる」。その活動の一つとして、2018年にユネスコで開催された「Internet Governmence Forum 2018」ではワークショップを実施し、各国の企業や政府関係者、技術者たちと日本のインターネット業界のあり方やルールメイキングについてディスカッションする場をつくり出していました。

そんなTech Govに集まっているのは、政策企画チームの望月健太、そしてR4Dの中島博敬と小林茉莉子の3名。2チームが手を組み、政策と技術の観点からルールメイキングに挑むきっかけは何だったのでしょうか。彼らがチームを横断して「少し先の未来」に挑む理由をインタビューしました。

政策企画とR4Dの共通点は「ルールメイキング」

ー政策領域を担当する政策企画チームと、技術領域を担当するR4D、この2つはあまり交わることがないイメージもあったのですが?

中島:あはは、確かにそうかもしれませんね。でも、政策領域と技術領域はよくよく考えてみると共通点があります。それが「ルールメイキング」です。

中島博敬(R4D)

ー「ルールメイキング」が共通点?

中島:はい。僕はR4Dに所属しているのですが、ここでは日々、ブロックチェーンや量子コンピュータなど、新たな技術に関する研究を行っています。これは同時に、新たな技術の使い道を考えることでもあるんです。例えばビットコインなどに代表されるブロックチェーン技術も、現在に至るまでには政府や企業、大学などさまざまな関係者が集まって何度も話し合いを重ねてきました。政策企画は、政府や民間団体など多様なステークホルダーとともにルールメイキングに取り組むチーム。そういう意味では同じミッションを担っている。ならば一緒に行動できないかと考え、結成したのがTech Govでした。

小林:Tech Govを結成したのは昨年6月ごろ。当初の主要メンバーは中島さんと私の2人で、政策企画チームと連携しながら活動していたんです。でも、私たちがわかるのは技術領域であり、政府関係者とどのようにやりとりすればいいのかはわからず……試行錯誤の日々が続いていました。そんなとき、望月さんが政策企画チームにジョインし、かつTech Govにも主要メンバーとして参加してくれると聞いて「やったー!」「政策がわかるメンバーが来てくれるぞ!」となったのを覚えています。

ー政策領域と技術領域が合わさることでのメリットは何でしょうか?

望月:そもそも、分野について知らなければルールをつくることはできません。政策と技術、どちらかの知識が欠けていると、技術の発展を阻害してしまったり、あるいは法的リスクを考慮せずにルールをつくることになりかねません。ルールづくりを大きく左右するからこそ、政策領域と技術領域での親和性は大事なポイントと言えます。しかし、日本だけでなく海外企業でも縦割りのチームになっていることが多く、密に連携するには難しい現状がありました。

望月健太(政策企画)

初めて挑んだ海外フォーラムでのワークショップ、その手応えは?

小林:IGFとは、国際連合のもとで年に1回行われている、インターネット関連の政策課題にフォーカスしたフォーラムのことです。ここでは、インターネットの規制やテクノロジーのガバナンスなど幅広いテーマについて各国から課題意識を持ち寄り、政府関係者や民間企業だけでなく、一般のインターネットユーザーなどを交えて議論します。

IGFで、ワークショップに登壇してくれた人たちと撮った記念写真

ーそのような場でワークショップを開催したということですよね。何をテーマに話したんですか?

中島:ちょうど日本では漫画などのコンテンツを権利者の許諾なしに配信する権利侵害サイトと、それに対するブロッキングについて話題だったので、IGFでは自由な情報流通の有益性について話しました。これは僕個人の考えですが、インターネットは自由に情報をやりとりする場なので「これは良くないから即ブロックする」ではなく、もう少し話し合うべきじゃないかと考えているんです。メルカリだって、インターネットという自由な世界でビジネスをしています。なおさら、メルカリはインターネットを利用するすべての人たちにとっても利益をもたらす存在であるべきじゃないかと。

ーそして、IGFという場で議論しようと考えたわけですね。こういったワークショップは誰でも行えるものなのですか?

望月:IGFは年次プログラムです。そのため、毎年どういったワークショップを開催するかは世界各国にいる55名の選考委員が決定しています。しかし、この選考がけっこう厳しくて。だいたい200〜300件の提案のうち、通過するのが70〜80件ほど。選考委員は自国のチームから提出された企画書の採点ができないなど、厳格なルールもあります。

ー200〜300件から通過するのが70〜80件! 競争率が高いんですね。

小林:企画や構成はもちろんですが、一番大変だったのが「誰に登壇してもらうか」でした。登壇者は3〜5名ですが、ダイバーシティが重要視されていることもあり、ジェンダーや国、地域、ステークホルダーが偏っていてもダメなんです。しかし、私にも中島さんにも登壇してくれるような人のツテがなくて(苦笑)。「こういった人を探しています」と何十通もメールを出しました。結果的に、モデレーターはアジア、登壇者はそれぞれユネスコや欧州委員会等の政府間組織やドイツの電気通信事業者、世界のインターネット自由度の調査を行い、毎年レポートを公開している国際NGO、アフリカの技術コミュニティなどからそれぞれ1名にお願いできました。しかし、直前までヒヤヒヤしっぱなしでしたね。

小林茉莉子(R4D)

ーツテという意味では、政策企画チームである望月さんがひと役買ってくれそうなシーンでは?

小林:それが……望月さんは私たちが提案書を提出した後のタイミングで入社していますので(笑)。

(一同笑)

望月:本番にかけてのスパートでは、全力を尽くしましたよ!

「少し先の未来」にこだわり続ける本当の理由

ー正直言って、みなさんの話を聞いているとどうも……。

中島:キラキラしているように感じますか?

ーすみません、そう見えてしまいます。

中島:ですよね。「ユネスコでワークショップを開催した」「政府関係者とやりとりしている」と言うと、どうしてもそういったイメージを持たれがちです。でも、本当にそんなことはなくて。IGFでは、僕も小林さんもまったく知り合いがいないなかでの参加だったので、「僕たちの会社ではこんなことをしています!」と、どんどん話しかけていくようなこともしていました。でも、ふと気づくと2人でポツンと立って「みんなキラキラしているね」と言いながら行き交う人々をぼんやり見ちゃったりして。

ー心細すぎる(笑)。

小林:そうそう(笑)。寂しさと言うか、自分たちの存在の小ささを感じていましたね。

ーそこまでして、なぜ「少し先の未来」のルールメイキングにこだわるのでしょうか?

中島:メルカリは今、日本だけでなくアメリカでもサービスを展開しています。そしてミッションである「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」を実現するため、今後もさまざまな国でサービスを展開していくことが考えられます。そのなかで「明日もビジネスを続けていくために必要なルールをつくる」ことはもちろん大切ですが、一方で3年先、もっと言うと10年先のテクノロジー全般に関するルールをつくっていくことも必要なんです。

ー「テクノロジー全般」となると、必ずしもメルカリにとって良いことばかりでもないように感じますが?

望月:そのとおりですね。なかにはメルカリにとってやりづらくなってしまうルールができる可能性もあります。しかし、長期的に考えると、メルカリだけでなく、今後誕生するであろうサービスにとってプラスになる可能性も大いに秘めているんです。そもそも政策企画は、事業をより良くするための環境整備をする役割があります。メルカリがグローバルテックカンパニーを目指すのであれば、その方向に道が開かれていなければならない。そういう意味では、今Tech Govでやっていることが遅かれ早かれメルカリのさらなる成長にもつながると考えています。

中島:それに僕は、メルカリはそういった動きを率先してできる企業だと思っています。たとえ明日のGMVに直結しなくても、5年後には影響しているかもしれない。そうなったとき「なぜ、あのときに動いていなかったんだ」となりたくないんです。

巻き込むのは「会社の外」だけではいけない

ー現在、3人はどういった連携をしているのでしょうか?

望月:引き続き、中島さんと小林さんが研究の観点から文書に書かれている技術の整合性などを確認。そして、私が政策の観点から「どの人とどういったやりとりをするといいのか」を確認するなど、それぞれで補完し合いながら活動しています。

小林:でも、Tech Gov内だけでやりとりしていてもあまり意味がなくて。今後は社内から「何がトレンドなのか」「次にどんな分野が必要になりそうか」など情報をもっと吸い上げていかなければならないと考えています。そして「ここでもっとルールメイキングしたい」などがあれば、我々が議論の場に持ち込んでいく。そういった動きをできるようにしたいと思っているんです。

中島:それはやりたいですね。今、ちょうど良いバランスで政策領域と技術領域のコラボレーションができています。今後はもっと社内の他チームとのコラボレーションも増やしていきたいですね。

プロフィール

中島博敬(Hirotaka Nakajima)

R4D シニアリサーチャー、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、ISO TC307(ブロックチェーンと電子分散台帳技術に係る専門委員会)国内審議委員会委員、Cryptoassets Governance Task Force メンバー。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、同助教としてW3CやIETFにおいてHTML5やHTTP/2などの標準化活動に従事。専門はWebにおけるトラスト、プライバシー。2017年9月より現職。趣味はおいしいご飯とインターネットオペレーション。Twitterは@nunnun

小林茉莉子(Mariko Kobayashi)

大学院在学中にメルカリの研究開発組織「R4D」にインターン生としてジョイン。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程修了後、2019年R4D リサーチャーとして新卒入社。WIDEプロジェクト ボードメンバー、APrIGF(アジア太平洋地域インターネットガバナンスフォーラム) Multistakeholder Steering Group委員、ISOC日本支部インターネット標準化推進委員会(ISPC)委員。専門は無線LANやIoTのアクセスコントロール、インターネットにおける国際連携。音楽とおいしいごはんを日々開拓。

望月健太(Kenta Mochizuki)

日本の大学院とアメリカのロースクールを修了後、在ポーランド日本国大使館並びに在ジュネーブ国際機関日本政府代表部(WTO紛争解決手続担当)でそれぞれ2年勤務。帰国後、ニューヨーク州弁護士となり、2015年ヤフー株式会社入社。国際渉外を担当する唯一の社員として3年弱勤務後、2018年メルカリに政策企画参事としてジョイン。政策企画チームにて、国内外のルールメイキングに従事している。現IGFマルチステークホルダー諮問グループ(MAG)委員。

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