mercan

メルカリが「署名または電子署名での契約締結のご依頼」を公開した理由

2020-4-23

メルカリが「署名または電子署名での契約締結のご依頼」を公開した理由

    Share

    • X
    • Facebook
    • LinkedIn

    「お取引先様との契約に関しましても、社印の押印ではなく、権限者の署名による対応、または電子署名による対応とさせていただきたく、以下のとおりお願い申し上げます。」

    ── 2020年4月6日、メルカリグループでは新型コロナウイルスが感染拡大するなか、メンバーの安全を守る一環として、取引先のみなさまにこのようなお願いをしました。

    申し遅れました。私、メルカリCorporate Legalチームの大坪と申します。

    実はこの「署名または電子署名での契約締結のご依頼」文書、各チームで取引先の方々に送ってもらうために作成したものでした。ではなぜ、プレスリリースなどで大々的に告知することにしたのか?今回のメルカンで、その背景について書かせてください。

    メルカリLegalチームは1〜2名がローテーションで出社

    在宅勤務となる以前から、メルカリグループでは、判子の件数を減らし、全社的に電子署名を導入したい気持ちがありました。というのも、会社が大きくなるにつれ、判子が必要な書類も増加。判子に伴う押印・PDF作成・印紙貼付・原本保管・郵送などの負担が増えていたのです。

    しかしながら、電子署名の全社導入は、社内の業務フローを整えるだけでなく、取引先のみなさまのご理解とご協力がなければ進められません。電子署名自体が、世の中的にもそれほど浸透しているものではないこともあり、一部の部署の導入に限られ、積極的にごりごりと進められていませんでした。

    メルカリグループでは、社内文書は原則ペーパーレスではあったものの、国内の契約書については、ほとんどに判子が必要。2月19日に在宅勤務がスタートして間もないころ、私たちリーガルチームは、判子を押すために、メンバー間でローテーションしながら毎日1〜2名が時差出社していました。

    在宅勤務のスタートに伴い、判子ではなく権限者の署名とPDF交換での契約締結もご案内開始。ところが、3月になってもなかなか浸透せず。出社するメンバーの数を最小限にしていたこともあり、押印しなければならない書類は膨れ上がる一方でした。…そして、新型コロナウイルスによる影響も日に日に強まるばかり。

    4月に入り「こんなタイミングだからこそ、全社的に電子署名サービスを導入をしたい」「判子に代わる方法(電子署名、署名とPDF交換)をより推進できないか?」という気持ちは、チーム内で強まっていました。

    幸い、全社的に電子署名サービスを導入することはすぐに決定。しかし、判子に代わる方法での契約は、取引先の承諾があってはじめて可能になります。各チームの担当者にどうやって説明してもらえばいいのかと悩んでいたところ、

    「だったら、取引先の方々に署名や電子署名対応をお願いする文書を出すのはどうだろう?」

    というアイデアが出てきたのです。

    「リーガル名義」「あくまでも“お願い”であること」

    そうとなれば、早く動き出したほうがいい。さっそく、櫻井さん(メルカリ執行役員CLO)や末永さん(メルカリBusiness Legalチーム、マネージャー)、そして同じチームの品川さんと連携し、文書を作成。完成したのがこちらです。

    「署名または電子署名での契約締結のご依頼」文書

    メンバーやチーム単位で「判子以外の方法でやりとりしたい」と取引先にお願いすることは、説明コストが高く、どうしても心理的ハードルが高くなってしまうものです。

    しかし「これは会社としての方針です」と証明できれば、協力を仰ぎやすくなります。言ってしまえば、困ったときに「うちのリーガルがそう言っているんです」とできるようにしたかった。そのため「メルカリリーガルチーム」名義の文書にしました。

    ご存知のとおり、日本における「判子文化」はとても強く、大きな存在。それに対して「こうしたい」とだけ伝えて終わる内容では、取引先の方々を困らせてしまうだけです。電子署名や署名での対応をしていなかった方々にも理解してもらえるよう、文書で「なぜお願いすることになったのか」「そのためにどうしてほしいのか」「あくまでもお願いであること」がわかるように作成。そして、文書が完成。社内Slackでも周知しました。

    当初は、文書の周知をここで終わらせる予定でした。ところが、末永さんがこの文書を作成した旨をツイートしたところ、他企業のコーポレート担当者から「参考にしたい」という声が集まったのです。

    確かに、この文書を非公開にしておく必要はありません。むしろ、公開したほうが「うちもやろう」と他の企業の方々が動き出せるきっかけになるのではないか。そんな希望もあり、プレスリリースを出すことにしたのです。

    負債を残すような変更をしてはいけない

    文書の周知をしたからこそ、次に取り掛かるべきは、メルカリグループ内での判子に代わる方法の周知・サポートと、電子署名導入のための契約フロー構築です。

    これまでのメルカリグループは、一部チームを除いて判子を押すことが多く、署名や電子署名での対応は慣れていないメンバーがほとんどでした。そこでまず、各チームから多く寄せられた疑問に対する回答を、社内wikiにまとめていきました。以下が、寄せられた質問の一部です。

    ・ 誰が署名できるの?
    ・ 署名のPDF交換って、どうやってやればいいの?
    ・ 契印が必要な場合はどうすればいいのか?
    ・ 在宅勤務前にやりとりを始めた契約書はどうすればいいのか?

    電子署名や署名で対応できない取引先への対応についても、先にPDFをメールでやりとりし、在宅勤務が明けてから判子対応をご相談するなど、FAQに取り込んでいきました。

    そして、メルカリグループ側の契約雛形を、電子署名と判子のいずれかを選べるように修正。できるかぎり電子署名でのご協力をお願いしていますが、難しい場合は判子も選択可能としました。

    メルカリCorporate Legalチームのメンバー!

    問題なのが、契約フロー。これまでの契約フローは、紙に判子を押すことを前提としたものでした。もちろん、そのフローのまま、電子署名サービスを一気に導入することもできました。でも、そうすると契約フローが滞ったり、契約管理がおろそかになる可能性があり、将来に負債を残すことになってしまいます。過去、契約管理フローの不備による負債に苦しめられた経験のある我々チームとしては、そのようなことは絶対に避けなければなりません。

    契約フローの構築は、これからが本番。電子署名でも判子でも、どちらでも問題なく契約を進められ、適切に契約管理できるフローを、今も絶賛構築中です。

    「契約フローと意識」を変えていきたい

    本音を言うと、電子署名への移行はもっと強い反発を受けるものだと思っていました。

    しかし、この状況下だからか、「署名でいいですよ」と言ってくださる取引先の方々は予想以上に多く、驚きました。私が考えていたよりも「判子ではなく、サインや電子署名でOK」な文化が広がり始めているのかもしれません。

    とはいえ、「契約書と判子はセット」という意識の根強さはまだまだ健在。だからこそ、社内の契約フローだけでなく、意識も変えていく必要があります。今後も「判子以外の方法もあるよ」ということを、しっかり伝えていきたいと思います!

    大坪くるみ(Kurumi Otsubo)

    メルカリCorporate Legalチーム、マネージャー。渥美・坂井法律事務所、日立製作所法務部を経て、2019年3月にメルカリに参画。現在は、契約対応や組織法務の他、業務フロー構築や契約周りのオペレーション課題の解決などを担当。

    Share

    • X
    • Facebook
    • LinkedIn

    Unleash the
    potential
    in all people

    メルカリで働きたい!
    という人は採用サイトもご覧ください

    Join us !