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「今、メルカリができることは何か?」初となる寄付プロジェクト始動までを振り返る

2020-6-26

「今、メルカリができることは何か?」初となる寄付プロジェクト始動までを振り返る

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    「休業に追い込まれた飲食店で発生してしまう『廃棄される食品』を、メルカリを通じてなんとかできないだろうか?」
    「フリマアプリ『メルカリ』で出品されている子ども向け商品の手数料を値下げし、家での時間を充実させるのはどうかな?」
    「非対面で発送・受取ができるように、PUDOステーションなどの宅配便ロッカーが使える場所をアプリ内で表示するのはどうだろう?」

    これは、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、Slackを通じてメルカリ・メルペイメンバーが各々に発言していたものの一部です。「メルカリというサービスを通じて、少しでも、今困っている人たちの役に立ちたい」。このときはすでに全社で在宅勤務が始まっていましたが、メンバーの想いは同じ場所に集まりつつありました。

    そんななか始まったのが、寄付プロジェクト「Stay Home & Share Smiles」。このプロジェクトは、おうち時間の充実につながる出品物1つにつき10円を、メルカリが寄付するというもの。不要品を「必要だ」と思うお客さまへ出品する一方で、その出品数にあわせて、メルカリがお金を必要とする団体へ寄付する。メルカリが、マーケットプレイスとしてできると考えた社会貢献でした。

    メルカリにとって「Stay Home & Share Smiles」のような社会貢献は、今回が初めて。ではなぜ、「寄付」だったのでしょうか?今回のメルカンでは、寄付プロジェクトをリードした田原純香のインタビューと、メルカリ代表取締役CEOの山田進太郎、取締役メルカリジャパンCEOの田面木宏尚のコメントをお届けします。

    この記事に登場する人


    • 田原純香(Sumika Tabara)

      アクセンチュア、A.T.カーニーにて戦略コンサルタントとして複数のプロジェクトに従事。その後、インターブランドにてブランド戦略コンサルタントとして勤めた後、2018年10月にメルカリへ入社し、社長室のメンバーとして、さまざまな全社プロジェクトに携わる。現在は、ブランディング、及びESGのリードを務める。


    「この状況下で、メルカリにできることは何か?」

    ー寄付プロジェクト「Stay Home & Share Smiles」が実施されたのは、2020年4月27日〜5月27日。約55万人のお客さまに賛同いただき、総額4,691万円を新型コロナウイルス感染症に係る支援策に取り組む9団体に寄付することになりましたね。

    多くのお客さまに賛同いただきました。非常にありがたいことですよね。改めて、ありがとうございました。

    「Stay Home & Share Smiles」は、PJ-Trustというプロジェクトの1つでした。PJ-Trustとは、メルカリのミッションでもある「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」を構築していくうえで、お客さまとの信頼、そして社会における信頼をどう築いていくかを議論しアクションしていくプロジェクト。1チームだけでできるものではないので、PRや政策企画、リーガル、CS、コミュニティチームなどとともにタスクフォース的に立ち上げ、お客さまや社会からの信頼をどう構築していくかなどを議論していました。

    田原純香(Brand Managementチーム、マネージャー)

    そこで発生したのが、新型コロナウイルス感染症です。このような未曾有の事態において、「まさに今メルカリが企業としての社会的な存在意義を問われているのではないか」「この状況下でできる社会貢献とは何か」と考え、始まったのがこのプロジェクトでした。

    ー社内でも「なにかできることはないか」と、メンバー同士がSlackで話し合っている様子も各所で見られました。その機運は感じていた?

    感じていました。なので、まずはSlack上で「メルカリにできることは何だと思いますか?」と投げかけ、アイデアを募ったんです。あっという間に100近くのアイデアが集まり、その一つひとつをリーガルやCS、政策企画メンバーと一緒にレビュー。絞り込んでいったなかに「寄付」がありました。

    このプロジェクトではあえて、メルカリから直接寄付をする方法を取りませんでした。それはやはり、フリマアプリ「メルカリ」というサービスを通じた社会貢献をしたかったからです。緊急事態宣言も発令され、外出自粛になっていたなかで、フリマアプリ「メルカリ」を通じて不要になったぬいぐるみやオモチャを出品し、手にした誰かのおうち時間を豊かにする。そして、その想いをさらにメルカリが「寄付金」というかたちにして他の支援を必要とする団体にも届ける。それが、メルカリらしい貢献だと考えたんです。

    ー「サービスを通じて」が重要だったんですね。

    メルカリでは2019年6月に、ESGに関する考えや取り組みを発表しました。このESGにおいて最も重視しているのが、事業やサービスがあるからこそできる社会貢献に取り組んでいく点です。メルカリの売上だけを寄付することもできましたが、ESGに取り組む企業として「メルカリだからこそできる支援」を目指した結果でもありました。

    一番の難題は「寄付先を決めること」だった

    ーPJ-Trust自体、複数のチームを横断するように取り組んでいました。さらに寄付となると、協力を仰ぐべきチームが増える気がします。そのあたりの合意形成はどうでしたか?

    フリマアプリ「メルカリ」を通じたプロジェクトだったので、プロダクト開発やCS、リーガルのほか、経理、マーケティング、PR、IRといったチームとも連携。さらに、お客さまとのコミュニケーションにも関わるため、SNS運用などを担うコミュニティチームにも参加してもらっていました。本当に、多くのチームで一斉に動くようなプロジェクトでしたね。

    そして、私自身がESGに関わっているからこそ感じるのですが、多くの場合、企業内でソーシャルグッドなものを目指そうとするほど、事業サイドは数字やインパクトを気にします。もちろん、事業を大きくすることが会社のミッションなので当然のことです。一方で、企業として社会課題の解決に貢献することは、短期的な数字やインパクトでは計り知れない企業価値につながると思います。メルカリでもこのような考えは共通認識となりつつありましたが、それでもこれだけの複数チームを巻き込んで進めるとなると、やはり一筋縄ではいかなかったなと思います。このあたりのコミュニケーションには、時間をかけました。

    ーそこから、どうやってプロジェクトのドライブをかけたんですか?

    話し合いを重ねていくなかで、進太郎さん(メルカリ代表取締役CEO、山田進太郎)が「これは、会社としてやるべきこととしてやろう」と言ってくれたんです。思えば、あのときからプロジェクトがぐっとスピードアップしました。寄付のようなプロジェクトは、経営者が「やりたい」と思っているかどうかが大事。私も、進太郎さんがそう言ってくれたおかげで、自信を持って進めることができました。そして、お客さまへ向けてリリース。ほっと安心したい気持ちになりつつあったのですが、その先には「寄付先を決める」という一番難しい課題があって…。

    ー寄付先を決める?

    メルカリが目指しているのは、必要な人に必要なものが、必要な分だけ行き渡るものの循環を構築することで実現される豊かな社会。寄付プロジェクトではこの軸をずらすことなく、かつ公平性と中立性を意識していました。そのため、外部の専門家に参加してもらい、委員会を発足。専門家の方々を交えて話し合い、リストアップしたなかから寄付先を選ぶことになっていたんです。ところが、向き合うことになったのはリスト一覧ではなく、壮大な社会テーマでした。

    委員会に参加してくださった専門家の方々によると、行政・民間の支援が届いていないところはたくさんある。そして、それぞれ困っている。そのなかから、限られた寄付金でいかに世の中の課題を効果的に解決すべきなのかを考え、データをもとに洗い出していきました。

    ー新型コロナウイルス感染症への対策に関わる寄付ということで、「医療従事者へ全額寄付する」などにはならなかったんですね?

    もちろん「医療従事者へ全額寄付する」という意見もありました。しかし、専門家の方から、医療関係以外にも、実は支援を必要としていながらも政府などの公の機関の支援が行き届いていない分野が数多くあることを伺いました。また、メルカリの寄付金額を考慮すると、そういった支援が行き届いていない分野への助成の方が、より意義があるのではないかとの助言もいただきました。メルカリが寄付できる金額、寄付する意義、そして各団体のニーズの強さから、以下の9団体へ寄付することを決定しました。

    ・ 特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン:生活困窮者への支援
    ・ 一般社団法人つくろい東京ファンド:生活困窮者への支援
    ・ 特定非営利活動法人 フローレンス:子ども・生活困窮家庭への支援
    ・ 認定NPO法人Homedoor:生活困窮者への支援
    ・ 特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール:中高生へのオンライン相談・教育支援
    ・ 認定NPO法人カタリバ:子どもへの支援
    ・ 認定NPO法人D×P:10代への相談支援
    ・ 一般社団法人Colabo:10代女性への支援
    ・ 特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ:子ども食堂への支援

    メンバーの想いをひとつにできた

    ー今のお話が「Stay Home & Share Smiles」の本質ですよね。リリースなどでもっとメッセージを打ち出してもよかったのではないかと思うのですが?

    お客さまと取り組んだものとして、最終日にメッセージを出す予定はありました。けれど、当時は社会全体がパニック状態でしたし、なかでもメルカリの取引量の増大に伴う物流・運送業者などへの負荷増大の懸念なども報道されていたタイミングと重なっていました。そのため「今ではなく、しっかりとお伝えできるタイミングで伝えていけばいいよね」という判断になったんです。メルカリの本プロジェクトに対する想いをしっかりと届けられないまま時間が過ぎていく、その間はもどかしい気持ちでした。私以外のプロジェクトメンバーも、同じ気持ちだったと思います。

    今回の寄付プロジェクトについては、「メルカリが寄付した」という事実しか知らないお客さまも多いと思います。そのため、一部のお客さまから寄付についてお問い合わせをいただくこともありました。これに関しては、不測の事態だからこそ、いろいろなことを想定したコミュニケーションプランをつくっておけばよかったと反省しています。

    一方で、初回だからこそ手を抜かず、次に活かせるスキームをつくるつもりでプロジェクトを進めていました。緊急支援だからこそ、スピード命。アクションはもちろん、スキームの整理もできたので、次はもっと早く動き出せます。

    ー最後に聞きたいのですが、このプロジェクトにおける田原さんのモチベーションはどこにあったんですか?

    誰かがリードしないと進まない、そういうプロジェクトを推進していくことにやりがいを感じますし、難しいと言われることに挑むのが好きなのかもしれません。寄付プロジェクトは、メルカリにとって初めての取り組み。そして、社会を少しでもよくする方向へ進めることができるものでした。先ほどお話ししたように、当時のメルカリ社内では「何かできることはないのか?」の声と、すぐに動き出せない苛立ちのようなものがありました。少し時間はかかってしまいましたが、メンバーみんなの想いみたいなものをひとつのアクションに落とし込めてよかったです。

    メルカリでもESGのマテリアリティを定義していますが、これはあくまでも方針です。寄付プロジェクトをきっかけにどんどんアクションを起こし、企業としてのスタンスはもちろん、社内での理解醸成も進めていきたいですね。

    【メルカリ代表取締役CEO 山田進太郎コメント】

    メルカリは「新たな価値を生みだす、世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げています。今まで捨てられていたようなものを誰かが使うことで、誰かにとっての価値を新たに生み出だすことができる。メルカリはそんな「新たな価値」が生まれるマーケットプレイスを世界中で創っていきたいと考えています。

    今回のような未曾有の事態において、私たちにできることは何かを改めてミッションに立ち返り、メンバーみんなで何度も議論を重ねました。そして立ち上げたのが「Stay Home & Share Smiles」プロジェクトです。

    フリマアプリ「メルカリ」を通じて自宅での時間を少しでも豊かにするものを届けることによって、他の誰かの笑顔につなげていきたい。そしてその気持ちを我々が「寄付金」という新たな価値に変えて、支援が行き届いていない方につなげていきたいと考え、立ち上げたものです。

    結果として多くのお客さまにご賛同をいただき、支援が必要な方々への寄付を行うことができたことを大変嬉しく思います。

    メルカリはこれからも、社会の公器としての役割を果たしていきます。

    【取締役メルカリジャパンCEO 田面木宏尚コメント】

    今回は、メルカリとして初めての寄付プロジェクトということもあり、寄付スキームの設計や寄付先の選定、寄付金額の決定など、一つひとつが手探りでした。私自身もプロジェクトの定例会に参加し、メンバーと一緒になって議論をしてきました。

    振り返ってみると、よかった点と、今後より改善できる点があると感じています。具体的には、最も重要な局面である寄付先の選定において、外部の専門家の方を交えて、そのタイミングで本当に必要とされている分野がどこかをしっかりと議論できた点は、良かったと感じています。一方で、初めてのプロジェクトということもあり、慎重に議論を行った結果、進行のスピード感については課題が残りました。次回以降は、より早く必要な方へ支援ができるように、今回の反省点を活かしていきたいと思います。

    いずれにしても、今回このような寄付プロジェクトを完遂することができたのは、55万人ものお客さまが本プロジェクトに賛同してくださらなければ実現し得なかったことです。

    改めて、お客さまへの感謝をお伝えできればと思います。ありがとうございました。

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