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政府、VC、スタートアップが語った、withコロナ時代に求められる「新しいビジネス様式」 #thebusinessday4

2020-8-26

政府、VC、スタートアップが語った、withコロナ時代に求められる「新しいビジネス様式」 #thebusinessday4

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    ビジネス・コーポレート系業務に携わる方々が知見やトレンドなどを共有するコミュニティの創造を目指し、メルカリが2016年11月より企画・実施しているビジネスカンファレンス「THE BUSINESS DAY」。第4回目が7月2日にオンラインで開催されました。

    第3回目の開催から、約1カ月弱。今回は、昨今の新型コロナウイルス感染拡大により、多くの企業がリモートワークにシフトするなか、日本経済や企業のコーポレート戦略の今後の変化を見据え、「withコロナ時代の企業経営に求められる新しいビジネス様式」をテーマに実施。「スタートアップ」「働き方」「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」「コミュニケーション・ブランディング」「経営」の5つの領域を主題に、さまざまな分野の有識者をゲストに招き、対談・パネルディスカッション形式で開催しました。

    この記事では、「withコロナ時代のスタートアップに求められる『新しいビジネス様式』」と題したセッションの内容をお届けします。

    この記事に登場する人


    • 牧原秀樹(Hideki Makihara)

      衆議院議員(経済産業副大臣)。東京大学法学部卒業、ジョージタウン大学ロースクール卒業、弁護士、ニューヨーク州弁護士。平成15年経済産業省通商政策局通商機構部入省。平成17年9月衆議院選挙に埼玉五区より立候補、初当選。平成25年9月、二期目において安倍内閣環境大臣政務官就任。ペットの殺処分ゼロを目指す「牧原プラン」を立ち上げる。自由民主党副幹事長、青年局長、国会対策副委員長。衆議院経済産業委員会理事、環境委員会理事、議院運営委員会理事。平成29年8月、厚生労働副大臣。

    • 米良はるか(Haruka Mera)

      READYFOR株式会社、代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

    • 伊佐山元(Gen Isayama)

      WiL,LLC共同創業者兼CEO。1997年に東京大学法学部卒業後、日本興業銀行に入行。法人営業、及び市場業務に従事。2001年よりスタンフォード大学ビジネススクールに留学し、2003年より、米大手ベンチャーキャピタルDCMのパートナーとして、シリコンバレーと日本を中心に、ベンチャー企業の発掘と投資・育成に注力。2013年にWiLを創業。日本にベンチャー精神を普及させるため、日経産業新聞、日経電子版、東洋経済オンライン等メディアに多数寄稿している他、経済産業省や文部科学省をはじめ、多くの政府委員や有識者会議のメンバーとしてもベンチャー振興の提言を続けている。

    • 小泉文明(Fumiaki Koizumi)

      株式会社メルカリ 取締役President(会長)。早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2006年よりミクシィにジョインし、取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄する。2012年に退任後はいくつかのスタートアップを支援し、2013年12月株式会社メルカリに参画。2014年3月取締役就任、2017年4月取締役社長兼COO就任、2019年9月取締役President(会長)就任。2019年8月より株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長兼任。

    スタートアップは二極化、働き方は引き続き課題

    小泉:「THE BUSINESS DAY」も4回目を迎えまして、今回はwithコロナ時代をどうサバイブしていくかが大きなテーマです。最初のセッションでは“スタートアップ”にフォーカスを当てていきます。このwithコロナ時代、スタートアップが歩みを進めていくなかでポジティブな面もあれば、ネガティブな側面もあります。そこで、今回はさまざまな角度から議論していきます。

    さっそくですが、米良さんにスタートアップの経営者として、会社の実情と課題について伺いたいです。資金や人などの問題もありますが、今会社として一番課題だと感じている部分はどこでしょうか?

    米良:スタートアップも二極化が進んでいるな、と感じているところです。READYFORの事業領域である“クラウドファンディング”は、ある意味「資金調達のDX化」とも言えます。そうしたDX領域で事業を展開しているスタートアップは、10年後に起きる未来を手に入れられた、と思っています。

    画面中央上から牧原秀樹衆議院議員、米良はるかさん(READYFOR)、伊佐山元さん(WiL,LLC)、小泉文明(メルカリ)

    米良:ですが、すべてのスタートアップがそうではありません。特に新型コロナウイルスが発生する前は景気が良く、資金調達の環境も良かったこともあり、スタートアップの数も増えました。ただ、新型コロナウイルスが猛威を振るう世の中は、誰も予想していなかった。そのため、状況が一変してしまったスタートアップもあると思います。

    会社として課題だと感じているのは「働き方」ですね。まだまだ迷う部分があります。これはスタートアップに限った話ではないですが、これまでREADYFORもメンバーの心理的安全性を保つためにオフィスで一緒に働くことにこだわってきました。しかし、新型コロナウイルスによってリモートワークが当たり前となり、“会社”というコミュニティのあり方を改めて考えさせられています。

    小泉:逆に言えば、READYFORはそういった課題をわかりつつ、今後について走りながら考えている最中って感じなんですかね。

    米良:そうですね。働き方に関しては、正直言ってみんなが同じ空間で働く必要性は想像していた以上にない(笑)。若いメンバーが多いチームなので、フルリモートに関してもやろうと思ったらすぐできてしまったんですよね。ただ、そういった切り替えがうまくいっていない声もよく耳にします。働き方や資金調達もそうですけど、このDX化の流れについていけるかどうか。それによって生じる格差は、今後の課題になっていくのだろうなと考えています。

    資金調達のリモート化に戸惑うVC

    小泉:伊佐山さんに伺いたいのですが、アメリカではいろんな経営者が今後の働き方の指針を示しています。例えば、Twitterは早々に希望する社員は永久に自宅勤務でOK、ということにしました。GAFAを中心としたテックジャイアントの動きは見えているのですが、もう少し規模が小さいアメリカのベンチャー企業などで起きている課題、もしくはインプットしたらおもしろい事例あれば教えていただきたいです。

    伊佐山:GAFAに代表されるテックジャイアントはある意味、マーケティング的に「永久にリモートOK」とセンセーショナルに発信し、若者の心を掴んでいます。でも、実際のところはTwitterやFacebook、Googleの幹部たちはけっこう困っているようなことを言っています。

    今回の新型コロナウイルスによって、合理的に判断できる仕事に関してはリモートでもできる。とはいえ、IT企業だからメンバーがリモートで世界中に散らばって、どこでも仕事できるのかといえば、そうではない。人が人として社会で生きる意義の1つには、社会性、人と交流するという行為が必ずどこかにないといけない。そういう意味では、どんな規模の会社だろうと、人が集まってやるべきこと、リモートでやるべきことが明確に分けられたのかな、と思っています。

    伊佐山:ただ、米良さんが仰っていたように、多くの人が「意外とリモートでもできる」と気づき、Zoomを使ってみて「毎回、会議室に集まっていたのがバカらしいね」と感じる人が増えていることは事実。そこは「ワークスタイル2.0」という新しい時代になったときの新しい発見かもしれませんね。

    小泉:自分はエンジェル投資で複数のスタートアップに投資しています。今後、オフィスの雰囲気やプロダクト完成度と同じように、組織やカルチャーも投資の判断基準の1つになる気がしているのですが、いかがでしょうか?

    伊佐山:若い起業家の会社に対面で会わずに投資できるのか。ここは今、シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)の間でも話題になっています。結局のところ、セコイア・キャピタルやアクセル・パートナーズなど大手老舗VCになればなるほど、「オンラインでの投資は難しい」という結論に至っている。シリアルアントレプレナー(連続起業家)で昔から知っている人に対しては、「この状況下で会えないから、Zoomでピッチを受けて投資の判断を下すことはできる」。けれど、「一度も会ったことがない人にZoomでピッチを受けて投資の判断をするのは流石にできない」となっているんです。

    一方で、若い人たちは「こういう時代だから、今後はオンラインで判断して投資すればいい」とも言っている。我々もそこを議論しましたが、数字だけ見て投資できる会社はレイターステージぐらいで、起業家の人物評価要素が強いシード・アーリーステージの会社に関しては、今のツールだけで企業文化や会社の雰囲気、経営者のチーム力が判断できるのかと言われると、ちょっと難しい…。知っている会社しか見ていないので、当然、投資のペースは鈍化しています。それに、これが長引くとしんどい、というのが正直なところです。

    VC産業が小さい日本は、政府が手厚く保護すべき

    小泉:次は牧原先生に伺いたいのですが。資金もそうですし、働き方もそうですが、withコロナ時代の現状と課題をどう見られていらっしゃいますか?

    牧原:一番難しいのは「先が見えない」ということです。わかりやすい例が、東京オリンピック。最終的には1年延期を決めましたが、どこへ行っても「本当にオリンピックできるの?」と聞かれます。実際に開催できるかどうかは我々にもわからないですし、開催できるようにするとしか言えません。ついこの間までは「今年はオリンピックをやります。7月を楽しみにしておいてください」と言えたものが、1年延期を決めても「来年はオリンピックがあります」と確信を持って言えない時代に突入してしまいました。

    政府としては、日常の政策と緊急の政策の2つがあります。少なくとも後者は“先の見えなさ感”にすごく悩み、2020年度第2次補正予算案に予備費で10兆円が盛り込まれる、という状況になったんです。批判もいただきましたが、まずは資金繰りの支援をして、企業が突然のコロナ不況によって突然死する事態を絶対に防がなければいけない。

    牧原:それから、もともと日本は世界の中でも雇用不足が生じている、極めて異例の国。今年になって急激に雇用情勢が悪化しています。現在、休業者の方がもう400万人ぐらい予備軍がいる話もあるなかで、どうやって雇用を確保していくのか。血眼になって、この対応方法を模索しているところです。そして、DXも含めた、次の時代にどう移行していくか。そこで、中小企業に向けた「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「持続化補助金」という3つの仕組みをつくりました。

    小泉:セーフモードから入っていって雇用を守りつつ、DXの部分で戦略的にお金を払うようにしていく、という感じですよね。自分もいろんな施策をニュースで見るのですが、アメリカでスタートアップ業界向けの施策として何か良い事例ってあったりするのでしょうか?

    伊佐山:残念ながら、画期的な事例はなく、手探りな状態が続いていますね。アメリカは緊急融資制度を早いタイミングから実施したのですが、これが先着順で、メインバンク経由で申し込むというものだったんです。もともとは、資金に困っているスタートアップや新型コロナウイルスの影響で売上が99%減という弱者を救済するためにつくった制度。しかし、メインバンク経由での申し込みにしたところ、資金面に問題がない会社に融資をしてしまう。結局、融資をあまり必要としていない会社ばかりに資金が行き渡り、本当に資金が必要な会社へはぜんぜん行き渡らなかったんですよね。

    なぜ、そうなったのか。話を聞くと財務状況が厳しい会社には優秀な財務部長やCFO(最高財務責任者)がいないから書類の提出が遅れてしまう。逆に財務状況にも余裕があり、人がたくさんいて、事業もあまりダメージ受けていない会社はすぐに書類が提出できるんですよね。「緊急で資金は必要ないけど一応、緊急融資制度に適用されるから出しておこう」といって書類を出し、緊急融資をしてもらっている。スタートアップからすると「必死になって資金繰りしなければいけないのに、ふざけるな」という感じですよね。

    伊佐山:アメリカですら、金融の仕組みがDX化されておらず、アナログで運用した結果、本当に資金を必要としている人に資金が回ってない。金持ちばかりがさらに良くなる「マタイ効果」に陥ってしまっているわけです。シリコンバレーにも気の利いた政策があるわけではなく、制度はイマイチで、資金を受け取れなかった会社の方が多くあります。

    ここに関しては、やはり民間企業のVCが世の中に必要とされているけれど、苦しい状況にあるスタートアップを救済・支援するのが、シリコンバレーでは一般的なんですよね。ここで議論されるのは「どういったスタートアップを救うのか」。すべてのスタートアップは救えないときにペインキラー(痛み止め)か、ビタミン剤か、という話があります。

    ペインキラーはないと困るけど、ビタミン剤はなくても困らないもの。ビタミン剤にカテゴライズされてしまったスタートアップは、残念ながら景気が良くなってからもう一回やり直す、という難しい判断を下すのがアメリカのVCです。一方、これから必要とされるスタートアップに関しては、既存の投資家が基本的にはサポートする。もしくはサポートできる人を連れてくる。ここを仕組み化されている点が、アメリカと日本ではだいぶ違う。

    日本はVC産業自体がまだ小さいので、なかなかそれができない。ですから、政府が手厚く保護しないと、スタートアップ産業自体が非常に盛り下がってしまう。それを避けるために、日本政府の策は非常に大事だと思っています。

    コロナを機に政府、大企業、スタートアップが連携する流れに

    小泉:withコロナ時代をスタートアップはどうサバイブしていくか。今回は新型コロナウイルスによって、新しい生活様式や消費の変化が起きており、クラウドファンディングも新しいお金の流通をつくり出しているのではないか、と思っています。米良さんから見て、今後の事業創出のキーポイントは、どこにあると考えていますか?

    米良:READYFORは、2011年の東日本大震災の直後にスタートしたサービスです。日本のクラウドファンディングの歴史は震災など、有事の際にスピード感を持って一定の資金を提供する。その後、政府の補助金などがあると言う意味では、補完的な役割を担っています。また、新型コロナウイルスで多くの人が大変な状況に陥ったときに「クラウドファンディングがあるかもしれない」と選択肢に入れたのは、すごく良かったです。

    READYFORの事例で個人的にもすごく良いと思ったのが、日本商工会議所さんとの取り組み。「地域飲食応援クラウドファンディング『みらい飯』」というネーミングで行っている取り組みなんですが、これは各地の商工会議所がクラウドファンディング実行者となり、ページを作成・支援金募集を呼びかけ、集まった支援金を参加飲食店に配分し送金するというものです。まさに地域のハブみたいな人たちが、DXについていけないような人たちもサポートする仕組みをスピード感持って実現できました。

    そういう意味でも、既存の仕組みのなかできちんと機能し、社会を支えているような人たちと繋がってエコシステムをつくっていくことが求められることなのかな、と。今までスタートアップは“村社会”みたいな感じもあったのですが、今後はより社会を支えているプレイヤーたちと一緒に取り組む力が問われていくようになると感じました。

    米良:また、政府の助成金も規模の大きな予算案をつくるなど多大な苦労もあったと思いますが、まだ現場に行き届いていない地域もある。そういうところは、民間企業と一緒にデータ連携したり、システム連携したりすることによって、困っている人たちにいち早く届けることが実現できるのではないか。それはまだ課題として残ったポイントなので、改めて政府とスタートアップが連携して必要なところにお金や情報を届けることを実現していく。未来から今を見たときに、新型コロナウイルスがそのきっかけになるタイミングだったね、と言えるようになればいいですよね。

    小泉:今、米良さんから牧原さんに“ラブレター”のような政府に対する要望がありました。政府サイドから、もしくは日本の可能性を最大限に高めていくうえで、スタートアップに求めるものはどういったことがありますか?

    牧原:新型コロナウイルスで、反射神経とリスクマネジメント能力が問われました。“反射神経”は、例えば飲食店でお客さんが来ないときに、デリバリーを始めてみるといった感じです。そういう反射神経は従来の頑固オヤジ系のラーメン屋では絶対できない。三密はダメと言いながらも、ずっと三密の国会をやっていた政府もそうです。そうした反射神経はないので、スタートアップの力は必要です。

    米良さんが仰っていたように、総額2.7兆円の持続化給付金プロジェクトをやったのですが、どういった方にどうやって届いているのか本当によくわからないんです。こちらは一方的に申請をいただき、すぐにお支払いする仕組みをなるべく早く構築したつもりなんです。しかし、「まだ届いていない」「不正申し込みの人たちがもらっている」といった声もありまして。「必要としている人に届く」という、きめ細かな制度ではまったくありません。だからこそ、今後はしっかりやっていかなければ、と思っています。

    牧原:また、リスクマネジメントは反射神経にも関わるんですが、2月頃からマスクが国内でほとんどないことに気づき“マスク不足”に陥ってしまった。今まで3.5億枚ほどの需要だったマスクが突然15億枚くらい需要が急増したんですね。しかし、国内で生産しているマスクは9,000万枚だけで、あとはすべて中国で生産していた。そのとき、補助金をつけてマスクの生産ラインを増設してもらうことをやって、シャープやユニクロ、ミズノのマスクなど企業がマスクを生産する例があります。一つの産業だけではなく、いろんなところで対応できるような能力が必要ですが、本当はスタートアップと大企業が組んで、そういう視点を大企業にも注入していただければ、非常にありがたいです。

    中途半端な答えしか言わない経営者は、戦時をサバイブできない

    小泉:個人的にも伊佐山さんに聞いてみたいことがありまして。先ほどの反射神経の話のように、リーダーシップの取り方もすごく問われています。特にアメリカを見ていると、新型コロナウイルスとは別かもしれませんが、Black Lives Matterの問題など、ソーシャルメディアで、企業のトップが自分たちのスタンスを示さないことに対して従業員が反対の声を出すなど、トップとしてのリーダーシップのあり方が難しくなってきたかなと思っていて。伊佐山さんから見て、今後スタートアップ業界でリーダーシップのあり方がどう変化していくか、現場を見ていて何か感じることはありますか?

    伊佐山:スタートアップも大企業も、今は戦時のCEOである必要があるので、難しい判断をしないといけない。全員にいい顔をして八方美人でやる経営ができない状態になっています。例えば、人種差別の問題や貧富の差が広がっていることに対して、会社はどういうスタンスで、どんな対応をとるのか。CEOもしくは経営層にいる人たちの価値観が、その組織自体の存続を揺るがすような時代に生きていることは確かです。

    残念ながら、全員から賛同を得ることはあり得ない。だからこそ、批判されること、SNSで炎上することに対するリスクに耐えられるだけの胆力を経営者が持てるのかはすごく大事です。中途半端な答えしか言わない経営者は、おそらく難しい判断ができない人なので、今のような戦時では経営にいるべきではない。そういう人を活かせるのは、平時の場合です。平時であれば、全体の調和が取れるリーダーシップがすごくウケるのですが、今みたいに反射神経で動かないといけないときは必ずミスもする。そのときに「これは正しかったんだ」となれる強い意志を持ったCEOでなければ、なかなか難しい。

    個人個人が自分で考えて行動し、起きたことに対して自分で責任を取る。そういう当たり前のことをやる社会が当面は続く。調整型で何となく全員の顔色を見ながら物事を進めている日本の多くの企業や組織は戸惑う時代に入ったのかな、と思います。

    失敗してもいいから、誰かがリスクを取って判断し、失敗したらすぐに軌道修正するような世の中の流れに適応していく経営者、もしくは個人が増えていかないと大変ですね。未来予測できなくなっていて、「あなたの将来は大丈夫ですよ」という時代ではなくなった。本当に個人の生き方や、スキルの身に付け方などすべてが変わっていかなければいけない。それぐらいの大きなきっかけになっていますね。

    小泉:自分も経営していて感じることは、これまでの会社が“上”で社員が“下”というタテの強制力がある会社の経営でした。新型コロナウイルスをきっかけに、社員は対等な存在で“ヨコの関係性”がないと立ち行かなくなる時代へ日本もついに突入。とても大きな価値観の変化を感じています。

    生き残れるのは、変化できる者

    小泉:では残り時間も短くなってきたので、最後にみなさんからコロナ禍におけるスタートアップに期待するものや、今後こうしていきたいという想いがあれば一言ずつお願いしたいです。米良さんからお願いします。

    米良:今こそスタートアップや大企業、政府それぞれの枠で話すのではなく、どうやって社会を変革していかなければいけないか、と話し合うべきです。そのために今、お互いにどうやってつながっていくのかを話し合えるチャンス。今日は立場が異なるみなさんと話ができたので、このセッションをきっかけに何かを実施する際にパートナーとして協力し合える関係になっていきたいです。ありがとうございました。

    伊佐山:こういった状況下では「危機はチャンスだ」という標語が流行るわけですが、これを本当にチャンスにするためには、「自分の会社は何のために存在しているのか」に加え、社会に顕在化した課題は何かを真面目に考え、一つひとつ解決していく。そういう課題解決ができるスタートアップが増えないといけない。単純に「景気がいいから儲かってすぐIPOできる」というノリでスタートアップすることができなくなったことに関しては、私は非常にポジティブに捉えています。

    今回、特にリモートで仕事しなければいけないことを強いられてますから、考え方によっては採用のグローバル化もできる。今まで採用は「会社に面接に来てください」が前提で、地方の人または外国人にとって不利だったわけですが。リモートが当たり前になったことで、採用可能になった。採用レベルで多様性を実現できる世の中になりつつあるんです。

    伊佐山:また、VC業界は資金調達などいろいろ悩んでいます。どの国のVCもオンラインで投資判断しなければいけなくなる。今までは直接会うことに価値があったのですが、それは当面できない。もしかしたら、資金調達ですらグローバル化する可能性もある。それを考えると面白い変化が起きるかもしれません。スタートアップ関係者もそうですし、大企業で新規事業やろうとしている人にとっても、この危機をチャンスにするマインドセットを持ち、アクションを起こしてほしいです。

    牧原:「進化論」を唱えたダーウィンの言葉に「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」とありますが、まさにその通り。ピンチを嘆いて、誰かのせいにする発想もわからなくないですが、それでは何も生まない。ピンチをチャンスに変える、また変化をできるのは柔軟な発想力を持ったスタートアップの人たちだと信じていますので、今後も大きな期待を持っています。

    小泉:ありがとうございます。やはり課題が顕在化したタイミングで、大きなメガスタートアップが出てくるのはそうですし、今はそういう時代になってきています。ぜひ一つの大きなムーブメントが起きることを期待し、自分たちをはじめ、みなさんで頑張っていければと思っております。それではこのセッションを終わります。登壇者のみなさん、どうもありがとうございました。

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