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「役目を終えたものを、寄付金に」メルカリがアプリ機能で表現した、新たな社会貢献

2020-10-8

「役目を終えたものを、寄付金に」メルカリがアプリ機能で表現した、新たな社会貢献

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自然災害など、困難に直面する方々へ“常に”支援の手を差し伸べられる仕組みをつくれないか?例えば、フリマアプリ「メルカリ」内の売上金を、お買い物だけでなく寄付にも使えたなら──。

そして2020年9月1日にリリースしたのが、新機能である「メルカリ寄付」。

メルカリ寄付は、アプリ内の売上金などからチャージしたメルペイ残高を「寄付金」に変え、災害支援や環境支援、文化支援など、希望する自治体や団体へ寄付できるというもの。担当したのは、メルカリ政策企画チームの高橋亮平と、メルペイ経理チームの佐野京子、メルカリConversionチームの岡本明朗。

さっそく話を聞いてみると、実はこのメルカリ寄付、構想自体は2018年夏頃からあったとのこと。「メルカリで寄付できる」意義の追求、限られた開発リソース、新型コロナウイルス…彼らがメルカリ寄付をリリースするまでの日々を聞きました。

※撮影時のみ、マスクを外しています。

この記事に登場する人


  • 高橋亮平(Ryohei Takahashi)

    明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、中央大学特任准教授等を経て、2018年6月にメルカリ政策企画チームへジョイン。AERA「日本を立て直す100人」に選出。政策企画ブログ「merpoli(メルポリ)」編集長も務める。

  • 佐野京子(Kyoko Sano)

    慶應義塾大学経済学部卒。10代で公認会計士試験に合格し、在学中からPwC税理士法人にて勤務。税務申告書作成・税務コンサルティング業務に従事。2019年1月にメルカリ経理チームにジョイン。その後、メルペイ経理チームに異動し、税務バックグラウンドを活かしつつ、新規サービスの会計処理の作成・会計システムの設計などを行う。

  • 岡本明朗(Akio Okamoto)

    同志社大学経済学部卒。レバレジーズ株式会社に新卒入社し、Webディレクターとして転職メディアの開発ディレクションや新規メディアの企画・立ち上げなどを行う。2018年1月、メルカリにプロダクトマネージャーとして参画。UXチームのプロジェクトオーナーや継続率、会員登録率などのPJを担当し、Value Awardsで”All for One”賞を受賞。現在はConversionチームにて購入/売却体験の改善を担う。Twitterは@akindoru0922


「メルカリだからできる寄付」とは何か?

ー「メルカリ寄付」のアイデアって、いつごろできたものなんですか?

高橋:メルカリ寄付のアイデアは、2018年夏ごろからありました。僕は2018年6月に入社したのですが、その年は西日本豪雨など、自然災害も多かったんです。他の企業が支援策を打ち出すなかで「メルカリでもやったほうがいい」と強く感じました。小泉さん(2018年当時はメルカリ社長、現在は取締役会長の小泉文明)に相談したところ、「メルカリだからこそできる寄付にしたい」と言われ、どのようなスタイルにするかを模索し始めたのです。

高橋亮平(メルカリ政策企画チーム)

高橋:もう1つ、別の思惑もありまして。僕はメルカリ政策企画チームとして、自治体や政府との架け橋をつくることがミッション。なので、自治体と連携して進められるプロジェクトにもしたかった。その1つとして、自然災害支援のような仕組みがあれば、自治体・メルカリともにメリットがある。メルカリ寄付にとって、自治体は大事な存在でした。

ー小泉さんから言われていた「メルカリだからできる寄付」というのは?

高橋:メルカリのミッションは「新たな価値を生みだす、世界的なマーケットプレイスを創る」。ならば、メルカリを使うお客さまにとって、役目を終えたものを売り、その売上金で買い物をするように気軽に「寄付」できるような仕組みをつくれないか?と考えました。そうすれば、寄付自体が身近になり、困難に直面する方々へ常に支援の手を差し伸べることができる。2011年に起きた東日本大震災を自治体職員として経験したことも踏まえ、メルカリ寄付の原型である「アプリ内の売上金を寄付金に変える」というアイデアが誕生したのです。

とは言え、これは「寄付」です。お客さまのお金に関わることでもあり、経理・Legalチームの協力は必要不可欠。お金・法的手続きをある程度かためてから、プロダクト開発チームへ正式に打診する流れで進めていきました。

メルカリで社会貢献できる=新規出品のきっかけになる

ーでは、経理・Legalチームへの相談は、わりと早い段階から?

高橋:そうですね。アイデアがある程度かたまり始めた2019年10月には、経理チームに「メルカリで売上金を寄付しようとすると、経理上どうなりますか?」と相談。それ以降、佐野さんがメルカリ寄付開発のメンバーとして参加してくれることになったんです。

佐野:寄付って、会計と税務での論点が多いんです。開示上で寄付がどのように取り扱われるのが良いか考えたり、寄付先や法的スキームによってはメルカリの納税額が変わったり。そういった問題をどう調整するか、高橋さんやほかのコーポレートメンバーを交えて、半年ほどかけて話し合いました。一時は寄付機能のために法人格をつくるアイデアもあったんですよ?

佐野京子(メルペイ経理チーム)

ー法人格ってことは、グループ会社が増えていたかもしれなかった?

佐野:そうです。さすがに大掛かりすぎると却下しましたけれど(笑)。現実的な案として、アプリ内のいち機能として実装することになりました。その後、私はメルカリ経理チームからメルペイ経理チームへ異動したので、メルカリ寄付でメルペイに関係する相談事項があるときは、ほかのメルペイメンバーへつなぐこともできました。

高橋:また、リーガル面では、アプリ内で寄付を行う仕組みを検討してもらわなければならず、金融庁にも報告しなくちゃいけなくて。そのための法的整理や自治体と連携して進める制度設計もつくりました。Legalチームには、本当に何から何までお世話になりました。でも、リーガル面でOKとなっても経理面ではNGだったり、税務面でもチェックが必要になったり。新しい観点が入るたびに議論が巻き起こり、スキームづくりは足を止めるシーンも多かったですね。

ープロダクト開発としては、寄付機能を実装すること自体はOKだったんですか?

岡本:初めて寄付の話を聞いたとき、寄付先・メルカリ・お客さまにとってそれぞれWin-Winの関係にある、価値ある取り組みだと思いました。また当時、メルカリのプロダクト全体のOKRとして掲げていたのが「All for Listing」。つまり、メルカリで出品してくださるお客さまを増やすことを第一目標にしていたんですよね。「メルカリで社会貢献できる」というキッカケが新しい出品につながるならば、寄付プロジェクトはやる意義がある。そこで、僕がプロダクトマネージャーとして2019年11月にチームへ参加し、プロジェクトを進めることになったんです。

高橋:メルカリは民間の企業ですから、事業KPIに直接影響する施策こそ優先度が高まります。メルカリ寄付もCSRやESGの一環としてではなく、まさに新規出品につなげる仕組みとして検討し始めていたところなので、いいタイミングで機運が巡ってきたんですよね。

メルカリ寄付に立ちはだかった「開発リソース不足問題」

高橋:メルカリ寄付は自治体と連携していたこともあり、リリース日が決まっていました。なので、わりと短期間で開発する必要がありました。

岡本:開発においては、まず「メルカリ寄付によるお客さま体験」を整理するため、カスタマージャーニーマップを作成。3つのアイディアに落とし込んだ後、進太郎さん(代表取締役CEO、山田進太郎)をはじめとした関係者に議論に参加してもらい、具体的な方向性を絞り込んでいきました。要件を固めPJメンバーとの合意形成を経て、あとは開発を進めるだけ…だったんですけど。僕らの前に大きく立ちはだかったのは「開発リソース不足」でした。

岡本明朗(メルカリConversionチーム)

ーつまり、開発リソースが限られていた?

岡本:そうです。会社としてプライオリティは高いけれど、開発リソースは多く割けない。メルカリ寄付は、期限があるなか最小限のリソースで実現できるスキームを考えなくちゃいけなかったんです。

メルカリ寄付では、メルペイが展開しているAPIを利用しています。ところが、もともと外部サービス向けのAPIだったので、「社内で実装するとどうなるのか?」などたくさんのことを調査・検証しなければならなくて。ひたすらAPI仕様書を読み込み、メルカリ寄付の仕様に落とし込んでいきました。この作業はエンジニアリングの観点も必要で、大変でした。

佐野:いかに最小限のリソースで開発するかは、最後まで悩みましたよね。最初は「出品時に”売上金を寄付する”にチェックを入れたら、売却後に寄付される」みたいな機能も考えていたんです。でも、そうなるとメルカリ・メルペイ双方で開発したり、取引を会計帳簿に記録するためのアカウンティングコードの設計・実装をする必要もあり…。

岡本:そうそう。結果的に、今のスキームに落ち着きました。その後なんとか開発リソースを調整でき、一気に開発を進めていった感じです。

高橋:僕、これは奇跡のスキームだと思っています。

開発リソース不足問題は、メルカリ寄付に限った話ではありません。でも、リソース不足問題に屈せず、プロダクト開発に向き合い続けていました。岡本さんや佐野さん、Legalチームなど本当に多くの方々と知恵を出し合い、やりきったおかげでスキームが固まってからおよそ3ヶ月ほどでリリースにこぎつけたんです。

メンバー全員が思った「なぜ毎日問題が起きるんだ!」

高橋:あとあれですね、とどめに新型コロナウイルスが…。

ーまだ何か起きるんですか?

高橋:はっきり言って、このプロジェクトは「なぜ毎日新たな問題が起きてるの!」状態でした。ご存知のとおり、今年2月からは新型コロナウイルス感染拡大の影響で自治体の業務が停止。連絡が途絶える事態に陥りました。「しばらくしたら連絡があるだろう」と考えていたら、1ヶ月以上連絡が来ない自治体もあったりして。

岡本:このときは、リリース日にあわせて開発を急ピッチで進めているところでした。確認したい内容に対する返事がこなくて「どうして止まってるんだ!?」という気持ちは募りましたね。そして、連絡が滞る雰囲気を察知していたなら先に共有してほしかった…。

高橋:そこはもう、各所と連絡を取り合っていた僕が土下座するしかない!

岡本:いやいやいや(笑)。新型コロナウイルスという、避けようのない状況だったので仕方がないことは理解していましたよ。それ以外にもリリース直前になってメルカリからメルペイへの接続が途切れるほか、想定外のエラーが発生する問題が頻発して、もうみんな必死な状態でした。

佐野:あと、お客さまへの公開日前日に本番環境でテスト用として寄付した金額を取り消さなきゃいけない事態が発生し、バタバタすることもありましたよね?

岡本:プロダクト開発では、開発環境と本番環境の2つが用意されています。通常なら開発環境で問題なければ「OK」とし、本番環境に反映。しかし、メルカリ寄付はお金に関係することなので、本番環境でもテストしていたんです。幸い問題ないことがわかったのですが…今度は契約の関係上、お客さま公開日以前に本番環境下で寄付金が発生していることが問題だとわかりまして。

ーつまり「ゼロ円」状態に戻さなくちゃいけなかったんですね。結局、どうやって解決したんですか?

岡本:メルカリ寄付の機能公開は9月1日。それ以前に本番テストとして寄付したお金はどういう扱いでどのように取り消したらいいのか?Legalチームをはじめメルペイの開発チームに相談し対策案を用意し、ギリギリで解決させました。

「寄付と言えばメルカリだよね」と言われたい

ー無事にリリースへ至りましたが。メルカリ寄付へのモチベーションはどこにあったんですか?

岡本:やはり「お客さまが出品するキッカケを増やす」ですね。実は、僕の奥さんはメルカリをやっているものの、出品はしていなかったんです。理由を聞くと「梱包や発送が面倒だから」(笑)。しかし、「売上金を寄付とかに使えるなら出品するかも」と以前から話していたんですよね。この意見は奥さんだけでなく、ほかのお客さまにも当てはまると思っていました。それを実現したいという気持ちが、僕の原動力だったんです。

佐野:私の場合、ぶっちゃけると「本当にリリースできるのかな?」とスキームが固まるまでは思っていました。

(一同笑)

佐野:でも、岡本さんがチームに加わり、アプリ内の画面遷移図を見せていただいたとき、初めて「実現できるんだ」と思えたんです。机上の空論に終わりそうだったものの輪郭が見えたとき、気持ちが高まったと言うか。それがモチベーションになっていました。

高橋:僕、もともとは政治家だったんです。でも、世の中を良くするには、政治や行政だけの力では限界がある。そこで、民間企業のなかで世の中を良くする仕組みをつくりたくてメルカリに入社しました。メルカリ寄付は、世の中を良くするきっかけづくりの1つだと思っています。進太郎さんがよく「社会の公器に」と言うように、不要なものを売買するだけでなく「社会的な課題を解決できる」ようにしたい。メルカリ寄付はスモールスタートですが、社会の公器を目指すうえでは、とても重要な機能です。

ーちなみに、先ほど岡本さんのご家族が「寄付できるなら出品するかも」と話されていたとのことですが、リリース後の反応は?

岡本:メルカリ寄付、使っています!ただ、奥さんではなくてお義母さんですけれど。でも、以前まではメルカリで買い物をすることがメインだったお義母さんですが、メルカリ寄付をきっかけに出品するようになってくれました!

佐野:なにはともあれ、いい話!(笑)。今は自治体のみですが、もっと連携先を増やしていきたいですよね。メルカリ寄付のサイクルを、いろいろなところへ広めたいです!

高橋:いいですね!そして、ゆくゆくは「寄付と言えばメルカリだよね」と言われたい。「社会にとっていいことをする=メルカリを使おう」と考えてもらえるように、これからもメルカリ寄付などを拡大させていきます。

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