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「立ち消えるはずだったプロジェクト」を、d払い×メルペイの“共通QRコード”として再始動させたワケ

2020-11-10

「立ち消えるはずだったプロジェクト」を、d払い×メルペイの“共通QRコード”として再始動させたワケ

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スマホ1つで買い物ができるのは便利!でも、レジ周りにあるどのQRコードで決済すればいいのかわからない——。そんな光景によく出くわすようになりました。そこでスタートしたのが、ドコモが提供するd払いとメルペイによる「共通QRコード」。これによって、d払い・メルペイの両サービスが1つのQRコードで利用可能となります。

「つまり、d払いとメルペイを連携させたって話でしょう?」…と、そんな単純な話じゃないです!

この共通QRコードプロジェクトの前身にあるのは、当初メルペイがLINE Payやドコモ、KDDIと協業することで描いていた「MoPA」。ところが、MoPAは2019年12月に解散。一度はなくなるかと思われていた構想はなぜ復活し、完遂できたのか。プロジェクトリーダーである円城寺 博(@jo)とテックリードのsusho(@susho)、テクニカルプロジェクトマネージャーの主森 理(@osamingo)にインタビューしました。

※撮影時のみ、マスクを外しています。 ※d払いは、株式会社NTTドコモの登録商標です。

この記事に登場する人


  • 円城寺 博(Hiroshi Enjoji、@jo)

    楽天株式会社を経て 2007年、株式会社リクルートに入社。新規事業を立ち上げ後、上海ゼクシィのネット部門を牽引。その後、日系企業の上海拠点の立ち上げ、中長期戦略策定および実行推進後、2018年5月にメルペイへ入社。メルペイ初期の戦略アップデートを担当し、現在はPMとして、コード決済や加盟店プロダクトの開発をしている。Slack名は@jo。

  • 主森 理(Osamu Tonomori、@osamingo)

    2011年4月に株式会社サイバーエージェントへ新卒入社し、おもにメディア事業の新規サービス開発に従事する。2015年6月より株式会社AbemaTVへ出向、サーバサイド開発やスクラムマスターを担当した。2016年8月にメルカリへ中途入社し、現在はメルペイにてエンジニアリングマネージャー兼テクニカルプロジェクトマネージャーを担当している。神奈川県出身、Gopher ʕ◔ϖ◔ʔ。Slack名は@osamingo。

  • susho(@susho)

    2018年にメルペイへ入社。iD決済のマイクロサービスの開発を経験し、現在はQRコード決済やアクワイアリング業務を担うマイクロサービスなどを開発している。Slack名も@susho。


一時凍結した「共通QRコード」プロジェクトが再始動するまで

ー今回リリースされた「d払い×メルペイ」の共通QRコードは、一度は立ち消えたプロジェクトが前身にありました。再始動までには何があったのでしょうか?

@jo:いろいろありました(笑)。まず、共通QRコード構想の始まりは2019年3月ごろ。加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」として、メルペイを含む4社で進める予定でした。しかし、ご存知のとおりMoPAを解消することになり、それに伴って共通QRコード構想も一時凍結したのです。

円城寺 博(プロジェクトリーダー、@jo)

@susho:ですね。当時の課題は、メルペイを含むさまざまな決済サービスが登場していたことで、加盟店さまはレジ周りに複数のQRコードを提示していました。でもこれって、加盟店さまにとってはレジ周りがごちゃごちゃしてしまって見栄えが悪いし、お客さまにとってもどれで決済すればいいのかわからない。また、加盟店さまが利用する管理画面も事業者ごとに提供されたものをそれぞれ利用しなければなりません。そのあたりをスッキリさせ、お互いに利益があるものをつくりたいとなったことから誕生したソリューションでした。

@osamingo:どんなにいいサービスでも、お客さま・加盟店さまを疲弊させるものであってはならない。メルペイ代表である直樹さん(メルペイ代表取締役社長CEO、青柳直樹)や曾川さん(メルペイCTO、曾川景介)もよく言っているのが「メルペイを三方良しにしたい」。加盟店さま・お客さま・メルペイ社の3つにとって価値があるものをつくることは、僕らとしても大事だと思っていました。共通QRコードは、メルペイを「三方良し」にするための大事な取り組みの1つでもあるのです。

主森 理(エンジニアリングマネージャー兼テクニカルプロジェクトマネージャー、@osamingo)

ー再始動のきっかけは?

@osamingo:メルカリ・メルペイ、そしてドコモさんとの業務提携が発表されたのは2020年2月。これをきっかけに、改めて「d払い×メルペイによる共通QRコードはできないか?」という話になりました。MoPA時代からプロジェクトを進めていた僕ら3名がアサインされ、d払いのプロダクト側への交渉や技術的なデューデリジェンスなど全部ひっくるめて担当していくことになったんです。

数々の仕様検討を重ねた末、たどり着いたのは“MoPA”だった

ー共通QRコード開発では、どんなやりとりがあったんですか?

@osamingo:そもそも、ドコモさんはマルチ決済サービスを通じて事業を展開していました。それと同等の機能をつくることが、スタート地点だったんです。でも、 いろいろな決済を束ねることになる大規模な機能なので…現実的に考えても、リリースまでにかなり時間をかけることになります。そして、当初構想していたMoPAのフローを再検討し、あくまでもベースとして共通QRコードに導入することにしました。

ーここで、MoPA時代の構想が再び登場?

@susho:そうです。いろいろな仕様を検討しましたが、コスト感やスピード感を考えるとMoPAをベースにしたものが最適だと判断したんです。プロダクト的にはゼロから立ち上げているので、まったくの別物ではありますが。僕はテックリードとして、技術面での目線合わせも担当。お互いの腹落ち感が大事なので、ドコモさんにMoPA時代の構想を説明しつつ、連携するための条件を洗い出すための話し合いをしっかり行いました。

susho(テックリード、@susho)

ーたしかに、お互いに納得しないと進めるのが難しそうなプロジェクトです。

@jo:@sushoさんが進めてくれていた最低限の目線合わせには、2ヶ月ほどかかりました。2020年4月には方向性が決まり、リリースに向けて一気に開発を進めていった記憶があります。

@osamingo:開発を進めながら、僕らからガンガンと技術提案をしていましたね。何を取り入れるべきかを提案したり、システムに関しても一番手触りがあるものを選んだり。その点も、テックリードである@sushoさんが進めてくれました。

d払いとメルペイを非同期にした理由

@jo:今回の共通QRコードの大きな特徴は「審査の自動化」「アクワイアリング機能を提供するためのマイクロサービス」の2つです。

まず「審査の自動化」について。おそらくどの決済事業者でも抱えている悩みだと思うのですが、新規の加盟店さまの審査はさまざまなコストが掛かるんです。しかし、基本的にはどの事業者も同じような審査をしています。その解決策として、共通QRコードを提供し、加盟店さまの審査業務も共通化すると同時に、コストも折半するビジネススキームにしました。

@osamingo:これは、僕らの審査クオリティが高いとドコモさんに認めていただいたからこそ実現できたことでもあります。地味に思われる部分なだけに、そう言っていただけて非常に嬉しい(笑)。

ー「アクワイアリング機能を提供するためのマイクロサービス」は?

@susho:ドコモさん・メルペイ双方のシステムのつなぎこみやデータ連携部分を指しています。d払い側ではイシュイング業務(発行元での業務)、メルペイ側ではアクワイアリング業務(発行先での契約業務)を担当するスキームなのですが、その間をつなぎこみ、決済処理に関連するデータ連携を非同期にするようにしました。

非同期にした理由は、決済処理において両社間のどちらかでデータ処理に遅延があった場合、データ整合性を安全に担保できるようにするためです。具体的には、d払い側での決済処理が完了してからメルペイに非同期で連携することで、何かあったときにバッチ処理などでリトライすれば不整合を解消できるような設計にしました。

そこで、メルペイ側ではアクワイアリング機能を提供するためのマイクロサービスをつくりました。メルペイにとってまったく新しい取り組みだったので、ドコモさんとインターフェースを決めることはもちろん、社内でも調整が必要でした。幅広いドメイン知識を持っていないとハンドルを握りづらいシーンも、何度かありましたね。

@osamingo:これも、MoPA時代からあった思想です。完全に同期してしまうと、エンドユーザーであるお客さまや加盟店さまが一番困る事態を招きかねません。どの決済サービスを使っても、お客さまや加盟店さまが困らない仕組みを届けることを最優先にした結果でもありました。

「d払いと連携できればいい」ではいけない

ー 一時凍結したものを再始動するには、かなりのパワーを要するイメージです。このプロジェクトを続けるモチベーションはどこにあったんでしょうか?

@osamingo:僕はやはり「メルペイを三方良しにしたいから」。メルカリグループは「循環型社会」の実現を目指しています。これって、お客さまや加盟店さま、メルペイ社にとっていいプロダクト・インフラストラクチャーを実現することでもあると思っているんです。共通QRコードは、そのための第一歩。だから、けっこう思い入れが強いプロジェクトだったんですよね。無事にリリースできたときは、めちゃくちゃ嬉しかった(笑)。

@jo:わかる!関わったメンバーでゼロイチからすべて考え、リリースできたのは本当に嬉しい。そして初日から多くのお客さまに使っていただけていると聞いて、涙ちょちょぎれましたよ!

共通QRコードは「d払いと連携できればいい」と考えていたわけではありません。これによって双方の加盟店さま、GMV(総流通総額)をよりいっそう伸ばせるようにスケールアウトさせることが大前提。なので、今後ドコモさん以外でも同様の案件が出てきたとき、簡単につなぎ込めるようにしています。どんどんスケールさせていかないとですね。

@susho:企業間で組めたほうがしがらみがないというか、お客さまと真摯に向き合った競争ができるようになるというか。そんな土壌をつくっている手応えは、大きなモチベーションでした。だから、僕もこのプロジェクトは諦めたくなかったんです。まだドコモさんとの連携だけですが、「あれは大きな一歩だったね」と言われるように広げてきたいですね。

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