2020年11月4日より、メルカリと日本郵便による新しい配送サービス「ゆうパケットポスト」がスタートしました。
前例のない新たなサービスをつくり続けるメルカリですが、その舞台裏には「枠をはみ出していく」デザイナーの姿が。
今回はそんなデザイナーの役割や求める人物像について、プロジェクトメンバーとリリースを振り返りながら聞いてきました。
※撮影時のみ、マスクを外しています。
この記事に登場する人
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川村俊輔(Shunsuke Kawamura、@shun_k)大学卒業後、ウェブリオ株式会社にて辞書プラットフォーム事業を担当。その後、博報堂コンサルティングにてブランディングのコンサルティング業務に従事。Product Strategyチームの立ち上げメンバーとしてメルカリに入社。現在はLogistics&Transaction CampのProduct Ownerを担当する。 -
篠原友希(Yuki Shinohara、@u-ki55)大学卒業後、制作会社にグラフィックデザイナーとして就職。紙・パッケージ・Webサイトなど、媒体&役割問わずのなんでも屋を経て、2018年9月メルカリに入社。現在はUI / UXデザイナーとしてフリマアプリ「メルカリ」JPのデザインを担当。 -
赤川久郎(Hisao Akagawa、@akagawa)3年間アパレル会社で企画・デザイン・生産管理を経験後、制作会社でライセンスキャラクターや商業施設の商品企画からデザイン、展覧会などの空間デザイン、イベント企画など幅広く担当。2018年5月メルカリに入社。現在はコンテンツクリエイティブチームでアートディレクター、グラフィックデザインを担当。
新しい発送体験「ゆうパケットポスト」
ーまずは改めて「ゆうパケットポスト」のリリースおめでとうございます!今回のプロジェクトでもメルカリのデザイナーが大きく関わっているとのことで、リリースを振り返りながらお話を聞いていければと思いますが、最初にプロジェクト概要について説明いただけますでしょうか?
@shun_k:メルカリには現在、各パートナー企業様と共同で提供している「メルカリ便」という配送サービスがあります。共通の特徴としては「匿名配送」「送り状の記入が不要」「全国一律料金」があるのですが、その中でも特に人気の高い「ゆうパケット」サイズの商品を全国約15万ヶ所の郵便ポストから発送できるようになりました。専用の箱に商品を入れてQRコードを読み取ったら、あとはポストに入れるだけで発送が完了します。
ー15万ヶ所という数字がどれくらいなのかイメージがつかないのですが、何か比較できるものはありますか?
@shun_k:郵便局とローソンを合わせて約4万ヶ所、という数値があります。なので今回のサービスリリースで、発送拠点が約3倍になっていますね。
ーすごい…では、今回のリリースの狙いは発送拠点の拡大ということでしょうか?
@shun_k:それもありますが、新しい発送体験を提供したかった、というのもあります。今までメルカリでは無人の発送サービス開発を進めてきたのですが、これがお客さまには大変好評で、その体験をもっと広めたいという狙いがありました。
川村俊輔(@shun_k メルカリ Logistics&Transaction Camp Product Owner)
ー「新しい発送体験」の舞台は郵便ポストだと?
@shun_k:東京にいると感じにくいのですが、たとえば地方では「最寄りのコンビニまで5km」なんていうのもよくあって、気軽に発送できる環境が整っていないところもあります。その点ポストはどこにでもあるので、いつもの郵便を出す感覚でメルカリでの発送をしていただけると思っています。
ー今回、箱に詰めて投函するだけというのもわかりやすいですよね。
@shun_k:実はそこも狙いの1つで、発送に使う箱をどうすれば良いのかわからないお客さまは多いんです。そこでメルカリ公式の専用箱をつくることで、お客さまにも安心して使ってもらえるようになれば良いなと。おかげさまでサービス立ち上がりの反応も上々です。
メルカリの体験に関わるデザインには まだまだやれることがある
ーでは早速、デザイナーとして関わっていただいたメンバーの所属チームと仕事内容をお伺いできればと。まずは@akagawaさんからお願いします。
@akagawa:コンテンツクリエイティブチームに所属しています。私は発送用の箱を作っていたのと。お客さまが手にとってから発送してもらえるまでの体験の設計を考えていました。
ー箱のデザインだけではなく、お客さまの体験を含めた設計もしていたんですね。
@akagawa:極端なことを言うと、今回の箱を作ってくれたパートナーさんが箱を出荷する瞬間からわかりやすいのかどうか、まで考えていました(笑)。
ーお客さまだけではなく、パートナーさんの体験まで?
赤川久郎(@akagawa メルカリ contents creativeチーム)
@akagawa:お客さまをはじめ配達員の方など、手にとった人を迷わせない、かつわかりやすいデザインを心がけています。たとえば今まではゆうゆうメルカリ便、らくらくメルカリ便どちらも同じ色の資材だったんですが、今回は色を分けてわかりやすくしています。
@u-ki55:配達員の方のことまで…!勉強になります(笑)。
ーそんな@u-ki55さんはどうでしょうか
@u-ki55:私はUI / UXを担当しているProduct Designチーム所属で、今回はアプリ内のUIをデザインしました。ただUIだけデザインするのではなく、メルカリを使っているお客さまが、ゆうパケットポスト専用箱を使って商品をポストに投函するまでの一連の発送体験を設計しています。あとは他の配送方法がすでにある中で、どうやったらゆうパケットポストを使ってみたくなるかを考えながら、既存サービスとのハレーションが起きないように調整していました。
@shun_k:@u-ki55さんには、今回のサービスを広めていくための公式ブログやLP、キャンペーンの見せ方についても助けてもらいました。
ーデザインに関して「メルカリのプロダクトって完成しているのに何をするの?」と聞かれることが多いとか?
篠原友希(@u-ki55 メルカリ UI / UX designチーム)
@u-ki55:そうなんです。ただ、作った時点での最適が今の最適ではないし、便利に使ってもらうための新しい機能を増えていったり、アプリは今も進化し続けているんですよね。だから、完成しているように見えて、デザイナーがやれることはまだまだたくさんあるんです。
@shun_k:会社が大きくなったからこそできることもありますよね。この前リリースしたメルカリポストなんかは、もはやアプリじゃなくてポストですからね。ああいったサービスのデザインもできるようになっているし、今後さらに増えると思います。
ーちなみに今回のようなPJはどういう流れでスタートするんですか?
@akagawa:最初に関係メンバーでキックオフして、以降はお互い走りながらアウトプットをし続けていく、みたいな感じですかね。ちなみに、ある日突然PJの話が来るというのも結構あります(笑)。
@shun_k:社内での動きを事前に「Slack」でリサーチしておくのが大事だったりしますよね。情報自体はとてもオープンに共有されているので、覗いていれば大抵の情報は手に入ります。
ゆうパケットポストで振り返る デザインのこだわりって?
ーここからは@shun_kさんにバトンタッチして、メンバー間でゆうパケットポストリリースの振り返りつつ、デザイナーの醍醐味などについて聞いていただきます。
@shun_k:では、今回デザインで特にこだわった部分から聞いていきますね。@akagawaさんは?
@akagawa:色々あるのですが、まずは商品表示ですね。組み立てる前の商品が置かれる場所(棚下、ラックなど)や縦向きや横向きどちらで置かれるか、あらゆる陳列ケースを想定してデザインを考えました。ただ、店員さんにうまく見せてもらうのではなく、考えずに陳列しても商品表示が見えるように意識しましたね。さらに組み立てた後には、プレスリリースで写真を撮るときにロゴがしっかり見える位置に調整したり、想定されるさまざまな場面で機能するデザインを考えました。
@shun_k:1つの箱に、これでもかという程の意図が詰まっているんですね。
@akagawa:あとは裏面。ここに関しては情報がとにかく多いので、情報の優先順位を整理しました。「わかりやすい」「便利そう」と思ってもらえるように、ご利用方法はイラストと短いテキストで、リズムよく頭に入ってくるようにデザインしました。
@u-ki55:私の方では、アプリを操作するお客さまの「静」と「動」についてこだわりました。たとえば今回、発送する時に専用箱についているシールを剥がしてから送らないといけないんですが、そのタイミングにチェックボックスを置いて、確認しないと先に進めないようにしています。
「アプリに書いてある説明をしっかり読まなくても、何も考えずに操作をポチポチ進めていったら発送までできた!」というのが最高のUXだと思っているんですが、一方で手を止めてしっかり考えてもらうべきところでは止まってもらえるような設計を意識しています。
@shun_k:逆に今回、課題みたいなものはありました?
@akagawa:やっぱり「モノ」を一緒に見ながら話せないのが大変でしたね。画面越しでなんとかやっていましたがやっぱり伝わりにくい。
@u-ki55:私のほうも、アプリのUIは非対面でもなんとかなるんですが、ユーザビリティテストを会社でやったときに、箱が組み立てづらいのに気づいたのが印象に残ってて。あそこで気づいておいて本当に良かったなと。
@shun_k:そのとき出たアイデアで、両面テープで固定できないかな、というのが最終版にも反映されてますよね。
「狙い通り」を実現したときの達成感
@shun_k:2人が感じているメルカリのデザインのやりがいってありますか?
@u-ki55:今回のプロジェクトに限らず、プロダクトデザイナーでありつつ、アプリ以外のことも考えたり議論したりできるんです。だから、職種の枠から飛び出そうと思えばすぐに飛び出せる。それが良い刺激になるし、楽しいんです。@akagawaさんをはじめ、メンバーの間でも「ここは大事にしたいよね」という共通の価値観が持てているので、仕事も進めやすいです。
@akagawa:普段から昼飯食べてコミュニケーションしてたもんね(笑)。今はこういう状況なので、困ったらすぐに電話したりするのですが、以前よりクイックにコミュニケーションは取れてる気がします。
@shun_k:2人の関係値によるところもありますが、メンバー同士のコミュニケーションはしやすい環境ですよね。@akagawaさんのやりがいってありますか?
@akagawa:やっぱり「モノ」のデザインなので、アウトプットの実感があるところ。あとは、実際にお店でどう置かれるのかなどを自分で検証したり、とにかく色々なことを体験しながらものづくりをするのが楽しいです。今回のゆうパケットポストも、あらゆるシチュエーションを考えて、あれこれ設計を考えて、結果的にお客さまが狙い通りに動いてくれると本当に嬉しいんですよね。
@shun_k:私もお客さまが狙い通りに動いてくれたら「よしっ!」って心の中でガッツポーズします(笑)。逆に大変なことってありますか?
@u-ki55:良くも悪くも「現場感」があるところですかね。デザイン業務をやりつつプロジェクト全体を進めていくので大変なこともあります。楽しいしやりがいもありますが、仕組みで解決できる部分もあるので、そこはまだまだ発展途上ですね。
@akagawa:自分の場合は、新しいサービスを生み出すときに「良いもの」を突き詰める難しさを感じます。お客さまによっても捉え方が違うし、何を良いとするかっていうのも変わってくるので。
ただ「悪いもの」っていうのはある程度決まりがあると思っていて、そこは徹底的に解消するようにしてますね。加えて、どこまでをアプリ内のデザインとして設計するのか、どこまでをアプリ外でやるのか、のバランスは大切かなと思います。アプリの中でやってこそ活きる体験もあれば、アプリ外でやってもらったほうが効果的な体験もあるので、プロダクトチームと情報共有しながら温度差がないように進めています。
アウトプットの質を高める 建設的な議論とチームレビュー
@shun_k:メルカリのデザイナーで良かったことってありますか?
@u-ki55:友達がたくさんできました(笑)。
@akagawa:シンプル(笑)。
@u-ki55:仕事を通じて仲良くなる人が多いんです。業務の中で議論が白熱することもありますが、向いている方向や目標が一緒なので気まずくなることもない。みんな明るくてポジティブだし、メンバー同士お互いのタスクを気にかけてたりするので安心感もあります。
@akagawa:メンバーの話でいうと、うちのチームはメンバーのスキルセットがみんな違うんですよね。デザイナーをはじめ、ビデオグラファー、エディター、コピーライターなどのメンバーが集まっているんです。だからチーム内でレビューをやっても、多角的な意見が飛んできて、必然的にアウトプットの質が高まるんです。仕事をしながら自分も学ぶ機会があるのはすごく良いなと思ってます。
@shun_k:ちなみに、コロナ禍で入社してくださる方にとっては、入社後のコミュニケーションの部分に不安を感じることが多いと思いますが、新メンバーの受け入れについて何か工夫されている点はありますか?
@akagawa:他メンバーへの紹介はもちろん「それは新しく入った○○さんができるよ」って情報をどんどん流してますね。みんなどういう仕事をしているのかわからないので、そうやって広めていくのが大事かなと。
@u-ki55:うちはチームランチ、ちょっとしたお茶会などを開催してますね。あとはマネージャーMTGでの内容をオープンに共有したり、情報の透明性を高くするように意識しています。
求められるのは「BOLD」な動きに寄り添うデザイナー
@shun_k:ではメルカリのデザイナーに求められるものとは?
@akagawa:マインドの部分でいうと、自分の部署にこだわらず、枠を超えて自分から動ける人ですね。会社で何が起きているのか、自分で見つけて行動できる人が必要かなと思います。
@shun_k:情報を待っている受け身のタイプだと向いていないかもしれませんね。
@u-ki55:そうですね。「UIさえ作っていればいいや」ではなく、プランニングから入るぞ、他チームともどんどん連携していくぞ、みたいな、自分の仕事に枠をつくらずに進めて行ける人が向いてると思います。もちろん最初はできないこともありますが「やるぞ」って思ってくれていることが大事です。
@shun_k:求められるものに共通しているのは、メルカリのバリューでいう「ALL FOR ONE」な人なんですかね。
@akagawa:「Go Bold」というバリューがあるので、Boldな人はたくさんいます。その施策を一緒にすすめるために「All for One」に支えてくれる人が貴重なんですよね。あとは型にはまらず、自分自身で行動、アウトプットができる人。新しい風を吹き込んでくれる人が良いなと思います。あとは、メルカリを理解、好きな人であることがもちろん大事です。
@u-ki55:UI / UXのほうは「その人らしさ」も大事ですが、どちらかというと「メルカリらしさ」やプロダクト全体として違和感がないかのバランス感覚が大事かなと思っています。ただ、ずっと変化しないことを良いとしているわけでなく、最適なタイミングでアップデートし続けることが必要。そんなバランス感覚を持っている方に来てもらえると良いかなと思います。
ー転職を考えているそこのあなた! 考えていなかったけど気になるあなたも! 「デザイナー」の枠を飛び越えて、一緒にメルカリのデザインをつくりませんか? ご応募お待ちしております!