20.4%。
これは、JISAの2019年度版情報サービス産業基本統計調査で発表された、国内における女性のエンジニアの割合です。最近では、もともと少ないことを問題視し、IT企業などで活躍する女性にフォーカスをあて、情報交換やナレッジの共有をし合うイベントも多く開催されています。
そんななか、2021年1月に公開されたとあるブログが注目を集めていました。タイトルは「1人の女性がエンジニアになるまで」。書いたのは、メルカリAndroidエンジニアのwirohaさんでした。
このブログで書かれていたのは、タイトルのとおり、wirohaさん自身が1人のエンジニアになるまでの経緯。しかし、そこにあったのはいわゆる「武勇伝」ではなく、むしろ彼女自身が「自信がなかったために諦め続けてきた過去」を振り返るものでした。
公開後、wirohaさんのブログはTwitterを中心に拡散。読んだ人の間でもエンジニアになるまでの経緯を振り返る記事が続々と公開されていました。そんな反響を、wirohaさんはどう受け止めているのでしょうか?そこで得た気づきは?
この記事に登場する人
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wirohaメルカリのCamp1所属。SNSの開発や新規事業開発のプロダクトマネージャーを経て、2018年4月にメルカリへ入社。当時はiOS版のみリリースされていたメルチャリチームにて、Androidアプリの新規開発を担当。ローンチし、その後もユーザーテストを重ね改善に取り組む。メルチャリの事業承継後はメルカリのプロダクト開発にて、おもにロジスティクス機能改善を担当。
数多くの反響のなか、共通していたのは「仲間がほしい」
ー wirohaさんのブログは公開後、いろいろな方にコメント付きでリツイートされていましたよね。なかには、wirohaさんと同じようにこれまでの経緯を振り返るブログを書く人も!
最初はTwitterでフォローしてくださっている方のうち何人かが読んでくれればいいなと思って書いたものだっただけに…思っていた以上に反響があり、驚いています。
このブログを書いたきっかけは、『ガール・コード』を読んで、「あ〜、私も学生時代にそう思うことがあった!」と共感するところが多く、過去への想いが溢れ出て書かずにはいられなかったから。特に高校時代のに思い出が鮮明に蘇ってきて、とても懐かしくなり、エンジニアを目指す女性を応援したい気持ちになったんですよね。記事への感想を寄せてくださる方のなかに「私も自分自身のことを書いてみます!」と、同じようにブログを書いてくれる人もたくさん出てきて、お互いに勇気づけられています!
ー寄せられた反響のなかに、共通するものはありましたか?
共通していたのは、みんな「仲間がほしい」と思っていること。もちろん、今一緒に働いているメンバーはみんな大切な仲間です。でも、その割合の多くが男性の場合、女性特有の悩みや感覚をシェアする機会は少ない。そのため、少し言いにくい相談ができる仲間がほしいと話す人は多かったですね。今、女性のエンジニアが集うコミュニティ「Code Polaris」に参加しているのですが、そこでも自己紹介で「周りに同性が少なく、寂しくてきました」「交流したくてきました」という人はけっこういました。
ー「友だちがほしい」というよりも、「同性が少ない」ゆえの心細さがあったということ?
例えば、ランチタイムで異性が「誰か一緒にランチへ行きませんか〜?」と募ったとき、ほかのメンバーが手を挙げてからじゃないと、男女1:1となって気まずくなる可能性が高く、参加しづらいときがあります。そのほか、「生理が辛いから休みたい」と言いづらかったり。「女性が少ない」ことで、緊張する必要のないところで気を遣うなど、心細く感じるシーンがあるんです。単純に思えるかもしれませんが、こういった“ちょっとした心細さ”は着実に積み上がっていくものなので。
「自信がないから挑戦しない」はもったいない…と伝えたかった
ーブログを書いてみて、ご自身に対して感じたことは?
ブログを書いて改めて感じたのは、「自信がない」を理由にたくさんのチャンスを逃してきたこと。パソコンが好きだったのにコンピューター部に入らなかったときも、大学の先生が「学内ベンチャーの社長に」と誘ってくれたのに断ったときも、思い返せば、すべて「自信」さえあれば挑戦したかったことばかりです。
このブログを書いた目的は、自信がないゆえにみすみすチャンスを逃してきた失敗談を共有することで、同じ過ちに陥らないでほしかったから。「自信がないから挑戦しないのは、もったいないことだよ」と、ちゃんと伝えたかったんです。
ー「自分に自信がない」とは、意識しなければ気づけないように思います。wirohaさんはブログを書く前から「自信がなかったためにチャンスを逃してきた」ことに気づいていた?
きっかけは、『LEAN IN』を読んだことですね。フェイスブックのCOOが自分のキャリアやプライベートを振り返っている本ですが、ここでは統計学上から見ても女性は自信を持ちにくい傾向があると書かれていました。それまでは、自信がないのは私の性格の一部だと思っていたんです。『LEAN IN』を読んで、「そうだったのか」と腑に落ちましたね。それ以降は、自分の自信を2〜3倍に見積もって興味があることに挑戦するようにしました。このメルカンのインタビューも『LEAN IN』を読んでいなかったら断っていたと思います(笑)。
wirohaさんのアイコンはハシビロコウ。取材はオンラインで実施しました
ー wirohaさんのブログを読んでハッとさせられたのは、仕事やキャリアを考える際、“女性”という立場から「結婚・出産しても働き続けられそうなところ」を選んでいた節があることでした。ブログの中で「自信がないから」と諦めてきた経緯にも触れていましたが、それこそ自信さえあれば「結婚・出産」を含めずに仕事を選べていたのかな…と。
ブログをきっかけにいろいろな人と話す機会があったのですが、「出産後も仕事を続けられるかどうか」で悩む女性は多かったですね。私もファーストキャリアは「産後も働ける実績」がある企業を選んでいます。その後、ミクシィやリクルートを経て現在のメルカリにいるわけですが、その考えにはどうしても縛られてしまうところがありますよね。
「女性エンジニア」という単語がなくなるくらいギャップが解消されればいい
ーそもそも、wirohaさんがメルカリへ転職しようと思ったのはなぜ?
メルカリには、すでに知り合いが何人か入社していました。なので、転職を考える前から「メルカリはどんな雰囲気なのか」が、うっすらわかっていたんです。当時、私が担当していた事業が譲渡されたタイミングで次のキャリアを考え、何度か話を聞いていたメルカリへ転職。入社後は、メルチャリチームでAndroidアプリ開発を担当していました。当時はまだAndroidエンジニアとしての開発経験は浅かったのですが、おかげでごりごりと技術力がついていくように感じていました。メルチャリが事業承継されてからは、メルカリのアプリ開発側へ異動し、現在に至ります。
ーメルカリへ入社してからは、先ほど話していた「自信がないから挑戦できなかった」みたいなことは?
メルカリへ入社を決めたこと自体が、私にとってGo Boldなチャレンジでした。なので、それ以外のことは誤差の範囲と言いますか、メルカリへの入社に比べたら、新しい言語を覚えたり、アーキテクチャに挑んだりすることはできるかなと(笑)。あと、周りにいたメンバーにとても助けてもらっていました。おかげで、今も開発に挑めているんだと思っています。
ー転職自体がチャレンジングだったんですね(笑)。
そうなんです(笑)。最近では新しい挑戦として、VTuberデビューしようと思っているんです!そのためのアバターもつくりました。メルペイメンバーにもVTuberがいて、やってみたかったんですよね。こういった挑戦ができるようになったのも、自分に自信がついてきた証拠だと思います。
ーでは、これからも積極的に情報発信を続けていく?
ブログを書いたことで女性のエンジニア同士の輪が広がり、Podcastの出演や取材を受けるなど新しい挑戦にも結びつきました。この勢いを落とさずに、もっと女性のエンジニアを増やしたり、つながれたりできるような場を推進していきたいです。そして、いずれは「女性エンジニア」という単語がなくなるくらいギャップが解消されればいいなと思っているんです。メルカリではBuild@Mercariのように、女性だけでなくほかのマイノリティにとってもよりよい環境をつくっていこうとしています。私も、自分にできることをやっていきたいですね。