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アジャイル開発の導入、PM Ladderの採用… メルカリにおける「プログラムマネジメント」の役割

2021-3-18

アジャイル開発の導入、PM Ladderの採用… メルカリにおける「プログラムマネジメント」の役割

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「プログラムマネジメント」とは、同時並行でさまざまなプロダクト開発が進められる環境下で、リソースやコスト調整、環境整備など、組織を横断して個々のプロジェクトをサポートする役割のことを言います。

メルカリでプログラムマネジメントを専任で行うチームが正式に発足したのは、2019年夏ごろでした。当初は2名程度だったチームも17名に増え、今はProgram Managementチーム、Product Management Excellenceチームの2つに分かれて、メルカリでのプロダクト開発をサポートしています。

そこで今回のメルカンでは、プログラムマネジメントを専任で行うチームが発足した経緯、現在求められている役割を、Product Management OfficeのDirectorである宮坂雅輝と、Program ManagementチームのAbhijeet Pawar(Abhi)、Product Management Excellenceチームの篠原佳奈子に聞きました。

※撮影時のみマスクを外しています

この記事に登場する人


  • 宮坂雅輝 (Masateru Miyasaka)

    マイクロソフト、株式会社楽天、株式会社ファーストリテイリングでさまざまな国内及び、グローバル向けの製品のプロダクトマネージメント行うのとともに、開発組織強化のためにAgile開発の導入、オフショア開発拠点の立ち上げなどに従事。2018年9月、株式会社メルカリに参画。現在はProducts FoundationのDirectorを務める。


  • 篠原佳奈子(Kanako Shinohara)

    エンジニアとして株式会社SRAに新卒入社。3.11後の転機をきっかけに人材採用領域のPMとして転身。2015年にビズリーチに入社し、戦略人事のためのサービスを担当。2018年8月にメルカリに入社し、CSツール、メルペイあと払いを担当した後、現職(Product Management Excellenceチーム)。


  • Abhijeet Pawar (アビー・パワール)

    Abhi came to Japan for the first time in January 2010 as the first non japanese new grad at Rakuten. He worked at Rakuten for around 6 years and retired from Rakuten as a Global Salesforce manager and BI manager where he used to man-age a team of around 130 members globally. He went back to India to possess his startup ambitions. In 4 years AbhyA faced a good ride of failures and success in startup where is ended up scaling a blockchain startup to USD 25 million. Ab-hyA joined mercari as the 1st Program Manager and is now the head of program management team and managing key programs.


「個々で動けばいい」わけじゃないから誕生した、Program Managementチーム

ーメルカリでプログラムマネジメントを専任で行うチームが発足したのは、2019年夏ごろと聞いています。それまでは不要だった?

宮坂:いや、そんなことはないです。実は、今Abhiがマネージャーを務めるProgram Managementチームの前身のようなものは2018年ごろからありました。もともと、メルカリは個々に強いメンバーが多く集まり、プロダクト開発をしてきたところがありました。でも、組織も事業も大きくなれば「個々で動ければいい」というわけにはいかない。私が入社したのは2018年でしたが、すでにコンフリクトが起こりやすくなっていたり、個々で動いているために知見が溜まっておらず、新メンバーのオンボーディングコストがかかるなどの現象が起こっていました。

宮坂雅輝

宮坂:もちろん、以前までの開発スタイルを否定しているわけではありません。スタートアップ時代こそ、開発スタイルを標準化している状況じゃない場面のほうが多いです。ただ、2018年ごろのメルカリの組織の成長スピードはとても急速でした。それこそ、すぐ隣のチームにいるメンバーの顔がわからなかったり、一方で海外から来たメンバーが増えたことで言語の壁もできたりしていました。

そこで、どんなメンバーにとっても働きやすく、かつプロダクト開発をスムーズに行える環境をつくるため、共通の開発フレームワークやスペックの書き方を整備していました。これがスタートラインです。

篠原:前提として、エンジニアとデザイナーではコミュニケーションで使用するツールも違います。たとえ同じツールでも、チームによって使い方が異なっていたり。そういった、バラバラだったものを統一していった感じですね。

篠原佳奈子

ーつまり、個人の裁量だけ動ける規模ではなくなったタイミングだったんですね。

宮坂:そうです。プログラムマネジメントの役割は「プロダクト開発のためのイニシアチブをドライブさせること」「大きなプロジェクトが発生しても、きちんとドライブできる体制を維持すること」。そのため、現在はアジャイル開発の導入するほか、PM Ladderやフォーカスリスト、各施策のレビューができる仕組みづくりをしているところです。

メルカリがアジャイル開発を取り入れる理由

ーアジャイル開発の導入を進めているのが、Abhiさんがマネージャーを務めるProgram Managementチームですよね?

Abhi:そうです。アジャイルとは、短い開発サイクルで企画・設計・開発・テストをくり返す開発スタイルのこと。メンバーからさまざまな意見を集め、そのなかから一番いい方法を決めるスタイルでもあります。より意見を出しやすくするために、半年前にアジャイル専用のAgile CoE(Centre of Excellence)コミュニティもつくりました。なにか相談や問題があったらすぐにサポートできるようにもしています。

Abhijeet Pawar

ーなぜ、アジャイル開発だったんですか?

Abhi:開発のフレームワークはたくさんあります。その中でもアジャイル開発は、チームやメンバーが自立しながら考え、成長できるモデルです。それも、短い期間でくり返しながら開発できたほうがメルカリのようなスピード感が求められる現場には合っています。また、海外IT企業の約7割がアジャイル開発をベースに開発を進めています。メルカリは開発組織の約半数が海外から来たメンバーで構成されているので「アジャイル開発のほうがフィット感が高いのでは?」という考えもありましたね。

しかし、アジャイル開発と言えど、チームによって取り入れ方はさまざま。なので、アジャイル開発はプロセス導入より「マインドセットの醸成」のほうが重要なんです。浸透には、だいたい3年ほどかかると言われています。

ーえ、アジャイル開発のマインドセット浸透に3年?

Abhi:そうそう(笑)。先ほどお話ししましたが、メルカリでアジャイル開発を取り入れる理由の1つは「チームやメンバーが自立して考え、成長できるプロセス」だから。「自分たちで開発していくぞ」という気持ちで開発に挑めるようにするには、アジャイルが合っている。どちらかと言うと今は、ベースを整えると同時に「やり方を理解してもらう」を進めているイメージです。

現在、メルカリでは「Camp」システムというプロダクト開発スタイルを採用中。プロダクトを複数の領域に分解し、各領域を「Camp」として、さらにその中には複数のスクラムチームが存在しています。将来的には、アジャイルコーチたちがProgramマネージャー、プロダクトマネージャーが企画立案からリリースまで、アジャイル的に開発していけるような体制できればと考えています。

プロダクト開発の舵取り、そしてPMのキャリア確立

ーそして、篠原さんはProduct Management Excellenceチームです!

篠原:私がメルカリへ入社したときに感じていたのは「人によってPMのマインドセットや期待値が異なる」でした。また、宮坂さんが話していたように、当時は個々で動くことが多く、継続的なイニシアチブやナレッジ管理が醸成されにくい状態でもありました。そこで、まずは「PMとはなにか」をアップデートする仕組みづくりをが始まったんです。その1つの取組みがPM Ladderでした。

また、極端に言うと、隣同士の領域を担当する複数のチームが似たような施策を企画してしまう状態になりつつありました。そこで、施策の優先順位を決めるプロセスのベースとして「フォーカスリスト」を作成。開発工数やビジネスインパクトはもちろん、そのレビュープロセスも含めました。

ー横連携が弱いと、陥りがちな事態ですね。

篠原:そうなんです。メンバーそれぞれが自走できることにはメリットがあります。しかし、組織規模によっては副作用も起こります。Product Management Excellenceチームとしてはそういった作用が起こらないように、アプリ仕様の全体像がわかるスペックを英語で作成。そのほか、これまではボランティアベースだったリリースプロセスやスケジュール管理もQAやエンジニアと共に体系化。開発フローをアジャイル開発に合わせてアップデートしました。

ーどれも、プロダクト開発のベースとして大事なものばかり…。

篠原:グロースハックのように「効果が出たぞ!」となりにくいので、派手さがないのは寂しいところですけれど(笑)。

実は私、これまでずっと戦略人事を考えながら、人材採用領域のPMとして働いてきました。前職でも、まだ「PMのロールモデル」がないなかでPM組織の立ち上げも経験しています。だからこそ感じているのは、今がPMのロールモデルを形成する過渡期だということ。プログラムマネジメント業務として、組織を横串で見て、どのドメインでアクセルを踏むかという舵取りの一端を担えることにはワクワクしています。同時に、この業務がPMのキャリアを確立するきっかけになるかもしれない。そう思うと、この仕事でとてもおもしろい経験をしているなと感じています。

アジャイル開発もスクラムも、あくまで手段の1つ

ー本格始動し、さらにチーム化したプログラムマネジメントですが、今後は?

宮坂:私はずっと「海外の巨大なテック企業に匹敵する日本企業をつくりたい」と思って、この仕事を続けています。そのために、できることをすべて実践しているつもりです。ド直球に言ってしまうと、アジャイル開発やスクラムにこだわっているわけではないんですよね。あくまでも手段の1つであり、もしも正解でなければ、すぐに違う方法を探します。メルカリに合ったスタイルを見つけ、ちゃんと改善する人たちでフレームワークをつくっていく。それによって、PMやエンジニアたちが働きやすくなり、開発しやすい環境ができる。ゆくゆくは、メルカリで働いたメンバーはみんな強くなる環境にし、他の企業でも活躍できるようにしたいですね。

篠原:「メルカリマフィア」ってやつですね(笑)

(一同笑)

Abhi:そのためにも、プログラムマネジメントをより確立させていきたいですね。「プログラムマネジメントは大事だ」と言われているものの、全社でしっかり浸透できているわけではないので。あと1〜2年ほどを目標に、頑張りたいです!そして、「イニシアティブ」「プロダクト関連プログラム」「プラットフォームのプログラム」の3つの分野に注力していきたいですね。

篠原:私は、開発戦略などを担当するStrategy and Managementチームと連携しながら、プロダクト開発体制づくりに深く参加していきたいです。開発生産性を可視化し、進捗中のアクティビティもわかるようにして、CPO、CTOやProduct Head、Engineering Headがすぐに判断できる仕組みを整備したいですね。

宮坂:いいですね!エンジニアやPMを含め、マインドセットをもう一段上へあげるように、引き続き活動していきましょう!

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