「メルカリCS組織は、『分権型の事業部制組織』になります」
そう話したのは、VP of Customer Serviceの工藤節。メルカリの歴史を語るうえで欠かせない組織の1つに、カスタマーサポート(以下、CS)があります。2014年に仙台拠点を設立し、その後2017年には福岡拠点を立ち上げ、着々と組織を拡大させてきました。そんなメルカリCSが今、新たな局面を迎えようとしています。
では、メルカリCSはどのような道のりを経て今に至り、どのように未来を描いていくのか。CS組織のトップである工藤節、CS組織の立ち上げを担い、現在は東京CS拠点でDirectorを務める山田和弘と西垣道仁に話を聞きました。聞き手は、メルカリ福岡CSでHRを担当する小野実沙子です。
※撮影時のみ、マスクを外しています
この記事に登場する人
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工藤 節(Takashi Kudo)メルカリ執行役員VP of Customer Service。デルタ航空会社で約17年間従事。予約部の業務設計やキャパシティコントロールなどを構築。アジア・環太平洋地区機内サービス部のCrew Scheduling Specialistを経て、日本地区顧客サービス部マネージャーとして部署立ち上げ実施。Amazon合同会社で約6年間従事。CS部門のSr. Customer Experience Program Manager、及びSeller Support部門の業務委託オペレーションなどに携わる。Regional Manager, FEを務め海外拠点も含む業務委託先の立ち上げ等を実施。2018年11月メルカリJPCEO室へ入社。2019年7月よりVP of Customer Serviceに就任。 -
山田和弘(Kazuhiro Yamada)株式会社ミクシィのカスタマーサポート部門の責任者として約7年間従事。ソーシャルゲーム業界団体の立ち上げ、青少年保護に関わるサービス健全化施策を実施。2014年4月に株式会社メルカリに参画。カスタマーサポート部門のマネージャーに就任し、仙台拠点の立ち上げやカスタマーサポートの業務設計、メンバーの採用・育成を担う。2017年2月執行役員就任、現在はCS東京拠点のDirectorを務める。 -
西垣道仁(Michihito Nishigaki)大学卒業後、いくつかの企業にてお客さまサポート業務やカスタマーセンターの運営改善を担当。前職の株式会社スカパー・カスタマーリレーションズでは衛星放送「スカパー!」のカスタマーセンター運営および関連業務に従事。2018年9月より現職。メルカリでは、TnS(Trust & Safety)のDirectorとして、禁止出品物や禁止行為の監視体制の構築をはじめ、お客さまに安心・安全にサービスをご利用いただくための環境整備に務める。マーケットポリシー委員会 リーダー。 -
小野実沙子(Misako Ono)株式会社レベルファイブの総務・人事部にて約6年間従事。2017年3月に株式会社メルカリ福岡拠点の立ち上げメンバーとしてジョイン。General affairsとして福岡拠点の環境構築を担当。現在はField HR & People Developmentチームのマネージャーとして、JPCSグループの人材開発・L&Dなどの研修企画を務める。
なぜ、このタイミングでメルカリCSの変革へ踏み切った?
小野:メルカリのCS組織はなかなかのスピード感で拠点を増やし、体制づくりをしてきました。そんな当時から現在にかけて、変化を感じるところはありますか?
山田:前提として、CSとプロダクトの距離の近さは創業期からずっと変わっていないし、今も保たれています。「CSも一緒に事業をつくっていく一員」という姿勢は、メルカリらしさの1つですよね。そして、個人的に強調しておきたいのが「人」の部分です。CSはまさに人の組織なので、育成やメンバーの意見を吸い上げていく姿勢は引き続き大事にしていますね。
山田和弘(東京CS拠点、Director)
西垣:少し違う角度からお話しすると、変化のスピード感にフィットしていけるような組織にしてきた自負はあります。一般的にCSは変化が苦手な部分も多い。でも、メルカリCSは受け身になることなく「こうした方がいいんじゃないか」と他の部門へ積極的に提案するスタイルが定着しています。ここもずっと変わらない点だと思います。
山田:ただ、今までは「メルカリにおけるCS部門」という機能別の組織ゆえに課題もありました。たとえば、CS以外の機能へ広げづらかったり、中長期的な業務の意思決定ができなかったり。さらに、メルペイやソウゾウといったグループ会社が増え、ビジネス環境の大きな変化に、私たちも対応していく必要がありました。そのため、工藤さんがCS組織へジョインした後は、体制を再構築するためにしばらく奔走していたんです。
小野:工藤さんが加わり、CS組織は具体的にどうなったんですか?
工藤:そもそも、組織とは株のようなものなんですよね。株とはその名のとおり、しっかりとした幹や枝葉を蓄えるために必要な「根っこ」です。うまく育てられれば切り分け、さらに大きく育てていくことができます。
工藤 節(VP of Customer Service)
工藤:メルカリは創業以来、CS組織を「サービス拡大の要」として重要視してきました。おかげで、丈夫な株はできあがっていました。しかし、それ1つだけでは、幹も枝葉も増やせません。そのため2021年3月、メルカリCSは機能別の組織から、事業部制の組織へと体制を変更。事業部制にすることで、まずは集権型から分権型へシフトさせました。CSメンバーの一人ひとりが経営視点を持って取り組み、事業部内で完結できるようにしていくことが狙いです。これが実現すれば、意思決定のスピードも速くなるはずだと考えています。
変革したけれど…「役割・バリューは変わっていません!」
小野:お話を聞いていると、CS組織を大きく変革させたのだなと感じます。戸惑うCSメンバーはいなかったんですか?
山田:この変化は、メルカリCSがデータドリブンな組織になってきたことの証だとも思っているんです。これまではCSの中であまりデータは取れていなかったんですが、今はデータをとれるようになって、ビジネスの正確性は増してきています。
西垣:私が知る限りでも、新組織を発表したときは「自分はこの事業を担当したい」と立候補するような声が多く寄せられました。とは言え、戸惑っているメンバーがいることは確かでしたので、新組織の目標や意図をディスカッションする機会を細かく設けるなどのフォローもしています。
西垣道仁(東京CS拠点、Director)
工藤:僕は、メルカリCSがグループの事業を牽引する存在にしたいんです。言うならば、CSがうまくいっていない会社は、うまくいきません。メルカリCSは、いわゆるコンタクトセンターやコールセンターではなく、事業に対して付加価値をもたらす生産性があります。なぜなら、僕らはメルカリ・メルペイのお客さまに一番近い立ち位置であり、お問い合わせを通じて生の声を聞いています。そこで蓄えた知見は非常に重要なもので、メルカリグループ内でも何か新たに始めるときは「CSと一緒に」という選択肢が自然になってきている。それくらい、CSはメルカリグループのなかでも重要なポジションにいる。今回から始まった変革は、さらにバリューを発揮するためのものでもあるんです。
小野:体制が変わったことで、メンバーの意識はどうなりましたか?
西垣:これまではマネージャーからの方針を待っているような雰囲気でしたが、徐々に変化してきています。まだまだ手探り段階ですが、「来クォーターは何しよう?」「何をもって成果とするか」みたいなディスカッションは増えてきました。少しずつ意識改革は進み、当事者意識のようなものが芽生えてきていますね。
山田:もちろん個人差はありますが、責任が明確になりましたよね。そこに合わせて「自分にはこういう権限が欲しい」「こういうことを決めにいきたい」という意思がはっきりしてきているように思います。人によっては、自分たちの仕事をPL(損益計算書)で考えられるようになってきて、オーナーシップは確実に出てきている。
工藤:マネージャーのMTGでも、発言しやすくなったように思いますね。今まではどこか他人よがりなところがあったけれど「事業として考えるとどう?」というコミュニケーションが生まれたことで自分ごととして考えられるようになってきている。ただ、別にCSに限った話ではないんですよね。事業として考えるようになったらどのチームもそうなる。同時に自分たちの限界も思い知らされるから、横との連携も強くなっていくわけです。それによって、今までできなかったことができるようになっていってほしいです。
今メルカリCSに加わるメリットは「他社では経験できないユニークさ」
小野:CS組織は「分権型の事業部制組織」へ変わったわけですが、今のところ順調?
工藤:組織を変えたばかりなので、課題は山積みです!具体的なビジョンがまだないので、メンバー育成の方針も定まっていませんし、事業の動かし方・オペレーションの周知も甘いところがあります。そういった課題を解決しつつ、メンバーはもちろん、マネージャー、シニアマネージャー全員がオーナーシップを持って動ける状態にしたいですね。
小野:今のフェーズでCSメンバーとして加わるメリットは何ですか?
工藤:共通しているのは「プロダクト開発に参画していけること」だと思います。だから、単なるオペレーターで終わらない。この経験は、他の会社ではなかなかできないし、いずれは他の会社から喉から手が出るほど欲しい人材に成長できると思います。
西垣:メルカリCSでは、自分のパフォーマンスが想像以上に多くのお客さまに影響を及ぼすことになります。緊張感を持って意思決定していく点はかなりユニークです。1つのアクションに対して、お客さまがポジティブに捉えてくれたら数字に反映されるし、逆も然り。
山田:いわゆるコンタクトセンターやコールセンターとは成り立ちも事業への関わり方も違うので、得られる経験や世の中に提供している価値も異なります。世の中に与える影響力と比例した責任の重さが、メルカリCSにはあります。その分、慌ただしく動き回ることもわりとあるんですけれど(笑)。CSでは常に複数の改善が走り続けています。CSは定型化された価値を安定的に回していくイメージがあるかもしれませんが、僕らの場合は、プロダクト改善や変化への意識がすごく強いんです。
あと、メンバー同士で受ける刺激は大きいと思います。プロダクト開発メンバーには優秀な人が多いから、一緒に働くだけで鍛えられる。メルカリの強さはプロダクトや知名度だけではなく“人”なんですよね。だから、うまくいかないことがあったとしても力を合わせて乗り越えていける。それがメルカリのいいところです。
西垣:リーガルやコーポレートのメンバーもメルカリが好きなので、「もっとこうした方がいい」という意見をみんな持っているんですよね。つまりもっと会社をよくしたいという意識がある。そういう会社はすごくめずらしいと思います。
「メルカリCSでしか、働きたくない」
工藤:こんなことを言うのはちょっとあれかもしれないのですが、僕らが人生を全うしたあとも、メルカリCSは残り続けるくらいの存在にしたいんですよね。
小野:雄大!
工藤:これはわりと本気で考えていることでもあります。メルカリCSで働くメンバーたちによる知見が事業のマイルストーンになるだけでなく「メルカリCSは楽しかった」と思ってもらえるような組織にできたら、これ以上に嬉しいことはないですね。
写真手前が小野実沙子(メルカリ福岡CS、HR担当)