メルペイがミッションに掲げている「信用を創造して、なめらかな社会を創る」で、重要な役割を担っているのがCredit Design(クレジットデザイン、以下CD)チームです。…と書くとカタ〜いイメージもありそうですが、そこにはキャリアもバックグラウンドもさまざまだけれど「信用をカタチづくるおもしろさ」に魅了された、なかなかゆかいなメンバーが揃っておりまして!
そんな彼らの個性豊かな人柄に触れつつ「あなたにとって信用とは?」と聞いちゃう本企画。今回はCDチームでサービスデザインを担当する成澤真由美(@narico)と別府祐樹(@beppy)が登場します。聞き手は、CDチームのプロダクトマネージャーである鍛 哲史(@kj3104)です。
※撮影時のみマスクを外しています
この記事に登場する人
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成澤真由美(Mayumi Narisawa、@narico)DeNAで多くの新規事業のUI/UXデザインを担当。その後Kyashにて物理カードや新機能のUI/UXを手がける。現在はメルペイのProduct Designer 兼 Design Manager としてメルカリアプリに決済・与信・暗号資産の体験を融合させるプロダクトデザインを推進中。 -
別府祐樹(Yuki Beppu、@beppy)フリーランスとしてスタートアップの新規事業の立ち上げにデザイナーとして参画。2017年にメルカリグループのソウゾウに入社し地域コミュニティアプリ「メルカリ アッテ」を担当。その後メルペイに異動し、メルペイスマート払い・メルペイスマートマネーなどPJの立ち上げからGrowthに関わる。 -
鍛 哲史(Satoshi Kaji、@kj3104)大学在学中にWeb、ゲーム、VRの事業を立ち上げたのちブロックチェーン企業の創業に参画し日本事業のプロダクトの責任者として従事。海外の国立銀行でのプロジェクトや日本のKYC高度化プロジェクトなどを進行。2018年5月にミッションに共感しメルペイに入社し、メルペイスマート払いをはじめ、さまざまなプロジェクトに取り組む。
メルペイ入社の決め手は「メルカリがあるから」
@kj3104:@naricoさんはメルペイへ入社する前まで何を?
@narico:DeNAで4年間、デザイナーとして働いていました。そこでリアルなクレジットカードの設計をしていたんです。その役割がいったん落ち着いたので、メルペイへ転職しました。
@kj3104:なぜメルペイだったんですか?
@narico:クレジットカードを設計しているときに「使ってもらうことの難しさ」にぶつかったんです。というのも、金融事業は「お金を使ってもらうきっかけ」みたいなものがないと、体験設計しづらいところがあります。デザイナー目線でも、お客さまの「きっかけ」を押さえられないとUI・UXを考えるのは大変です。
その点、メルペイに関しては、メルカリという「人が集まるプラットフォーム」がある。「だからこそ僕らは金融事業をやるんだ」と青柳さん(メルペイ代表取締役CEO、青柳直樹)が話しているのを聞いて、働きたいと思ったんです。あと、「失敗続きの元CTO」として自己紹介をしていた曾川さん(メルペイ取締役CTO、曾川景介)も魅力的でした(笑)。そして2018年に入社し、昨年からはマネージャー業務もしています。
成澤真由美(@narico)
@kj3104:@beppyさんは?
@beppy:実は僕、大学卒業後からずっとフリーランスだったので、メルカリが「初めての会社勤め」なんです。もともとは2017年に初代ソウゾウへ入社し、地域コミュニティアプリ「メルカリ アッテ」のサービスを担当していました。サービスクローズ後、メルペイへ異動。動機は@naricoさんと同じで、メルペイがメルカリというサービスと密接につながっているのが面白いと思ったからでした!
@kj3104:実際にメルペイへ異動してみてどうでしたか?メルカリ アッテとメルペイだと、価値観も違うので。
@beppy:フリーランスでもソウゾウでも、30人未満のスモールチームで仕事をすることが多かったんです。それに、サービス内容もわかりやすかった。メルペイはすでにある程度の組織規模があり、デザインも組織化されていました。1つのサービスを十数名のデザイナーが関わってつくっていく過程は初めての体験でしたね。
メルペイでのリデザインはやりやすい?やりにくい?
@kj3104:お2人は今、どんな仕事を担当しているんですか?
@beppy:CDチームではメルペイスマート払い(翌月払い)とメルペイスマート払い(定額払い)のデザインを担当していました。特に定額払いは立ち上げから関わっていて、メルカリのお客さまにこの新しい機能をどう伝えるのかを、メルカリのプロダクト開発チームのPMやデザイナーたちと一緒に考えていました。あと、メルペイスマートマネーも担当していました!
最近ではActionable History(アクショナブルヒストリー、2021年10月1日より段階的にお客さまへ開放予定)という、メルカリ内の残高やポイントだけでなく、決済履歴を見られる機能を担当していましたね。これがあることで、お客さまは「何にどれくらい使ったのか」がわかり、自身のお金の動きを定点観測できるようになるんです。
別府祐樹(@beppy)
@kj3104:履歴を確認できるのは便利ですね。
@beppy:そうですよね。メルペイのActionable Historyでは、履歴を確認することで「お客さまの次のアクションへつなげる」ができればと思っています。決済履歴を起点にメルペイ側から何かしらのサジェスチョンをしつつ、お客さま自身が「こういうことに困りそうだ」「先々でこういった出費が発生しそうだ」と気づけるものにできればと思っていました。
@kj3104:@naricoさんは?
@narico:私はマネージャーなので、基本的にはメルペイでのプロジェクトはすべて参加しています。インターフェースの細かいところをチェックしたり、カスタマージャーニーをもとにアイデアを出したり。メルペイは新しい機能や事業がどんどん入り込んでいる状態なので、どの画面に何を表現できていればいいのかを考えることも多いですね。
なので、私もActionable Historyの設計を担当しました。@beppyさんも話していたように、この機能はただ決済履歴を見られるだけではなく、これをもとにお客さまがライフプランを考えられるようなものにしたかった。そのためにはどんな情報があればいいのかを、お客さま目線と事業目線の両方を掛け合わせるようにつくっていました。とはいえ、どちらかというと私は「イチからデザインする」ではなく、おもに「リデザイン(完成したデザインを最適化)」していますね。
@kj3104:リデザインとなると、関係するPMも多くて調整が難しそうなイメージもありますが?
@narico:それが…難しくはないんだなぁ。
@kj3104:つまり、何も考えていないPMが多い?(笑)
鍛 哲史(@kj3104)
@narico:違う違う!すごくやりやすいという意味です(笑)。メルペイのPMは非常に柔軟なメンバーばかりで、いい意味でデザイナーを放置してくれるし、締切が近づけばリマインドもしてくれる。うまくまとまらないところがあれば「こことここだけ認識をあわせて進めましょう」と潔く決断もしてくれる。デザイナーの意見を引き出してくれるパートナーだと思っています。本当にありがとうございますって感じです(笑)。
@kj3104:我々PMこそ、いい話をありがとうございます(笑)。
「わかりやすいデザイン」と「お金の負」のバランス
@kj3104:金融事業ならではの難しさを感じるところはありますか?
@beppy:うーん、やはり特徴的だなと感じたのは「分岐」の部分ですかね。そもそも、ひと口に「清算画面」と言えど、いろいろ分岐させていたりします。具体的にはコード決済やバーチャルカードなど、支払い方法によって画面が変わるところですね。CDチームではメルペイスマート払いや定額払いも開発していましたが、それぞれの契約状態による分岐もあります。メルペイスマート払いでは、何も契約していない状態であれば個別信用購入斡旋という状態になるし、契約していれば包括信用購入斡旋になる。こういった条件によって、表現や履歴に出す項目、注意文言が変わります。そこは…難解でしたね。
@kj3104:それは僕も感じます。分岐が多い=パターンも多いので、それぞれ補足文言を入れる必要もあったりします。そうすると、文字が多いUIになってしまい非常に悩ましい。
@beppy:僕は金融領域のサービスは初めて参加しているんですが、@naricoさんと同じ気持ちですね。できるかぎり、お客さまにわかりやすい表現にしたい。法的要件で「この画面にこの要素を入れなければならない」ということはよくあるのですが、それをそのまま入れると絶対に理解できないものになる。そこは、PMと細かく話し合いながら、言葉遣いや体験設計をしますね。
同時に、わかりやすすぎると「お金の負の側面」を与えてしまうこともあるのかなと思うんです。先ほど僕は「お客さまにわかりやすい表現にしたい」と話しましたが、お金を使わせすぎてしまうのは避けたい。そして、お金を借りれば一時的な負は解消されますが、当然ながら返済する義務が発生します。お客さまが「これなら返済できる」となれるわかりやすさや透明性がある設計にしないといけない。ここは、僕が感じている難しさです。
@kj3104:それはマーケティング観点でも同じことが言えそうです。メルペイを多くのお客さまに使っていただきたい気持ちはあれど、@beppyさんが話していた観点は絶対に欠かせないですし。
@beppy:そうですよね。お客さま体験とグロースの連携は、まだまだ手探りです。メルペイには、メルカリという「不要品を売買できるプラットフォーム」があり、売上金を返済に当てられる特徴を、もっと伝えていきたいですね。
メルペイ開発で陥りがちな「メルペイ脳」とは何か
@narico:@beppyさんの話の続きになるんですけど、お客さま目線になるとついあれこれといろんなものを付け足したくなるんですよね。ただ、理想は1画面1目的1アクション。また、メルカリというサービス自体が「売り買い」の考え方がとてもシンプルです。メルペイでのデザインも、その考えから外れないようにしていますね。
@beppy:そうなんですよね。メルペイは、メルペイのことばかり考えてつくることはできない。こうした偏りを、僕は「メルペイ脳」って呼んでいるんですけど…。メルペイでの考え方に偏ると、当然ながら、メルカリのプロダクト開発チームとのコミュニケーションがすれ違ってしまいます。これは、メルペイへ異動したばかりのころによくしていたミスでもあります。今は、「メルカリを使うお客さまは何を考えてこの画面を見ているのか」を意識しつつ、かつメルカリのプロダクト開発チームを最初から巻き込んで開発するようになりました。
@kj3104:メルペイ脳、わかる。僕も「ペイ脳ですね」と、メルカリのプロダクト開発チームのメンバーによく言われます(笑)。前提として、メルカリというサービスを入り口に訪れたお客さまについて、メルペイの視点だけで考えてはいけないんですよね。
@narico:組織は違えど、メルカリ、メルペイ、ソウゾウ、メルコインは同じフリマアプリ「メルカリ」の中にあるサービスをつくっています。1プロダクトをいろいろな組織のデザイナーがつくりあげていくというのは、日本ではそんなにないと思うんです。ここは、メルカリグループの一番の特徴かもしれません。最近ではデザインシステムが実装レベルでも実装・運用されています。この規模でここまでのことができるのは、おもしろいですね。
@beppy:1プロダクトで、それも今は1,900万人くらいのお客さまが使ってくださっている。そこへ新たなサービスや機能が加わっているし、せめぎ合っている。それをデザイナーとしてどうわかりやすくするかは、挑戦しがいがあります。デザインシステムを活用しながら、「それはわかりにくくない?」みたいな議論をグループ横断で続けていくんだろうと思っています。
@narico:ですね。マネージャー間でも、メルカリ・メルペイ・ソウゾウですり合わせはしています。そうやって、議論し続けていくんでしょうね。
誰かと誰かがつながり、その行動から信用が生まれている
@kj3104:では最後にこの質問を。@naricoさんと@beppyさんにとって「信用」とは?
@narico:何かサンプルをもらっていいですか?(笑)
@kj3104:前回の@nobbyさんと@yyuukaさんは、「今までは供与する側の一方通行でした」「だから双方向で築くものだ」と話していました。
@beppy:僕は「客観的な信用」「ある関係値のなかで保たれる信用」の2つがあると思っています。前者は、肩書きや年収など「社会的に信用できるかどうか」。後者は友人の間で「あいつは信用できる」みたいに言われているかどうか。金融事業では、特に前者に該当する方にお金を貸していました。でもメルペイは、お客さまの行動をもとに与信をします。つまり、二者間で担保される状態になるんじゃないかなと想像しています。
@narico:完璧な答えですね。
@kj3104:そんな@naricoさんは?
@narico:信用は、一人だけじゃ生み出せないものだと思っています。誰かと誰かがつながって、そのなかでの行動が信用を生んでいる。それが大きくなり、今の社会が存在していますよね。メルカリでは、売り買いするお客さまがつながり、そのなかで生まれた「いい行動」をもとに与信しています。それが大きくなれば、メルカリグループが掲げる「循環型社会」へつながる。私たちが今関わっている信用は、循環型社会の証になるかもしれませんね。