メルカリでは“いちお客さま”としてサービスを利用しているメンバーも多いです。もちろん、経営陣も例外ではありません。
では、普段は「経営者目線」でメルカリのGMV(流通取引総額)や事業の方向性を考えている経営陣が、目線を“いちお客さま”に変えてみたら…?
そこで今回のメルカンでは、メルカリジャパン CEOの田面木宏尚(@tamosan)と、CPO 兼 VP of AnalyticsのJeff LeBeau(@jeff)、CTOの若狹 建(@kwakasa)に直撃。“いちお客さま”目線で実現したい「メルカリの今後」を語ってもらいました。
この記事に登場する人
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田面木宏尚(Hirohisa Tamonoki、@tamosan)早稲田大学を卒業後、GMOクラウド株式会社へ入社。CS業務、サーバーホスティング事業、および新規事業の立ち上げ等に従事。2010年にピクシブ株式会社へ入社し、取締役としてシステム開発、マーケティング、グロース等の事業統括に従事。2016年1月より株式会社アニメイトラボ代表取締役社長CEOに就任し、小売領域におけるIT事業推進を実行。2017年2月に執行役員としてメルカリに参画。2018年10月執行役員メルカリジャパンCEO就任、2020年9月上級執行役員就任、メルカリジャパンCEO就任。 -
Jeff LeBeau(ジェフ・ルボー、@jeff)米国オレゴン大学でBSc Economicsを取得後、フリーランスとしてウェブサービスのローカライゼーションおよびグローバル展開の戦略策定に従事。2014年より、東京およびシリコンバレーでベンチャー、メガベンチャー企業に参画し、2017年6月にBusiness Operations ManagerとしてメルカリUSに入社。翌年、メルカリJPに転籍し、データを活用した事業戦略策定に従事。2020年に執行役員VP of Analyticsに就任し、2021年7月より現職。 -
若狹 建(Ken Wakasa、@kwakasa)東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。Sun Microsystems、Sonyでハードウェア(携帯電話・AV機器)関連のソフトウェア開発を担当。GoogleにてGoogle Mapsの開発に従事した後、2010年以降、Android OS開発チームでフレームワーク開発に携わる。Appleでのシステムソフトウェア開発、LINEでのLINEメッセンジャークライアント開発統括を経て、2019年8月、Director of Client Engineeringとしてメルカリに参画。2021年7月、執行役員 メルカリジャパンCTOに就任。
メルカリ経営陣の“しっかりパーソナライズされた”ホーム画面
ー突然なのですが、@tamosanさんと@jeffさん、@kwakasaさんにお客さま目線で「メルカリの今後」を話してもらいたいです!ちなみに、みなさんは普段からメルカリを使っている…?
@tamosan:使っていますよ。僕はスニーカーやTシャツを集めるのが趣味で、メルカリではマイナーなブランドや商品が出品されていないかをよくチェックしています。
@tamosanさんのメルカリTOP画面
ーNIKEのエアジョーダンなど、スニーカーがたくさんありますね。
@tamosan:僕が欲しいものはマイナーなものばかりなので、あまり市場にないんですよね。その点、メルカリでは不要になったら出品されます。最近では1985年のNIKEのビンテージを探しているので、保存した検索条件に合う商品を細かく確認していますね。お客さま目線で最初に要望を挙げるなら、「検索条件に合ったものが出品されたら自動で仮入札できる機能がほしい」でしょうか(笑)。
ーなるほど(笑)。@kwakasaさんは?
@kwakasa:僕は同一アカウントで複数端末を使っています。メルカリはWeb版もあり、いろいろな場面で使えるので出品・購入がはかどりますよね(笑)。
@kwakasaさんのメルカリTOP画面
@kwakasa:イヤホンやキーボード、スピーカーなどのガジェットを見るのが好きなんです。おかげでパーソナライズされていて、アプリを開くとガジェットがずらりと並びます。
ーがっつりパーソナライズされていますね(笑)。@jeffさんはどうでしょうか?
@jeff:僕のアプリトップ画面はこちらですね。僕の趣味はスケボーなんです。なので、本体はもちろん、ウィールなどのパーツをメルカリでよく検索しています。
@jeffさんのメルカリTOP画面
お客さま目線で1年後・3年後のメルカリを書き出してみると?
(それぞれが共通のドキュメントに書き出すことになったため、ここではその様子をお届けします)
@jeff:ドキュメントをつくったので、そちらに書き込んでいきましょう!
ささっとメモ用のドキュメントを作成する@jeffさん。細かく色分けしようとしているところ
@tamosan:いいですね!とにかくアクションを書き込んでいきましょう。「マイナーな商品がよく売れる」「発送をより身近に簡単にしたい」…書き始めるといろいろ出てきますね。
「みんなのメルカリ文化祭」という、お客さまにも参加いただいたイベントを開催したことがありました。そこでは「アカウントを切り替えたい」という要望もあったんですよね。というのも、普段は「ファッション雑貨」をメインにしているけれど、そこで突然「子ども服」を出品することになったら…出品したものが並ぶページはちぐはぐしてしまいますよね。そういったときに、アカウントを切り替えられるようにもできるといいかもしれません。あとは、最初から寄付を目的に出品できたり…。
会話と同じスピードでドキュメントがどんどん埋まっていく…
@kwakasa:現状では、売れてから「寄付するかどうか」を決められる仕組みです。寄付目的での出品だと、買い手も意図をくんで買ってくれるようになるかもしれませんね。あ、グローバル観点やD&I観点も入れていいですか?
@tamosan:バシバシと、三者三様に書き込んでいきましょう!
@jeff:メルペイやソウゾウの要素ももっと強めたいんです。メルペイが使えるお店をマップで表示する機能はあれど、興味のありそうなお店を通りかかったら通知されるようなものはない。それができればメルペイを使う機会はぐっと増える気がするんです。あと、出品時に指定できるブランドは増やしたい。
@kwakasa:マスターデータのアップデートですね。個人的には、関係ないバナーやプッシュ通知が出ないようにしてほしい。そのあたりにもパーソナライゼーションの要素を入れたいです。
@tamosan:発送サイズも自動で判別できるといいですよね。自動で判別できれば「これはネコポスで送ればいい」とすぐにわかります。出品に慣れないうちは、用心して大きめのサイズで送るお客さまもいらっしゃるので…。そのあたりの不安やコストを省けるといいですね。
@kwakasa:大きめのサイズで送ってしまう気持ち、わかります。僕も慣れないころはサイズをGoogleで検索したり、わからなかったら少し大きめのサイズで送ったりしていました。
ポイントは「パーソナライゼーション」「ファウンデーション(保守)」「Data/AI」
ーでは、書き出してもらった“いちお客さま”として1年後には実現したいことを教えてください!
“いちお客さま”として書き出した内容
@tamosan:まず、メルカリのサービスとして優先度が高い要素がこの3つです。
・ パーソナライゼーション
・ ファウンデーション(保守)
・ Data/AI
@tamosanさん(メルカリジャパン CEO、田面木宏尚)
@tamosan:例えば、僕が書いた「写真を撮るだけでほぼ100%商品名が自動的に出てくる出品体験」はData/AI、「発送をより身近に、簡単に」はファウンデーション、「関係ないプッシュ通知がいかないようにしたい」はパーソナライゼーションに該当します。メルカリではすでに、この3つの要素を中心に開発・改善を進めています。僕らがお客さま目線で挙げたものも、この3つのどれかに紐づきますね。
個人的には、メルカリを通じてもっとワクワクしたい。なので、アプリを開いたらすぐに気になる商品があるなど、パーソナライゼーションの精度をどんどん上げていきたいです!
@jeff:パーソナライゼーションという意味では、「探しているものがすぐに見つかる」だけでなく、気になる商品を提案してくれる状態にしたいですね。個人的には、スケボーに関連したブランドをもっと追加したい(笑)。でも、マスターデータはまだ完璧ではありません。都度対応はしているんですが、もっと充実させたいところです。
@jeff(メルカリCPO 兼 VP of Analytics、Jeff LeBeau)
ー@kwakasaさんはファウンデーションとして「D&I(多言語対応したい、アクセシビリティ)」と書いていますね?
@kwakasa:メルカリが世界的なマーケットプレイスを目指すうえで、多言語化とアクセシビリティは大事なステップの1つです。どちらもすでに取り組んでいるものではありますが、もっとできることはあると思っています。
@kwakasa(メルカリCTO、若狹 建)
ーそして3年後は「Global Marketplace」として、以下を実現したいと書かれていました!
・ 商品にスマホをかざすだけで簡単に出品でき、自動的に複数言語に対応
・ 居住している国に関わらず売買できる
・ フルクラウドでサービスが稼働
・ あらゆる人が簡単に出品できるようにし、世界で一番充実したファッションアイテム(スニーカーなど)の品揃えを誇る
・ 国を越えてデジタルコンテンツを売買できる
・ 日本国民の2名に1名が毎月購入出品を行っていて、1次流通、2次流通の- 循環が加速し、日本の経済全体の活性化、および社会のサステナビリティに貢献している状態
・ 環境に依存することがなくあらゆるお客さまがメルカリを使えている状態(スマホがなくても売買できる)
@tamosan:やはり、先ほど話していた「1年後」より、ぐっと楽にメルカリを使えるようにしたいですよね。@jeffさんが書いた「スマホがなくても、あらゆるお客さまが売買できる」なんて、すごくいい!究極は、スマホがなくてもやりとりできるようなところまで拡張したいです。
@jeff:「居住している国に関わらず売買できる」は、@kwakasaさんが書いたものですよね。これは、日本国内など関係なく、さまざまな国で売買ができる状態ってことですか?
@kwakasa:そうです。それこそ、我々が目指したいグローバルマーケットプレイスですよ!
お客さま目線で書き出してみたら「裏版ロードマップ」になった
ー今回は突然「お客さま目線でメルカリを考えてほしい」とお願いしてみました。結果的に、お客さま目線ながらもサービスとしての方向性と合致するところが多かった印象です。みなさんは、どうでしたか?
@kwakasa:我々はビジネスKPIを高めていくための方針やロードマップを話し合うことは多いですが、いちお客さまとしてのいわゆる「個人的な要望」をここまで言える機会はなかなかないので、とてもよかったです!
@jeff:経営目線でのロードマップはよくつくっているので、今回は「裏版」な感じもありましたね。
@tamosan:ですね。先ほどからお話ししているように、僕はマイナーなブランドをメルカリでよく探しています。マイナーなだけに、出品されてもすぐに気付けないんですよね。探そうとしても、ブランドが対応していなくて見つけられなかったりします。個人の想いとしては、メジャー・マイナーに関わらず、ファッションアイテムが世界で一番充実したサービスになってほしいです。