暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うことを目的に、メルカリの子会社として2021年4月28日(水)に設立されたメルコイン。所属するメンバーの年齢は27〜61歳と幅広く、キャリアやバックグラウンドもバラバラ。一体どんなメンバーが、どんな思いでメルコインに集まってきたのでしょうか?
そんな疑問を1on1のバトン形式で聞いていく本企画。2人目として登場するのは、NFT関連のプロダクト開発を行う@arakawa。聞き手は前回記事で@arakawaを指名した、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)事業開発担当の@nagaiです。
仮想猫のブリードゲームにハマり、NFTの道へ
@nagai:@arakawaさんと初めてお会いしたのはメルコインではなく、今年6月くらいに開催された他社メンバー主催の勉強会でしたよね?会社というよりもコミュニティで知り合った印象です。
@nagai
@arakawa:そうですね。そのときお話はしてないですが、@nagaiさんの名前はいろいろな勉強会で頻繁にお見かけしていました。その頃、@nagaiさん「メルコイン入社します」というツイートをされていましたよね?僕も当時メルコインから内定をもらっていたので、「すごく強力なメンバーがメルコインに入るんだな」と思った記憶があります。
@nagai:ご一緒できてよかったです!そもそも@arakawaさんは、いつ頃からブロックチェーンに興味を持ち始めたのでしょうか?
@arakawa:僕は10年ほどエンジニアをやっているのですが、ブロックチェーンという技術をしっかりと理解し始めたのは2017年ぐらいですね。「既存の技術を綺麗に組み合わせた、今までにないものが出てきたな!」と感じ、本業にしたいと考えるようになったんです。最初は個人的な趣味としてブロックチェーンを使っていたのですが、途中からNFT領域にジョブチェンジ。前職のメタップスでは直近2年ほどイーサリアムを使ったNFTのマーケットプレイスを開発していました。
@arakawa
@nagai:以前からイーサリアムを使われているんですか?Flowも詳しいと聞いており。
@arakawa:もともと僕がNFTを好きになったきっかけは「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」という仮想猫をブリードするゲームでした。そこからNFTをはじめ「CryptoKitties」を運営しているDapper Labsというカナダの会社に興味を持ち始めたんです。
2019年ごろにDapper Labsは、Flowという新しいブロックチェーンを作ると発表。この頃からFlowの技術面を調べたり、実際にコードを書き始めたりしました。その後Dapper LabsがFlowブロックチェーンでスマートコントラクトを書くコンテストを開催したので、参加したら優勝しまして。Dapper Labsの人から日本のコミュニティリードというポジションを任せてもらえることになりました。今は、50人くらいの日本の開発コミュニティで、Flowを使ったプロダクト開発や勉強会を開催しています。
@nagai:Dapper Labsといえば、NFT業界では世界一のヒットメーカーですよね。
@arakawa:そうですね。ブロックチェーン領域だとプラットフォームとアプリケーションの両方を手がけている会社ってあまりないんですが、Dapper Labsは両方やってるんですよ。それが強みだと思いますね。宣伝っぽくて恐縮ですが(笑)。
ユーザーが主体的に行動できることこそNFTプロダクトの魅力
@nagai:どのような想いを持ってメルコインに入社したのでしょうか?
@arakawa:ここ数年で、世の中にブロックチェーンのプロダクトがいろいろ出回るようになったと思います。でも、まだまだ詳しい人でないとプロダクトを触ることも難しく、現状ソフトウェアやサービスについても品質が高くないなと感じています。そんな中で「ちゃんとしたわかりやすいもの」をつくりたいなと思ったのが動機ですね。
もともとメルカリのアプリを使っていて、メルカリは裏側で複雑な処理を行なっているにもかかわらず、簡単に誰でも使えるようなUIに仕上げているのがすごいなと思っています。ブロックチェーン領域でも、そういうわかりやすいものを作りたい気持ちが強くありますね。
@nagai:「品質がまだまだ」とは日本に限らず、海外のNFTブロダクトにも感じたんですか?例えば最近だと「NBA Top Shot」とかもありますよね。
@arakawa:まさに見習いたいサービスだなと思いますし、そういったわかりやすいものを作りたいです。
ただ、ブロックチェーンの良さをもっと活かす方法があると思っています。NFTは、それ自体を持っていることでお客さまが主体的かつ能動的に何か行動できたり、それがブロックチェーンに刻まれたりすることが面白み。特にFlowブロックチェーンだと、スマートコントラクトを組み合わせていろいろなことができるんです。
しかし、企業の場合セキュリティ的な懸念もあり、今はまだオープンに使える状態にはなっていない。これから時間をかけて徐々にスマートコントラクトが持つ組み合わせ可能な力、コンポーザビリティを活かせるようになれば、もっと面白いものが作れると思っています。
NFTプロダクト開発では「意義あるもの」を作りたい
@nagai:メルコインではどのような業務を担っているのでしょうか?
@arakawa:メルカリが長年培ってきた堅牢なマイクロサービスの作り方に則り、NFT関連のバックエンドのプロダクト開発を進めています。実際にどのブロックチェーンを使うのかという選定や調査をしながら、将来的にブロックチェーンに接続される部分を重点的に開発していますね。
@nagai:ちなみにチームはどのようなメンバー構成ですか?
@arakawa:Frontendエンジニアが2人、Backendエンジニアが僕ともう1人、インフラ周りが2人で、合計6人ですね。
@nagai:少数精鋭ですね。今関わっているプロジェクトやサービスについて、何か感じていることがあれば教えてください。
@arakawa:やはりNFTで事業をスケールさせるのであれば、どのポジションで戦っていくのか決めなきゃいけないと思います。まずは「NFTを自分たちで実際に作って売る」をやろうとしていますけど、それ以外のマーケットプレイス部分、他のプロダクトのNFTを扱うものなども同時並行で進めていきたいなと思っています。ただいずれにしても、「儲かるからやる」という短期的なものではなく、長期的に見て意味があるNFTプロダクトを作りたいですね。本当に作る意義のあるプロダクトであれば、多少遠回りしてでも作りたいと思います。
@nagai:すごくわかります。ちなみにブロックチェーンのプロダクト開発っていろいろな知識が必要だと思うのですが、情報収集などで何か心がけていることはありますか?
@arakawa:ブロックチェーンに関する新しい技術は、とりあえず触るようにしています。加えて基本的な開発と応用、どちらも一緒に進めていくことが大事だなと実感しています。
例えばメルコインでは応用的なところをやっていますけど、コミュニティの活動ではブロックチェーンのライブラリ・ミドルウェア的なものを作ったりしていますね。
夢は書斎のデジタル化
@nagai:ブロックチェーンを通じて叶えたい世界観など、何かイメージはありますか?
@arakawa:僕はずっと、自分の書斎をデジタル化したいと思っていて。
@nagai:面白い!
@arakawa:例えば、今は本や電子書籍などいろいろなフォーマットがあります。でも、そのフォーマットはいつまで続くかわからないじゃないですか。せっかく買ったものもサービス終了になって突然全部なくなっちゃうこともありえる。そういうことを解決したいんです。
ブロックチェーンは、みんなが見られるパブリックな場所であって、デジタルだけどデータとして永続的な意義のあるものにしたい。ブロックチェーンを使うことで、誰もが不幸にならない世界にしたいですね。
@nagai:それができたら、すごくいいですよね。
@arakawa:ブロックチェーンのすごさは、検証できることだと思っているんです。IPFSなどの分散ストレージを使うことで、ブロックチェーンに入り切らない大きなサイズのデータも扱うことができます。IPFSのURLはコンテンツそのものを表しているので、URLだけブロックチェーンに記録しておくことで、それが改ざんされていないことを検証できます。元データは、分散ストレージ上に置いておくこともできますし、自分の手元にだけ持っておくこともできます。
@nagai:なるほど、データは自分で持っておくという方法もあるんですね。ちなみに検証する際の規格は何になるんでしょうか?
@arakawa:NFTの規格もその一つだと思います。他にも、ブロックチェーンのデータを、あるルールに従って、インデックシング(※検索しやすいようにデータベースに記録すること)する方法も標準化されていくべきだと思います。
@nagai:面白いですね。ちなみに@arakawaさんはNFTをいろいろ持たれている印象があるんですけど、どのようなもの持っていますか? 気になっているものもあれば教えていただきたく。
@arakawa:Dapper Labs主催のスマートコントラクトのコンテストで優勝したときにもらった「CryptoKitties」の特別な猫は家宝ですね。コレクティブルやアート系もいろいろ持っています。あとはジェネラティブアートを個人的に勉強してて、Processingとかジェネラティブに動くものを作ったりしています。最近はArtiStakeというアーティストのための支援プラットフォームをお手伝いさせてもらっています。そこで発行した記念NFTトークンが、僕が初めて作ったジェネラティブアートですね。マウスのカーソルの位置によって模様が少し変わるようになっています。
#ArtiStake の #NFT #giveaway, スタートしました!
今回は、ArtiStake公式Twitterアカウント開設&先日発表されたFracton Incubation 2021 ArtiStake採択記念NFT!マウスの動きで変化するgenerative artになっています!
ぜひ@ArtiStake_ フォローお願いします!#NFTdrop #NFTGiveaway #NFTCommunity https://t.co/BgILExlHmZ— marimosphere (@marimosphere) September 22, 2021
@nagai:クリエイターとしての活動もされているんですね!
@arakawa:@nagaiさんは、クリエイティブ・コモンズ(CC)の理事もやっていますよね?個人的に好きで、ライセンスを二次創作とかで使いたいなとずっと思ってました。
@nagai:私としても@arakawaさんの作品に使ってもらえたら嬉しいです。NFTが出てきたことで、これから著作権法とかCCも変わると思います。本日はいろいろと面白いお話をありがとうございました!次回は@arakawaさんが聞き手となって、@Ayaさんにお話を聞いてみてほしいです。