2021年7月から、これまでキャンペーンなどのマーケティング施策の推進を行うGrowth Productドメインと、メルペイタブの管理を行うDashboardドメインを担っていたGrowth UXチームが、GrowthPlatformチームに名称変更。
今回の組織改変により、チームで行ってきた施策のこれまでとこれから、PMの役割やエンジニア観点での変化などを、メンバーに話してもらいました。
※撮影時のみ、マスクを外しています
この記事に登場する人
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李 希成(Heesung Lee、@lee)2014年リクルートに入社し、教育サービスやマッチングサービスなどの各種新規事業のPMとして従事。2019年メルペイに入社し、各種グロース施策に従事。直近はメルペイスマート払いをはじめとする与信事業のグロースに取り組む。 -
宮前 宏一(Koichi Miyamae、@koichi)2009年スマホアプリの運営会社に入社。ソーシャルゲームの企画・運営などを担当の後、USで北米向けアプリの企画開発を担当。帰国後、新規事業立ち上げなどを担当し、2018年メルカリ入社。メルカリUSのPMとしてGrowth施策の推進・CRM基盤の開発などを担当。2019年10月メルペイに異動。現在は、大型キャンペーンやGrowth基盤などのPMを担当。 -
小川 芳樹(Yoshiki Ogawa、@yo-gawa)2013年DeNAに新卒入社し、ソーシャルゲームの新規タイトルの立ち上げや運用業務を通じて、サーバサイドおよびネイティブアプリの開発に携わる。2018年12月、バックエンドエンジニアとしてメルペイ入社。メルペイクーポンマイクロサービスのテックリードを経て、2021年7月よりGrowthPlatformチームのエンジニアリングマネージャーに従事。 -
庄司 はるか(Haruka Shoji、@cshow)2019年メルカリに新卒入社、各種メルペイキャンペーンのプロダクトマネージャーとしてキャリアスタート。2020年1月からはDashboard(メルペイタブ)のプロダクトマネージャーを務める。
チームの歩みをおさらい。どんな施策を行ってきた?
ーまずは、これまでの振り返りから。Growth UXチームでは、今までどんな施策を行ってきたんですか?
@lee:チームで一貫して行っていることは「メルペイにおけるその時々の重要なグロースを、プロダクトサイドから支えること」です。“その時々の重要なグロース”とは、メルペイのサービスがリリースされた当初は本人確認済みの口座登録数を増やしたり、そのあとに「メルペイスマート払い」の利用を伸ばしたり。お客さまの口座登録数が増えてきた段階では、決済の規模を追ったりなどですね。
具体的な施策は、2019年にはメルペイに招待した人・された人のどちらもポイントがもらえるキャンペーン「すすメルペイ」、2020年にはポイント還元キャンペーンの「メルペイフィーバー」、行政的なところでは「マイナポイント事業」への参加もありました。最近では、「メルペイスマート払い」(以下スマート払い)や「定額払い」も始まっています。
@yo-gawa:2020年にはメルペイの本人確認を強化する狙いで、それらが完了した方を対象に、コンビニなどで「11円」から商品が買えるクーポンの施策も行いましたよね。お客さまに自信を持ってお得な体験を届けられるラインナップから、社内ではみんなで「神クーポン」と呼んでいました(笑)。メルペイクーポン機能は、2019年のメルペイリリース前はクーポン機能にグロース効果があるのか確証がなかったのですが、結果的に強力な武器になることがわかりました。
@cshow:GrowthPlatform内のDashboardチームでは、「メルペイタブ」の見直しもしていました。お客さまにとって体験の窓口となる「メルペイ画面」を再整理したり、メルカリアプリの中で「メルペイタブはどういう場所であるべきか」を再認識したりする施策です。メルペイの機能が増えていくに従って複雑になる画面を、年に一度くらいの頻度で整理し、アップデートしています。ここはお客さまの決済に関わる大事な画面なので、混乱を招かないよう慎重に開放する必要がありました。そのため、どうアップデートすべきかを常に議論し、見直しています。
ーさまざまな施策を行っているんですね。みなさんが関わった施策のエピソードもあわせて聞きたいです。
@koichi:「すすメルペイ」は第一弾と第二弾があって、私は第二弾を担当しました。通常のキャンペーンは1~2ヵ月など短期間のものも多いですが、「すすメルペイ」は当初2ヵ月という期間から延長し、トータルで5ヵ月間行うことになったんです。期間が長いため、1つのキャンペーンの中で「いかに波を作って盛り上げるか」を考えるところが大変でした。
@cshow:私は引き継ぎではありますがマイナポイント事業のPMをしていました。マイナポイントは国の事業である以上、細かい制約が多かったんです。変わったところでいうと、ポイントは「還元」ではなく「付与」と表現したり、マイナンバー事業のPRキャラクター「マイナちゃん」のアイコン利用方法に気をつけたり。他の事業者さんとの公平性という観点もあり、視点が増えるような施策でした。
@koichi:私は2020年12月から「定額払い」のキャンペーンも担当していたんですが、「定額払いをどうしたらお客さまに使っていただけるか」は一番悩んだところです。結果的に合計5回ほどこの施策に関わりましたが、そのたびにLPの構成を変えたり、アプリ内動線を変えたり、見せ方には毎回悩みながら工夫していました。
@lee:施策は回数を重ねるにつれて、「誰の何を解決するプロダクトなのか」という議論がどんどん深まっていますよね。スマート払いや定額払いを始めるにあたって、キャンペーンにおける「還元」はひとつのきっかけに過ぎない。そもそもお客さまの「便益」がないと、機能を使い始めるまでに至らないと思うんです。
そこで、スマート払いを利用するお客さま理解を深め、「欲しいものを無理なく逃さず買える」ことが届けたい便益と定義し、それを後押しする還元キャンペーンとして、クリエイティブなども仕立てています。そういった、「お客さまがやりたいこと」を後押しするきっかけになるのが、スマート払いや定額払いのような施策だと思っています。こうしてキャンペーンに向き合っていくと、必然的にプロダクトの本質に向き合うことになるのは、すごく印象的でしたね。
組織改変の意図と、改変で見える各PMの役割は?
ー次に、今回の組織改変の意図を教えてもらえますか?
@lee:まず前提として、「メルペイのグロースをプロダクトサイドから支える」という根幹の想いは変わりません。ただ、メルペイ事業が大きくなるにつれて、組織の役割を再定義しないと今後に立ち向えない。それが組織改変の大きな理由です。
今までは「決済」の機能だけだったものが、「後払い」や「送金」の機能ができたり、メルペイの画面にメルカリの体験が統合されたりと、今までよりもグロースの対象が多様になり、難易度も複雑さも増しています。そんな中、場当たり的にグロースを支えるだけではいけない。特にプロダクトという意味では、共通する機能・基盤を横断的に見て、システム開発や運用の観点から下支えするようなチームを編成するフェーズが今だと思いました。
李 希成(Heesung Lee、@lee)
ー今回のチーム改編では、PMの役割もグロースとプラットフォームという2つの観点で分けたときいています。各PMの役割もくわしく聞きたいです。
@lee:責務は分けているんですが、今後はグロースプラットフォームという役割の中で両方を担うことも出てくると考えています。そのためキッチリと分けるよりは、どちらに主たる責務を持つか、という考えが前提になっていますね。
@koichi:それを踏まえたうえでグロース観点のPMの役割は、マーケやアナリストと組んで、数値目標にコミットすることです。マーケのプランニングから参加し、「プランを実現するためにはどうしたらいいか」「こうすれば数字を伸ばせるんじゃないか」と、数値目標達成のために意見も提案します。そのためには、プロダクト開発だけに閉じないことも重要です。グロースのPMにとっては「プロダクトをどう作るか」以上に、「決めた期間や予算内でいかに目標達成できるか」を考え、数字に対してあらゆる手段をとることの方が優先度が高いです。
宮前 宏一(Koichi Miyamae、@koichi)
@lee:@koichiさんのおっしゃる通りだと思います。特にキャンペーンなどの施策は、お客さまの行動を強制するのではなく、行動を促すことが目的です。そのためには数字の達成だけではなく、それを追求する過程で「誰のどのようなニーズを満たすものなのか」を考え、それを後押しするキャンペーンやUXの改善を考えていくことも必要です。なので、グロースのPMは「お客さまを理解すること」が起点になるイメージですね。
ープラットフォームのPMは?
@cshow:プラットフォーム観点のPMの役割は、グロースに責任を持ちながらも、UXの面をも担保することです。「メルペイタブ」は、あらゆる機能にとってグロースのための武器となりうる広い意味でプラットフォームである場所ですが、だからといってあれこれ詰め込んでしまうと、お客さまは混乱してしまいます。どんなに大規模なアップデートであっても、お客さまの体験を最大限考慮するための交通整備をしっかりと担保する、プラットフォームの観点での役割だと思っています。なのでデザイナーさんとの協業もかなり多いです。
庄司 はるか(Haruka Shoji、@cshow ※写真右)
エンジニアリング観点ではどう変化した?
ーでは、@yo-gawaさんがエンジニアリングの観点で見て、組織改変の前後で変化したことはありましたか?
@yo-gawa:開発観点で言うと、これまでも汎用的な開発を意識していたんですが、やはりその場限りになりがちな側面はあったのかなと思います。今までの開発では、四半期ごとにグロース領域が変化していく中で、その時々に対応した開発…いわゆる縦の積み上げをしてきたと思っています。もちろん施策ドリブンの開発なので、事業数値に直結する点ではエキサイティングでしたね。でも、それがずっと続くと疲弊してしまう。これからはプラットフォーム観点で、これまで作ってきた武器を横展開できる開発がメインになっていくと思います。
ー現段階で、特に「変わってきたな」と感じることはありますか?
@yo-gawa:大きく変わったと思うのは、ロードマップドリブンでの開発を試みていることですね。そのおかげで、チーム内では以前よりも中〜長期的な開発についての議論ができるようになってきました。これまではエンジニアが施策にべったりくっついて開発に関わることも多かったんですが、今後はオペレーションはなるべく各施策担当のチームに任せて、エンジニアは新機能開発やプラットフォームとしての開発にもっと注力できる環境を作っていきたいです。
小川 芳樹(Yoshiki Ogawa、@yo-gawa ※写真左)
「負けず嫌い」大歓迎!GrowthPlatformチームに合うのはこんな人
ー最後に、「こんな人と働きたい!」というメッセージをください!
@lee:僕は現在、2つのタイプのPMを求めています。ひとつは、グロースが好きで責務を持てる人。もうひとつは、テクノロジーを介して組織全体にレバレッジがかかるようなシステム設計や、業務設計についての知見を持っている人です。
2つのタイプに共通するのは、お客さまのことを考えて「プロダクトやサービスをどう展開するか」「どうビジネスを伸ばせるか」を考えられるところです。それをUIやキャンペーンなどの表側から直接タッチするのか、システムなどの裏側から支えるのかについては、本人の興味やバックグラウンドを踏まえてでいいかなと思っています。
ーどんな人が合っていると思いますか?
@lee:負けず嫌いな人(笑)。なぜ負けず嫌いかというと、グロースはいかに仮説や問いを立てられるかが重要だから。仮説を立てて実践し、それがはずれても「次はこうしよう!」と思えることが大事だと思います。実際に数字をシビアに見ていくチームなので、「必ず達成するぞ」という負けず嫌い要素が関わってくると思います。あとは好奇心が強く、チームで動くのが好きな人ですかね。
@cshow:「負けず嫌いな人」は私も共感します。メルペイタブのアップデートのときには、お客さまから直接意見を頂戴する機会もあります。ご指摘を受けるたびに「そんな課題があったのか…」と頭を抱えつつ(笑)、「でも言われたからには絶対に解決しよう!」という強い意思があると、それが反映していけると思います。なので、数字的な仮説検証の繰り返しはもちろん、定性的なところでもそれは大事ですね。
ー他にはありますか?
@koichi:先ほど@leeさんも話していた好奇心も必要です。というのも、私は2年くらいチームに在籍していますが、最初は利用者数や決済回数のグロース、今は定額払い、今後はメルペイスマートマネー と、案件が次々と変わっているんです。そんな中で、新しい領域に対して好奇心を持ってキャッチアップして、楽しめる人が向いているのかなと思います。
チームでの仕事も、メルペイ内のリーガルやコンプライアンスチームなどを含めたさまざまな職種のステークホルダーとコミュニケーションを取りながら進めていきます。グループ横断の動きとして、メルカリ側のグロース基盤を開発するチームとのコミュニケーションも@yogawaさんを中心に進めています。プラットフォーム観点でもグロース観点でも、メルカリの体験といかに融合していくか、みんなでどう共通基盤を作っていくかなど、チームで動ける楽しさと難しさを両方楽しめる人がいいなと思います。
@cshow:「楽しめる」はキーワードですよね。やることはしっかり取り組みつつ「こういうアニメーションだとお客さまがワクワクするかも」といった遊び心を持っていたり、心地良いプロダクトをつくったときの喜びを、チームのみんなで分かち合ったりすることを楽しめると素敵だと思います。
@yo-gawa:エンジニアの観点で言っても、マインドはPMと同じです。むしろPMを支えられるマインドを持っていてほしい。このチームのエンジニアは、他部署他職種と関わる機会が多いので、自分のチームに閉じない開発ができるのが特徴です。その分、ほかのチームのドメインやアーキテクチャへの理解が必要なシーンも多く、そこがチャレンジングであり、楽しさと言えるのかもしれません。
@lee:最終的にはお客さまをはじめとした人の感情を動かすことに尽きるので、「おもしろさ」を追求できることが大事だと思います。だから、マーケッターやエンジニア含めてチームみんなでディスカッションするときも、「こっちの方がおもしろいんじゃない?」という観点で話し合います。実は「神クーポン」も、「お得なクーポンをたくさんもらえた方がおもしろいよね」の発想から生まれたんですよ。それは正解がないけど、その分、面白さや達成感もすごい。だからロジックは土台にありつつ、実はクリエイティブなチームだと思っています。
ー現在考えている「おもしろいこと」はありますか?
@cshow:メルペイタブで漠然と考えているのは、今はバーコード決済やiD決済といった機能を並べているのに近い状態だと思うんです。いずれは、「お客さまはこういうことに興味がありませんか?」、クーポンが好きなお客さまに「新しいクーポンがありますよ」という風に、お客さまごとに違ったご案内ができるといいなと考えています。最終的には、自分似合わせて変化するお財布に近づけたらと。そのためにはまだまだ、やることがいっぱいです(笑)。
@lee:キャンペーンも、お客さまごとにうまく出せるようになるといいですよね。人それぞれ買い物をしたいタイミングはちがうと思うので、お客さまが欲しいと思ったタイミングで小気味よく「お得だよ」と言ってあげられるようにできるといいなと思っています。来年あたり実現したいので、@yo-gawaさん、お願いしますね!(笑)