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「優秀ではなく、特殊なんです」ギフテッドの人事メンバーが話す自分のこと、メルカリでの働き方

2021-12-22

「優秀ではなく、特殊なんです」ギフテッドの人事メンバーが話す自分のこと、メルカリでの働き方

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「授かる」という意味の英語「Gift」が語源の「ギフテッド」は、生まれつき高い知性や優れた能力を持つ人のことを指します。

日本ではまだ馴染みの薄いギフテッドですが、メルカリの人事チームに所属する@yoshitakuは、ギフテッドの特性を生かしながらメルカリで働き、社外でもギフテッドの性質を伝えるさまざまな活動を行っています。

そんな@yoshitakuに、人事チームのマネージャーである@maayaが「ギフテッドとはなにか」「メルカリでのギフテッドの働き方」について、あらためて聞いてみました。

※撮影時のみ、マスクを外しています

この記事に登場する人


  • 吉沢 拓(Taku Yoshizawa、@yoshitaku)

    システムエンジニアとしてのマネジメント経験から人事を志し、人事コンサルティング業界、Webサービスのデータサイエンティストの経験を経て、前職より人事データの分析に従事。2021年6月にHR Data Managementチームに参画し、主にデータ分析による人事施策の意思決定のサポートや、分析用データの構築を担当している。

  • 田中 真也(Shinya Tanaka、@maaya)

    ファッション誌、Webメディア、ポータルサイトの編集・ディレクションを経て、2018年5月にメルカン編集部員としてメルカリに入社。その後は採用オペレーション、人員管理、人事システム導入など社内ジョブチェンジを繰り返す。現在はHR Data Managementチームのマネージャーとして、人事データ活用に向けた取り組みを行っている。


どちらかというと「変」「特殊」な性質だと思う

ー私は@yoshitakuさんに出会う前から「ギフテッド」という言葉だけは知っていました。とはいえ、まだ知らない方がほとんどだと思います。改めて、@yoshitakuさんの経験を踏まえて「ギフテッド」とはどういうものなのか教えてください。

@yoshitaku:ギフテッドはダイバーシティにおけるマイノリティの中のマイノリティみたいな世界なので、知らない人も多いですよね。よく世間では「知性が高い」「精神性が高い」と言われたり、「天才的な物理学者であるアインシュタインがギフテッドだったらしい」という情報などがあって、「優秀な人」というイメージを持たれやすいんです。

実際に僕も学力で言えば、小学生のときのIQ検査で「小学校で今までに出たことがない数字だ」と言われたり、10歳で中3までの数式が解けたりなどの経験はありました。でも、僕はギフテッドを「優秀」「賢い」というよりも、どちらかというと「変」「特殊」な性質だと思っています。

ー「特殊」な性質ですか。

@yoshitaku:はい。人と違うやり方をするとか、「これでいいじゃん!」と自分なりの発明をしてしまうんです。僕の場合だと、子どもの頃にピアノを習っていて、曲は耳コピで弾けているのに譜面はいつまで経っても読めなくて。いわゆる説明書を読まずに自分でやってしまうタイプでした。

考え方も周りと違うので、学校では浮いていました。授業で疑問に思ったことに「なんで?どうして?」と食いついたり、先生に「こんな解き方思いついた!」と言ったりなど、自分の好奇心や喜びで動くこともありました。先生からすると扱いづらいし、クラスメイトも「なんだあいつ」という反応ですよね。結果的に周りから距離を置かれてしまい、学校には半分くらいしか登校していませんでした。

吉沢 拓(Taku Yoshizawa、@yoshitaku)

ー「授かる」というギフテッドの名称からもポジティブな側面を思い浮かべていました。でも、@yoshitakuさんは良いところも悪いところもフラットに話してくれるので、どんな特性なのかがわかりやすいです。

@yoshitaku:そう伝わったならよかったです。ギフテッドにはOE(Over Excitability:過度激動)という特性もあります。これは自分や周りのできごとを強烈に体感することで、より強く学ぼうとするもの。つまり、真に受けすぎたり、周りの感情を拾ったりしやすい。良く言えば共感性が高いけど、目の前の人の気持ちを拾いすぎてしまうところがあります。それが周りからはすぐに動揺したりうろたえたりして見えるので、「扱いづらい人」という枠におさめられやすいんです。

いわゆるギフテッドと呼ばれる方々には、先程の「自分なりの発明をしてしまう」ことに加えてこういった特性があります。そのため、多くの人が社会に溶け込むために自分の能力や考えを隠して過ごそうとする傾向が強いんです。

ー逆に、自分を出したい!という人も中にはいる?

@yoshitaku:いると思いますが、大多数の方が生きていく過程で「この能力を出すのは危険なことだ」と気づきます。私も最近になってギフテッドであることや自分の特性を公表し始めたのですが、「自分を表に出したら社会に馴染めなくなる」「包み隠して生きるほうが安全でしょ」という方も多くいるのが現状です。

ー本人の特性ゆえの悩みを聞いていると、個人的に「ギフテッド」という言葉の表現が的を射ていない気もします

@yoshitaku:他に説明できる言葉がないし、認知してもらうためにひとまず「ギフテッド」という言葉を使っている感覚はありますね。

自分の特性について相談すると「自慢か」と受け取られる場合もあるし、「授かっているものがあるんだから辛いとか言うな」と言われることもある。世間的には良いものだと認識されているんですが、当事者からすると決してそんなことはないんです。

社会に出て3度にわたる長期休職

ーギフテッドの特性と幼少期の苦労を話してもらいましたが、社会に出てからはどうでしたか?

@yoshitaku:社会人になってからもあまり変わりませんでしたね。学生のときと同じく「なんで?」と問い正したり、上司の嘘に気づいてつっかかってしまったり。ほったらかしで仕事を任された時にはすごい成果をあげられるけど、基本的には周りと考えがズレているから「頭が悪い」「人の気持ちが理解できない」といったレッテルを貼られて押し出されていました。結果、メンタル的な理由で長期休職を3回しています。

休職の原因となったケースでわかりやすい例をひとつ話すと、システムエンジニアをしていたときにベンダーさんの管理を任されたんです。とあるベンダーさんはバグが多く、スケジュール進捗やレスポンスも上手くいっていませんでした。そのため、上司からは「あそこのベンダーさんは使えないから厳しく管理してくれ」と指示されていました。

でも、そのベンダーさんを見ていると、特別スキルが低いとかやる気がないわけではないので「なんかヘンだな」と気になっちゃって。そこでベンダーさんの話を色々と聞いてみると、いらない作業が多かったり、そもそもこちら側の発注方法に問題があったりなど、改善する方法がいくらでもあったんです。

ー上手くいっていない原因が見えてきたんですね?

@yoshitaku:それらの問題を改善していったら、ベンダーさんから「仕事がしやすくなりました」と言ってもらえたし、システムの品質も上がりました。でも、いくら会社のためにしたこととはいえ、上司からすると「指示した内容を無視している」んですよね。

そのため、社内では「上司の言うことを理解できない」「態度が悪い」といった評価になってしまって。たしかに、上司の理解を得ないまま進めていたし、会社員として指示があるなら従うのは大事なこと。なので、会社の僕に対する評価は妥当ですよね。上司からすれば、思ったように動かないし、いちいち「なぜ?」と突っかかってくる。そしてちょっと強い言い方をするとメンタルにくる。扱いやすい優秀な社員とはとても言えなかったと思います。

ー会社による働き方の違いもありそうですね。

@yoshitaku:そうですね。休職していた頃はお医者さんにも助けを求めたのですが、日本ではまだお医者さんにもギフテッドという概念がほとんど浸透していないようなんです。ときには、「能力の欠如」や「人格障害」だと言われて入院させられそうになることも…。このあたりの話は自分のnoteにも記載しています。
https://note.com/da_temp/

そういった経験から、今は「ここまでは伝わるらしい」と自分の中で加減するようになりました。例えるなら、みんなが9×9マスの盤で将棋を打っているのに、自分だけ30×30マスの盤で打っているような感覚なんです。物事を広い範囲で見ようとしすぎていて、先々「こうした方がいい」と自分で思っていても、そこに至る過程をうまく説明できないような抽象的な内容だったりする。そうすると、周りからは「突然変なことを言いだした」ように見えるので、どうしても伝わりにくいというか。

ー@yoshitakuさんがメルカリにジョインしたとき、ギフテッドという特性を踏まえ「私はこれができます」「苦手です」をまとめた「自分の取説」みたいなものを用意してくれました。これ、とても助かったんです。過去直面していた「理解を得られない」という課題に関しては、私と@yoshitakuさんの間で事前に「お互いの合意事項」を共有できたことが大きかったですね。

田中 真也(Shinya Tanaka、@maaya ※写真右)

ーこれまでちゃんと聞けていなかったのですが、ギフテッドで「良かった」と思うことはありますか?

@yoshitaku:人の気持ちに敏感な分、誰かが元気そう・楽しそうにしているとすごくうれしいです。イベントとか、自分で作った場を運営するのが得意なので、趣味の楽器ではライブや演奏イベントを開催したり、前職では軽音部の部長もしていました。そういった場では自分の自由にできるのでちゃんと能力を発揮できていました。こういった能力はギフテッドのおかげだから、大事にしていきたいと思っています。

面接で感じた「あたりまえの存在」としてのギフテッド

ー改めて、@yoshitakuさんがメルカリに入ったきっかけを教えてください。

@yoshitaku:前職でボロボロになった経験から自分は組織に所属するのは無理だと思い、独立するか新しい会社に転職するかを考えていたんです。良い会社があればと転職活動をしていたときに、開き直って履歴書に「ギフテッドです、ご迷惑おかけします」と書いてみたんです(笑)。その中でエージェントさんにメルカリを紹介してもらいました。

面接を担当してくれたのが当時マネージャーだった@iwacciさんでした。他社の面接ではギフテッドについてあまり触れられないことが多い中、「ギフテッドはどういう特性で、私たちはどういうサポートをすればいいですか」と、その特性を理解することに面接の半分くらいの時間を使ってくれたんです。そのときに、「ここだったら自分のことを出してもいいのかも」と思えました。

最終面接時の@tatsuoさん(メルカリ執行役員 CHRO)はギフテッドを知っていたようで、「色んな人がいるよね」とサラッと言ってくれたんです。ダイバーシティに理解があり、身構えすぎずに受け入れてくれる環境はとてもありがたかったですね。

実際に入社してからも「好きにやっていい」と言ってくれて、今も@maayaさんや@iwacciさんに自走するためのサポートをしてもらっているので、ありがたいです。

ー入社してから担当している業務についても改めて教えてください

@yoshitaku:「ピープルアナリティクス」というニッチな領域の業務で、データを使って「どうもこの組織にこんな課題が起きてるんじゃないか」「こんな人たちがこんなことで困ってそうだ」といった課題発見、解決のお手伝いをしています。今は自分の権限に閉じた分析用のデータレイクとデータマートとビジュアライズの環境を1ヶ月で構築。それを使って、いろんな部署にデータのお土産を持っていったり、見えた知見を発信したりして、協働の幅を広げています。

ーところで、なぜ人事データを扱う仕事を選んだんですか?

@yoshitaku:もともとはシステムエンジニアとして委託先を管理する仕事をしていましたが、リタイアが多発するハードな環境。なんとかしようとしてるうちに働く環境の大事さをすごく学びましたし、オフショア先のサポートをしていて「吉沢さんのおかげでこの厳しい中でも働きやすかった」と言ってもらえたことがすごく嬉しかったんです。

転職して人事コンサルの会社に入り、人事の勉強会などにも参加。もともと自分が色んな経験をした中で、「人」について考えまくっていたので、内容がするすると入ってきて楽しめました。ただ同時に「人」というとても説明しづらいものに関わる仕事なので、「自分はまた絶対浮いてしまうな」と思ったんです。だから「データ」を武器に、自分の説明力のなさを補う道を選びました。職種は人事で、手段はデータという感じです。

自分に合っていたのは、同じ目線で意見を言えるカルチャー

ー今一緒に働いていて、@yoshitakuさんはPeople Analystとして活躍しているように感じます。それはメルカリの環境が合っていたから?

@yoshitaku:第一に「カルチャー」ですね。カルチャーを掲げている会社の中には、経営の願望や期待に留まってしまっていて、現場に浸透していないケースも多々あります。その点、メルカリでは、カルチャーが現場での価値基準としてきちんと機能している。カルチャーに基づいて、まっすぐに「人事のために」「メルカリのために」という軸で話しているので、僕が今までの経験で恐れていた周囲の方向性との「ズレ」が生まれないんです。カルチャーが軸にあるので、メンバー同士が同じ主語で会話できるし、「自分のため」が「会社のため」と一致しやすく、周りの理解もある。そういった環境がありがたいし、自分にとってはすごく楽ですね。

もうひとつは、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の観点。最も自分と相性が悪いものは、日本社会に多い「同調圧力」や「均一性」なんです。文化自体は良い面・悪い面の両方があるから一概に「良い」「悪い」は言えませんが、自分にはおそらく向いていない。メルカリでは、チームの中でわりと自由に意見を出せるという心理的安全性があります。それはすごくありがたいし、カルチャーに則って集まったメンバーのおかげだと思っています。

ーたしかに、チームでは中長期のビジョン・戦略を議論するロードマップミーティングをしていますが、そこで「どうなっていたいか」「なにを実現したいのか」を定期的に話しています。だからメンバーみんなが同じような視線を持っている。それが@yoshitakuさんにとっては大きいかもしれませんね。逆に、今課題に感じていることはありますか?

@yoshitaku:メルカリも人事データについてはまだ黎明期であり、カオス期。手探りの不安と戦っているメンバーも多いので、大変な時期でもあります。

あとは、自分自身では求められている成果は出せているのだろうと感じつつ、さらなるパフォーマンスが出せてないという申し訳なさもあります。まだ過去のフラッシュバックで週の半分はまともに仕事ができていないし、他者の意見を怖がってしまったり、なんだかんだで他人を気にして自分らしいことをできていなかったりするので。

ーむしろ、パフォーマンスは十分出していると思いますよ(笑)。もちろん不安なことや上手くいかないこともあると思いますが、みんなそれぞれ特性がありますし、組織の多様性をかたちづくる1人として動いてほしいです。

「人の可能性を信じる」人事データ活用を目指す

ー今後、@yoshitakuさんがメルカリでやっていきたいことはありますか?

@yoshitaku:メルカリの人事として、もっとメンバーの皆さんとの信頼関係を築きたいと思っています。データを使うのは“信頼の消費”。メルカリで働くメンバーに「データを預けたおかげで自分が働きやすくなった」と、ちゃんと感じてもらうのは“信頼の貯蓄”だと思っています。信頼関係がない中で、ただ「データをくれ、アンケートに回答しろ」と人事がエゴに走ると、人事データは崩壊しやすい。そういう意味でも、「メルカリのメンバーにとって」を軸に話せるカルチャーを活かし、自分の業務のなかでできるだけ還元をして、”信頼の貯蓄”を産む良い循環を作っていきたいです。

それから、「人の可能性を信じる」人事データ活用を進めたいとも思っています。人によっては上司や環境が要因でうまく仕事ができず、「本人の能力」として評価されてしまうこともあるかもしれません。人事はどうしたって優秀な人に注目する傾向がある中で、表面上の結果が出ていない人は「能力のない人」として目をそむけられるし、中途半端にデータを使えばそれを加速させてしまう。でも実際、仕事は「本人の能力と環境の掛け合わせ」。だからいくらでも変えることができると思うんです。メンバーが自分を出しながら、一番価値を発揮できる場所、可能性を探る。そんなメルカリらしい人事になれたら嬉しいです。

ー@yoshitakuさんがメルカリにジョインしてくれて、人事領域がさらに面白くなってきそうです。@yoshitakuさんは、社外での活動も積極的にしていますよね。

@yoshitaku:そうですね。今は東大の研究に協力したり、NHKの番組に出演して情報を発信したりと、ギフテッドの社会活躍のサポートを始めました。リスクはありますが、そのために実名でカミングアウトをしています。まだまだ課題はありますが、せっかくなら授かった能力を人のために還元できるように使っていきたい。こういった「人のためになにかできることがある」ことも自分の能力のおかげ。そこは誇りに思いながらこれからも活動していきたいです。

また、メルカリの中にも自分を押し殺してしんどい思いをしているギフテッドの人がいてもおかしくはないと思っています。そういった方のために、プライバシーを守って、自分の悩みや経験を表現できる場をつくれれば嬉しいなと思います。もしよければ声をかけてください!!

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