渋谷センター街の空きシャッターに他県の実店舗を再現、11月29日の“いい肉の日”に約5,500円(送料込み)の肉を500円で購入できるキャンペーンを実施──これすべて、2021年10月から本格スタートしたメルカリShopsのPR施策です。
スタートしてから間もないとは言え、「メルカリグループの次なる事業の柱」として、急ピッチで拡大させていく必要があるメルカリShops。PR担当はその“魅力”をどう捉え、広げようと考えているのでしょうか?
今回のメルカンは、メルカリShopsを運営するソウゾウのPRマネージャーである志和あかね(@akane)が登場。本格リリースから現在までPRを担当し続けてきた彼女が今見ているものは?
※撮影時のみ、マスクを外しています
この記事に登場する人
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志和あかね(Akane Shiwa、@akane)大学卒業後、2008年に外国人モデル事務所に入社。マネージャーとしてCMやドラマ・映画の撮影に携わる。 2014年よりPR会社ベクトルに入社し、PR会社プラチナムでは2年間TVプロモーターとして、WBSなどの報道番組から、めざましテレビなどの情報番組を担当。その後、2年半ほどPRコンサルタント・営業としてクライアントと向き合うアカウントマネージャーを担当。2018年2月よりメルカリの広報に従事し主にフリマアプリ「メルカリ」のPRを担当。2019年11月にメルカリ総合研究所を立ち上げる。 2021年10月からはソウゾウPRチームのマネージャーも兼務。
渋谷センター街の屋外広告、“いい肉の日”キャンペーンの舞台裏
ーメルカリShopsのPR施策で言うと、渋谷センター街での屋外広告、最近では11月29日の「肉の日」にあわせたキャンペーンがありましたよね。それぞれ、どうやってアイデアをふくらませたんですか?
まず渋谷センター街の屋外広告。これは10月の本格提供開始のためのPRだったのですが、その約2ヶ月前にプレオープンのPRをすでに実施していました。それも、一定以上のメディアに紹介してもらっていたんですよね。そこから再び話題化させるためのアイデアは、けっこうハードルが高かったんです。外部のパートナーさんと一緒に何度も話し合いを重ね、たどり着いたのが「渋谷に他県の店舗の屋外広告をつくる」アイデアでした。
これには、メルカリを使ってくださるお客さまと渋谷を行き来する人の多さをかけ合わせたいという意図がありました。ようするに「多くのお客さまが行き交うマーケットプレイス」「そのなかにお店が出せる」や「そのなかで日本各地の商品を買える」と表現したかった。そして、本格リリース当日は渋谷センター街の空きシャッター上に、メルカリShopsで販売を行う実店舗を再現した屋外広告を展開。ちょうどデジタルの日だったことも追い風になり、多くのメディアに紹介してもらうことができました。
ー11月29日“いい肉の日”は?
「年内にもう一度、何かPR施策ができないかな」と考えていたところ、「そうだ、11月29日は肉の日じゃん!」と気づきまして(笑)。そこからアイデアを積み上げ、実行に移したPR施策でした。
「メルカリShops Come to Meatキャンペーン」のロゴステッカー
メルカリShopsは、EC化支援事業としては後発です。なので、いかにお客さまが何かものを買う際に「あっ!メルカリShopsで買おう」と思ってもらえるようにマインドシェアをとるかが大事。かつ、メルカリというすでに認知度が高いサービスのなかにあるものなので、定期的に話題づくりをしなければならない。
これも実を言うと、当初は魚の販売解禁に合わせる予定でした。「メルカリで魚が買える」って、意外じゃないですか?しかし、いいタイミングがなく、むしろ「いい肉の日」が控えていた!実際にネット調査したところ、ECで食品を買ったことがある人のうち、肉を買ったことがある人は2割未満だったんです。
ーわりと少ない!
そう、少ない!つまり、そこを盛り上げることができれば、お客さまには「メルカリShopsなら日本各地のいいお肉が買える」、出店者さまには「メルカリShopsでお肉を売ることができる」と伝えられる。そうした理由から「メルカリShops Come to Meatキャンペーン」を開催。送料込みで通常約5,500円の肉を500円で買えるようにしたんです。
志和あかね(@akane)
今年のいい肉の日は、ミートショックでお客さまは牛肉を買い控えたり、新型コロナウイルスの影響で食肉卸業者さまや飲食店さまの売上が右肩下がりになっていました。なんとかして、お客さまも事業者さまもwin-winになるような施策をメルカリShopsとして出したかったんですよね。
そのほかにも、ソウゾウとJAグループ茨城さまとの包括提携もPRしました。メルカリShopsにとって、農家の方々に認知してもらうことも大事…なのですが、現状では農業系の新聞とのリレーションがまだ弱くて。そんななかでBizDev(事業開発部)によって包括提携を締結したJAグループ茨城さまとの取り組みをPRとして発信したのは、新しい挑戦だったと思っています。
「メルカリShopsは出店者さまを支えるパワーを持っている」
ー@akaneさんは、2018年2月にメルカリPRとして入社。その後、プロダクトPRとして、メルカリ総研立ち上げも担当していましたよね?なぜメルカリへ?
前職のPR代理店時代に、メルカリを担当させてもらっていたんです。TVCMをはじめ、TGCへのスポンサードをきっかけにしたコンテンツづくりなどをお手伝いしていました。どんどんメルカリへ興味を持つようになって、入社を決めたんです。
いざ入社してみると、代理店時代に見えていたメルカリとは違う一面がどんどん出てきて「いろいろできそうだな」と思ったのが正直な感想です。同時に、今まではPRパーソンに囲まれて仕事をしていたこともあり、メルカリで「PRが專門ではないメンバー」を巻き込みながらプロジェクトを進めることに戸惑いがありました。次第に「この人に協力したら成功する」「おもしろい」と思ってもらえることが大事なんだと学びました。
ーそしてソウゾウへ?
ソウゾウPRとして参加したのは、本格リリースのPR施策のタイミングです。組織のおもしろさとメルカリShopsのポテンシャルに惹かれてしまったんですよね。それに、メルカリもソウゾウも同じグループ。「だったら、新たな市場を切り開くソウゾウにコミットしよう」と考え、ソウゾウへ異動しました。
ーメルカリShopsのポテンシャルというのは?
メルカリの最大の武器は「売れる顧客基盤」。スマホ1つで簡単に出品ができ、さらにすぐ売れる。これをECに展開したのがメルカリShopsです。このサービスが広まることで、本当はECを始めたいけど諦めていた人や、新型コロナウイルスの影響で売上がままならず困っていた人たちにもチャンスが巡ります。
一方で、買い手となるお客さまは「他県へ行かないと買えなかったもの」が手に入るようになる。そうやって日本の経済が潤っていく様子を間近で見られる可能性が、メルカリShopsにはあると感じているんです。
ーECに参加していなかった人たちも始められる、というところが一番のポイントだったんですね。
そうですね。メルカリShopsは困っている出店者さまを支えられるパワーを持っています。それは私以外の他メンバーも同じ考えです。だからソウゾウ内では出店者さまを支援・応援する意味合いで「Enabling(〜を可能にする、〜できる状態にする)」という言葉が頻繁に飛び交っていたりします。
PRは「統計学×エモさ」で施策を導き出す
ーメルカリとメルカリShops、それぞれPR観点で違いはあったりしますか?
大前提として、私、PRは「統計学×エモさ」だと思っているんですよね。
ー統計学×エモさ…。
何か施策を考えるとき、多くの人が過去の事例をさかのぼり、共通項を見つけ出します(統計学)。PR施策も例外ではありません。それで言うと私は、過去のデータを見るのが好きなんです。だから、2年分くらいの新聞やテレビの露出、話題性をチェックするのも楽しい。そうして気づいたのは、PR施策は統計学だけでなく、今のトレンドやターゲットのインサイト(エモさ)をどう組み合わせるかが肝心ということ。
例えば、メルカリでは2020年12月にブックオフさまとカジタクさまと連携して、期間限定で「捨てない大掃除」を提供しました。これは、過去の事例を見てみても12月は大掃除というテーマが外せないこと、かつ当時はサスティナビリティに対する意識が高まり始めていました。また、一般的にはブックオフさまは競合と見られることも多いのですが、そんな2社がタッグを組み“捨てるなら売る”を一緒に発信する意外性もエモさの一つだと思っています。
そうやって「統計学×エモさ」で考えていくと、ピーンとした光が見えてくる。人気漫画『鬼滅の刃』でいうと、鬼との戦いで「ここだ!」と思える瞬間に光の筋が見えますよね?そこに勝ち筋がある。捨てない大掃除もいい肉の日のキャンペーンも、私には光の筋が見えました(笑)。
ーなるほど(笑)。
先ほどの質問への回答ですが、そういった前提もあり、メルカリ・メルカリShopsでPR観点を大きく変えたところはあまりないです。しいて挙げるなら、それぞれ抱えている課題が違います。
現在メルカリは「フリマアプリ」から「社会的に必要とされるサービス」へパーセプションチェンジを図っています。でも、お客さまのなかには「楽しいから使っている」という人もいる。だから、グリーンフライデーのようなものを開催する一方で、バラエティ番組で出品を試してみてもらうなど多角的なPRをしている。いわゆるサチっている状態(限界に達している状態)にならないようにする難しさがある。
ではソウゾウの課題は何か?それは、ほかならぬメルカリという存在の大きさです。メルカリの認知度が高すぎて、メルカリShopsの存在を伝えづらい。メルカリとの違いを強調しつつ、認知を広げ、お客さまに興味関心を向けてもらう難しさがありますね。
だからこそ、メルカリShopsでは今、出店者さまのストーリーを発信し、それを見て「やってみたい」と思える人を増やそうとしています。出店者さまが増えれば、メルカリのお客さまにとって購入の幅が広がるし、「中古品はちょっと」と思っている方も「あのお店の商品を買えるなら」という気持ちになる。何より、メルカリShopsの強みは、出店者さまを巻き込んだPR施策ができること。大きなPR施策をしつつ、n1の声も広げようとしているんです。
ソウゾウで叶えたいのは「EC化率が高まった世界」
ー渋谷センター街の屋外広告も、いい肉の日も、多くのメンバーを巻き込まないと実現できなかったものだと思います。そう考えると、@akaneさんはすごくアグレッシブ…?
自分自身ではあまりそう思っていないんですが、周りから「アグレッシブだ」とよく言われます(笑)。おそらく、メルカリとソウゾウでやりたいことが明確だから、迷いがないんでしょうね。
ーメルカリとソウゾウでやりたいこと?
私、メルカリに対して壮大な夢を持っているんです。それが「グローバルな経済指標に二次流通を加えること」。日本には“もったいない精神”があるように、中古市場がすでに広がっています。それが世界的な経済指標に加わるとき、メルカリがリーディングカンパニーとなることが私の夢です。
そしてソウゾウでは、メルカリShopsを通じてEC化率が今以上に高まった世界を見てみたい。日本のEC化率は約8%。ところが、世界全体のEC化率は18%なんですよね。そうすると、ネット上でできることがぜんぜん違う。日本のEC化率が上がれば、もっと自由に売り買いでき、出店者さまの商品もスムーズに売れる世界ができるはず。私は、今のソウゾウメンバーたちとそんな世界を一緒に見たいんです。
ーそんなソウゾウへ、PRとして参加するメリットは?
CEO直下で働けることでしょうか。ソウゾウCEOである@mazeさん(石川佑樹)は、PRをすごく信頼してくれている。だから裁量も大きいし、戦略に沿っていれば自由度も高い。あと、ソウゾウにはキャリア的にも人生的にも視座が高いメンバーが集まっています。草野球チームくらいの規模なのにメジャーリーガーがたくさんいる感じ(笑)。PR以外でも学べるものが多いところも魅力ですね。
逆に、自由度が高いからこそ「will」がないと厳しいところはあるかもしれません。メルカリShopsに共感し、「こうしたい」と思えるものがある人は向いている環境です。
ー@akaneさん、楽しそうですね。
楽しいですよ!これまでのキャリアは、どちらかというと決められた範囲内で動くことが多かったんです。でも、メルカリに入社してからは自分自身がやりたいと思えることがどんどん溢れてくるようになりました。今ソウゾウで「やりたい!」と思うことが私の中で続々と出てきています!そのアイデアをみんなで話し合い、スピード感を持って実行へ移せる。楽しくないはずがないんですよね。