こんにちは!先日、PRの前進を目的としたナレッジシェアのイベント「Mercari PR Session vol.1~メルカリの経営・広報・政策渉外が考える「事業を通じた社会課題解決」とは?~」を開催しました。当イベントは、社内外からゲストを招き、企業価値向上に資する経営と広報の関係をはじめ、PRに関する多様なテーマをセッション形式でお届け。
記念すべき第一回となった今回は、チーム・メルカリでのディスカッション。セッションパネルを振り返りながら、一部内容を参加できなかった皆さまに少しでもお伝えできればと思います!
この記事に登場する人
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小泉文明 (以下、@koizumi)株式会社メルカリ 取締役President(会長) 兼 株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役CEO -
吉川徳明 (以下、@yoshikawa)株式会社メルカリ 執行役員VP of Public Policy -
矢嶋聡(以下、@yaji)株式会社メルカリ PRチーム ディレクター/グループ広報責任者 -
鈴木綾香(以下、@ayaka)株式会社メルカリ コーポレートPRチーム マネージャー
メルカリにとってのPRって?
まずはオープニングノート。後のパネルディスカッションにさきがけ、メルカリ広報の@yajiが「事業を通じた社会課題解決」に向けたマルチステークホルダーコミュニケーションの重要性を説明。
@yaji:PRの役割は、自社をとりまくさまざまなステークホルダーとコミュニケーションをしていくこと。ここでいう「ステークホルダー」は、サービスや製品を使うお客さま、株主だけではありません。サービスを使っていない生活者、取引先やパートナー、あるいは国や地方自治体、就職希望者など、あらゆる対象が含まれます。こうしたステークホルダーと良好な関係性を築くことがPRのゴールとなります。
@yaji:さまざまなステークホルダーに「選ばれる会社」の条件として、事業自体が環境や社会に良い影響を与えている/与える取り組みであることが求められています。そこで大事なのが「パーパス」。自社がなぜ存在しているのか? なぜやるのか?を言語化し、発信することが重要だと感じています。
@yaji:メルカリのパーパスは、創業間もない時期から掲げてきた「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションにあります。私たちが目指すのは、誰もが簡単に売り買いができ、誰かにとって不要なものが、他の誰かにとって価値になる社会。限りある地球資源が循環していく社会です。あるいは個人が物を売り買いすることでお金を稼ぎ、自分のやりたいことができる。そんな社会を、日本だけでなく世界中で創りたいと考えています。
@yaji:過去のPRチームの取り組み事例を上げています。単に「メディアの露出をとる」ためではなく、事業を通して「メルカリが目指す世界やビジョンを伝える」ことが中長期的な事業成長には大事だと思っています。私がメルカリに入社した2017年は、ESGやパーパスが話題になる前でした。当時から明確なミッションを掲げていたメルカリは、自社の存在意義やあり方を大事にしている会社だと感じています。この後は、 @koizumiや @yoshikawaにもご意見をうかがいたく思ってます。
@ayaka:@koizumiさんから見て「パーパス」はどんな意味を持っていますか?
@koizumi:「この会社が何のためにあるのか」の共通認識があることが重要で、経営者の仕事はその「言語化」だと思っています。ストレートな言葉で自分たちの存在価値を発信していくことで、共感を生み、大きなムーブメントに変えていく。そういう意味では、「ミッション」でも「パーパス」でもなんでもいいはずです。
余談ですが、僕が以前経営していた会社は、ミッション/バリューを社員に共感してもらうための刷り込みを僕自身が疎かにしてしまい、その後、会社がバラバラになったことを非常に後悔しています。そうした経験をもとに、メルカリではまずミッション/バリューを定義付けました。まず経営者自身がこの「言語化」をしっかりと時間を使って議論することで、その分みんなにもしっかりと伝えていけるのかなと思います。
メルカリの経営・広報・政策渉外が考える「事業を通じた社会課題解決」とは?
「事業を通じた社会課題解決」に向けた政策企画の役割って?
@yoshikawa:政策企画の役割は、会社の内と外とのコミュニケーションを担うことです。PRは主にメディアの方々とのコミュニケーションを担っていますが、私たち政策企画は国会議員、省庁、自治体、NPO/NGOの方々が相手。所属する組織やコミュニティが違うと、価値観や文脈、用いる言葉が全然違うので自分たちの言葉で話しても会話が成立しないことが往々にしてあります。そのため、異なるコミュニティの人たちを理解した上で適切なコミュニケーションをとれるか、が重要です。
また、テーマである「社会課題解決に貢献する」ことは、既にどの会社もやっているし、発信していますよね。そのなかで、メルカリが社会課題を解決する会社なんだという認知を得ていくには、メルカリの立場は抜きにして、「社会にとって大事な課題は何なのか?」 そして「その大事な社会課題とメルカリの事業がどんな関係性なのか?」「メルカリが課題解決にどう貢献できるのか?」を言語化して、理解してもらうことが一番だと思っています。
@koizumi:メルカリのためになるというより、社会の大きな課題を解決する手段として結果メルカリがある、というコミュニケーションをすると社会の共感を呼べる。政策企画はそういったところを大事にしていると感じますね。
@yoshikawa:元公務員、元議員のメンバーもいますし、そうでないバックグラウンドのメンバーも、そもそも社会課題解決に関心のある人がとても多いです。頑張って社会課題の文脈で自社事業を語っているというより、それぞれが自然と語っているというか。
@yaji:どの会社も社会課題解決文脈での発信をしている中、@yoshikawaさんが見るメルカリの特徴って何でしょう?
@yoshikawa:CtoCのマーケットプレイスという意味で、日本の一部の方ではなく全国の多くの方に使っていただいていることですかね。月間で2,000万人の方に使っていただいているということは、もはやサービスがインフラとなりつつある。さまざまな価値観や立場の方々が使っている。その方々にメルカリの存在意義を伝えるためには、それぞれに響く言葉や伝え方でなければならないと留意しています。
経営からみた「事業を通じた社会課題解決」に向けた広報・政策企画の役割って?
@koizumi:ビジネスモデルに左右されると思います。メルカリのような個人間取引で活用されるサービスは、創業期からたくさんの人が使ってくれるプラットフォームになるだろうと予見していました。ですので、事業の未来の姿から逆算して「自分たちが社会に対してどのような価値を提供できるのか?」を考えていました。
また、個人間取引は、昔のネットオークションの流れから「詐欺に遭う」や「トラブルが起こりやすい」というイメージがありました。人間は知らないものに対する恐怖心が強いため、創業当初から自分たちが歩み寄る形で、私たちがどのようなサービスを作っているのか、どのような課題を抱えているかを伝えてきました。実は創業当初の広報のKPIはインストール数で、「安心して使えることを知ってもらった上で、インストールしてもらえるか」を真剣に追っていましたね。
@yaji:koizumiさんからは「いまこのタイミングの発信が正しいのか」をフィードバックされることが多いですね。風を読むというか。
@koizumi:「自分たちの進みたい方向に対して今の空気感がどうなのか」は気にするべきですね。広報はもちろん採用にも言えることですが、空気をマネジメントしながら、一番良いタイミングで正しいコミュニケーションができるとスムーズに行くと思います。
スタートアップ企業の「フェーズに応じて変化する課題」。広報・政策企画が意識すべきことって?
@yaji:私がメルカリに入社したときは、会社は既にスタートアップとして転換点を迎えていました。当時は「現金」や「盗品」の出品が問題化し、社会との軋轢が生まれていて…。そこで社会との合意形成を考え、メディアを通して「なぜこの事業をやっているのか?」「将来的にこんなことを目指している」をしっかりと伝え、正しい理解を生み、今後の事業成長に向けた応援団を作ることを意識しました。
また、2,000万人以上のユーザーを抱えインフラに片足を突っ込んだ今、立ち位置は変わってきたと感じます。次は「私たちの事業がどのように社会の課題解決につながっているか」あるいは「社会課題の解決に対して率先して取り組んでいるか」など、もう少しプロアクティブなアクションがより求められていくのかなと思っています。
社会課題をしっかりと捉えることも大切ですが、必要なときに打ち込める準備をして言語化しておくことが大事ですね。風が来たときに打ち込めるよう「READY」になっておけば良いと思います。
(事前質問)自社の利益と社会に対する影響のバランスをどう考えてる?
@koizumi:経営視点から言えば、自社のサービスをいかに多くの人に使っていただけるかと、社会への影響、つまりミッションの実現は一貫性のあるものだと思います。例えば経営者がミッション(社会への影響)の設定をできておらず、社員含めステークホルダーの納得感や共感度も低い状態では事業も大きくならないはず。
@yaji:「社会課題解決」は、なにもCSRや慈善団体への寄付など事業とは別で行われるものだけではありません。要は自社の事業がどう社会課題の解決にリンクしているのか。これを言語化して説明することが重要ですね。
@koizumi:僕からすると、売上が1円以上発生しているなら社会に対して何かしら貢献できていると思ってます。そういう意味では、その貢献ポイントをどう拡大していけるか?イメージできてる? ってだけの話だと思いますよ。
事業を通じた社会課題解決の取り組みに向けて、必要なことって?
@koizumi:「共感ポイントを見つけること」ですね。社会やステークホルダー全ての人に対する共感ポイントを見つけに行って、その共感ポイントがクリアであったり納得感が高ければ高いほど事業と社会課題の両面にポジティブな影響が出ると思っています。
@yoshikawa:@koizumiと同じなんですけど、それをやるためには自分たちの会社と事業に対する理解と社会に対する理解の両方がないといけなくて。個人で両立できればいいけど、難しければチームや組織で実現していくことが大事なのかなと思います。
@yaji:言語化をして、一貫性を持ってやっていくこと。対外コミュニケーションをやっていく部門ではありますけど、考え方や価値観が組織にインストールされていくことが本質的に重要ではないかと考えています。表層的な部分だけ言葉遊びをやっているわけではなく、経営者がどれだけコミットして組織に根付かせているのかに尽きると思います。
普段のことから業務のこと、考え方のことまで様々な質問が飛び交ったQ&A
最後のQ&Aタイムは、「メルカリの共感ポイントは、ずばり何と設定しているの?それを言語化するまでのプロセスで大切にしたことは?」「攻めのPRと守りのPRがあるとして、それをどう使い分けているのか」などなど、ここまでのディスカッションに関する様々な質問をいただきました。が、ここでは書ききれないくらいの大ボリューム……。(全ての質問に対し、真摯に回答させていただきました)
イベントの全貌が気になる方は、動画でもご覧いただけます!
そして次回は、Mercari PR Session Vol.2「新たな社会インフラを創るFinTech企業、世界観を発信するPRのやりがいとは」のレポートも公開予定です。お楽しみに!
今後のイベント情報
<登壇者>
・坊垣佳奈 氏(株式会社マクアケ 共同創業者 / 取締役)
・石川佑樹(株式会社ソウゾウ代表取締役CEO)
・志和あかね(株式会社ソウゾウ PRチームマネージャー)
<概要>
新たな市場を切り開く新興サービスの戦略と求められるPRとは クラウドファンディングというビジネスカテゴリに対し、後発で参入したにもかかわらず、”応援購入”という新たなカテゴリを創出し新たなマーケットを切り開いたマクアケ。コロナ禍でEC市場が成長している中、スマホ1つで誰でも簡単にネットショップを開設できるEコマースプラットフォーム「メルカリShops」の提供を始めたソウゾウ。後発ながら新たな市場を切り開いていく戦略やPRの重要性についてディスカッションします。
ぜひ皆さま、奮ってご参加ください!
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