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決済サービス黎明期で見たものは? Origami技術責任者がメルペイCTOに就任するまで

2022-3-31

決済サービス黎明期で見たものは? Origami技術責任者がメルペイCTOに就任するまで

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大学院在学中にネイキッドテクノロジーを創業、その後ミクシィへ売却。退職後はOrigamiへジョインして黎明期だったスマホ決済サービスに挑み、2020年にはメルカリグループ入り──。

誰の経歴? 2022年1月からメルペイCTOに就任した野澤貴(@nozaq)の経歴です!

今回のメルカンでは、メルペイCTOになった意気込みを知るためのインタビューを実施。改めてキャリアを紐解いてみると、@nozaqが普段あまり語らない「思想のもと」のようなもの、そしてメルペイの事業を取り巻く環境変化への視点が見えてきました。

※撮影時のみマスクを外しています

この記事に登場する人


  • 野澤 貴(Takashi Nozawa、@nozaq)

    慶應義塾大学大学院在学中にIPAが主催する「未踏ソフトウェアプロジェクト」に採択された4名のメンバーが中心となり、2006年、モバイルアプリ開発基盤などを手掛けるネイキッドテクノロジーを創業。2011年、同社がミクシィの子会社になったことを受け、分析基盤作りなどに携わる。2012年より株式会社Origamiの創業に参画し、技術担当ディレクターを担う。2020年2月、同社のメルカリグループ参画により、株式会社メルペイへ入社。2020年7月よりVP of Engineering、2022年1月よりメルペイCTOに就任。


学生時代の起業で得たのは、リスクをとれる経験

ー@nozaqさんは大学院在学中にはIPA(情報処理推進機構)主催「未踏プロジェクト」に参加しています。そもそも、プログラミングに興味を持ち始めたのはいつごろだったんですか?

興味を持ったのは小学校の高学年くらいですね。中学生になってからは自分でプログラムを作って、インターネットに公開したりしていました。今でも、プライベートでコードを書き続けています。

未踏プロジェクトは、大学時代に同じ研究室にいた先輩に誘われて参加しました。当時はスタートアップでアルバイトをしていたので「面白そうだな」と思ったんです。そして大学院在学中にネイキッドテクノロジーを起業。未踏プロジェクトに参加していたメンバーで起業していたので、ほぼ並行して動いていましたね。

ー卒業して就職する、という選択肢もあったと思うんです。なぜ起業?

就職と起業、どちらにもメリットがあると思っています。ただ、そのときの僕にとって面白そうだと思える選択肢が「起業」でした。起業したおかげでスタートアップ経営には多少触れられたわけですが、逆に、名刺の渡し方など基本的なビジネスマナーは未だにわからないところも多かったりしますし(笑)。

野澤貴(@nozaq)

ー起業したことでのメリットはどこに感じていますか?

「リスクをとれる経験ができること」ですね。当然ですが、起業では事業を成立させることが第一。そのうえで「エンジニアとして何ができるか」を考えていきます。当然ながら、そこではリスクをとる必要があるシーンにも遭遇します。年齢を重ねることでプライベートが変化し、どんどんリスクをとれる機会は減っていくわけですが、僕自身、わりと早い段階から起業し、リスクをとりやすい環境にいた。おかげで、「自分はどうすべきか」を考えて動き続ける経験ができたのはよかったと思っています。

ーちなみに、リスクだと感じた瞬間は?

やはり「このままいくとお金がなくなって会社が潰れる」と感じた瞬間です!

ー切迫感がすごい。

おかげで、創業時代に「お金がなくなると会社は潰れる」の考えが染みつきました(笑)。あと、実は僕のキャリアのなかで純粋にエンジニアリングに没頭できたことはそんなに多くなかったりします。なぜなら、技術を活用して「会社をどう大きくするか」「会社をどうしていきたいのか」を常に考えなければならない立場だったから。そのためビジネス意識が自然と強まった可能性がありますね。

その後ネイキッドテクノロジーは、ご縁があってミクシィへ売却。そのまま僕らメンバーもミクシィへジョインしました。ネイキッドテクノロジーではおもに開発者向けのプロダクトを開発していました。なので、直接お客さまへ届けるサービスを開発するのはミクシィがほぼ初めて。当時のミクシィはすでに大規模なSNSだったので、ログデータを分析し、プロダクト改善の気づきや次のアクションへつながるヒントを探っていました。

Origami Payで味わった「生みの苦しみ」「決済サービスの波」

ーその後、Origamiにジョインしていますよね?

Origamiの創業者とは、ネイキッドテクノロジー時代からの知り合いでした。そんな彼が「Origamiを創業した」という話を聞き、オフィスに遊びに行ったりしていたんです。時々、サービス開発をお手伝いしたりしていましたね。徐々に関わる範囲が増えていき、いつの間にかジョインしていました。

決め手は、Origamiにはエンジニアリング以外の領域に特化した優秀なメンバーが立ち上げ時に集まっていたこと。ネイキッドテクノロジーはエンジニアたちで始めた会社だったので、みんなが「コードは書けるけれどビジネスは初心者」だったんですよね。だから「それぞれの領域でプロフェッショナルな人が集まったら、それはそれで面白そうだな」とも思っていたんです。その要素が、Origamiにはありました。

ーOrigamiはECだけでなく、2016年にはスマホ決済サービスとしてOrigami Payを正式リリースしています。しかし、当時はまだスマホ決済サービスが今ほどなかった記憶です。

そうでしたね。Origami Payは「みんなスマホを持っているからそれで決済できた方が便利だし、これから世の中もその方向に向かっていく」という中長期的な目線から始まった事業でした。ただ、当時はまだスマホ決済サービスよりクレジットカードや現金が主流で、お客さまはもちろん、加盟店さまも含めて社会としてそれを受け入れる下地は整っていない状態でした。そのなかで、スマホ決済のメリットを現実的に打ち出していくのはとても苦労しました。向かう方向は正しいはずなのに、具体的な目の前の一歩が見えづらい…。

それは社内でも同じでした。「社会としてスマホで決済できたほうが便利」の共通認識はあるものの、「その行動変容を起こす直接的なフックは何なのか?」という疑問は度々議論になっていましたね。その結果、Origamiを離れたメンバーもいました。本当の生みの苦しみを、このとき味わった気がします。

ーその後、一気にキャッシュレスの波が来たように感じます。思ったより早く波が来たと感じましたか?それとも「やっときたか」みたいな?

本格的にキャッシュレスの波が来たと感じたのは、政府が「キャッシュレス・ポイント還元事業」を始めた2019年ごろ。でも、そんなに「早く波が来たな」という感覚はなかったですね。

どちらかというと、驚いたのは波が来たあとの速度です。プレイヤーはもちろん、キャッシュレス対応に乗り出す加盟店さまが一気に増えました。これによって、さまざまなサービスが生まれています。それまで過ごしてきた速度感とはまったく違っていたので「ここまで早くなるのか!」と驚きました。スマホ決済だけではなくキャッシュレスな支払い手段全般がここまでのスピードで浸透していくことは、予想していなかったですね。

スマホ決済サービスはCとBの両方が揃って初めて場ができる

ースマホ決済サービスの「ここが特徴的」と思うところはありましたか?

スマホ決済サービスのような事業は、多方面のお客さまやパートナーが揃って初めて場ができあがっていくんですよね。消費者のみなさまや加盟店さま然り、より上流にある金融・決済ネットワーク然り。だから、どちらの要望も満たさなきゃいけない。

Origamiの場合、EC時代から加盟店さまともやりとりしていたので、当初からtoCとtoBの両方の感覚はありました。Origami Payが始まってからは、考え方の違いより加盟店さまの業種の違いに一番悩みました。商慣習だけなく、それに紐づいたシステムの使い方、業務フローなども異なります。そういったものを一つひとつ、ちゃんと理解していく時間はわりとかかりました。

ーそして2020年にOrigamiはメルカリグループ入りし、@nozaqさんはメルペイへジョインしています。印象的だったことは?

2つあります。1つは、プロダクト開発で「お客さま視点」が徹底されていること。Origamiでは、お客さまや加盟店さま、金融機関さまなど、さまざまなステークホルダーからの要求をどう満たしていくか、ある種バランスをとりながらプロダクト開発をしていました。それがメルペイでは、エンジニアだけじゃなくプロダクトマネージャーも含めて、みんなが「お客さまがどう使えば価値が生み出されるのか」に注力している。そして、それが経営の意思決定にも結びついていた。ここは、驚きましたね。

もう1つは、エンジニアリング組織。Origamiの決済は、さまざまな機能に対して内部的なサービスがあり、それをどのチーム・どのエンジニアが担当するかはあまり決めすぎないようにしていました。メルペイの場合、マイクロサービスをチームごとに責任を持って運営していくことが徹底されていた。各サービスが自律的に進化していけるように根本から設計されている組織体系は印象深かったです。

「メルペイCTOとして役割を変えようとしているところ」

ーメルペイではVPoE(VP of Engineering)としてプロダクト全般の開発を担当。そして2022年1月、メルペイCTOに就任しています。役割はどう変化したんでしょうか?

基本的には変わりません。ですが、変えなきゃいけないところもあると思っています。本来は、組織長としてのVPoEからCTOになったときに、エンジニアリング組織だけではなく、システム自体に責任を持って運用していくことを考えるべき。ただ、僕自身がまだVPoEを兼務している状態なので「いきなり全部は…」というのが本音です(笑)。

ー絶賛、移行期でしたか!@nozaqさんが今後、メルペイで注力したいことは何ですか?

メルペイはここ一年ほどで、立ち上げたサービスを伸ばしていくフェーズに入ったと感じています。これからのエンジニアリングでは、目の前にある機能をつくるだけではなく、メルペイというサービスを拡大するために、システムはどういった準備をして、どういった基盤をつくるべきかをより考えていきたいです!

ーそんなメルペイへ今ジョインするメリットは?

現在、メルカリグループ全体がグロースフェーズのため、システムやサービスの改善・新機能の拡充にスピード感を持って取り組んでいく必要があります。一方でメルペイは、多くのお客さまにご利用いただく金融サービス、そして社会インフラとしての決済機能を提供する立場として、高い品質を満たしていくことになる。こういったグループ全体でやるべきこと、メルペイでやるべきことの両方を取るのはなかなか難しい。それをどのように自分たちの方法論として発明し続けるかがメルペイの継続的なチャレンジであり、すべてのFinTech企業に共通した課題でもあります。メルカリという大規模なサービスの中でこのチャレンジに対して創造的に取り組めることが、これからのメルペイにジョインする醍醐味だと思います。

そのためには、エンジニア一人ひとりに高い技術力が求められるし、組織として開発運用体制もクリエイティブに設計していく必要がある。そういったことを楽しめる人は、ぜひメルペイにジョインしてほしいです!

ーなんと言いますか、@nozaqさんは過去〜現在で常に何かしらの混乱期のなかにいる印象もありますね。

大学卒業時に就活ではなく起業を選んだ瞬間に決まってしまった運命みたいなものかもしれないですね。おかげで、今もなお先が読めないなかをわりと楽しみながら走り続けることができています(笑)。

最後に…

ー最後に、メルペイのメンバーから寄せられた質問です!

えっ(まだあるの?)

ー@nozaqさんは社内Slackの個人チャンネルで、読了した本を数多く紹介されていますよね?メンバーから、「@nozaqさんの興味関心・アンテナの広げ方を聞きたい!」という声も出ています。

僕が本を読む理由は2つあります。1つは、そもそも「本はめちゃくちゃ贅沢で楽しい娯楽だということ。これだけ情報があふれた世の中で、本にはその道のプロたちが膨大な情報を咀嚼し、凝縮した情報が詰まっているわけじゃないですか。それを読むだけで「こういう領域や考え方があるんだ」と、新しい知識に触れられる感覚が単純に好きなんです。

2つめは、FinTechには多くのステークホルダーがいて、エンジニアリングと関係のない人たちと一緒に仕事をしていくこともすごく多いんです。そういった人たちと仕事をするうえで、「普段どういうことに興味関心を持っているか」「仕事に対してどう考えているか」といった相手の思考プロセスを、少しでもスムーズに理解できるようにしたいからです。そのための手段として、FinTechと関連しそうな領域の本を探して読んでいます。

ーなるほど、ありがとうございました!

いえいえ、こちらこそありがとうございました!

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