暗号通貨、NFT。メルカンをご覧の方は、それがどんなものなのか、なんとなくイメージできるのではないかと思います。
では、「プロ野球の試合の瞬間をNFTとして販売する」と言われて、どんなイメージを抱きますか?具体的に想像できる方は、どのくらいいるのでしょう。
今回のインタビューには、一見メルカリらしくない(?)プロダクトを手がける、メルコインのデザインチームの東野雅也さん、轟愛理子さんが登場します。お客さま目線で発想するプロダクトデザイン。その背景には、「新しい経済をつくる」というメルカリらしいミッションが貫かれています。
この記事に登場する人
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東野雅也(Masaya Higashino、@mhigashino)2006年4月、株式会社キノトロープに新卒デザイナーとして入社。2008年6月、グリー株式会社でSNS、グローバルプラットフォームを担い、シニアマネージャーとしてマネジメントに従事。2014年7月、クービック株式会社にてクリエイティブディレクションを担当。2018年7月、株式会社メルペイに入社。ネット決済、加盟店向けスタートキット、メルペイスマートマネーのデザインを担当。2022年3月から株式会社メルコインに所属。 -
轟愛理子(Eriko Todoroki、@etopop)2017年4月株式会社ミクシィに新卒デザイナーとして入社し、サロン予約サービスminimoのアプリデザイン・グロース施策を担当。2021年12月メルカリグループに入社。2022年5月から株式会社メルコインに所属。
「暗号資産」を初めて買う人の前に立ちはだかるハードルが、自分のお金を使うこと
──まずはお二人がどんな業務をされているのか、自己紹介と一緒にご説明いただけますか?
@mhigashino:メルコインデザインチームの東野です。メルカリアプリの中でビットコインが取引できるプロダクトのデザインをしています。2021年の3月くらいから、一年以上かけて情報設計、デザイン、プロトタイプを用いてのUXリサーチなどを繰り返しながら、実装を目指しています。
@etopop:メルコインデザインチームの轟です。メルカリグループへの入社が去年12月、今年5月からメルコインに参画しました。私は『パ・リーグ Exciting Moments』というサービスを担当しています。デザインのコンセプトから、サービス設計、UI/UXをどうよくしていくか…など、検討を進めています。
@mhigashino:メルコインのデザインチーム自体、できたのが2022年の3月。新しい体制になったばかりなんですよ。チームはまだ2人で、今3人目を募集しています。
──なるほど。より具体的に聞いていきたいと思います。暗号資産のプロダクトから教えてください。
@mhigashino:「メルカリで始める、初めての暗号資産」というコンセプトで、メルカリのお客さまを対象に、初めてビットコインの取引をする場所として使用してもらうプロダクトをイメージしています。
メルカリの特徴である売上金を使ってビットコインを簡単に買うことができる。そこで価格の変動を楽しんでもらったり、売って得たお金をメルカリ内での買い物に利用したり。お金の流動性を高めるプロダクトを実現しようとしています。
@mhigashino:「暗号資産」を初めて買う人の前に立ちはだかるハードルが、自分のお金を使うことなのではないかと仮説を立てていて。それを売上金を使うことで解決できるんじゃないかと思っています。デザイン的にも工夫していて、メルカリアプリの世界観の延長線上で、シームレスに取引ができるようにしています。それだけでもかなりハードルが下がるはずです。
──メルカリの売上金が、より多様な用途を持つんですね。
@mhigashino:まさにそうですね。メルカリとの融合を前提に、どう使いやすく設計するか気をつけています。お金周りはさまざまな制約があって複雑になりかねないんです。そこを、いかにわかりやすく、楽しめるUXにできるのか。左脳的に情報設計することはもちろん、お客さまのペルソナを設定して、右脳的なアプローチも取り入れています。まだあまり言えない部分もあるのですが…お金の自由度を高めるようなプロダクトにできたら。
選手、チーム、野球を愛する人々におくる、未知のコレクション型ファン体験
@mhigashino:一方、轟さんの担当しているプロダクトはかなりユニークなサービスなんです。
@etopop:パ・リーグ Exciting Momentsは、「パ・リーグ6球団の記憶に残る名場面やメモリアルシーンを捉えた動画コンテンツを購入してコレクションしてもらう」というサービスです。今はまだ普通のデジタルコンテンツですが、今後ブロックチェーンを利用したコンテンツになる予定です。暗号資産のプロダクトはメルカリのお客様に使ってもらう前提ですが、パ・リーグ Exciting Momentsのターゲットはプロ野球に興味関心の高い方々。当然、サービスのコンセプトやデザインの設計も大きく異なるんです。
※画像は開発中のもので、実際のサービスサイトとは異なります。
@etopop:サービスコンセプトは、「選手、チーム、野球を愛する人々におくる、未知のコレクション型ファン体験」。コンセプトを実現するために、野球ファンにとってはどんなコレクション体験が楽しいのか。どんなUIがいいのか。どういうファン体験を作ることができるのか。PMやアートディレクター、エンジニアなどチームでディスカッションをしながら検討をしています
──試合の瞬間を買ってコレクションするというニーズって、これまで存在しなかったもののような気がするんです。ファンはどう受け止めているのでしょう?
@etopop:かなり新しい概念ですよね。海外では『NBA Top Shot』というバスケットボールにおける同様のサービスがあるんですけど、参考になる事例はまだそれほど多くありません。最初はNFTギークがターゲットになるのですが、いずれは野球ファンの方々にも気軽に使っていただきたいと思っています。そのため、野球ファンの方にコンテンツを集める喜びをどう感じてもらうか。そこから考えています。私自身も未知の挑戦をしている感覚です。
──パ・リーグと組むというのは、かなり大規模なステークホルダーとの協業ですよね。
@etopop:冠試合のクリエイティブを作らせてもらったときは、スケールの大きさを感じました。『パ・リーグ Exciting Moments DAY』と銘打った試合を開催することになって。場内に掲示するのぼり、チラシ、看板などを制作したんですよ。球場に実際に掲示されるクリエイティブを目の当たりにした時は、嬉しかったですね…。
@mhigashino:メルカリとは全く異なる価値観の中での立ち上げ、かなり難しいのでは?
@etopop:とにかくリサーチし続けています(笑)。野球ファンは普段どんなメディアを見ているのか。実際にスポーツ中継の動画サービスに登録してみたり、野球ファンを対象にインタビューを実施して、生の声を聞いたりしています。
既存のメルカリの価値を生かしながら、より拡張するようなプロダクトを
──同じチームでも、それぞれがオーナーシップを持って全く別のデザインを担当しているんですね。今回新しいメンバーの募集がありますが、一緒に働いてくれる仲間にはどんなことが求められるのでしょうか?
@mhigashino:お客さまにプロダクトをフィットさせるというのは、どんな場合でも一番大事なことです。そのマインドセットを持っている人と一緒に働きたいですね。轟さんの場合は野球ファンを対象としていて、僕の場合はメルカリのお客さまを対象としている。やっていることは違うんですが、根っこには共通する考え方があります。そういったお客さまに向き合う考えを共有しつつ、自走できるような人がいたら…と思っています。
@etopop:根本のビジョンを共有できる人が仲間になってくれるといいですよね。私自身、メルコインのコーポレートミッションである「多様な価値がめぐる新しい経済をつくる」を成し遂げたいと思っています)。
──暗号資産と NFT、ここでお話を聞く限りでは、別軸で動いているプロジェクトのように思いますが、今後関わり合うような展望は?
@mhigashino:将来的には、暗号資産もNFTもメルカリの売上金も、一括で管理できるような世界観になると便利だよねという話はしていて。「価値の循環」がよりなめらかに行われるようなプロダクトを形作っていきたいと思っています。
@etopop:そうですね。お金もエンタメもそこに直結していると思うんですよ。だから、いくつものプロダクトが、それぞれ精度高く、それでいてメルカリという大きなプラットフォームの中で共存していくようなイメージをしています。
@mhigashino:既存のメルカリの価値を生かしながら、より拡張するようなプロダクトを一緒に形作っていける方からの応募を待っています。