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ロードマップ経営に必要なのは、「ミッションを本気で達成する」と決める“狂気” #メルカリのイシューを分解する

2022-7-28

ロードマップ経営に必要なのは、「ミッションを本気で達成する」と決める“狂気” #メルカリのイシューを分解する

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私たちメルカリグループは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げています。このミッション達成に向けて奮闘するメンバーたちをメルカンではフォーカスしてきました。しかし、私たちはまだ、スタートアップから「グローバルテックカンパニー」へと変化する挑戦の真っ只中にいます。そして、そこには当然さまざまな「イシュー(課題)」が偏在しています。このイシューは“向き合うべき”ものであり、同時に“解きがい”のあるものでもあります。

そこでメルカンでは、メルカリの現在地と今後の展望を示すべく、あえて「イシュー」にフォーカスした連載をスタートさせます。タイトルはド直球で「メルカリのイシューを分解する」!そして、第1回のテーマは「ロードマップ経営」です!

一般的に「ロードマップ」はプロジェクト単位で用いられることが多いと思いますが、メルカリでは経営陣とメンバーのベクトルを合わせるための指針としてロードマップが存在します。また、ロードマップ策定は全社規模での取り組みとなるため、非常に重要なプロジェクトです。上級執行役員 経営戦略室長の河野秀治と、全社戦略の策定・運用をリードする浅井宗裕に、策定秘話や運用面での課題、今後の展望など、じっくり聞きました!

この記事に登場する人


  • 河野秀治(Shuji Kawano、@shuji)

    メルカリ上級執行役員 経営戦略室長。ライブドアの投資銀行部門、ゴールドマン・サックス証券とSBIホールディングスによる合弁の投資ファンドを経て、戦略コンサルティング会社である経営共創基盤(IGPI)に入社。その後、起業を経験。さらにGunosyの経営戦略室長として上場を経験したのち、2018年7月メルカリ入社。


  • 浅井宗裕(Munehiro Asai、@mune)

    メルカリで、ロードマップを軸とした全社戦略の策定と運用をリード。副業として、数百人のエグゼクティブ、ミドルマネージャー向けにコーチングサービスを提供(国際コーチング連盟 プロフェッショナル認定コーチ)。前職のヤフー・Zホールディングスで12年間、プロダクトマネジメントと経営企画、エグゼクティブコーチングに従事。

経営陣とメンバーのベクトルを合わせたロードマップ

――まずはメルカリにおけるロードマップの定義を教えてください。

@shuji:メルカリは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げています。ロードマップには、ミッション達成に向けて、メルカリがこれから2030年までの間にどんなことに挑戦し、どんな社会をつくりあげていくのかが示されています。

ロードマップの内容は、毎年6月の期初と四半期に一度の振り返りのタイミングで、外部・内部環境の変化を踏まえ、その時々のあるべき姿にアップデートしています。また、その内容は「Trust & Openness」のカルチャー(信頼を前提としたオープンなカルチャー)のもと、全てのメンバーに公開されています。

2023年度のMercari Group Roadmapでは、循環型社会を確立していく足元の1年を「Ready, Set …」期、3年先までを「Go!」期、そして見据える2030年を「Beyond>>>」期と表現し、ミッション達成までの道筋を描いています。

――メルカリがロードマップを導入したのは2019年と聞いています。導入背景を聞かせてください。

@shuji:メルカリの組織はボトムアップで、メンバーに自走する力が備わっています。だからこそ、それぞれがやりたいことを思うままに進めてしまうという課題がありました。そのため、明確な勝ち筋がわからず、余計な投資に費用がかさんでしまい、サステナブルな企業活動ができていなかったんです。こうした課題を解決するために導入されたのがロードマップです。ミッション達成までの道筋を描くことで、経営陣とメンバーのベクトルを合わせ、企業としての推進力を上げていこうと考えました。

また、メルカリでは全社共通の目標設定ツールとして「OKR(*)」を導入していますが、それだけではどうしても短期目線に縛られてしまい、中長期的なビジョンを保ちにくい。ロードマップを通して、一人ひとりが未来を想像しながら、今やるべきことを考えられる状況をつくりたいと思い、導入を決めました。
(*)「Objective and Key Results」の略称。メルカリでは「Objective」を「短期で向かう方向性」、「Key results」を「ストレッチゴール」と定め、チームや個人の目標設定を行っています。

外部環境分析から改めて見えてきたメルカリの「軸」

――2023年度のロードマップを策定するうえで、まず最初に取り組んだことを教えてください。

@mune:今期はロードマップ策定の前段階となる外部環境分析に力を入れました。「PEST分析」のフレームワークを使って、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の観点から、5年後、10年後の私たちのビジネス環境がどうなっているのか、経営陣と経営戦略室メンバーで何度も議論を重ねました。そうすることで、メルカリとしての勝ち筋がクリアになり、「やる」「やらない」の共通認識を深めることができました。

もちろん、これまでも外部環境分析は行っていましたが、そこまで多くの時間をかけられていなかったんです。経営の間でプロトコルが合致していない状態、つまり、同じ言葉を使っていても、それぞれ意図することが違う状態でロードマップの策定議論に入ってしまったので、話が噛み合わず、議論のための議論が巻き起こる、なんてことも…。その反省から、今期はプロジェクト全体の3分の1以上の時間を割き、外部環境分析をしっかり行うことで、それぞれの経営陣が今の世界や今のメルカリをどのように捉えているのかを明らかにし、全員の目線を合わせることに注力しました。

――その後、どのようなプロセスを経てロードマップが形づくられていったのでしょうか。

@mune:外部環境分析から得たキーワードをもとに、経営戦略室側でロードマップのたたき台を作成し、経営陣から意見をヒアリングするという形で進めていきました。

経営陣からは本当に細かいところまでフィードバックをもらいましたね。例えば、ロードマップの中に「世界中のタレントが集まる」という一文があるのですが、当初の案は「世界中からタレントが集まる」でした。ところが、「“から”は物理的な移動を想起させる。リモートワークで働くメンバーも多いなか、この表現はふさわしくないのでは?」といった意見が出て、この話題だけで3〜4往復ものコミュニケーションが行われました。

一言一句に思いを込めて策定するので、会議が紛糾するのは日常茶飯事ですし、いったん合意しても「やっぱり違うのでは…」と議論が振り出しに戻ることもよくあります。

@shuji:そうそう。ロードマップをつくるのって本当に大変なんです。でも、一つひとつの言葉にこだわって徹底的に議論し尽くすことではじめて、私たちが心から実現したいことがクリアになり、「進むべき道」を共有できるんです。

――新たなロードマップを、全社に発表した際の反応はどうでしたか。

@mune:2023年度のロードマップは6月に全社発表しました。メンバーからは「メルカリの目指す未来がわかり、一体感を感じることができた」「実現に向けたアクションをどう取っていくのか、楽しみながら考えていきたい」といった嬉しい感想をたくさんもらいました。

とはいえ、初めからポジティブな意見が多かったわけではありません。たとえば昨期は「内容が抽象的でわかりづらい」といった声が多く、ロードマップをいかに自分ごととして捉えてもらうかが課題の一つだったんです。

そのため、今期はロードマップに関する社内向けのポータルサイトを制作し、「こういった背景で今期のロードマップがつくられ、そのロードマップを達成した暁にはこんな未来が待っている。その先は、メンバーそれぞれで考えてほしい」というメッセージを発信しました。そのうえで、経営陣が全社発表会の場で改めて背景や思いをメンバーに直接説明しました。すると、「これくらいの抽象度の方が余白があっておもしろい」「具体的なことは自分たちで決めていこう」といったムードができ、その輪が徐々に広がっていったんです。

@shuji:私たちの思いが少しずつ伝わり始めているんだと、個人的にもうれしくなりましたね。ロードマップにはいくつかの役割があると思っていますが、導入当初、特に大きかった役割は「経営のモニタリング」です。経営陣がその進捗を追いやすいよう、内容はできるだけ具体的に、解像度高く記載するようにしていました。

それが今や信頼できる優秀な仲間が増え、ロードマップを通じた共通言語も全社に浸透し始めているので、経営陣があれこれと細かく決めるよりも、メンバーを含めたみんなで考えた方がより大胆なアイデアが生まれると考えるようになりました。だから、今のメルカリではあえてロードマップの内容に一定の余白を残しているんです。特に、実現の手段については現場の創意工夫に委ねるようになりました。こうした背景や思いを丁寧に伝えていくことも、メンバーへの浸透を図るうえで非常に重要なプロセスだと思います。

ロードマップ経営に必要なのは、「ミッションを本気で達成する」と決める“狂気”

――ロードマップ経営の導入によって、メルカリはどう変わりましたか?

@shuji:ロードマップによって、グループ間でシナジーを生むための連携方法やアクションの優先順位が明確になり、間違いなく経営がしやすくなったと思います。

それから、メンバーとのコミュニケーションにも大きなメリットがあると期待しています。会社の行く末を共有することで、日々の業務がミッション達成にどうリンクしているのかがわかるようになるので、会社への貢献実感、ひいては社会への貢献実感をもつことができるようになり、働きがいの向上にもつながっていくと思います。

――現状の課題や今後の展望についてはどうお考えですか。

@mune:ミッション実現に向けたチームや個人のアクションを、ロードマップを通じてもっとスムーズに引き出せるようにすることが次の大きなチャレンジです。これが実現できれば、チームや個人のOKRの設計がしやすくなり、メンバーのやりがいも桁違いに引き出されると思っています。

まずはロードマップに書かれていることとメンバーの考えや行動にどんなギャップやジレンマがあるのか、それを組織として解決するにはどうすれば良いのかを探るため、今期の前半からは特に社内外のキーマンとの対話量を増やしています。

@shuji:今後の展望でいうと、今はマネジメント層を中心にロードマップを策定していますが、将来的にはメンバー自身がその役割を担い、主体的に運用できる環境を整えたいと思っています。新たな事業を立案するとき、チームや個人の目標を決めるとき、その都度ロードマップを確認し、「ロードマップにこう書かれているけど、これができていないから、ここに注力していこう」そんなふうに業務が自律的にブラッシュアップされ、戦略自体も進化していく世界を目指しています。

――本記事の読者のなかには、ロードマップ経営に興味をもっている方々も多いと思います。まず何から始めたら良いでしょうか。

@mune:まずは、「ミッションを本気で達成すると決めること」ではないでしょうか。ごく当たり前のことを言っていますが、これができる会社はやっぱり強いなと感じます。

@shuji:そのとおりだと思います。まずは、「事業規模を拡大させ、社会にインパクトを与えるんだ」と決心すること。そうすれば、自分たちのやるべきことが自ずと見えてくるはずなので、あとはそれをロードマップに落とし込んでいくだけです。簡単そうに言っていますが、これがかなり難しいんですけどね(笑)。私たちにとってもまだ実践のただなかであり、ここでの知見をできるだけ多くの方々と共有していきたいと思っています。

メルカンの続きはイベントで!記事ではお伝えしきれなかった内容を、@shujiと@muneがイベントでたっぷりお話します。ロードマップ経営を導入している企業の方、これから導入しようと考えている方、メルカリの経営戦略にご興味をお持ちの方はぜひご参加ください。みなさんとお会いできることを楽しみにしています!

[イベント詳細]

開催日時:
2022年8月25日(木)17:00~18:30
概要:
「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げるメルカリ。このミッションを「絵に描いた餅」にしないために、メルカリでは経営ツールの一つとして「ロードマップ」を導入しています。なぜミッション実現のためにロードマップが必要なのか?運用にあたって、どんな困難や課題と向き合ってきたのか?今後の展望は?リアルなエピソードを交え、明日から実践できるロードマップ経営についてお話しします。
登壇者
河野 秀治(メルカリ上級執行役員 経営戦略室長)
浅井 宗裕(メルカリ 経営戦略室)
モデレーター
山下 ひとみ(メルカリ 経営戦略室)

参加費:無料
場所:オンライン
参加方法:こちらのページにてお申し込みください。

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