自治体との連携をより深めることができれば、メルカリの目指す循環型社会の実現に近づくことができるのではないか──。
そんな思いから始めた取り組みが、先日、内閣府地方創生SDGs官民連携優良事例を受賞し、カンボジアで行われた「第11回アジア太平洋3R(リデュース・リユース・リサイクル)・循環経済推進フォーラム」でも取り上げられました。
今回、内閣府地方創生SDGs官民連携優良事例を受賞したのは、「メルカリShops」による粗大ごみの販売の取り組みと、「メルカリエコボックス」による実証実験。本プロジェクトを推進した経営戦略室の石川真弓(@mayumine)、政策企画チームの布施健太郎(@fuseken)、そして高橋亮平(@ryohey)の3名に、「メルカリエコボックス」、粗大ごみの「メルカリShops」出品をリリースするまでの目まぐるしい日々をふりかえりつつ、プロジェクトに込められた想いを聞きました。
この記事に登場する人
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石川真弓(Mayumi Ishikawa)メルカリ経営戦略室 ESG Specialist。2018年メルカリに入社し、コミュニティ担当として、お客さまコミュニティの立ち上げと運営、メルカン編集部などを担当。現在はメルカリ経営戦略室として、ESG委員会の運営、サステナビリティレポートの作成、TCFD提言に基づく情報開示、メルカリエコボックスの開発、自治体連携、教育プログラムの開発、メルカリの事業を通じて生まれた環境貢献量の算出・開示等を担当。 -
布施健太郎(Kentaro Fuse)メルカリ政策企画Public Alliance Teamマネージャー。百貨店に勤務後、国会議員政策担当秘書(衆議院)を経て、市議会議員、県議会議員として地方自治に従事。介護会社の立ち上げや病院の事務責任者・開発担当等を経て、2019年4月メルカリに入社し、主に政府系キャッシュレス事業を担当。2021年4月よりソウゾウに異動、2022年2月よりソウゾウ政策企画マネージャー。2023年10月より現職を兼務。 -
高橋亮平(Ryohei Takahashi)20代で市川市議、30代で全国最年少自治体部長職を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、中央大学特任准教授等を経て、2018年6月にメルカリ政策企画に入り1人で自治体連携を始める。AERA「日本を立て直す100人」に選出。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。政策企画ブログ「merpoli」編集長も務める。
「メルカリエコボックス」でリユースを新たなカテゴリーにしていきたい
——まず、「メルカリボックス」の簡単な説明と、プロジェクトが始まった経緯を教えてください。
@mayumine:「メルカリエコボックス」は、家の中に眠っている洋服や本、小物や食器など「もう使わなくなったけれど捨てるにはもったいないもの、捨てられないもの」を「見える化」し、一時的に保管しておくための箱です。
その箱にとりあえず「まだ使えるが不要になったモノ」を入れて、そしてときどき箱の中身を見返して、そのモノを「捨てる」のではなく、必要としている人にあげたり、売ったりすることで「リユースをあたりまえ」にする行動が定着していけば、環境負荷も減り、循環型社会の実現に近づくことができるのではないかと考えました。
最初のきっかけは、全国の市長たちの前での講演でした。当時所属していたサステナビリティチームで、メルカリの循環型社会の実現について、私が万博首長連盟という全国の市長たちが集まる場所で講演することが急遽決まりまして…。
そこで関心を示していただいたいくつかの自治体とやりとりをしていくなかで、「メルカリエコボックス」の導入を実際に進めて行くことになりました。
石川真弓(@mayumine)
@fuseken:いまさらですが、自治体との最初の仕事が首長連合での講演ってなかなかレアケースですよね。
——「メルカリエコボックス」導入はどのように進めていったんですか?
@mayumine:まずは蒲郡市(愛知県)と加茂市(新潟県)との実証実験として、「メルカリエコボックス」を各自治体に300個ずつ配布するというところからはじめました。
@ryohey:実証実験のアンケートでは、想定より多くの方が実際にリユースしてくれていたんですよね。
@mayumine:そうなんです!アンケートの回答をしてくれている人の74%が「メルカリエコボックス」に入れてくれ、そのうち55%の方は実際にリユースをしてくれました。実証実験によって、当初の想定していた以上のポジティブな結果が得られたことで、「メルカリエコボックス」によるリユース推進の可能性をより強く感じることができたと思います。
断られ続けた粗大ごみの「メルカリShops」での販売がようやく実現
——実際にプロジェクトを進めるなかで、どんな苦労がありましたか?
@ryohey:「メルカリ」で粗大ごみを売るという提案は、「メルカリShops」がはじまるだいぶ前から考えていたもので、いくつもの自治体に提案していたのですが、随分多くの自治体に断られましたよね…。
@fuseken:そうですね。今でこそありがたいことに多くのメディアに取り上げていただき、自治体からの問い合わせが多くなっていますが、当時はなかなか理解を得ることが難しく、時には苦労もありました。
布施健太郎(@fuseken)
@ryohey:提案が難航していた時でも諦めずに続けられたのは、自治体が「メルカリShops」で粗大ごみを売ることに可能性を感じていたからです。この取り組みはリユースのモデルケースになると同時に、非常にメルカリらしい取り組みでもあると思っていたので、交渉の末に取り組みが実現した時は感慨深かったですね。ただ、取り組みが決まってからも、課題は山積みだったのですが…(笑)。
@fuseken:ごみとして出されたものを販売するということに対して、市民からは賛否両論が出ることは容易に想像できました。ですが、反対の声が上る可能性もある中でも、取り組みに意義を感じてくださった自治体があること自体が、大きな価値だと感じます。
環境部署は、行政の中で特別目立つ存在ではありませんでしたが、これからSDGsや環境への意識が高まるにつれ、より注目度が上がっていくのではないかと感じています。首長のリーダーシップや担当の熱意によって、突破した実例を作れたというのは、素晴らしいことですし、行政に関わる人たちの意識変容にも繋がったと思いますね。
「ごみゼロの日」にやると決めたことで、意思決定と実務のスピード感が実現
——プロジェクトを推進するうえで苦労したポイントはうかがいましたが、逆に予想以上に上手く進められたことや気づきなどはありますか?
@mayumine:今回、2022年1月の万博首長連盟の講演から施策の実施まで、4ヶ月半という短い期間で実現することができたので、かなりスピード感を持ってできたと思っています。私自身、今回初めて自治体の皆さんとお仕事をご一緒させていただきましたが、皆さんの意思決定と実務の速さに感銘を受けましたし、いい緊張感を持ちながら進めることができました。
@ryohey:2022年10月に粗大ごみ販売をはじめた西宮市(兵庫県)はさらに早く、実施の話をし始めてから3週間でリリースしました。これは、自治体・メルカリ両者ともに、まさに “All for One” にプロジェクトを推進した結果だと思います。改めて振り返ると、とんでもないスピード感ですよね(笑)。
高橋亮平(@ryohey)
——ここまでスピード感をもって実施できたポイントはどういうところだったんでしょうか。
@mayumine:最初の取り組みは、開始日を5月30日の「ごみゼロの日」に合わせることに決めて、「とにかくやり切った」ことに尽きますね。PRのモーメント効果もありますが、それ以上に「この日をターゲットにやる」と決めることで、実施日をズラせない、ある意味お互いリスケジュールする言い訳ができない状態にしたことが大きかったように思います。
@fuseken:自治体案件って、自治体のことも分かっていた方が良いし、大人のコミュニケーションが必要なので、その意味では、今回のメンバーのそれぞれの強みが活かせたようにも思います。
@mayumine:自治体の予算のスキームとか、どうやったら行政が動くのか、議会の通し方などの力学など、「こうやると進むのか!」と学びになることが色々ありました。地方都市との連携ということで、基本はオンライン面談でしたが、普通に市長と直接話すことができたのも凄いなと思いましたし、担当の職員の方々の熱意も感じることができました。
@ryohey:merpoliのインタビューで、鈴木 蒲郡市長が話をしてくれているので、是非こちらも見ていただきたいですね。
5月30日の蒲郡市の発表会にて、メルカリエコボックスを蒲郡市長と配布する様子
自治体連携によるリユースの推進をさらに加速させていきたい
——では、最後にこれからの展望を教えてください!
@fuseken:メルカリとして、このような自治体と連携したリユースをどう拡大していくかを考えて行かなければなないと思っています。
@mayumine:「メルカリエコボックス」はアンケート結果で見えてきた改善点もあるので、これを受けて、第2弾も進めていきたいですね。
@ryohey:今年に入って「メルカリShops」による自治体の備品販売も、松原市(大阪府)、鎌倉市(神奈川県)、室蘭市(北海道)、加茂市(新潟県)、山形市(山形県)、徳島市(徳島県)と増え、2月14日には「メルカリShops」による粗大ごみ販売も岡山市(岡山市)が加わりました。これで「メルカリShops」による自治体販売は、11自治体になりました。こうしたチャレンジは、自治体の新たなモデルを構築しているとも思っており、今後もリユースや循環型社会推進などをテーマにどんどん新しい取組みにチャレンジしていきたいです。今年も色々やっていきますよ!
また、コラボレーション企画でメルカリグループの政策企画ブログ「merpoli(メルポリ)」には今回ご紹介した「メルカリエコボックス」の実証実験で実施したアンケート結果を公開しています。こちらも合わせてご覧ください。