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自分の領域を飛び越え、ゴールのない旅を楽しむ──vol2. Ichihara #LeadersVoices

2023-4-6

自分の領域を飛び越え、ゴールのない旅を楽しむ──vol2. Ichihara #LeadersVoices

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メルカリでは、どんなバックグラウンドを持っていても、平等なチャンスと適切なサポートのもとでそれぞれがバリューを発揮できる組織を目指し、様々な取り組みを実施しています。

SDGsの1つにもなっている「ジェンダー平等」、そしてDiversity & Inclusion Statementに基づく多様な組織の実現は、私たちメルカリのグループミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」にも深く結びついている考え方です。

当連載「新たな価値をつくる – 風の時代を生きるリーダーが紡ぐ言葉の記録」の第2回は、メルカリの中でも特に国際色の強いSecurity&Privacyチームを率いる、CISO市原尚久(@ichihara)を迎え、幼少期からキャリア形成に至るまで原動力となってきた新しい世界に飛び込むことの面白さ、多様な組織を牽引する上でのマインドセットについて深堀りしました。

この記事に登場する人


  • 市原尚久(Naohisa Ichihara)

    東京理科大学大学院理工学研究科経営工学専攻修士課程を修了。その後、NTTデータ通信株式会社(現 株式会社NTTデータ)にてセキュリティ関連業務に携わる。2015年にLINE株式会社へ入社し、各種セキュリティ課題改善プロジェクトに従事。2022年5月、株式会社メルカリ執行役員 CISOに就任。

いつまで経ってもゴールがないことの面白さ

──まずはIchiharaさんご自身のバックグラウンドについて伺いたいのですが、聞くところによるとギター片手にさまざまな国を周遊されたご経験があるとか。どのような環境で育ったのですか?

父が飲食業を経営していたので、親が家に居ない時間が長く、幼少期から自由な環境で育ちました。中高生の頃から好奇心が強く、知らない世界に飛び込むことが好きだったこともあり、これまで出張を含め世界50ヵ国以上を旅してきました。

兄の影響で弦楽器が奏でる音が好きになったことがきっかけで「音を鳴らし続けていたい」という感覚を持つようになりました。大学生の頃は、ギター片手に旅をしながら、現地の路上ミュージシャンとセッションを楽しんだのはいい思い出です。音楽を通して仲良くなった人の家に招いてもらって、食事をご馳走になることも多々ありましたね(笑)。そんな風に、自分の身を見ず知らずの環境に置いて、五感で吸収するような体験が好きなんです。

大学在学中はAI分野を専攻し、大学院まで研究に没頭していました。振り返ってみると、旅も、音楽も、研究も「知らない世界に飛び込んで、得体の知れないものを自分で探求してみたい」という意味では共通していると思います。

ギター片手に世界を歩く

──セキュリティ領域の仕事では、どんなところにやりがいや面白さを感じていますか?

「裏読みの面白さ」があると感じています。

──裏読みの面白さ?

はい。例えば、あるサービスをリリースする際、常識的には考えつかないような想定外の使い方をされる可能性があります。しかし、私たちはその想定外まで考え尽くした上でソフトウェアを開発したり、ビジネスロジックを組み立てたりする必要があります。そのためには、新たな技術をキャッチアップしたり、セキュリティ領域のニュースにアンテナを張ったりと、常に横道を見ておく必要があると思います。セキュリティ領域は常に進化し続けていて、非常に奥深く、ゴールがない旅なんです。そこが難しくもあり、面白さでもあります。

「想定外を受け入れる」という選択肢を持つ

──過去にSlerとして働いていた職場では、フランスのパートナー企業と10年間仕事をされていたそうですが、異なる文化やバックグラウンドを持つ方々と仕事をすることによって、どのような気づきやマインドチェンジがありましたか?

印象的だったのは、時間の使い方が日本人と全く違っていたことです。フランスに限らずヨーロッパ全体の文化だと思うのですが、家族との時間を優先することを優先する人が多いので、平日18時を過ぎた頃には会社にほぼ人がいない状態でした。

日本ではタイトなスケジュールを厳守するため、週末も働いたり、遅い時間まで仕事をしたりすることもあるので、私自身それに慣れていたところがありました。しかし、フランスのパートナー企業からは「2週間遅れます」という声が当たり前のように上がってきたので驚きましたね。そのようなスケジュールの遅延が何度も発生するので、受け入れつつも交渉して…の繰り返しで、最初は日本にいる私の上司や周りのメンバーも戸惑っていましたね(笑)。

その他にも、夏のバカンスの時期は多くのメンバーが一斉に長期休暇をとるため、1ヶ月以上仕事が進まない期間があるなど、日本では考えられないカルチャーも多々あり、1年目から文化の違いを肌で感じました。

──確かにかなりカルチャーショックですね…!そのような環境下でも渡り歩いていけたのはなぜだと思いますか?

見ず知らずの土地にギターを持って飛び込んだ経験があったからこそ、カルチャーギャップを受け入れやすい体質だったのかもしれません。

フランスのパートナー企業と仕事をする中ではもちろん苦労もあったのですが、グローバル企業で働くマインドセットを養っていきたいと思っていたので、メンバー同士で言いたいことを言い合える関係性を構築したり、スケジュールがずれることを想定して早めに準備を進めたりしていました。たとえ想定外の事態が起こっても、受け入れて対処できるように複数の選択肢を持っておくことも大切にしています。

市原尚久(@ichihara)

「ギャップ」という課題に前向きに取り組み、多様なメンバーが活躍できる土壌をつくる

──メルカリの中でも特に多様性に富んだチームを牽引する中で、どのような課題があると感じますか?また、その課題を解決するためにはどんなことが必要なのでしょうか。

チーム内での言葉の伝え方や表現方法には課題があると感じています。日本語では、相手との関係性によって尊敬語や謙譲語などを使い分けるので、それによって言葉の持つニュアンスや伝わり方が変化しますよね。一方、英語では丁寧さや言葉のニュアンスの伝え方が異なるので、英語が日本語に直訳されたとき、厳しいことを言われたと捉えて傷ついてしまう人もいます。

以前、日本人メンバーと外国籍メンバーが混在したミーティングで交わされた発言を気にしていた日本人メンバーがいて、ミーティングが終わったあとで「厳しい言い方をされて、今後うまく協力・連携ができるか心配です」と相談されたことがあります。私はその発言者の文脈や意図を理解していたので、「(あの発言は)そういう意図ではないですよ」とアドバイスしたことがあるんです。外国籍のメンバーは協力する気持ちを持ったうえで前向きなメッセージを伝えたつもりだったけれど、ストレートな表現だったために厳しく受け取られてしまったんですよね。このように多言語コミュニケーションにおいては、お互いの言葉が意図しない方向に捉えられてしまうということが発生しやすいと思います。

こうした問題は、実際に経験して初めて自分ごととして理解できる側面も大いにあると考えています。逆に言えば、経験を積むごとにコミュニケーションがブラッシュアップされ、伝わり方の齟齬が少しずつ減っていくと思うんです。

さまざまな文化に触れると、その都度カルチャーギャップがあり、「世界にはこういう文化もあるんだな」と学びますし、その都度自分自身の視野の狭さに気づくことができます。ここも、先ほどの「想定外を受け入れる」というマインドセットにつながっていると思います。

“Be a Borderless Player” ──常に広い視点を持ち、周囲とコラボレーションする

──最後に、多様なバックグラウンドを持つ方々が最大限バリューを発揮できる組織づくりにおいて、何が一番大事だと考えていますか?

セキュリティチームでは、“Be a Borderless Player” というメッセージを大切にしています。自分の担当している仕事やメンバーとのコミュニケーションで課題に直面したとき、自分の経験のみに頼ったり、社内のメンバーに聞いたりするだけでは限られたソリューションしか生み出せず、大きな成果を生み出すことはできないと考えています。

毎月開催している「Security All Hands(セキュリティチームの全体定例)」では、国内外問わず、優秀な人たちとのネットワーキングを持ち、常に広い視点を持つことの大切さをメンバーに伝えています。セキュリティ領域は、求められる知識の範囲が広く、奥深いので、一人で全てを担おうとせず、周囲とコラボレーションすることが特に求められるんです。

例えば、プライバシー領域のメンバーが直面している課題は、少し視点を変えて見てみると、リーガルやコンプライアンス領域の人も似た課題を抱えているかもしれません。垣根を超えて知らない世界に飛び込んでみることで、業務における課題解決のみならず、自分自身の視点を広げ、境界線を超えるきっかけが生まれると思います。自分の領域をボーダーレスに広げ、挑戦機会を得ることによって、自分の中で醸成されていく経験や知見が増えると思っています。

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