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【8つのキーワードからひもとく】メルカリの10年、そしてUnleashする可能性と未来──第8回「可能性」

2023-4-24

【8つのキーワードからひもとく】メルカリの10年、そしてUnleashする可能性と未来──第8回「可能性」

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    株式会社メルカリは2023年2月に創業10年を迎えました。この大きな節目に「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる(Circulate all forms of value to unleash the potential in all people)」というグループミッションを新たに策定しました。

    メルカンでは、このグループミッションに込められた意図、そしてこれからの私たちの目指すことを「【8つのキーワードからひもとく】メルカリの10年、そしてUnleashする可能性と未来」という連載形式でお伝えしていきます。これからのメルカリを牽引するキーパーソンたちの言葉から、改めてメルカリという有機体(組織)の現在と未来を紡いでいき、これからの10年に私たちが社会にどのような貢献をしていけるかを思考します。

    連載の最後のキーワードは「可能性」です。株式会社ソウゾウ代表取締役CEO 兼 株式会社メルカリ執行役員VP 石川佑樹(@maze)、執行役員 Marketplace COO 長利一心(@osarin)、執行役員 VP of Growth 兼 CBO Marketplace 兼 株式会社ソウゾウ取締役 迫俊亮(@sakoshun)の3名に、メルカリがどのようにサービスや会社、お客さまの可能性を広げてきたのか、その創造の原動力になったものとは、そして、今後さらに広げていきたい可能性について伺いました。

    この記事に登場する人


    • 石川佑樹(Yuki Ishikawa)

      東京大学卒業後、2012年任天堂株式会社入社。2014年にモイ株式会社(ツイキャス)に入社し、各種開発や新規立ち上げに従事。2017年6月メルカリグループの株式会社ソウゾウ(旧)に入社。その後、株式会社メルカリへ異動を経て、2020年7月より株式会社メルペイ執行役員VP of Product。2021年1月から株式会社ソウゾウ代表取締役CEO。2022年7月から株式会社メルカリ執行役員VPを兼任。


    • 長利一心(Kazushi Osari)

      京都大学大学院航空宇宙工学専攻修了。戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニー マネージャー、株式会社セガゲームス社長室長を経て、2018年3月メルカリに参画。ファイナンスIRグループ、リスク・コンプライアンスグループ、ガバナンスチームのコーポレート各所でメカニズム化やプロジェクトを推進したのち、2019年7月より経営戦略室(元会長室)ディレクター。2020年2月よりメルペイのHead of Corporateにて財務、経営企画、法務、コンプラ、リスクを管掌。2022年1月より執行役員 Marketplace COO。


    • 迫俊亮(Shunsuke Sako)

      UCLAを卒業後、三菱商事株式会社入社。その後、株式会社マザーハウスを経て、2014年4月にミニット・アジア・パシフィック株式会社代表取締役社長に就任。APAC地域6カ国で展開する“ミスターミニット“事業を統括。2021年11月に執行役員としてメルカリに参画し、新規事業に取り組む。

    メルカリの創造力の源泉は「Go Bold」

    ——新グループミッションを掲げ、さらなる可能性を創造していこうとするメルカリですが、これまでの10年間における「創造」の源泉はなんだったのでしょうか。

    @maze:メルカリには、「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」という3つのバリューがあります。なかでも「Go Bold」というバリューは、失敗を恐れずに自分たちにしかできない大きなことをやろうという考え方を表しています。創業以来、この価値観がメルカリを前に進めてきましたし、創造力の源泉になっていると思います。

    石川佑樹(@maze)

    @sakoshun:2014年に「メルカリUS」を設立したことも、「Go Bold」というバリューを体現していると言えます。創業1年目からグローバルに挑戦するのは、普通ではできない決断。進太郎さん(代表取締役 山田進太郎)をはじめ、メルカリのメンバーたちが、短期的な利益や論理性を超え、本気でグローバルマーケットプレイスを作ろうとしてきたからこそ、メルカリは成長してこれたんだと思います。

    @osarin:メルカリには、現状に満足することを良しとしないカルチャーがありますよね。最近は、社外からもいっそう成長を望まれるようになっていますし、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションもさらに拍車をかけています。

    また、組織のあり方も、メルカリの創造力を高める要因となっているんです。コーポレート部門全体を統轄していた小泉さん(取締役President 小泉文明)はよく、「バリューとカルチャーを共有することで、プロセスとルールが必要のない会社を作る」と話していました。ピン留めする部分を減らして可能性を無限に広げるという考え方が、人の創造性を発揮させ、ひいては会社の創造力を高めることにつながっているのだと思います。

    数年先の未来の常識をつくる

    ——創造力の源泉にあるのはバリューであり、それに基づく組織のあり方ということですね。プロダクトの観点では、どのように可能性を広げてきたんでしょうか。

    @osarin:マーケットプレイスの話をすると、お客さまに使っていただくなかで、発生したニーズに対応していくことで、アメーバのように成長してきました。最初は、不要品に新たな価値を見出すサービスでしたが、不要品を売ること自体を生業にする人が現れたり、売ることを前提に新しいものを購入する「メルカリ買い」という習慣が生まれました。お客さまに使っていただきながら、メルカリ自身も進化を続けてきたんです。

    @maze:新しいプロダクトを作る際に意識しているのは「数年先の未来の常識をつくる」ことです。スマホが普及していくにつれて、多くの人がスマホを通してモノの売り買いをするのが常識になるだろうと考え、マーケットプレイスはできました。メルペイやメルコインなどの新規事業も同じように考えています。

    ——「数年先の未来の常識」というのは非常に大事な観点のように思います。では、実際にそれをどのように捉えていくのでしょうか?

    @maze:ひとつは、実際に未来を体験することです。例えば、メルペイを立ち上げた際には、社員の大半が上海に視察に行きました。上海のペイメント産業は日本よりも進んでいたため、そこでなにが起きているのかを体験し、その知見をプロダクトに盛り込みました。

    @sakoshun:テクノロジーだけでなく、新たな潮流にも目を向けています。USやEUではサステナブルへの意識が非常に高く、売った後の循環が考慮された商品でないと、消費者に受け入れられないといったムーブメントが若い世代を中心に生まれています。こうした少し先の未来の流れを日本に持ち込み、数年後の常識を作っていこうというアプローチこそ、メルカリらしいと思っています。

    迫俊亮(@sakoshun)

    カルチャーこそが、人の可能性を広げる「最強の仕組み」

    ——現状の延長線上ではなく、未来から考えるアプローチでプロダクトを創造してきたし、これからもしていく。では、「人」という観点ではいかがでしょう。どのようにメンバーの可能性を広げたのですか?

    @maze:教育制度を作り込んできたというよりも、与えられた機会に挑戦するなかで、自分自身で可能性を広げるという考えのもとやってきたように思います。メルカリの特徴は「早いうちから任せる」ことです。感覚的ですが、他社が「8割できたら任せる」ことも、メルカリなら「6割」で任せます。その代わり、難しい場合は完全に失敗する前に、誰かが引き取るようにしているんです。責任を託され、学ばないといけない状況になることが、人の成長を加速させますからね。

    @osarin:そして自分が一度できるようになったことは、すぐに人に任せ、新しい役割に挑戦することも大事にしているんです。進太郎さんの受け売りですが僕はそれを好んで、「自分を“クビ”にするカルチャー」と呼んでいます(笑)。経験済みのことよりも、やったことがないけれど挑戦したいことのほうが熱量高く取り組めるし、「引き取る」ことができる前提なら、そのほうが成功確度が高いという考え方があるんです。

    @sakoshun:任されたものに挑戦することも、できたことを手放して新しい役割に挑戦することも、圧倒的なWill(意志)があるからできることです。だからこそ、Willを引き出すような体験をすることが大切だと思います。僕自身もそう考えて、今年はチームメンバーと共に、インドなどの成長著しいアジア諸国に実際に行って、現地のマーケットプレイスを体験しにいくことを計画しています。市場機会についての理解を深めることに加えて、経済発展の熱気や、今日より明日がよくなるという雰囲気を感じるためです。そうやって熱にあてられる機会を生み出すことが、個人としても会社としても求められていると思います。

    @osarin:チャレンジの機会を生み出す仕組みを、早急に整えたいですね。これまでにソウゾウやメルコインのようなグループ会社の設立は、その機会のひとつになりましたが、規模が大きくなりメンバーが増えることを考えると、他の仕組みも必要になってくると思います。

    ——仕組みづくりで大切なのは、きちんと使われて効果を発揮できるかどうかだと思います。仕組みを作るうえで意識していきたいことはありますか?

    @maze:大切なのは「カルチャー」の土台の上に仕組みを作ることだと思います。これまでメルカリはさまざまな仕組みを導入してきましたが、前提になっているカルチャーの確認を欠かしたことはありませんでした。例えば、人事制度「merci box」の中で妊活や病児保育の支援を導入した時も、「どんな考えのもとでその制度をやるか」「どう使って欲しいのか」を繰り返し丁寧に説明したんです。そのおかげで、細かいルールを設けずとも、性善説のもとで正しく運用されています。僕自身の結論として、「カルチャーこそが最強の仕組み」だと考えています。

    今のメルカリにもその考えはありますが、新しいメンバーが増えてくると、前提や文脈が伝わりづらい部分も出てきます。新しいグループミッションを策定した今だからこそ、新たな仕組みを作るとともに、どのようなカルチャーに根ざしているかを、改めて言語化して伝えていくことが大事だと思います。

    @sakoshun:もうひとつ、仕組みをうまく運用するうえで大切なのは、「その仕組みに乗れば、より良い未来が訪れる」とみんなが信じることです。そのためには、仕組みをうまく使って新しいビジネスが生まれたり、できなかったことができるようになったりする事例が必要です。今後、カルチャーを深めていくためにも、仕組みがワークするためにも、そうした「象徴事例」を作っていきたいと思います。

    あらゆる可能性を模索し、マーケットプレイスの次元上昇につなげる

    ——最後に、少し時間軸の長い質問をしたいと思います。この先10年の展望、これからのメルカリの可能性についてはどう考えていますか。

    @sakoshun:僕は、グローバルマーケットプレイスを実現することに尽きると思います。これまでも、そのためにUS、UKの現地法人を立ち上げてきましたが、グローバル展開のやり方は会社設立以外にもあるはず。現地の会社を買収するなど、いろんな武器を持ちたいと思っています。取り組んでいる「越境プロジェクト」もそのひとつです。海外の越境EC事業者と提携し、国境を超えた、ものの循環ができるようになれば、まさに創業当時から進太郎さんが言ってきた「ワンタップで、アフリカから日本のものを買える世界」が実現できます。

    @osarin:僕も、マーケットプレイスが進化していく未来を考えています。この連載においては、グループミッションの「あらゆる価値の循環」を実現するために、マーケットプレイス以外にもあらゆる挑戦をしていくと語ってきました。もちろん、それはその通りですし、さまざまな挑戦を通じて可能性を模索していくことは間違いありません。でも、最終的にはそれらはすべて、マーケットプレイスを次の次元に昇華させることにつながると思っているんです。

    例えば、「越境プロジェクト」は、国外との取引を可能にすることで、グローバルマーケットプレイスへと進化させます。また、メルカリ上にEC店舗をオープンできる「メルカリshops」は、マーケットプレイスに流通していないものでも、メルカリを通じて購入可能にします。なにか買いたいものがあるお客様に、「とりあえずメルカリを開こう」と思ってもらえたら、マーケットプレイスの価値が高まります。今後、生み出していくさまざまな事業やサービスが、マーケットプレイスに集約されることで、本当の意味で「あらゆる価値の循環」が実現するのではないかと思っています。

    長利一心(@osarin)

    @maze:サービス以外の展望で言うなら、「グローバルテックカンパニー」として、改めて技術への投資をきちんとしていきたいと考えています。そのひとつのきっかけになるのが、これから取り組むLLM(大規模言語モデル)。具体的な実装先、実装予定など現時点で決まっていることはありませんが、メンバーが自ら好きにこの技術を使えるような環境を作ることで、社内のいろんな場所で同時多発的にイノベーションが起きるようにしたいと考えています。グローバルテックカンパニーとしてのさらなる成長にも、期待してもらえたら嬉しいです。

    編集:瀬尾陽(メルカン編集部) / 執筆:佐藤史紹

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