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社会に関心を持ち、他者への想像力を養う Vol.8 Yoshikawa #LeadersVoices

2023-7-28

社会に関心を持ち、他者への想像力を養う Vol.8 Yoshikawa #LeadersVoices

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    メルカリでは、どんなバックグラウンドを持っていても、平等なチャンスと適切なサポートのもとでそれぞれがバリューを発揮できる組織を目指し、様々な取り組みを実施しています。

    SDGsの1つにもなっている「ジェンダー平等」、そしてDiversity & Inclusion Statementに基づく多様な組織の実現は、私たちメルカリのグループミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」にも深く結びついている考え方です。当連載「新たな価値をつくる ─ 風の時代を生きるリーダーが紡ぐ言葉の記録」の最終回である第8回は、吉川徳明(@yoshikawa)を迎え、育った環境や行政機関に在籍した経験から得た深層的属性への関心と、想像力の養い方について深堀りしました。

    この記事に登場する人


    • 吉川徳明(Noriaki Yoshikawa)

      メルカリ執行役員VP of Public Policy 兼 Public Relations。経済産業省でIT政策、日本銀行で株式市場の調査・分析、内閣官房でTPP交渉等に従事。2014年、ヤフー株式会社に入社し、政策企画部門で、国会議員、省庁、NGO等との折衝や業界横断の自主規制の策定に従事。2018年、メルカリに入社し政策企画マネージャーとして、eコマース分野やフィンテック分野を中心に、政策提言、自主規制の策定、ステークホルダーとの対話等に従事。2021年7月より執行役員VP of Public Policy。2023年1月より現職。一般社団法人Fintech協会 常務理事、特定非営利活動法人 全国万引犯罪防止機構 理事も務める。

    「世界はこんなに広いんだ」中学時代に芽生えた大きな夢

    ──まずはYoshikawaさんのバックグラウンドについて伺います。東京大学を卒業後、大学院を経て経済産業省に入省したということですが、幼少期から学生時代はどのような環境で育ったんですか?

    小さい頃から父の仕事の都合で転勤することが多かったのですが、小学生の頃に父の地元である北海道函館市近くの小さな町に引っ越し、そこで育ちました。自然が豊かで自由な環境でしたが、経済的に豊かとは言えない家庭環境だったり、同級生は将来ずっとこの町で過ごすと考える人が多かったりと、自分の将来の自分のビジョンは曖昧な状態ではありました。ただ、「自分の人生をこのままここで終わらせたくない」という、モヤモヤした閉塞感のようなものを常に抱いていたように思います。

    転機が訪れたのは、中学3年生の頃、町内の学校で1名ずつ選出した生徒をカナダとアメリカに派遣する「海外派遣交流事業」の参加者に選ばれたことでした。カナダで1週間ほどホームステイした後、バンクーバー、ニューヨーク、ワシントンDCなど、世界的な大都市を訪れ、現地の空気やスケールの大きさをまざまざと実感しました。このときに「こんな世界があるのか!将来、自分も世界を舞台に仕事をしたい!」と具体的なイメージを伴って思うようになりました。

    帰国したのが中学3年生の11月で高校受験間近だったのですが、担任の先生に「外国で働きたい」と相談したところ、「それなら東大を出て外務省で働くのがいいだろう」と言われました。おそらく先生にも深い考えはなく、何気ない一言だったと思いますが、当時、大学に行くなんて発想が無かった自分が、そこから受験勉強に集中し、地元の私立高校に進学するきっかけになりました。周囲に大学進学を考える人はおらず、家庭の経済状況が厳しいなかでも、私が突然、学費のかかる私立高校に進みたいと伝えたことに対して、反対することなくただ応援してくれた両親には、今でも感謝しています。母は普段の仕事に加えて早朝の新聞配達のアルバイトを始め、私は奨学金を借りるかたちで高校に進学することができました。
    吉川徳明(@yoshikawa)

    ──海外研修に行った経験が、今につながっているのですね!それから行政のキャリアを経て、民間企業に転職したきっかけを教えてください。

    きっかけは2つあって、1つは働く環境です。当時は出張も多い部署だったので、半月近く出張で家を空けることがあったり、深夜まで残業して明け方に帰宅したりするのが当たり前のような環境でした。このままだと、妻と共働きで子育てをしながら、お互いが納得するキャリアを歩むことが難しいと判断したからです。

    もう1つは、妻と自分の仕事に対する私の考え方が変わったことによるものです。妻は新聞社で写真記者をしているのですが、あるとき妻が撮影した富士山に月がかかる写真が大手ニュースサイトのトップページに掲載されたんです。その写真に対する世の中からの反響を見て、それまでの自分がいかに傲慢だったかに気づきました。

    ──傲慢、ですか?

    はい。公務員時代の私は「国のために仕事しているんだから、帰宅時間が遅くなっても仕方ない」「こんなにも多忙なのだから、夫婦で仕事がバッティングしたときは、自分の仕事を優先してほしい」と、そんな考えは良くないと思いつつも、どこかでそう思ってしまっていたように思います。妻の撮った写真に多くの人が魅せられるさまを目の当たりにしたことで、改めて妻の仕事の価値を実感し、自分の考えを反省し、改めようと思いました。今振り返ると、互いの仕事を尊重し合うのは当たり前のことなんですが、「どうしてあんなに独りよがりだったのだろう」と感じたんですよね。その出来事がきっかけとなり、面白いチャレンジができて、かつ柔軟な働き方ができるIT業界に転職しました。

    ──その後、2018年4月にメルカリに入社した決め手は何だったのでしょうか?

    メルカリの政策企画の専門部署の立ち上げを通して、ユニークな経験が得られそうだと感じたことです。

    私が本格的に転職を意識した2017年末頃のメルカリはものすごく勢いがあり、社会的にも度々話題になっている時期でした。新しいビジネスで急成長する会社は、そのペースが速いほど社会との摩擦も増えてきます。「今のメルカリはパブリックポリシーの必要性が高まっているはず」と思っていたので、メルカリに飛び込んでみました。当時COOであった小泉さん(現取締役兼株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長)や直樹さん(現上級執行役員 SVP of Japan Region兼 株式会社メルコイン取締役)が、パブリックポリシーに対して理解が深いとわかっていたことにも背中を押されましたね。

    D&Iを一歩前に進めるために必要な「他者への想像力」とは

    ──執行役員 VP of Public Policy 兼 Public Relationsとして組織に責任を負う中で、多様なメンバーが活躍できる組織づくりの重要性を感じる場面も多いかと思います。メルカリのD&Iの現在地について、どのように考えて、どう変えていきたいと思っていますか?

    メルカリのD&Iを語る上での前提として、メルカリには壮大なミッションがあることを確認することが大事だと思います。壮大なミッションだからこそ、多様な人たちが集まり、協力し合う必要があることを認識することが大事だと思っています。例えば、ラグビーの日本代表チームには外国籍メンバーも大勢いますよね。それでも「日本代表」としてチームが1つにまとまるのは、「ワールドカップでの勝利」「世界のトップ10入り」など共通の高い目標があるからだと思います。メルカリも同様に、多様な属性を持つ人たちが互いに協力して高い目標に向かって一つになれる組織でありたいと考えています。こうしたことを踏まえたうえで、より多様な属性に配慮したD&I推進が必要だと考えています。

    D&Iというと国籍やジェンダーなど、既に声が挙がっている、あるいは挙げられつつある属性にフォーカスされることが多いですよね。それ自体は全く悪いことではないですし、まずはここを進めるという方向性に異論はありません。その先のステップとしてD&Iをさらに一歩前に進めるために、今後は声が挙げられていない/挙げにくい属性や、表面的には見えにくい深層的属性について、多様性の確保と包摂についても取り組んでいくべきだと思っています。例えば、社会的にヤングケアラーが注目されるようになりましたが、以前から苦しい状況に置かれてきた人たちは存在していたわけです。職場のD&I推進においても、見落としている支援対象の人たちがいないかには注意が必要だと思います。

    ──個人としては、どんなところから取り組んでいけるのでしょうか?

    「他者への想像力」を持ちながらも、「自分1人では100%相手に配慮したコミュニケーションができないこともある」と自覚することから始めてみてはどうでしょうか。マジョリティ/マイノリティに限らず、一人ひとりが考えていることは本当の意味ではわからないので、私たちは対話の中でしか互いの理解を深めていくことができません。例えば、コミュニケーションで気になることがあったら相手に率直にフィードバックをする。フィードバックを受けた側は、まずフィードバックをしてくれたことに感謝して、それを受け止める。自分に非がある時は謝る。そういった関係性が組織全体に定着していることが、とっても大切だと考えています。

    一方で長期の目線では、自分の想像力の範囲を広げることも必要だと思います。社会活動や読書を通して知識を得たり、経験を広げることがそのためには必要です。私自身に身近なところで考えても、子どもが通う保育園や小学校の父母会や地域活動に参加してみる、マンションの管理組合の役員を務めてみるなど、実践できることは多いです。社会の様々な事柄に関心を向けて、そこで得た経験や知識を組織にフィードバックすることで、より良い循環が生まれると考えています。

    ──実際に個人として、地域のコミュニティに参加してみて、何か気づきはありましたか?

    私は以前住んでいたマンションで管理組合の理事長をしていたのですが、正直なところ最初は仕方なく引き受けた仕事でした。消火器の交換や防災品の整備、設備が破損した際の修理や保険の手続きなどを担っていくうちに、自分が当たり前に暮らしていた住居の管理や環境の維持にこれほど手間がかかっているのかと初めて気づかされました。

    保育園や小学校の父母会などの活動も同様で、運営側に回ってみると、単に参加者として参加していたときには見えていなかった仕事や苦労を具体的に理解することができます。イベント一つとっても準備して運営する側はこんなに大変なのか、地域にはこんなにも多様な家庭があるのか、と。

    「チャンスを提供する側」としてメンバーの活躍をサポートしたい

    ──「目に見えづらい」深層的属性を理解することへの想いを持っているYoshikawaさん個人として、これからどんなことに取り組んでいきたいですか?

    メルカリで多くのチャンスをもらい、自分自身が活躍する場や成長する機会をたくさん与えてもらったと自覚しています。これからは、私自身がそうした環境を整備する側に回って、どんな属性の人であっても、やりたいことを実現し、仕事を通じて自信を深めていくような機会を提供したいです。

    「チャンスは自分で掴みにいくもの」なんて言葉もありますよね。もちろんそれも大切なことだと思いますが、私は個人の能力が最大限引き出されて発揮されるためには、周囲のサポートが欠かせないと考えています。自分がどのように周りにチャンスを提供し、サポートができるかを常に考えていきたいと思っているので、新しくこの会社に入った方も含めて、どのような立場、どのような属性の方からも、率直にフィードバックしていただけると嬉しいですね。

    ──最後に、多様な社会の実現に向けた個人の在り方について、Yoshikawaさんの想いを聞かせてください。

    社会全体から見たときに職場で体験できることはわずかであり、メルカリの社員という側面以外の自分の側面を社会との関係でいくつも持つことが大事だと思います。会社というものはその特性上、どうしても同質的な人たちが集まりやすいです。それと比べると、社会はずっと多様です。その多様さに想像力を働かせることも大事ですが、人間の想像力には限界があるので、自分の経験と知識の両方を広げることに努めるべきだと思います。自分が住んでいるコミュニティの活動に参加したり、関心がある社会課題に取り組む非営利団体を支援したり、自分の専門とは全く異なる分野の本を読んだり、専門家と議論したりする機会を持つことを続けたいと思っています。仕事の外で社会と多様な接点を持ち、経験と知識を広げていくことで、働くことをよりポジティブに捉えられるとも考えています。一度きりの人生、「できるだけ多様な経験をしたい」というのが個人的な信念です。

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