こんにちは。メルカリ経営戦略室の山下(@mattilda)です。
2023年10月19日、パナソニックホールディングス株式会社がデザイン経営実践プロジェクトの一環として実施している「未来構想フォーラム」に、私と浅井(@mune)の2名で登壇してきました。本日のメルカンでは、イベント当日の模様を一部ご紹介したいと思います。
イベントはPanasonic Design Kyotoで行われました。リアル/オンラインライブ配信をあわせて300人以上のパナソニックグループ社員の方にご視聴いただいたそうです
パナソニックグループ デザイン経営実践プロジェクトとの出会い
パナソニックホールディングス株式会社がリードするデザイン経営実践プロジェクトとは、グループ横断で「より中長期的な経営を促すこと」を目的としたパナソニック独自の取り組みです。自社視点での短〜中期的な事業成長計画ではなく、社会にとって意義のある中長期的な未来を構想し、そこから逆算したPDCAサイクルを回し続けることを奨励しています。
そのプロジェクトの一環として「未来構想フォーラム」という社内イベントが定期的に開催されており、今回、ロードマップ経営についてのメルカン記事を読んでくださった担当者から、ぜひ対談をとお声がけいただいたことがきっかけで、このような場が実現されました。
当日は、パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 デザイン担当の臼井重雄様と、パナソニック エナジー株式会社社長の只信一生様と私、浅井の4人が登壇し、まずは私からロードマップ経営に関するプレゼンテーションをさせていただきました。
パナソニック エナジー株式会社社長 只信様(左)と私(右)
「わくわくする未来を描いて、その実現にコミットする」両者に共通したスタイル
話しながら感じたのですが、各社呼び方は異なるものの、パナソニックのデザイン経営もメルカリのロードマップ経営も「自分たちがわくわくする未来を(ある意味勝手に)予言して、それを自らの手で実現しにいく」という点では同じだということです。
只信さんからは、「出来上がったロードマップを浸透させるために、どのような工夫をされているか?」とご質問をいただきました。メルカリでも、社内浸透はまさに今向き合っている課題だと前置きはしつつも、ロードマップを絵に描いた餅ではなく自分ごと化するために、経営陣とメンバー、ミドルマネージャーとメンバーなどあらゆる層で対話をし続けていることをお話しさせていただきました。
パナソニックエナジーでも、経営と社員とが対話を続け、この数年ですでに100回近くの対話を実施しているそうです。トップの一方的な熱に留めずに、それを現場のメンバーに伝播させていくことの重要性については、登壇者全員が納得していました。
逆に違いとしては、メルカリはあえてコンサルなど外部パートナーを通さず、自分たちでロードマップを描いている一方、パナソニックエナジーは外部パートナーと組んで、大胆にやり抜いていました。
紹介いただいたアウトプットのクオリティやそれぞれにこめられた思いに「ここまでやっていいのか」と刺激をいただきました。
只信さんの後ろに展示されているのは、パナソニックエナジーが達成したい未来を絵本作家に依頼して作品化してもらったもの
また、パネルディスカッションでは、事前に集まった質問の中から「変化が激しい社会で長期視点経営をしていくために、組織のリーダーやミドルマネージャーが持つべき能力はどのように変わってゆくか?」について議論しました。
只信さんが「能力は、そもそもみんな持っているという前提で考えるべき。時代や事業環境によって、発揮の仕方が変わるだけ。マネージャーにはみんなの能力を引き出すコーチとしての役割が求められるのではないか」と回答されていたのが印象的でした。
我々もまさに直近、ロードマップ経営においていかにミドルマネージャー層をエンパワーするかに焦点を当てた議論を重ねているところです。
不確実性の高い現代社会を、ポジティブに切り拓く「コツ」
後半、お互いにプレゼンの感想を述べあったのですが、メルカリの浅井からは「確固たるパーパスの見定め、共通言語の練り上げ、メンバーとの徹底的な対話と、ナイストライへの惜しみない称賛など、共感できることがたくさんあった。メルカリで確信を持って、それでも2,000人の規模で取り組んでいたことを、パナソニックエナジーでは2万人、パナソニックグループ全体では20万人とまさに桁違いの規模で行われていることを知ることができて励みになった」とコメントしていました。
私もまさに同じ感覚で、パナソニックグループとメルカリ、両者に共通する経営スタイルは、不確実性の高い現代社会をポジティブに切り拓くための「コツ」とも言えるのではないかと思いました。
メルカリ浅井(左)とパナソニックホールディングス株式会社 執行役員 デザイン担当 臼井様(右)
最後の締めとして臼井さんが「今日話したことを、ひとつひとつ現場が向き合っている課題として見つめ直すと、結局めんどくさいことでいっぱいなんです。大変すぎて、いつのまにか『わくわくする未来』について考えなくなってしまっている節があるかもしれない。それでも本来、『わくわくする未来』からバックキャストして考えることは、楽しいことでしかない。楽しんでやりたいし、やってしまっていいんだと改めて気づかされた」とおっしゃったことに、会場中が大きく頷いて、90分のイベントがあっという間に終了しました。
当日参加されていたパナソニックグループ社員の方からも嬉しい感想をいただきました。
- 共通言語の大切さを改めて痛感しました。ビジョンやミッションに限らない通常業務においても、共通言語を持つことができないことによる齟齬がコロナ以降とても多いと感じていたので実践していきたいと思いました。
- 自分たちで時間をかけて考えて、言語化し、実行する、というあるべき姿を愚直に推進していること。今のパナソニックでは忙しさなどを理由に忘れ去られている大切なことだとあらためて思い出させていただきました。
イベント後には参加者による懇親会が開催され、互いのビジネスでの連携可能性についても熱く議論を交わしました。
只信さんはイベントの後にも繰り返し「未来を実現するのは人でしかない」「人の力をどれだけ引き出せるのかが社長としての自分の使命だと思っている」と仰っていて、その熱量に私たちまで元気をいただきました。
今回の取り組みにとどまらず、循環型社会の実現に向けたエコシステムを一緒に作っていけたら嬉しいと思っています。
左からパナソニック エナジー株式会社 社長の只信一生様、私、浅井、パナソニックホールディングス株式会社執行役員 デザイン担当の 臼井重雄様
【臼井様からいただいたコメント】
今回は未来構想フォーラムに登壇いただきありがとうございました。我々が取り組んでいるデザイン経営はロードマップ経営と同様に、徹底的に解像度にこだわりながら、あるべき未来の社会像を言語化します。当社の創業者である松下幸之助は、理想のくらし、そこに暮らすお客様の姿を解像度高く描き、そこに向かってあらゆる企業活動を推し進めてきました。このプロジェクトを通じて創業者の考え方にパナソニックグループとして向き合い続けていきたいと思っています。
メルカリでは、ロードマップ経営に関するイベントや記事も公開しておりますので、ぜひご覧ください。
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