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手段を問わずにソリューションを考え抜く。新配送サービス『エコメルカリ便』で構想する物流イノベーション

2024-5-17

手段を問わずにソリューションを考え抜く。新配送サービス『エコメルカリ便』で構想する物流イノベーション

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2024年3月、メルカリの新配送サービス『エコメルカリ便』がスタートしました。大きな特徴として挙げられるのが、利用者の利便性向上と物流業界の課題解決を同時に実現するという点。100サイズまでの梱包材活用で梱包のわずらわしさを解消し、一律の送料設定でわかりやすさを追求。さらには、CO2排出量の削減も期待できる取り組みです。

従来のメルカリ便は、ヤマト運輸や日本郵便の既存サービスを利用していました。しかし、『エコメルカリ便』では独自の配送ネットワークを構築。出荷時の伝票をそのまま配送に使用することで、ドライバーの手間を削減するなど、パートナーと一緒に工夫を凝らしつつ、”やさしくておトク”な配送方法を実現しています。

こうした工夫の裏には、「梱包あるある」をはじめとする利用者の不満や、物流業界の慢性的な人手不足など、さまざまな課題が横たわっていました。それらをテクノロジーと仕組みの革新で解決に導く ── すなわち、利用者と物流事業者、そして地球環境にとって、三方よしという物流の未来を構想しているのです。

今回は、「エコメルカリ便」立ち上げの舞台裏から、その先に見据えるビジョンまで。執行役員 VP of Business Development / Logisticsの進藤智之が、構想中の物流革命について語ります。

この記事に登場する人


  • 進藤智之(Tomoyuki Shindo)

    大学卒業後、ヤマト運輸に入社し、法人支店長を経験。2007年には日本IBMにて、コンサルティング事業部にて運輸・物流のプロジェクトを担当する。2013年にアマゾンジャパンに参画し、物流ネットワークの立上げ責任者を務める。2020年、イオンネクスト準備株式会社にて理事物流部長に就く。その後、2021年にメルロジ代表取締役COOに就任、2022年2月より株式会社メルカリ執行役員 VP of Logistics Marketplace。


事業成長における新たな価値提供の一手、それが『エコメルカリ便』

── メルカリの物流サービスはさまざまなところに支えられながら拡張してきました。まずはエコメルカリ便を新たに立ち上げた背景から伺いたいと思います。

メルカリはフリマアプリとしてスタートしたマーケットプレイスのビジネスですので、商品を最後までお届けすることで初めてお客さまへのサービスが完結します。ただ、配送というのはメルカリ自身で担うことができないので、配送サービスを提供している会社に支えられ、その会社と協業しながらサービスを作ってきました。それが、忘れてはならない大きなポイントだと思います。新しい配送サービスをリリースすることで、メルカリはさらに成長を遂げてきたのです。

運ぶことができるからこそ、メルカリのビジネスも成り立っています。その意味では、ヤマト運輸さんや日本郵便さんなど、これまでずっと助けていただきながらここまで事業をつくってきました。

一方で、メルカリの課題として言われている「出品の面倒」と「梱包の面倒」を、配送サービスという観点からいかに解消できるかを常に考えてきました。

── では、それらの課題にはどのようにアプローチを?

今一度、配送サービスはどうあるべきかをゼロから考えることで、『エコメルカリ便』という構想が生まれました。『エコメルカリ便』の構想自体は、前身となるメルロジの構想が終わったタイミングとほぼ同じ時期に始まっています。

メルロジの構想が終了した後、我々は新たなミッションを得て、メルカリの事業成長のための新しい仕組みやビジネスモデルが必要だと考えました。当時は「LCC(Low Cost Carrier)」という形で構想しており、これが『エコメルカリ便』の原型となっています。メルロジ構想を閉じ、新たな事業開発部としての構想を描いているなかで生まれたのが、今回の『エコメルカリ便』構想でした。

── 新しい取り組みを推進するうえでは、物流業界のパートナーとともに構想を進めなければなりません。その点、物流業界からメルカリという存在はどのように見られているのでしょうか。重要なビジネスパートナーと捉えられているのか、あるいは難易度の高いチャレンジを提案してくる会社なのか……。

これまでのメルカリ便の配送サービスは、メルカリ独自でやっているわけではありません。たとえば、ヤマト運輸がもともとフリマサービス向けに作ったサービスを、メルカリが『らくらくメルカリ便』と打ち出しているわけですし、日本郵便がフリマやEC向けにつくったサービスを『ゆうゆうメルカリ便』とメルカリで名付けて提供しているだけなんです。

つまり、全く同じサービスを他社でも使えるわけです。ここだけを見れば、物流会社からしても、メルカリがとりわけ難しいサービスというわけではないと思います。

ただし、フリマ市場におけるメルカリの存在価値は非常に高く、たとえばコンビニ発送における「メルカリ」の発送割合は約80%あり、物量という意味でも同様の割合を占めています。その意味で、メルカリが物流業界に与える影響は非常に大きいといえるかもしれませんね。

しかし、ここから外れてCtoCビジネスを End to Endでゼロから作るのは不可能に近いといわれています。出荷元をコントロールできるBtoCやBtoBと違い、CtoCでは出荷元が個人なので変数が多すぎるのです。どこからどの荷物が出るかわからない状態で、それを全国津々浦々に届けなければならない。その点、「エコメルカリ便」では置き配という仕組みを活用することで、CtoCをBtoBに変えるシステムになっています。

配送における各工程での滞在時間を減らすことで、CtoCならではの変数の多さを極力まで減らす挑戦を行なっています。この点が、今回の取り組みにおける興味深い点なのかなと思っているところではありますね。

エコメルカリ便で模索する“サステナブルなビジネスモデル”

── メルカリというサービスに生まれている課題があるように、物流業界においても抱える課題があるかと思います。そうした点については、どのように対応していく予定なのでしょう?

物流業界が抱える課題は大きく二つあると思っています。一つは、業界独自で達成できるもの。たとえば、トラックの電気自動車化や積載効率の向上によるCO2削減などがそれにあたります。

もう一つは、荷主企業と協力しなければ達成できないこと。積載効率一つとっても、決められたルールのなかで物流会社ができることには限界があります。より高い積載効率を実現するには、サービスレベルに余裕を持たせるなど、荷主側の要件決定が不可欠なのです。つまり、「物流会社が目指すゴール」と「荷主企業の定める要件」の間にギャップがあるということです。

このあたりは、メルカリとしても自分ごととして捉え、一定程度踏み込んでいく必要があると考えています。置き配のデフォルト化を目指すにしても、盗難リスクなどへの懸念から、物流会社だけでは判断が難しいのが実情です。だからこそメルカリは、荷主企業として自ら置き配を選択肢に加え、物流会社と連携して補償対応についてもしっかりカバーしていきながら、安心・安全な置き配の仕組みづくりに取り組んでいるのです。

── 物流業界が直面する2024年問題についてはどのように考えられていますか。

2024年問題に代表されるドライバー不足は、今後ますます深刻化していきます。2030年には地方都市の配送が立ち行かなくなるとの指摘もあります。こうした事態は、メルカリのビジネスにも大きな影響を及ぼしかねません。これらを解消するためには、ドライバーの負荷をなるべく軽減し、持続可能性の高い、サステナブルな配送基盤の実現が必要不可欠です。

── 今、キーワードとして挙げられた「サステナブルな配送基盤の実現」という言葉の意味するところを、もう少し噛み砕いて解説いただけますか?

サステナブルな配送基盤の実現には二つの視点があると考えています。一つは環境への配慮です。日本の宅配貨物の5〜10%、コンビニ取扱貨物の8割をメルカリが占めているので、それだけ多くの段ボールなどの梱包資材を使用していることになります。いかにCO2排出量を抑制するかをはじめ、環境負荷の少ない配送基盤をアップデートしていく必要があります。

もう一つが、さきほどお話したような持続可能なビジネスモデルの確立です。置き配の推進をはじめとしたドライバーの負荷を下げる取り組みを継続することで、サステナブルな配送基盤の実現、ひいてはサステナブルなビジネスモデルにつながると信じています。

「送る」という体験におけるペインを徹底的に解消した

── ここで改めて、新配送サービス「エコメルカリ便」の概要やその特徴について伺えますか?

エコメルカリ便の特徴は、何と言っても全国一律730円の送料設定です。ただし、私たちは単に「730円の一律料金」を実現したかったわけではありません。

そもそもの出発点は、先ほどお話ししたメルカリの二大ペイン、すなわち「出品の面倒」と「梱包の面倒」にアプローチすることでした。たとえば梱包のわずらわしさの一つに、サイズを小さくするために頑張って商品を詰め込んだり、料金に合ったサイズの段ボールをわざわざ探したりといった行為があります。こうした「梱包あるある」の解消こそが、私たちの目指すところだったのです。

環境にも配送ドライバーにもやさしい「置き配」専用の配送サービス「エコメルカリ便」。100サイズまでが一律料金なので、出品者にとってもかんたんでおトク。

── なるほど。では、一律料金はどのようにして実現したのでしょう?

梱包のわずらわしさを解消する一つの方法として、フリーサイズ(*)という発想に至りました。フリーサイズであれば、出品者はサイズを気にせずに梱包できます。さらに、フリーサイズにすることで、配送会社とのやり取りのなかで、サイズ別運賃を一律にできるのではないかというアイデアが生まれました。運ぶ側の工程を削減することで、一律料金を実現できるのです。
(*)宅配便100サイズまで

つまり、利用者の体験向上と、物流会社の効率化の両立。それを可能にしたのが、フリーサイズ&全国一律料金という「エコメルカリ便」のモデルだったのです。

また、これまでのメルカリ便は、配送サービス側で伝票を発行・添付して配送するという仕組みでしたが、エコメルカリ便ではこれを改め、出荷時の伝票をそのまま配送に使用することで完全匿名配送を実現しました。配送伝票にはQRコードと問い合わせ番号しか印字されていないのです。工数削減の工夫により、ドライバーの伝票添付作業がなくなっただけでなく、無駄な紙の使用も減らすことができ、サステナブルな配送サービスにつながっていくと考えています。

事業開発に求められるのは「再現性」より「イノベーション」

── エコメルカリ便の構想は、ペインの解消を徹底的に考えた末に生まれたものですよね。今後、サービスの拡大を進めていくなかで、共に働きたい仲間も同じように本質的な価値提供について考えられる方なのでしょうか?

そうですね。事業開発の0→1を経験できる、つまり、チャレンジの機会がたくさんあります。よく、0.1→1への挑戦と0→1への挑戦とは混同されがちですが、私たちがやっているのは、まさに0から1を生み出すことです。あるニーズに対して、手段を問わずにソリューションを考え抜く。それがメルカリ流の0→1だと思っています。

そして、メルカリにおける0→1の事業では、再現性は求められません。再現性のあることをやるのではなく、誰も成し得ていないことにチャレンジする。それこそがメルカリで働くことの面白さであり、事業開発部の醍醐味だと思うのです。

『エコメルカリ便』にしても、これを同じように再現しろと言われたら、正直二度とできる自信はありません(笑)。それぐらい前例のない取り組みだったと自負しています。 だからこそ面白いし、だからこそやりがいがある。

新規事業をつくりたい、いずれは起業してビジネスを立ち上げたい、そんなことを考えている方にとっては、絶好の環境と機会なのではないかと思います。課題に対して、適切な解決策を考え実現し、イノベーションの連鎖を起こす。そういう気概のある人にとっては、この『エコメルカリ便』の成長に携わることが良い活躍の場になるはずです。

執筆:佐藤史紹 編集・撮影:瀬尾陽(メルカン編集部)

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