メルカリらしいアイデアやコンセプトを提案し、メルカリのブランド価値を高めるためのプロジェクトをマーケティングと協働しながら行っているCreative チーム。サービスの魅力を最大限に引き出すデザインやコンテンツの制作、お客さま体験の向上のための取り組みをどのように遂行しているのでしょうか?
今回はCreative チームのマネジャー赤川久郎(@akagawa)と、Customer Marketing チームのマネージャー池田早紀(@sakiccho)に両チームの協働について、ざっくばらんに語り合ってもらいました!
この記事に登場する人
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赤川久郎(Hisao Akagawa)3年間アパレル会社で企画・デザイン・生産管理を経験後、制作会社でライセンスキャラクターや商業施設の商品企画からデザイン、展覧会などの空間デザイン、イベント企画など幅広く担当。2018年5月メルカリに入社。現在はCreative チームのマネージャー。 -
池田早紀(Saki Ikeda)2017年入社。2人目の育休中にメルカリにハマりすぎて、育休明けたらメルカリに入社していた。HRとして採用や育成に従事し、職種転換してマーケティングチームへ。現在は、公式SNSやオウンドメディア、オフラインイベントなど、お客さまに近いタッチポイントの開発・企画・運営を行うCustomer Marketing チームのマネージャー。
メルカリは「お客さまにとっての良きツール」の一つでしかない
@sakiccho:まずakagawaさんに伺いたかったんですが、デザイナーって広告代理店や制作会社に所属したり、人によっては独立したりするなど、色々な働き方の選択肢があるじゃないですか。どういう方がインハウスで働くことを選ぶんですか?
@akagawa:クライアントワークから、次のチャレンジをしたくなった人が多い気がします。クライアントワークの場合、既に目的や要件が決まった状態でご依頼いただくことが多く、その施策が本質的なところへ届いているのかというところにまで責任を持って関われず、結果的に消化不良のものを作ってしまうことがあるんですよね。
また、デザイナーとして制作スキルが上がると「もっとこうしたらいいのに」と思っても、なかなか深くまで入り込めないフラストレーションも溜まる。そのため、受託制作のクライアントワークではなく、事業会社でマーケターやPdMなどと伴走して仕事がしたいという人が増えているのかと思います。
@sakiccho:なるほどー。社内のメンバーがディレクションをしてクリエイティブをつくってもらうと、最終目的に応じた「お客さまからメルカリがどう見えるべきか」という観点から提案してくれるから、そもそもの企画のコンセプトから見直しできることがあります。
Creative チームのメンバーは、メルカリは「お客さまにとっての良きツール」の一つでしかないという意識があると思うんですね。そういう存在であるメルカリが、お客さまに対して何を提案すべきか、そしてどのように表現すべきかを遠慮なく言ってくれる。
例えば私からメルカリが主役になるような制作の依頼をしても、「そうじゃないよね」と返してくれる。脇役だけどワクワク感を出すためにどのような表現をすべきか、そのアドバイスもくれて、最高のものをつくってくれます。私たちは数値目標が目の前にあり、「自分たちが伝えたいことをどんどん言いたい!」となってしまいがちだけど、Creative チームはメッセージを受け取ってもらうことを冷静に考えていますよね。
@akagawa:両者でしっかり議論できてこそ、クリエイティブを通じて伝えたいことがお客さまに届きますよね。
赤川久郎(@akagawa)
@sakiccho:それがインハウスでデザインをする面白さになるのかな?
@akagawa:そうですね。個人的には「自分も一人のお客」という感覚は忘れないようにしているかも。もう一人の自分が俯瞰でサービスを見ているというか。
@sakiccho:どうしたらそういう俯瞰した目線を持ち続けられるの?
@akagawa:Creative チームが、数値目標ではないところにOKRを持っているからからじゃないですかね。だから代弁者的な視点でマーケや周りの人たちに意見を言えるというか。
@sakiccho:確かに。けれど会社によっては、クリエイティブチームも数値目標を任されていたりしますよね。
@akagawa:僕も前の会社ではそうでした。他の営業チームと同様に売上目標をデザイン部で持たされてましたもん(笑)。
「メルカリは何者か?」を問うたことで、磨くべきものがわかった1年
@sakiccho:メルカリはここ数年で、お客さま目線に立ったクリエイティブを届けることに特化した体制にどんどん変わってきているよね。
@akagawa:そうですね。メルカリ10周年プロジェクトのときに、チームメンバーで「メルカリは何者なのか」ということを自分たちで問い始めたことが大きな契機になった気がします。「メルカリってこういう存在なんだよ」と、もう一回世の中に示したい空気が高まったというか。
@sakiccho:10周年プロジェクトのとき、Creative チームから「ホームパーティー」というキーワードを出してくれたじゃないですか。周年事業って、言ってしまえば企業の独りよがりであって、お客さまにはメルカリが10周年かどうかは関係ない。けれど、やっぱりお客さまにも一緒にお祝いしてほしいし、私たちからもお礼を言いたい。そういった話をしたら、「ホームパーティー」というキーワードから企画の芯をつくってくれましたよね。その「芯」というのは、私たちのお客さまとの向き合い方であり、どう見られるべきかというブランドに紐づくもの。
@akagawa:自分がマネージャーになったばかりのとき、「みんなでつくるメルカリ」というOKRを掲げたんですよ、ほかのチームがストレッチ目標を立てるなか(笑)。でも、これっていまでも本質だと思っていて。
@sakiccho:「みんなでつくるメルカリ」(笑)。いいね、本質かも。最近グループ全体としても展開しているサービスが増えてきて、サービス提供者として「いかに使ってもらうか」といった事業者目線の話になりやすいけど、そもそもメルカリはお客さまと作っているもの。それが一番の強みだよね。
@akagawa:会社としてやっているのは、グループミッションにもあるように「あらゆる人の可能性を広げる」機会や場をつくることこと。それがはっきりしてから、自分たちとしてなにを磨き込んでいけば良いか確信が持てたように思う。
@sakiccho:チームの雰囲気づくりとかカルチャー醸成は、akagawaさんとしてはけっこう意識している感じ?
池田早紀(@sakiccho)
@akagawa:そうですね。マネージャーに就任した2年前に「みんなで良いもの作っていこうよ」とメンバーに話はしましたね。クリエイティブの向上によって会社としてもっと強くなれるんだったら、それは我々から垣根を越えてやっていくべきだし、やらない理由はないと思って。
それまでのCreative チームはどちらかというと受け手側だったので、すでに固まっている企画を受けてからつくっていくから、正直あまり根本から大きくは変えられなかった。だったら「上流に行こう」とみんなで話して。企画から、なんなら予算取りから関わって、手広く全部やると決めたんですね。
それまでのチームで制作してきたものは、一緒にプロジェクトを進めてきた人からいいね」と評価されてましたけど、今後は関係者以外にも「めっちゃいいね!」と言われるようなクリエイティブをつくって、僕らから離れられない状態にしていこう、と。
@sakiccho:そんな戦略的な欲深さがあったんだ(笑)!
@akagawa:それを一年半続けていたら、「めっちゃいいね!」と言われることが増えたんだけど、いまはタスクがパンク状態です(笑)。僕は上場するタイミング(2018年)に入社したんですけど、実は「上場した後、しばらくは仕事ないかも」と言われたんです。そのときは「クリエイティブがもっとこの会社でできることってないのかな?」って思いましたね。だから自分から、小さなことでもクリエイティブの力が必要な仕事を見つけにいきました。そのときに関わったコミュニティとか出した成果が、いまにつながっている仕事や人たちもいるんですよね。
@sakiccho:企画段階からCreative チームに入ってもらえると、最終的なクオリティが違いますからね。「Creative チーム」という名前だけ見ると、たぶん一般的には「表現」という最後の工程を担っているイメージを抱くけど、メルカリの場合だと最初からだよね。チーム名からは想像できないぐらい、プロジェクトにしっかりと入り込んでる。
@akagawa:そうですね。最初の企画段階で関われないと「そもそも何がしたかったのか」「会社・サービスとしてどういうことが伝えたかったのか」がわからない。一時的な数字が取れるものを作ることはできますが、お客さまに対してどう伝えて、どう受け取ってほしいのかが、以前はなかなか見えなかった。だからこそ、企画の段階でクリエイティブが担当者に「問診する」必要があると思っています。
@sakiccho:お客さまにどう伝えるかはすごく大事だよね。お客さまはどういう気分のときに、そのメッセージを受け取るのかまでがセットじゃないですか。たとえば、お客さまは動画を見ながら暇を潰したいだけで小難しい情報なんて見たくない、そういう時に受け入れられる情報量とか時間帯までイメージしてつくってくれる。だから、「何をどう伝えるべきか」を企画の最初にすり合わせると、本当にやりたかったことに近づけことができる。そこのアイデアは、いつもCreative チームからもらっている気がします。
変わり続けるメルカリにおいて、変わらないコアがあるからワクワクする表現が追求できる
@sakiccho:akagawaさんは、変わらなきゃいけないメルカリと変えちゃいけないメルカリをどう捉えていますか?
@akagawa:「あんしんで頼れる」「誰でもカンタン」「使うほどワクワク」「ちょっといいことしている気分のよさ」という、サービスとしてのコアがしっかりあるからこそ、ある意味振り切ったエンタメとかワクワクするものもつくれている。この土台があるのは会社としてすごいことだと思いますね。
でも一方で、みんなが想像する「メルカリらしさ」に自分たちが飽きてきていたりもするんだよね。まだメルカリを知らない人に対しては、ブランドコアに忠実にやるべきですが、すでに認知も取れている層に向けては、より好きになってもらうためには「何これ?」と思ってもらうような引っ掛かりのある別のアプローチをする必要もある。やっぱり、ずっと同じようなことをやっているとお客さまも飽きるじゃないですか。なんかいきなり風変わりなことをしたり、たまに良いこと言ってるような人間味がある人の方が面白い。
@sakiccho:メルカリはそういう「人格」なんだ(笑)。
@akagawa:そうそう(笑)。やっぱりみんな面白い人に惹かれるじゃない?だから、Creative チームとして、どんなポジションでやっていくかということを話し合ったときにも、「ユーモア」というのがキーワードとして出てきましたね。
@sakiccho:Creative チームのメンバーの中でも、真面目な仕事が得意な人と、かっこいい仕事が得意な人と、あと、これは褒め言葉なんだけど「ちょっと頭のおかしい」仕事が得意な人と、それぞれ特徴がありますよね。
@akagawa:表現の仕方として得意な領域はありますよね。ただ、この2年間でタッグを組んで仕事をしてもらうようにしたら変わったんですよ。チームメンバー全員がそれぞれの持ち味をちゃんと理解して、引き出しあったら良いものできるというのが10周年でプロジェクトでも証明されました。みんなスキルも視点も違うので、それぞれのプロジェクトに対して「こうしたらいいんじゃない?」「こうしたら面白そう!」といったレビューをし合っています。お互いがお互いを刺激し合っていて、チーム内の関係も良好です。
@sakiccho:マーケ側から見ていても「他のデザイナーからの意見ももらってみますね」と、活発にコミュニケーションしている様子が伝わるし、結果ベストなものをつくってくれると感じます。Creative チームは「これが良い」と思うものをつくって、お客さまに実際に届ける仕事だから、めちゃくちゃ重たいバトンを持っていると思う。でも、そのバトンを受け取ってベストだと言い切れるプロセスをしっかりつくれているし、それが周りの人間からも見えているのがすごいですよね。
@akagawa:そういう意味では、みんなデザイナーではなくなったのかも。クリエイティブディレクターとかアートディレクターに肩書きが変わってきましたね。
@sakiccho:なるほど、確かにデザイナーという役割では括れない感じだよね。じゃあ最後に、akagawaさんが考える「メルカリらしさ」ってなんだと思います?
@akagawa:なんだろう…日常の隣にある「何か」ですかね…?
@sakiccho:生活をする上で、メルカリを思い出してくれたら暮らしをほんの少し楽しく彩ってくれる、そんな存在ですかね。
@akagawa:そうですね!以前、ハイブランドのTシャツをメルカリで検索したら、「セリーヌ・ディオン」のTシャツが出てきて購入したんですけど、それを着てスナックに行くとエピソード込みで100%盛り上がるんですよね。
@sakiccho:あ、今着てるTシャツ?そのTシャツはズルいよ(爆笑)。それを買っちゃうのも最高。欲しかったものと違うじゃん…そんな出会いがあるのも、みんなでつくっているメルカリというサービスらしいのかもしれない。
@akagawa:僕が欲しかったのはハイブランドのTシャツじゃなくて、鉄板ネタになるTシャツだったんだと気づいたよ。
akagawaからセリーヌ・ディオンのTシャツを見せられて、後ろにのけぞるほど爆笑していたsakiccho
執筆:中森りほ 編集・撮影:瀬尾陽(メルカン編集部)