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「共感」の先の「共鳴」を創るために。事業部と並走を続けて、メルカリのPRチームが目指すこと

2024-8-9

「共感」の先の「共鳴」を創るために。事業部と並走を続けて、メルカリのPRチームが目指すこと

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メルカリグループのビジョンとメッセージを接続して、企業としての姿勢やサービスの価値を広く社会に伝えるPublic Relations チーム(以下、PRチーム)。その役割は一般的なPRよりかなり広範にわたるかもしれません。大きな戦略を描き、事業のパーセプションチェンジとプロダクトグロースに寄与していくことをミッションとしています。

今回はメルカリ グループ広報責任者である宮本祐一(@yax)を中心に、新規事業立ち上げとグロースの連動という観点で執行役員 CEO Workの太田麻未(@Asami)、これからのお客さま体験の発信という観点で執行役員 CPOの篠原孝明(@unryu-in)に、PRとのコラボレーションすることによって生まれるシナジーについて聞いていきました。

キーワードは「ストーリー」、そして「共鳴」です。

この記事に登場する人


  • 宮本祐一(Yuichi Miyamoto)

    大学を卒業後、マネックス証券に入社。お客さま対応業務を経てマーケティング部に異動し、各種金融商品のマーケティングを担当。その後、経営企画部、広報室にて証券事業のブランディングや全社横断プロジェクトの統括、事業戦略の策定・実行に携わる。2019年1月より株式会社メルペイに入社し、スマホ決済サービス「メルペイ」の立ち上げPR担当としてメルペイカンファレンスの企画・運営を担当。その後、暗号資産を含めたFintech領域全般のPRを担当。現在は、企業広報(Corprate PR)とサービス広報(Japan Region PR)を統合したメルカリグループ全体の広報責任者を務める。


  • 篠原孝明(Takaaki Shinohara)

    フリーランスのWebディレクターを経て、2012年にグリー株式会社入社。2014年に株式会社ビズリーチへ入社し、転職メディアを立ち上げる。2017年9月に株式会社メルカリ入社。Director/Head of CREを務め2020年4月より株式会社メルペイへ異動。アライアンスプロジェクト責任者を経て2021年1月に株式会社ソウゾウを設立し、Head of Product就任。2022年7月、執行役員不正対策日本統括就任。現在は執行役員 CPOとしてマーケットプレイスの成長を牽引。


  • 太田麻未(Asami Ota)

    早稲田大学理工学部卒業。新卒で楽天株式会社に入社し、楽天市場や楽天EdyのエンジニアやPMを経験。その後、株式会社リクルートライフスタイルにて、ID決済事業の事業立ち上げを経験。2015年にEmotion Intelligence株式会社に営業として入社。2016年に同社の代表取締役CEOに就任。2019年に台湾本社のAppier.incに会社を売却。2020年にSHOWROOM株式会社にて新規事業立ち上げ後、2021年株式会社メルカリ経営戦略チームに参画。2022年7月株式会社ソウゾウにてCOO、2023年7月より執行役員 VP of Work、2024年1月より執行役員 CEO Work。インド映画とフレンチブルドッグをこよなく愛する。


「共感」の先の「共鳴」を創る

――まずは、メルカリのPRチームの役割をどのように捉えているのかを聞いていきたいと思います。

@yax:メルカリには「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションがあるので、単純にニュースを一つひとつを発信していくのではなく、その先にあるメルカリのグループミッションと接続して伝えていくことが役割だと考えています。

それぞれの事業や、それぞれのプロジェクトの担当者が取り組んできたアクションをニュースにしていくとき、僕たちPRチームは必ずその先にあるグループミッションと紐づけてストーリーにしていきます。そのストーリーを通して、多くのステークホルダーに納得し、共感してもらうことを目指しています。

加えて、メルカリのPRチームの特徴として、ストーリーを創っていくときに経営メンバーと密接にコミュニケーションしています。経営メンバーの一人ひとりが持つ「想い」を受け取って、そこに共感して発信しているからこそ熱量が伝わる発信ができるのかなと思っているんですね。そして、最近よく思うのは「共感」してもらうだけじゃなく、「共鳴」してもらうところまでアクションしきれるのがメルカリならではなんじゃないかと。

宮本祐一(@yax)

@unryu-in:「共鳴」というのは、どういうニュアンスで使っているんですか?

@yax:メルカリグループが目指す世界観に共感して、応援してくれるファンをつくることをPRチームのミッションとしているんですけど、「共感」は“No”ではなく「私もそう思います」という状態かなと。メルカリのサービスは、現場で作ってる人たちの想いが強く乗っています。それを発信するからには、お客さまやステークホルダーに共感してもらうだけでなく、それを自分ごと化して発信主体になってもらうところにまで持っていきたい。それが、中の人と外の人が「共鳴し合っている」状態だと考えていて、それによってパーセプションチェンジが起きると思うんですね。

@Asami:いい話だ!

@yax:仕事柄、社外の人とコミュニケーションを頻繁に取るのですが、そこで感じるのはプロダクトとか事業サイドがやりきってるからこそ「共鳴し合っている」状態を目指せるのだということです。PRだけで共鳴を創りにいこうとするとどうしても上滑りしてしまうんですけど、お客さまの実体験をプロダクトや事業で創りにいってるので、PRが発信するストーリーと実体験に乖離が生まれず、それが一つの世界観になっているんだと思うんですよね。単に良いことだけを言ってるのではないというか。

事業のグロースと業界のパーセプションチェンジという2軸でコミュニケーション

――では、PRチームの具体的な仕事についてふれていきましょう。ここ数年、メルカリでは新規事業や新サービスが活発に生まれ、空き時間おしごとサービスの『メルカリ ハロ』はその中でもとりわけ社会的なインパクトが大きかったと思います。『メルカリ ハロ』のコミュニケーション戦略はどのようにつくっていったのでしょうか?

@yax:ここ数年、領域の異なる新規事業が活発に立ち上がってきましたが、PRのようなコミュニケーションの領域でこうした新規事業立ち上げにどう貢献していくかというのはなかなか悩ましいというか難易度が高い部分もあるなと感じています。

『メルカリ ハロ』は、メルカリにとってまったくの新しい領域の事業なので、事業のグロースのための発信はもちろん、スポットワークという新しい業界をどうパーセプションチェンジするのかという2軸でコミュニケーションしていくことを考えました。なぜ、スポットワークという領域に、なぜ、メルカリが新たにチャレンジするのか、スポットワーク業界の中で『メルカリ ハロ』はどのような役割を果たしていくのか、というコアとなるメッセージのすり合わせが最初期にできたことで、幅と深さのあるコミュニケーション戦略を創れたのかなと思います。

@Asami:やっぱり、最初はメッセージの方向性のすり合わせが難しかったですね。メルカリとしてはHRの領域への挑戦は初めてですし、ただ単純に発信したとしても受け手はびっくりしちゃうと思うんですね。「なんでメルカリがスポットワークをやるんだろう…?」と。

だから表面的な伝え方ではなく、ローンチ前の参入発表会で伝えるべきこと、ローンチのタイミングで伝えるべきこと、そこから全国展開していくときに伝えること…と、段階を踏んでいきました。この一連のストーリーづくりをPRチームと一緒に考え、事業側が伝えたいことと、それを世間にどう伝えて受け取ってもらうかの議論を重ねました。単発の発信で終わらせることなく、半年ぐらいかけて何を伝えていくべきかを計画して、発信する情報につながりを作れたのがすごく良かった。

@yax:伝えたい内容もそうですし、伝えたいステークホルダーも多かったですよね。クルーの方もいて、パートナーの方もいて、メッセージの内容も縦にも横にも広いというか。最初の段階で「なぜ、メルカリがスポットワークをやるのか」をしっかり伝え、それを理解してもらった上で、より深く伝えていくプランニングができて、実際にそのPRがワークしたというのが印象深かったですね。

この機会にAsamiさんに聞いてみたかったんですけど、ありがたいことに上手くモメンタムをつくれたことでメディアのアテンションもとることができて、継続して世間の注目もどんどん高まりました。とは言え、かなりの数の取材対応いただいたので負担ではなかったですか?メディアへの露出って、わかりやすい数字にすぐにつながるわけではないので…。

@Asami:負担と感じたことは全くなかったですね。ほぼ毎週のように取材が入っていたので、もちろんそれなりに大変ではありました(笑)。時間的な労力を割いたのは間違いないのですが、それが事業にポジティブに跳ね返ってるのが体感としてもありましたし、定量にも現れていたと思ってます。

定量的なところでいうと、露出が増えるたびにアクセスもダウンロードも増えるので、効果は如実に現れていましたし、それがメンバーにとってもすごく励みになっていました。メルカリがスポットワーク事業に参入しますと言って営業活動をしていても、初期は「本気でやるの?」といった不安や「なぜメルカリが?」のような反応を受けることも正直ありました。ですが、これだけ露出が増えていくと一度話を聞いてみようかなという感じにも変わっていきますし、営業先でも「ニュースで見ました!」みたいな反応をいただけるのですごくポジティブな影響が出ているのを感じました。

私自身もメディアの方から興味を持って質問いただいて、それにお答えしていくたびに自分の中で伝えたいメッセージや、『メルカリ ハロ』をどうしていきたいかという思考が洗練されていく感覚はあったので、PRチームと一緒に作ってきたモメンタムは定量的にすべてを数値には表せないかもしれませんが、かなり大きいインパクトをつくれていると思います。マスマーケの施策などまだほぼできていないことを考えると、ここまで事業が伸びてきたのはPRの影響もめちゃくちゃ大きいですね。

太田麻未(@Asami)

@yax:嬉しいエピソードですね!最初にAsamiさんたちとしっかりすり合わせできたのが大きいと思います。PRチームではスポットワークというもの自体が世の中的にはまだまだ当たり前な状態ではないと考えていたので、スポットワークの中で他社さんとどう異なるかということではなく、既存のアルバイトなどの働き方と比較してどう変わるのか、できるだけマスに伝わるように『メルカリハロ』が目指す世界観だけではなく、スポットワークそのものを知って理解してもらうというところを狙ってやってきました。その甲斐あってテレビでの反響も大きく、そこから想定以上にたくさん取材をしていただきました。

こうした発信を通じてパーセプションチェンジを起こそうと考えたときに、やっぱりPRだけで発信していても「共感」と「共鳴」の好循環はなかなか起こらないと思っています。1回の発信で話題の山がつくれたとしてもそれで終わってしまっては意味がなく、発信したことによる反響を受けてプロダクトのアップデートとかが進むと、次の山はもっと高いものがつくっていける。そういう好循環が理想的です。

@Asami:そうですね。最初に何回も言っていたのですが、生活者視点での「画」をどんどん出したいと考えていました。「スポットワーク」とか「スキマバイト」とか、そういう単語だけ伝えても具体的に想像できてる人はまだ多くはないですし、まして自分が使えるサービスだと認知している人は少ない。具体的にどういう仕事があって、どんな人が働いてるのか、そういうイメージがしやすくなる「画」を見せるということにはずっとこだわってました。発表会では実際のアプリの使用デモやだけでなく、クルーへのインタビューとか、パートナーさんの仕事の現場に見てもらうような発信も行ってきたので、メディアの方たちも「スポットワークってこういうことだったのか!」と腹落ちしてもらえたので、もっと深い質問にどんどん変わっていきましたし、そこはめちゃくちゃ上手くいったなという実感があります。

プロダクトの体験設計とPRの接続はもっと必要になる

――ここからは話題を変えて、プロダクト開発とPRはこれからどのように連携を強めていくのかということを聞いていきたいと思います。

@yax:メルカリはプロダクトでの体験を磨き込んできたので、お客さま自身が実際に良い体験やワクワクする体験をしているということが大きな強みだと思っています。

直近は、『メルカリ ハロ』をはじめ、メルカード、暗号資産などの発信を強化してきて、新しい業界を盛り上げていきながら、メルカリが中心となってリードしていきたいという意思も表明してきました。一方、CtoCのマーケットプレイスはすでにマーケットとしてもかなりでき上がっていて、その中でメルカリの存在感は大きいという自負はあれど、プロダクトにおける体験のアップデートの発信は十分にできてこなかった。

もちろん、機能追加の発信などは都度してきましたが、僕らがフリマアプリでどういう体験をしてもらいたいのか、そこでお客さまにどういう感情を抱いてもらいたいか、そういうことをプロダクト側とより密に連携して発信していきたい。

@unryu-in:プロダクト側では、PRでサービスの認知を広げていただいた後に、お客さまの期待を裏切らない体験を提供する責任があります。LPなり、メディアの記事なりを見て入ってきた瞬間に「思っていたのと違う…」というギャップを限りなくゼロにしていかないといけない。むしろ予想以上に良い体験を提供しないと、リピートをしていただけないと思うんですよね。

だから、プロダクトの体験設計とPRの接続というのは実はものすごく大切。何を伝えたら刺さるのか、どういうストーリーだったら心が動くのかという、必須要件の定義みたいなところから僕らとしてはご一緒していきたい。「価格なし出品」や「マイコレクション」とかもそうですが、この機能を使った暁に生活がどう変わるのか?というストーリーをイメージしてもらうのが大切。

モデルケースとなるような事例とセットでストーリーテリングしていけるのは非常に理想的です。もちろんお客さまがあれこれ考えずとも、こちらが想定したとおりの使い方をしていただくのが一番なんですけど、PRにはここの先陣を切ってもらっている感覚があります。

今後、目指していきたいことの話で言うと「好き」をきっかけにした波をつくっていきたいです。僕としては、蚤の市らしさみたいなのをすごく大切にしたい。好きなもの探すのはもちろん、売主との会話であったりとか、この会場にあのセンスのある人が出店するから行ってみようとか、いろんな楽しみ方があると思うんですけど、共通の「好き」をきっかけにつながる体験は、オンラインだからこそ広い「場」を創出できると思っています。

少し話がそれるんですけど、僕はBMWという企業としての思想がすごく好きなんです。BMWは「駆けぬける歓び」をスローガンに掲げているのですが、自動運転にもすごい注力しているんですね。「駆けぬける歓び」を追求しているのに自動運転なの?と思ったこともあったのですが、まっすぐ走るだけの高速道路は運転を自動化して、ギアチェンジに楽しみ感じる峠道とか、エンジンのフィーリング体験とか、アクセルワークを楽しんでもらうところにドライバーの意識を集中してもらうために、言ってみればおもしろくないところは自動化してしまう。そのために自動運転の技術を尖らせているそうです。ミッションに対しての技術的なアプローチにすごい共感できるし、芯を食った「歓び」を提供しているんですよね。

これをメルカリに置き換えて考えると、取引相手とのコミュニケーションや、蚤の市を歩いて回るようなUX、掘り出し物を見つけるようなワクワク感は、便利さとは逆の感性に訴えかけるものだと思います。だからこそ、簡単で便利を追求するUXは徹底的にやりきり、同時に感情に訴えかけるような体験づくり、この両面からプロダクトをアップデートし続けたいと思っています。

やっぱり写真を撮って出品するとか、梱包発送の方法を選ぶとか、そういったことを面倒だと感じる方がいるのは事実です。このあたりはBMWの例でいうと高速道路の話だと思っていて、人とのコミュニケーションとか掘り出し物を探すとかは峠道を楽しむみたいな話なので、本質的な楽しみにストレスなく集中して楽しんでもらえるように、それ以外のことはできるだけて簡略化していきたい。

篠原孝明(@unryu-in)

@yax:そういうことを踏まえると、「誰でも簡単に出品できる機能をつくりました」という便利さだけの訴求ではなく、さっきの峠道の話じゃないですけど、好きなものを探すところを楽しんでもらうことによって「価値の循環」が進んでいくという発信ができれば、応援してくれるステークホルダーが増えていくと思うんです。そういうメッセージを継続して発信していきたいですね。

@Asami:『メルカリ ハロ』の初期のクルーの方でも、メルカリが好きだから応援してますと言ってくださる方もけっこういらっしゃいました。おそらく他のスポットワークのサービスも使われているのですが、そういう方からするとリリース初期は機能が限られていて不便なところがあったと思うんですけど、新しい機能が追加されるたびにXで喜んでくれたりするんですよね。そういう「ファンだから使う」みたいな、ロジックだけでは説明できない応援ってあると思います。メルカリはそういうお客さまにすごく支えられてる会社だと強く思ってるので、そこを大切にしていきたいですよね。

――その上で大事なのは、やっぱり「安心・安全」なのではないでしょうか?

@unryu-in:「安心・安全」というのは前提として備わっているべきものなので、「安全じゃない」と思われた時点でもうそれは敗北なんです。でも、「安心・安全」を意識する機会がそもそも少ないんだと思うんですよね。被害に遭ってはじめて安全じゃなかったと気づくというか。だからこそ、未然に防止することが重要。過去にマーケットプレイスでどういう不正があったとか、無在庫転売の何が危険なのか、そういったことをお客さまは多分あまりご存知ないと思うので、具体的な危険事例をストーリーとともに危険性を伝えつつ、お客さま自身で対策してもらうことも大切になってきます。

でも、これはメルカリが自社サービスの中だけで取り組んでいてもあまり意味がなくて、業界全体で取り組んでいかないとサービスの抜け漏れを突いたいたちごっこになる。そういう意味では、PRチームに業界全体に働きかけをするイベントを企画していただき、メディア発信をしてていただいたのですが、こういう動き方はめちゃくちゃ頼もしいです。プロダクト側だけだったら、そういう動きはなかなか取れないので、まさに「パブリックリレーションシップ」の構築を体現していますよね。

@yax:今の話はすごく大事だなと思います。お客さまが事前に知ることができる情報は限られていて、一方で実際に自分の身に起きてしまった瞬間にもう「バッド体験」になってしまう。バッド体験にならないようにするには、被害に遭わないように事前に事例などを知ってもらうきっかけをつくる必要がありますよね。

@unryu-in:もう一歩踏み込んで言うとレピュテーションリスクも、社内においてもそこまで認知が高くないんです。こういう手口の攻撃が世の中で流行ってて、その結果こういうレピュテーションリスクがあり、企業の信用やブランドの価値の毀損が起こる。そういう客観的なレピュテーションリスクを、社内向けに啓蒙していくことも重要ですよね。

@yax:広報は「社内と社外の窓」とよく言われますけど、社外の論調とかパーセプションをちゃんと社内に持ち込んで、世の中で見られている景色をもとに、ちゃんと正しい知識を伝えていく役割がありますよね。

@unryu-in:白黒はっきりしていないレピュテーションの話は、明確な「物差し」を誰も持っていません。そこはある種の勘どころというか、世の中の声を代弁しながら、自社ポリシーを創っていくときにPRが持っている知見は相当役に立ちますよね。

「生活の中にメルカリがあることでハッピーになる」と感じてもらいたい

――では、PRに期待することを経営視点から改めてうかがいたいと思います。

@Asami:今回、『メルカリ ハロ』のリリースでは、ストーリーをつくっていくことの重要性を改めて感じました。事業側にいると思考がどうしても一直線になりがちです。私なら『メルカリ ハロ』のことだけをずっと考えている状態になるので(笑)、お客さま視点から見たときに、私たちが作りたい世界をどう受け取ってもらうか、ストーリーをちゃんと練っていかないといけない。『メルカリ ハロ』はメルカリを使っているお客さまにもご利用いただくので、既存のサービスとの関係性や整合性も大事になっていきますし、そういう一貫性のあるストーリーづくりをPRチームとのディスカッションの中で進めていましたし、今後も一緒にストーリーを作っていくことを期待しています。

@unryu-in:プロダクトはもう日々アップデートされていて、3ヶ月先とか半年後の動きとかはこまめに連携が取れている感覚はあるのですが、半年先以降の施策となるとまだ見えてない部分や読みきれない部分が多々あり、ディスカッション足りてないように思います。

半年先とか1年先にどういうものをつくりたいかという話をした上で、ファーストステップとして、最初のフェーズではこんなことを実現していたい、だったらこういうストーリーで伝えるのがいいね、と議論できるような交わりをもっと増やしていきたい。

基本的には全職種がグループビジョンに紐づいたロードマップを追っかけているので、目指すべきものは一緒なはずです。だから、半年先、一年先、三年先のことを一緒に考えていきたいし、考えていくべきなんだろうなと。

――最後はyaxさんに質問です。これからPRはどういう存在であり続けるべきか、どう変化していくべきですか?

@yax:2つあると思っています。「より事業貢献できている状態になる」と「メルカリグループ全体に対して期待を持ってもらう発信をする」です。

メルカリは元々PRというファンクションの活動範囲が広く、事業部と一緒に並走してストーリーをつくるところはかなり実現できていると思っていて、ここ1年半ぐらいで貢献の幅も広がってきた実感があります。なので、PRがより事業貢献できている状態にまで持っていきたい。3ヶ月とか半年先とかではなく、その先にある事業戦略まで見据えて、それを理解した上でティザー的に醸し出すようなこととかができると、世間から期待を持ってもらえる幅もより広がると思うんです。

あと、会社の中からメルカリを見たときには、ミッションの元に集まった共同体だと思っているのですが、外から見たときに各サービスが存在していることは理解してもらえたとしても、メルカリという会社全体に対してワクワクするような期待を持ってもらえているかというと、そこまでストーリーを作りきれていない。会社としてのメルカリと、各サービスが提供してる世界観をPRがつなげて1つのストーリーにすることで、メルカリという存在に共感してもらい共鳴を創っていきたい。もっとシンプルにいうと、「生活の中にメルカリのサービスがあることでハッピーになる」と感じてもらえるメッセージングをしていけたらと思っています!

編集・撮影:瀬尾陽(メルカン編集部)

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