メルカリのPRチームは、大きく分けてサービスとコーポレートの2つの領域での情報発信を行っています。双方に共通して言えるのはファンクションを限定せずに横断的であるということ、そして企画の立ち上げから推進、つまり1から10までのプロセスまで担うことができます。
そういう意味では、もしかしたら一般的な事業会社のPRよりも、任せられる領域は広いかもしれません。PRチームとしての意思をプロジェクトに反映して、他のチームを巻き込みながら世の中に発信していくことが求められるポジションで、実際にメンバーたちはどのような考えのもとプロジェクトに取り組んでいるのでしょうか。
入社時期もメルカリでのキャリアも異なる3名に、メルカリのPRチームで働く醍醐味を聞いていきました。
この記事に登場する人
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笠円香(Madoka Ryu)早稲田大学卒業後、2018年にメルカリの通訳翻訳チームに新卒入社。その後、人事で海外採用ブランディング・アウトリーチを担当し、2020年8月よりコーポレートPRチームに異動。PRでは新規事業立ち上げ、I&D、サステナビリティ関連のプロジェクトを担当。2024年7月よりMK Growth PR チームに異動し、現在はサービスPRに従事。 -
山口夏歩(Kaho Yamaguchi)慶應義塾大学卒業後、2014年に電通PRコンサルティング入社。メディアリレーションから商品PR、広報計画策定・ステークホルダーとの関係構築など中長期目線のコーポレートブランディングまで、幅広い業務を経験。2021年6月にメルカリに入社し、FinTech領域のPRを担当。その後、フリマアプリ「メルカリ」、FinTech事業のメルペイ/メルコイン、スポットワーク「メルカリ ハロ」など日本事業のサービスPRに従事している。最近はたまごっち通信できる仲間を探し中。 -
飛田瞭(Ryo Tobita)明治大学卒業後、2017年にPR会社マテリアルに入社。新卒からプランナー職に従事し、2022年にメルカリに入社。事業者がメルカリにお店を出せるBtoCサービス「メルカリshops 」の立ち上げに並走した後、Marketplace事業やFinTech事業の広報に従事。直近ではスポットワークサービス「メルカリ ハロ」の立ち上げを担当。個人的にまち歩きイベントや村づくりも行なっている。
情報発信を通して、会社が良い方向に向かっていくことを肌で感じられる
――まずはみなさんのメルカリ入社経緯や、現在の役割について教えてください。
@madoka:2018年に通訳翻訳チームに新卒入社しました。人事部で海外採用ブランディングなどを担当した後、コーポレートPRチームに異動した後はインクルージョン&ダイバーシティ(以下、I&D)や「グリーンフライデープロジェクト」などのサステナビリティ関連の発信、決算報告、新規事業の立ち上げに関わってきました。今年の7月から、MK Growth PR チームへ異動して、おもに越境関連のプロジェクトなどサービスの広報に携わっています。
笠円香(@madoka)
@nobita:僕は2017年入社で、これまでサービスを横断した様々なPRを経験してきました。『メルカリShops』やマーケットプレイスのPRを経て、FinTechのPRに移ってからはメルコインやメルカード立ち上げからリリースまでのPRを担当し、現在はおもにFinTechと『メルカリ ハロ』のPRを兼任しています。
前職はPR代理店で企画職を担当してきました。それまでは事業会社で働くことは考えてなかったんですが、外から『メルカリShops』のPR支援をしたことでインハウスのPRにも魅力を感じるようになりました。
@kaho:私は2021年に入社し、FintechのPRチームにジョインしました。内定後にメルコインができたので、正直なところビットコインの知識がないまま自分が担当することになったんですよね(笑)。内定後に必死に暗号資産を勉強したのが今では良い思い出です。
メルカリ入社前は、2014年からずっとPR業界で仕事をしてきました。少し前に、学生時代のエントリーシートを見つけたんですけど、PR業界の志望動機に「必要な情報を、必要な人に届けたい」と書かれていて、その言葉は今の自分にもスッと入ってきて。メルカリは「必要な人に、必要なモノや価値を届ける」会社です。私がメルカリのサービスを好きになった理由と一致していて、自分の原点と繋がってるなと。
――メルカリのPRチームにジョインして、どんなところに醍醐味を感じているのかを聞いてみたいです。
@nobita:メルカリでPRに携わることの醍醐味は、企画の立ち上げから推進、つまり1から10までのプロセスを経験できることです。前職のPR代理店時代はプランニング領域に特化していたため、全てを自分が担う機会はありませんでした。なので、企画を推進する際は今でもすごく苦労します。
@kaho:私も同じことを感じていますね。PRの意思をプロジェクトに反映して、他のチームを巻き込みながら世の中に発信できるのは、メルカリPRチームで働く醍醐味だと思います。一方で、それがそのまま苦労になっている(笑)。
例えば、PRの目標達成のために協力してもらうような動きをしていると、自然と「PRのプロジェクト」になってしまい、他チームとの連動も起きにくくなる。プロジェクトを推進するときは「この部署にメリットを感じてもらうために、どうすればいいんだろう?」ということを考える必要がありますし、企画の立ち上げから伴走することによって提案できるアクションの幅も広がります。
@madoka:私は未経験のままPRチームに異動したので、社内外問わず、経営陣を含む立場が上の人とコミュニケーションをしていくことに最初は苦労しました。どうしても、精神的な部分で慣れが必要で…。でも、社会に少しでも役にたつような情報発信を通してをできる環境があるのは、メルカリならではの醍醐味を味わえてるのかなと思います。
@nobita:外部のステークホルダーはこれまで意識してきましたが、社内の事業部や経営層など、内部のステークホルダーともリレーションを構築する経験が新鮮でした。
@kaho:組織によりますが、広報のポジションから動きが見えるのは、社内だとマーケやIRの人くらいではないでしょうか。メルカリにいると、その先にいる経営層や事業部のことまで考えながらPRを考える機会が特に多いかもしれないですね。
メルカリの意思を正しく伝えるために、時流を捉えた発信をする
――みなさんはメルカリグループのなかで、異なる領域のPRを担当されていますが、それぞれどのような施策を行いましたか?
@nobita:サービスPRの事例ですと、『メルカリ ハロ』のプロジェクトは、どんな位置づけのサービスにするかからプランニングしていきました。当初の目論見として、「メルカリから誰でもすぐにかんたんに働ける」ことを発表会で伝えていこうと議論しました。と言うのも、当時のスキマバイトサービスは、学生向けのイメージが強かったので、『メルカリ』を主語に生かしながら、その市場を広げていこうと考えていました。
飛田瞭(@nobita)
――『メルカリ ハロ』を主語にせず、『メルカリ』を主語にしたコミュニケーションだったんですね。
@nobita:そうですね。発表会のあとは、セールスチームやグロースチームと連携しながら、スポットワークを募集する店舗でクルーが働いている様子を撮影する取材会を企画し、デモ機の撮影や店長インタビューなど、豊富な素材を用意することで多様な切り口の大きな露出の獲得を目指しました。
代理店時代は事業に対する露出の影響をはかるチャンスがなかったので、『メルカリ ハロ』の立ち上げのPRを通してさまざまなチャレンジをすることができました。結果として、テレビやSNSでの露出が増える度に検索数とダウンロード数が伸びていて、PRが事業に影響を与えることを実感しましたし、社内の事業部のPRに対する目線も変化して「連携したい」という声をいただくことも増えました。
また、2024年は社会的にスポットワーク業界が盛り上がる1年になると思っているので、「メルカリハロ 登録者500万人突破」などの後続のリリースは、スポットワーク業界の成長率などの情報も併せて発信し、業界の盛り上がりも可視化していければと思っています。
@kaho:メルカードのローンチ時は、『メルカリ』アプリとしても大きなモメンタムだったので、どんなメッセージでどんな機能を打ち出すのか、をひたすら考えました。「メルカリのお客さまは、どんなクレジットカード体験に魅力を感じるのか」を整理しながら、メルカリグループ日本事業におけるFintechの位置付けを発信するなど、toBとtoCの両観点でコミュニケーションを準備しました。
そのコミュニケーションは、実はいまでも継続しています。先日もメルカードのこれからを議論するオフサイトを実施したばかりです(笑)。「これからのメルカードはどんな立ち位置を目指していくのか? 」のコミュニケーションを、GrowthとPRのメンバーがそれぞれの知見を持ち寄りながら考えていく過程がとてもよいと思っていますね。
@madoka:コーポレートPRの事例でいえば、「無意識バイアスワークショップ」のリリースです。当時、世の中で「無意識バイアス」というキーワードが世の中で注目されていたタイミングでもありました。本来はもう少し後に公開する予定のリリースだったんですが、何度も議論したうえで、社会的インパクトの大きそうなタイミングに調整して公開しました。それと、「男女間賃金格差」の公開。最初は『Impact Report』内で”さらっと”公開する方向性だったんですが、しっかり説明しないと正しく伝わらない懸念があり、メディア取材を提案しました。
――どうして、“さらっと”やろうとしていたんですか?
@madoka:リスクがあるかもしれなかったからです。男女の賃金格差について社会的な構造の問題が大きく横たわっていますが、メルカリ自体も課題があったところではありました。とは言え、他の会社も公開している数字ではありません。PRチームのなかでも、あえて数字を積極的に出すか、“さらっと”出すかで意見が割れました。最終的には、しっかりと自分たちの意思を打ち出すことで、批判があったとしても社会全体での議論や改善のきっかけになればいい、という結論に至りました。
私は、メルカリはサービス観点のPRだけではなく、コーポレートの観点から会社の考えや社内で上手くワークした事例をシェアすることによって、少しでも、世の中の役に立てられると思っています。その情報を適切な形で、1人でも多くの届けるべき人に届けることを大事にしています。
PRパーソンとして、メルカリをどう位置づけるのか
――メルカリは社内のコミュニケーションがとても活発な会社ですが、PRパーソンは社内の動きの理解と同時に、ある意味で冷静かつ客観的な視点が必要なのではないかと思います。みなさんは、法人格としてのメルカリ、サービスとしての『メルカリ』をどう捉えていますか?
@nobita:たまに旅行に行くと旅行先で仲良くなった人が「いつもメルカリ使ってます!」とか「最近、カメラを売ったよ!」という、それぞれのメルカリに関するエピソードを語ってくれます。
極端な話ですが、自分自身が未利用の状態から顧客になるタイミングって人生で1回しかありません。メルカリ未利用者の方と話して憑依させることで、どうしたら使いたくなるかを考えられるように、自分をメタな状態に位置付けるようにしています。もちろん、PRチームのメンバー全員が同じスタンスだと成り立たないので、チームとしてのバランスと個性が大事ですよね。
@kaho:私は外部との交流を積極的に行っています。前職のPR代理店時代は、社内での打ち合わせはほんの一部で、ほとんどが社外の人との打ち合わせでした。メルカリに入社した時点で、自ら意識しないと外部との交流する機会を得られないことは分かっていたので、これからも積極的にしていきたいと思っています。飲み会での会話もアイデアになったりしますからね。
山口夏歩(@Kaho)
@madoka:私の場合、特別なことはできていない分、I&Dのようなときにセンシティブなテーマの発信で「もし自分が社外の人の立場で、この情報がX(旧Twitter)に流れてきたらどう思うか」をしっかりと考えるようにしています。どんな伝え方だと人が嫌な気持ちになるのか、知らない会社がこんな取り組みをしていたらどう思うのか、を考えています。
これまで私が関わってきた発信は特に、自分がターゲット層から外れていないことが多く、ある意味で自分の直感を大事にしてきたものばかりです。最近は領域が広がってきたんですが、例えば海外でオフラインのイベントを企画するなら、社内の母国の人にフィードバックもらったりとか、その文化に詳しい身内にヒアリングしたりして進めることが多いです。
――ちなみに、みなさんはそれぞれの仕事ぶりにどんな印象を持っていますか?
@kaho:madokaさんは、ミーティングでみんなが「これで進めようか」という雰囲気のときに、控えめながらも「これって…本当はこうじゃないですか?」「これって…本当にそういうことなんでしたっけ?」みたいな真反対の意見を勇気を持って言ってくれるじゃないですか。あれは毎回すごいなと思ってます。
@madoka:あ、「あえて反対の意見を言おう!」みたいな意図はぜんぜんなくて(笑)。
@nobita:いい意味で、グサっときます。柔らかそうに見えて、意志が強くて青い炎が燃えている系なのかなと思いました。kahoさんも先日のミーティングのときに、僕が言えないことを「それはどうやって進めていきますか?」とか「こっちから先に議論しませんか?」みたいに切り込んでいくので「すごいな…」って思っています(笑)。kahoさんの明るいキャラクターのなせる技というか。おふたりとも、推進しようとする意思と力が素敵です。
@kaho:nobitaさんは戦略を考えるうえで、一枚絵に整理してくれてますよね。私はスライド一枚で全体像を表すことが苦手なので、頭のなかが体系立てて整理されていてすごいなといつも感動しています。
@nobita:ありがとうございます。褒められると少し恥ずかしいですね。僕自身、社会人になるまでパワポを全く使えなかったんですが、入社1年目から毎日のように企画書をつくって提案したりして、そこでみっちり鍛えられましたね。
――メルカリのPRは「推進力」が問われるポジションだということがわかりました。「PR(Public Relations)」という言葉に縛られすぎると、ともすれば情報発信に比重が傾きやすいですが、メルカリのPRパーソンは自身の領域を拡張しながら、推進していくことを楽しめる力が大事なんですね。
@kaho:そうですね。一般的なPRの領域に閉じず、ステークホルダーとのコミュニケーション全体の設計であったり、マーケティング施策をPR側から一緒にドライブさせていくことにワクワクできる人であれば、メルカリのPRチームでは無限に楽しめると思います。
メルカリのPRチームは、より刺激的で魅力的になっていく
――最後に、チームもしくは個人として、メルカリでもっとやっていきたいことがあれば教えてください。
@madoka:メルカリで働き続ける理由でもあるんですけど、グループミッションである「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を本気で実現したいと思っています。さまざまなチャレンジができる環境があるので、PRという立場からミッションの実現を推進していきたいです。
@kaho:私は自分の原点である「必要な情報を、必要な人に届ける」ことをメルカリで実現したいと思っています。「必要な人に、必要なモノや価値を届ける」サービスであることがまだまだ伝えきれていないので、もっとドライブさせていきたい。フリマアプリはもちろん、メルペイ、メルカード、メルコイン、あとは『メルカリ ハロ』も含め、メルカリグループが提供しているサービスを必要としている人に届けていきたいと思います。
@nobita:ここまでは得意を伸ばしつつも、苦手な領域をなくすことにもある程度時間を費やしてきたので、ここからは改めて得意領域である戦略設計に全振りしていきたいなと思っています。「企画から推進まで1人でやり切れること」は確実にメルカリPRの強みではありますが、よりそれぞれの個性が尖っていくことで、企画から推進まではみんな一通りできる上で、その中でも推進を任せたら誰にも負けない人や異常に戦略に強い人が集まるPRチームになったら、より刺激的で魅力的なPRチームになっていくと思います。
メルカリのPR戦略室みたいなものができたら、僕にとっては天国だなあと最近妄想しています…(笑)!
執筆:石川優太 編集・撮影:瀬尾陽(メルカン編集部)