メルカリの出品画像が4枚から10枚になったーー。
2018年12月、メルカリは出品画像を最大10枚まで登録できる機能改善を行いました。これはお客さまから多く寄せられていた要望であり、メルカリとしても実現させたかった機能改善の一つでした。
まさに念願の「出品画像10枚化プロジェクト」。出品画像は商品情報と関連することもあり、開発による影響範囲が広く、なかなか実現できなかった過去があります。そんなプロジェクトを完遂できた背景には、あるチームの存在がありました。それがメルカリ初の地方開発拠点として誕生した「Fukuoka Cross UX(以下、福岡UXチーム)」です。
福岡UXチームは「よりお客さまに近い視点で改善を行う」を目的に、プロダクトマネージャーやエンジニア、カスタマーサービス、データアナリストなど、さまざまなメンバーで結成されました。しかし、チーム立ち上げ当時の話を聞いてみると「試行錯誤の毎日でしたよ」と振り返ります。はたして、その理由とは? 福岡UXチームメンバーである濱田順司さん、梅崎美加さん、髙橋祐記さんに話を伺いました。
集まったのは「福岡発」にこだわるメンバーたち
ー福岡UXチームは2018年に立ち上げられた、メルカリ初の地方開発拠点です。立ち上げの話を聞いたとき、どう思いましたか?
濱田:メルカリが地方開発拠点を持つという話を聞いたのは、福岡オフィスで行われていたイベントでした。当時はまだ前職で働いていたのですが、メルカリの創業メンバーである富島さんと話していて「福岡から世界的なマーケットプレイスを創る」という強いメッセージに惹かれました。僕自身も以前から福岡のIT界隈を盛り上げていきたいという想いがあったので、メルカリへの入社を決めました。
髙橋:僕も、東京ではなく地方で意思決定しながらサービスを良くする仕事をしたいと思っていました。そして、メルカリの地方開発拠点の話を聞き、ジョインしています。濱田さんと同じく、以前から「福岡発」というキーワードにこだわりがあったんです。
梅崎:私は福岡UXチームの立ち上げ前からメルカリ福岡オフィスで働いていました。当時はCS Productというチームの仕事がメイン。東京オフィスにいるプロダクトマネージャー(以下、PM)と連携を図りながらお客さま目線での機能改善を行っていました。でも、組織拡大とともに、お客さまから日々いただく機能改善要望を東京オフィスのPMに正確に早く伝えることが難しくなっていって……。まさに「福岡オフィスにも意思決定ができる開発チームがあればいいのに」と思っていたタイミングで、地方開発拠点の話を聞きました。
ー当時から「福岡発」にこだわりを持つメンバーが集まっていたのですね。
濱田:そうなんです。福岡UXチームにはPMやエンジニア、カスタマーサービス(以下、CS)、データアナリストなど、さまざまな専門性を持つメンバーが集まっています。僕はPMとして入社してから、メンバーと細かく1on1をくり返してきました。そこでわかったのは、僕や梅崎さん、髙橋さんだけでなく、チームメンバー全員が「福岡発のプロダクトを世に出していきたい」という共通のビジョンを持っていることでした。しかし、当時はまだメンバー全員で取り組む「大きな目標」がなく、それぞれが違うレポートラインで業務を行っていました。
チームを一つにした「出品画像10枚化プロジェクト」
ー「大きな目標」とは、どういったものを指しているのでしょうか?
濱田:福岡UXチームの強みは、異なる専門性を持つメンバーが一つになっていること。そのため、本来ならば関係各所との連携が必要な場面でも、僕らはチーム内で完結できます。足りなかったのは、チームメンバー全員が持つ「福岡発のプロダクトを世に出したい」という想いをカタチにするために動き出せる目標。それも、全員で取り組み、チームの成功体験につながるようなものです。つまり、ここでの大きな目標とは「福岡UXチームとして一旗あげる」という挑戦でもありました。
ーそれが「出品画像10枚化プロジェクト」だったんですね。
濱田:そうです。偶然なのですが、東京オフィスのプロダクト開発チーム内で出品画像10枚化プロジェクトのプランニングが始まっていました。ちょうど髙橋さんがテックリードとして参加すると決まっていたこともあり、東京オフィスのプロダクト開発チームの想いを引き継ぐかたちでプロジェクトをリードしたいと申し出たんです。
髙橋:そもそも出品画像10枚化は、これまでメルカリ社内で何度も挑戦してきたプロジェクトです。しかし、商品情報はメルカリの根幹とも言える部分。影響範囲が広く、その調整だけでもかなりの時間を費やす、いわば大掛かりなプロジェクトでした。そのため、なかなか実現できなかった背景があるのです。
ーでも、異なる専門性を持つメンバーが揃う福岡UXチームなら実現できるのではないかと……?
髙橋:そうです。濱田さんが話していたように、福岡UXチームは10人以下という少数ながらも、それぞれの領域のプロが集っています。「この領域ならわかるよ!」「これに関してはあそこと連携できる」とチーム内で話し合いながら進められるメリットを最大限に活かせるはずだと考えました。
ー出品画像10枚化プロジェクトが始まったのは10月、そしてリリースされたのが12月でした。なかなかタイトなスケジュールだったと思うのですが?
梅崎:「2ヶ月でリリースする」と濱田さんから言われたとき、チーム内のどこからか叫び声が聞こえた気がしました(笑)。でも、このスピード感はメルカリらしいですよね。
濱田:自分で期間を設定しておきながら言いますが、この内容を2ヶ月間でリリースまで進めるというのは鬼プランだったなと(苦笑)。しかし、12月はクリスマスや正月を控える年末商戦として大事なタイミング。ビジネスインパクトを考慮しつつ、心のどこかで「このチームなら、高い目標でも達成できる」という確信がありました。
タイトなスケジュールが高めた、オーナーシップと心理的安全性
ーどのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか?
濱田:僕はメンバーそれぞれがリリースに向けて最短距離で走り抜けるよう、ステークホルダーや各システムで連携するチームとの調整役に徹しました。
髙橋:開発側では、各種プラットフォームで正しく動作することや、外部ツール連携で整合性を担保するための実装をエンジニア目線で考えていきました。メルカリは多くのお客さまに使っていただいているアプリなので、iOSやAndroid、Webはもちろん、旧型携帯端末でも正しく動くように実装する必要があります。過去5年間の不要なコードを削除するほか、開発チームで進めているマイクロサービス化も考慮し、さらにインフラやネットワーク負荷も調整しながら進めていきました。
梅崎:メルカリでは「1:目的や目標ができる」「2:それに向けて、PMやエンジニアが開発を進める」「3:CSがお客さま観点でチェック」という順番で開発が進められていきます。今回のプロジェクトでは、私がCSとして、お客さま観点でのチェックを都度しながら開発を進めていました。
髙橋:そうですね、ところどころで梅崎さんにお客さま目線で機能面をチェックしてもらっていたのですが、お客さまの操作を制限してしまうような開発が見つかったとき「何考えてるの!」と怒られたこともありましたね(笑)。
梅崎:そんなことありましたっけ(笑)。でも、それくらい遠慮なく「お客さまのためにどうすればいいか」を言い合える心理的安全性や信頼関係は日に日に強まっていきました。スピード感を保ち取り組んでいたからか、ほかのメンバーもそれぞれの領域でオーナーシップを持つようになり、気がつくと「お客さまのために、こうしたほうがいいのでは?」など、積極的に議論を交わしていました。リリース日が近づくころには、強くてしなやかなチームになっていたようにも感じます。
髙橋:お互い対等な視点を持ちながら直接コミュニケーションすることで、改めて「距離の近さはメリットだ」と実感しましたね。
ーまさに、福岡UXチームの強みである「異なる専門性を持つメンバーが揃っている」が発揮されたわけですね。
濱田:そうです。それぞれがオーナーシップを持つことで、お互いを補完するペースもできました。かっこつけた言い方をすると、自分の背中を預けられる仲間がいるような感覚になっていきました。
出品画像10枚化、リリース直後に届いたお問い合わせは?
ーそして出品画像10枚化は当初の予定どおり、12月にリリースされました。お客さまの反応はいかがでしたか?
梅崎:嬉しいことに、「困りごと」として寄せられたお問い合わせは想定したほどありませんでした。何より驚いたのが、最初のお問い合わせが「お問い合わせじゃないのですが、出品時の画像を10枚使えるようにしてくれてありがとうございます。今後もメルカリを利用し続けます」というお礼だったことです! これを見たとき、すぐに福岡UXチーム内で共有しました。そうすると、濱田さんが「俺、泣いてくる」って(笑)。
髙橋:ああ、そうでしたね(笑)。
濱田:職業柄、どうしてもリスクを懸念してしまうので……。想定外のポジティブな反響に涙が溢れてしまいました。チームの努力が報われた瞬間でしたね。本当に嬉しかったです。
ー福岡UXチームは、一つの大きなアウトプットを出しました。次はどういったフェーズに進もうとしているのでしょうか?
濱田:僕らは出品画像10枚化という良いプロジェクトからスタートを切ることができました。出品画像10枚化はiOSアプリのみ対応していますが、今まさにAndroidアプリへの実装を進めているところです。そして今後は成功体験をさらに積み上げていくためにも、次の目標設定を話し合っています。このチームで荒波に挑みながら、お客さまに新しい体験を届けていきたいですね。
プロフィール
濱田順司(Junji Hamada)
アイフリーク、楽天、GMOペパボ、ココラブルを経て、2018年9月に株式会社メルカリのプロダクトマネージャーとしてジョイン。フリマアプリ「メルカリ」のプロダクト開発をリードしながら、福岡UXチームの組織・カルチャーづくりも行っている。 将来の夢は、花屋かコーヒー農園のオーナーになること。
梅崎美加(Mika Umezaki)
大学卒業後、富士ゼロックスでドキュメントに関わるコンサルタントエンジニアとして従事。2018年1月よりCX プロダクトマネージャーとして、株式会社メルカリにジョイン。お客さまからいただく声を元に、フリマアプリ「メルカリ」の改善を行う。
髙橋祐記(Yuki Takahashi)
2014年に新卒でDeNAに入社し、趣味が高じて複数のアイドル関連サービスの開発に携わる。2016年に勢いで福岡に移住したのち、株式会社メルカリの福岡UXチームにエンジニア第一号としてジョイン。現在はモバイルチームにも在籍しながら、UXの改善などを行っている。