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データ分析だけでは先がない? メルカリBIチームが語る新しいキャリア像

2019-2-12

データ分析だけでは先がない? メルカリBIチームが語る新しいキャリア像

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「データアナリスト」と聞くと、研究者と呼ばれるほどの専門性を持つ人が、その道一筋にキャリアを形成していくイメージ。しかし、最近ではエンジニアやプロダクトマネージャー、コンサルタント、マーケターなど、多様なバックグラウンドを持つデータアナリストが増えつつあるようです。むしろメルカリのBusiness Intelligence(以下、データ分析)チームの場合、そういったメンバーがほとんど。

メルカリ創業当初から、あらゆる数字で事業や経営を支えてきたデータ分析チーム。専門スキルを必要とする業務が集中するチームになぜ、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっているのでしょうか? マネージャーである樫田光に話を聞くと、その胸中でデータアナリストのキャリアパスに対する課題感を抱いていました。

そこで今回のメルカンでは、ともにデータアナリスト歴が長い樫田と新保直樹による対談を実施。黎明期から現在に至るまでの歴史を知る2人の対談が始まるやいなや、樫田は分析チームで実現したい想いを新保にぶつけました。

アナリストに求められる「データ分析以外のスキル」

樫田:いきなりなんですが、僕がメルカリで実現したいことの一つに「新たなデータアナリスト像をつくりたい」という野望があります。

新保:けっこう大きな野望ですね(笑)。

樫田:はい、わりと大きな野望です。でも、実現できる予感はあります。それについて、データアナリスト歴10年のキャリアを持つ新保さんと話したいと思っていました。

f:id:mercarihr:20190206125201j:plain樫田光(データ分析チーム)

新保:なるほど、ありがとうございます。

樫田:そもそもデータアナリストが一般的な職業としてはっきり認知され始めたのは、2012年ごろからだと思います。当時は機械学習などデータを使った職業が話題になり、それと同時に「社内で数字を使って何かしている人」が概念的に昇格し、データアナリストというラベルが明確についたイメージです。もちろんそれ以前にも近い業務をしていた人はたくさんいましたが、このタイミングでよりスポットが当てられたという感覚ですね。しかし、キャリアパスとしては、マネージャーになるなどポジションや役割を高めていく以外はありませんでした。

新保:当時のデータ分析界隈は機械学習エンジニアもビジネスアナリストも、まとめて「データサイエンティスト」「データアナリスト」などと呼ばれていた記憶があります。最近やっと、役割の違いが認識されてきて分業化し始めた印象です。

樫田:僕も同じ印象を持っていますね。最近ではデータアナリストが別のスキルを身につけたり、ほかの職種の人がデータアナリストになるなど、バックグラウンドもスキルセットも非常に多種多様になってきています。そういった意味では、今のデータアナリストをとりまく環境はとても複雑です。同時に、新たなキャリアパスが生まれる機運が高まっているんじゃないかと思っているんです。

新保:そうですね。データアナリストとして「数字を追う」という考え方は変わりませんが、所属する企業や手がける事業によって、データ分析以外のスキルも求められるようになってきていますよね。

f:id:mercarihr:20190206125235j:plain新保直樹(データ分析チーム)

樫田:データ分析によってわかる情報は、あくまでも判断材料の一つだと思います。つまり、数字だけがすべてじゃない場面も当然ながらあるわけです。データアナリストの仕事を正しいKPIや施策を考えるものだとした場合、数字以外の情報源も扱える必要がありますよね。

新保:数字が活かされていない場面もまだまだ多いので、何とも言えないところもあります。とはいえ、数字だけを鵜呑みにするのもよくない。事業やサービスのフェーズによってさまざまなKPIや施策をつくらなければならないからこそ、これからのデータアナリストも一辺倒のやり方だけでは生き残れないと思いますね。データ分析をベースに仮説を立て、ほかの情報を取り入れながら判断していくことがますます必要になってきています。

「データ分析×UXリサーチ」で生まれる、納得感ある施策

樫田:かくいう僕らも、他スキルの掛け合わせを活かしてデータ分析を行っていますよね。僕はもともとコンサルティングをしていたこともあり、 ビジネスのフレームワーク思考や経営目線で事業課題を解決するためのデータ分析が得意です。コンサルティングとデータ分析を掛け合わせているというか。新保さんも、他スキルを掛け合わせながらデータ分析をしていますよね?

新保:そうですね。僕の場合、以前は機械学習、そして今はUXリサーチと掛け合わせながらデータ分析を行っています。

樫田:「データ分析スキルのみではダメかもしれない」と感じる出来事があったのでしょうか?

新保:はっきりとしたきっかけがあったわけではありません。従来のデータ分析は、うまくいっているサービスをさらに伸ばしたいときに効果的な手法です。しかし、サービスが伸び悩んでいたり、大きな変化が必要だったりすると、データ分析だけで判断材料をつくることはできません。なぜなら、大きな変化を起こすには、数字だけではわからないお客さまの行動も知る必要があります。もう一歩踏み込んだリサーチをしなければいけないわけです。そこで僕は、お客さまの動向がもっともわかるUXリサーチ領域をデータ分析に取り入れようと考えました。

樫田:そして、新保さんは現場メンバーとともにお客さまの動向を追い、数字に落とし込んで「どうやってサービスを伸ばすか」を考えているんですね。

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新保:僕は今、Seller UXというグループでお客さまによる出品数を増やすために、必要なKPIや施策を考えながら意思決定をサポートする仕事をしています。メルカリはCtoCサービスです。そのため、お客さまには「売る」「買う」という2つの属性があります。「買う」を増やすなら、キャンペーンをするなど、打ち手はいろいろあります。でも「売る」は、大掛かりな施策をしたところですぐに効果が出るものじゃない。Seller UXでは「買うけど出品しない」というお客さまに対して、データ分析に加えてUXリサーチという手法でアプローチしています。

樫田:UXリサーチでは、具体的にどういった分析やインサイトの発見が可能なんでしょうか?

新保:UXリサーチとデータ分析の掛け合わせでは、「お客さまは何を考えているのか」「なぜここの数字は上がっていないのか」を特定したうえで、施策などを考えることができます。お客さまの動きがわかるから、チーム内の納得感が高い状態で施策に挑めます。最近では、お客さまにより多くの出品をしていただくための中長期的なプロジェクトもいくつか走り出すようになりました。そもそもプロジェクトは「WHERE」「WHY」「WHAT」「HOW」の要素を洗い出し、考えることが必要です。Seller UXではその作業をひとまとめに行うのではなく、「WHERE」と「WHY」をデータ分析とUXリサーチで特定し、その後、PMとともに「WHAT」と「HOW」を考えるプロセスで進めることにしています。

「スキル面での掛け算」「分野での掛け算」

樫田:新保さんは、お客さまの行動自体に興味があったんですか?

新保:そうですね。「なぜお客さまはこういった行動をしているのか」「なぜこんなことが起きているのか」はとても興味がありました。先ほどもお話ししましたが、メルカリはCtoCサービスということでいろいろなお客さまによる行動データがあります。そういう意味では、メルカリでのユーザーインタビューはお客さまのことを深く理解できておもしろいし、マクロで見ても「個として何が起きているのか」がわかります。両サイドから見られるのは楽しいですね。樫田さんはどうですか?

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樫田:僕もお客さまの行動や心理に興味はあるんですが、どちらかというとそれ以上に「ビジネスとしてのサービス」「エコシステム」に対して強い興味があってアナリスト業をしていますね。経営目線で導き出したKPIや施策を、経営メンバーやPMと話し合い、事業の方向性などを決める過程はとても楽しいですね。

新保:同じデータアナリストでも興味が異なるとおもしろいですよね。あと、僕自身はデータ分析のスキルとUXの調査・設計スキルを活かし、最終的には「この人がいればサービスを伸ばせる!」という状態になったら強いと思っています。

樫田:「この人がいればサービスを伸ばせる!」は、確かに大事な要素ですね。

新保:メルカリに限りませんが、組織も事業も大きくなると「全体的な方向性を導き出すための分析」と、「直近でサービスを伸ばすための具体的なアクションを決める分析」が必要です。特に後者では、さまざまなスキルとの掛け合わせが可能です。キャリアパスとしても、まだまだブルーオーシャンですよね。

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樫田:そう考えると、これからのデータアナリストのキャリアには「スキル面での掛け算」「分野での掛け算」の2つがあるように思います。「スキル面での掛け算」は、まさに僕や新保さんのようなタイプです。経営やビジネスに興味があればコンサルティングや財務のスキル、サービスに興味があるならUXやサービス設計に関連するスキルをデータ分析に掛け合わせていく。そうするとフルスタックなデータアナリストに近づけます。そして2つ目の「分野での掛け算」が可能になっていく。分野では、サービスのドメインや業界の専門知識などが該当します。データアナリストとしての素養がフルスタックに近づけば、どんな分野でも価値を発揮できます。さらに、得意な業種やサービスドメインを増やしていくこともできるんです。

新保:なるほど。

樫田:しかし、まだスキルの掛け合わせは一つの武器に過ぎません。それに、コンサルティングにせよUXにせよ、機械学習にせよ、本職の人たちには敵わない。あくまでもサービスやお客さまにとっての課題を見つけだすための手段を増やすというイメージですね。

メルカリで描く、新たなデータアナリスト像

新保:樫田さんは「メルカリで新たなデータアナリスト像をつくりたい」と話していましたが、その目標は今どれくらい達成できているのでしょうか?

樫田:僕や新保さんを含めて、メルカリにはさまざまなバックグラウンドやスキルセットを持つマルチなメンバーが集まっています。「新たなデータアナリスト像」と言えるメンバーが集まる場としては、順調と言えますね。

新保:そうですね。そういったスキルの掛け合わせという考えを持つデータアナリストは、ようやく増えてきたように感じています。とはいえ、まだそれほど多いわけではありませんが。

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樫田:もちろん、分析スキルを主体とすることは大前提ですし、そのままキャリアを進めていくことを否定しているわけではありません。しかし、データ分析だけで現場を動かせるかというと、そうではありません。そこでは、さまざまなスキルを使って納得感ある施策に落とし込まなければならないんですよね。掛け合わせるスキルをすべて一流にする必要はありませんが、両方できて損はないです。

新保:同感です。データアナリストの仕事は総合格闘技のような側面が強いので、杓子定規にならず、必要だと思ったスキルはどんどん身につけていくのがよいと思っています。

樫田:「データアナリスト」というタイトルからは、データを上手に扱える人と言うイメージが強くなってしまっている風潮はある気がします。しかし、大事なのは「データを扱えるから強い」よりも「データ分析的な思考」を活かし、それ以外のスキルも積極的に掛け算しながら戦略や施策、事業KPIなどを導き出せること。そのために必要なスキルをマルチで持ち合わせるデータアナリストがたくさん増えるとおもしろそうですよね。メルカリのデータ分析チームは、そんな人材がさらに集う場所でありたい。そんなことを僕は考えています。

プロフィール

樫田光(Hikaru Kashida)

2016年に株式会社メルカリ入社、データ分析を通して国内/米国の両事業の企画支援・戦略立案を行う一方、データ分析チームのマネージャーを務める。メルカリへのジョイン以前は、外資系戦略コンサル、スタートアップ取締役などでのビジネス経験を経たのち、データサイエンスに興味を持ち30歳でプログラミングの勉強を始める。好きな言語はPython。Twitterアカウントは@hik0107。

新保直樹(Naoki Shimbo)

大学院修了後、株式会社構造計画研究所に入社。機械学習のR&D、マーケティング分析業務等に従事。その後、株式会社リブセンスに入社し、転職クチコミサイト「転職会議」を中心に全社の機械学習施策の推進やUXリサーチチームの立ち上げを担当。2018年4月にメルカリ入社。JP版メルカリのデータアナリストとしてプロダクト改善のための企画支援や戦略策定のサポートを担当。

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