メルカリにとってカスタマーサービス(以下、CS)とは、お客さまに安心・安全なやりとりを提供するための重要なセクション。そのため、創業当初から内製でのCS業務にこだわり続けています。そんなメルカリCSメンバーに迫る連載「私のCS語り」。第4回は、データドリブンなメルカリCSにするために設立されたCS Product(以下、CSP)でデータ分析を行う、稲葉俊允にインタビューしました。
稲葉が所属するCS Business Intelligence(以下、CSBI)チームでは、お客さまのお問い合わせ内容や取引データを分析し、プロダクト開発チームとともに機能改善などを行うことがミッションです。まさに開発現場とお客さまをつなぐ重要な役割を担う彼が、数字にこだわり、CSBIで実現したいこととは?
CSとプロダクト開発をどうつなげるか?
ー稲葉さんは前職でもCS業務をされていました。メルカリでは入社してすぐ、違反行為や禁止出品物の対応を行う業務を担当していましたよね?
稲葉:そうですね。前職ではサイト内で違法行為がないかをパトロールする業務でした。そのためメルカリでは入社後すぐ、RM(Risk and Moderation)チームの前身でもあった違法出品物を報告する業務を担当することになったんです。その後RMチームが誕生。僕はそのままRMチーム配属になりました。
ー稲葉さんはその後CSP立ち上げにも加わり、一時はCS起点のサービス企画や開発を行うKaizenチームにも参加されていました。Kaizenに異動された経緯を教えていただけますか?
稲葉:RMチームでは違反行為や禁止出品物対応などをする一方で、お客さまから寄せられたフリマアプリ「メルカリ」の機能改善要望などをとりまとめる業務もありました。まさに現在のKaizenチームの業務だったため、そのまま異動したという背景があります。
ーKaizenチームのミッションはお客さまのサービスに対する要望をしっかりと吸い上げ、プロダクト開発チームに伝えて改善につなげること。RMチームで近しい業務をしていたとはいえ、新たにインプットしなければならないことも多かったのではないでしょうか?
稲葉:そうですね。僕はRMチーム側の業務しか関わっていなかったので、まずはCS全体のことを知るべく、CX領域への理解を深めるためのインプットからスタートしました。また、当時の僕らCSメンバーからすると、プロダクト開発チームがどういったメンバーがどんな体制で動いているのかを把握しきれておらず……。担当チームやメンバーの体制に関するインプットも改めて徹底しましたね。
ーCSとプロダクト開発との接点はあったものの、情報不足に陥っていたということですね。
稲葉:そうですね。CSとプロダクト開発は同じ「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」を目指して日々業務を行っています。プロダクトやお客さまに対する想いは同じですが、プロジェクトや業務が異なっていたため、現状認識に相違が生じていました。細かいことを言うと、同じ言葉でも解釈が異なることもありました。
ーそこまで違いがあるのは驚きです。
稲葉:でも、CSBIは「それはお客さまにとって良いことなのか?」を本質的に考え、機能などに反映することが仕事です。そのため、チーム立ち上げ当初はCS側とプロダクト開発側それぞれの業務背景や言葉を理解しつつ、一方でフラットな立ち位置を維持するために、現場の考えに感情移入しすぎないように意識していました。
お客さま対応の状況やパフォーマンスを数字で可視化するメリット
ー昨年4月からは、CS全体をデータ面からサポートするCSBIチームに所属されています。これは稲葉さんがいたKaizenチームから独立したものとのことですが、そもそもどういった経緯で誕生したのでしょうか?
稲葉:Kaizenチームで機能のパフォーマンスを上げるデータ分析など、業務のなかで数字を扱うことが多くなり、かつCS側から分析結果を求められることが増えていきました。そこで、CS全体のデータ分析に特化したチームとしてCSBIが誕生したんです。
ーお客さま対応の状況やパフォーマンスを数字で可視化することには、どんなメリットがあるのでしょう?
稲葉:一番のメリットは、各自が行っているオペレーション業務が最高のお客さま体験に結びついているかどうかを定量的に確認できることです。というのも、CS業務では「すごく丁寧な対応をしてくれた」「この担当者はあまり感じが良くなかった」など、お客さまそれぞれによって受け取り方が異なります。本当の意味で最高のお客さま体験を目指すためには、定性的なだけでなく、定量的な判断軸も必要です。
ー確かに、お客さまによって返信文面は長いほうがいいのか、短いほうがいいのかなど、CSメンバー内でも意見が分かれます。
稲葉:いい対応だと感じたお客さまはリピーターになるだけではなく、ご家族やご友人にメルカリを薦めてくださることもあります。そういった動きをきちんと数字で見ていくことが、これから重要になっていきます。お客さま体験向上につなげるために、NPS(Net Promoter Score)など、数値指標も導入しました。
ー数値化することで、CSメンバーの目線を合わせができるわけですね。
稲葉:数字を共通認識として持てば、チーム内でのやりとりがスムーズになります。同時に、プロダクト開発チームとの共通認識にもなるので、機能改善加速にも繋がるんです。
ー稲葉さんの業務は、CS全体に関わることもあり、特にCSのLead(リード)とコミュニケーションを取る機会が多いと聞きました。
稲葉:CSのLeadは、メンバーたちが最適に感じる業務プロセスや環境をつくり、パフォーマンスを最大化させる役割を担っています。僕もLeadと同じくらいCSメンバーと近い立ち位置で仕事をしているので、現場の声が集まりやすい。そのため、Leadたちから現場の課題について相談されたり、一緒に対策を考えたりすることもよくあります。まさに、壁打ち相手になっている感じですね。
ー具体的にどういった対策を一緒に考えているのでしょうか?
稲葉:例えば、お客さま対応のオペレーション設計。まずは「今、何をやりたいのか」を聞いてから、数値の推移や算出、KPIの要因分析をどのように進めるのかなどを一緒に考えたりしています。僕の役割は「やりたいことができればいい」ではなく、「やるからには効果を最大化させること」です。数字で結果を見せながら話すことで、Leadたちの意思決定を後押しするほか、潜在的な課題発見につながっています。
実現したいのは「データドリブンなメルカリCS」
ー前々Qから、お客さま対応を行うメンバーの近くに大型モニターが設置されましたよね? お客さま対応に関する数字がぐっと身近に感じられるようになりました。
稲葉:そうです。いきなりモニターが置かれて、びっくりさせたかもしれないですが……(笑)。このモニターには、お問い合わせ対応時間や返信までにかかった時間など、メルカリCS全体のKPIに関わる数字が表示されています。このような数字が目の前に表示されていることで、メンバーそれぞれが「データ的観点」を持つきっかけになればと思っています。また、自分の対応も数字として反映されるので、モチベーション向上にもつながりますよね。
ーでは最後にCSBIとして、メルカリCSで実現したいことを教えてください。
稲葉:お客さまが何を求めているのか、何に満足しているのかなどをきちんと分析し、データ化することで「本当に求められているサービス提供」をできるようにしたいですね。そして、CSメンバーのパフォーマンスをもっと上げていきたい。最近ではメルカリ東京オフィスだけでなく、仙台や福岡など各拠点にCSBIメンバーが在籍するようになりました。CSメンバー間でも、意思決定やお客さま体験向上でデータを活用する場面が増えてきているので、この勢いをさらに加速させていきたいと思っています。
プロフィール
稲葉俊允(Toshinobu Inaba)
岩手県奥州市出身。専門学校卒業後、音響技術関係の会社に入社。その後インターネットサービスのCSを経て、2014年7月にメルカリにJOIN。TnS(Trust and Safety、旧RM:Risk and Moderation)チームの立ち上げを担当後、2017年6月にはKaizenチームの立ち上げに従事。2018年4月よりCS Product のCSBIにJOINし、CS内データアナリストとして分析やデータの可視化を担当。趣味は音楽とゲームとウイスキー。2016年4Q(4月〜6月期)および2017 1Q(7〜9月期)仙台MVP受賞。