2016年5月の創刊以来、メルカリの人、文化、サービス、プロダクトなど、さまざまな情報を発信し続けてきたコンテンツプラットフォーム「mercan(メルカン)」。その約2年間にわたる活動を振り返る、初のミートアップが2018年10月11日(木)に開催されました。題して「メルカリが運営するコンテンツプラットフォーム『mercan』のすべて」。その様子をお届けします。
「メルカンって何?」その全容を編集部員が明かす
開催を宣言するや、予想を上回る申し込みがあった今回のミートアップ。最終的には約60名もの参加者の方にご参加いただきました。
開始時刻をやや過ぎた頃、モデレーターを務める福岡夏樹(メルカリPeople Branding)からミートアップの趣旨とタイムテーブルの説明があり、続けてプレゼンターである西丸亮(メルカリPeople Branding)が登壇。乾杯とともに、メルカンの全容を明かすプレゼンテーションがスタートしました。
最初に語られたのは、社内でのメルカンの立ち位置について。
西丸:メルカンの編集部は「People Branding」というチームが主に運営をしています。僕とモデレーターを務めている福岡を含め、3人体制の組織で、採用やブランディングにまつわる活動をしています。メルカン編集部は、このPeople Brandingの他、メルカリやメルペイのPR、カスタマーサービスなど、さまざまな部署から担当者が集まり組織されています。部員数は10名ほどですね。
続いて、今回のメインであるメルカンについての紹介も。
西丸:メルカンは、メルカリの「はたらく」を伝えることで、採用や認知につなげることを目標にしています。設立は2016年5月。PVは月間でおよそ300,000から350,000くらいある状況です。更新頻度は毎日、年間記事本数は 350本以上になります。また、ユーザー環境はスマートフォンとPCで7対3。PCで読まれることが多いのも特徴です。もしかしたら、メルカンを参考に応募者が志望動機を考えているのかもしれませんね。そして、メルカンの方向性や編集方針についてですが、創刊当時に設定したものがあるので紹介します。
メルカン創刊当初の方針
1.採用にコミットしているメルカリだからこそメディアを持つ
2.毎日更新。最悪一人でも回せる
3.点在する情報を集約。採用候補者は、ここを見ればメルカリがわかる状態にする
4.PV(数字)は共有するが追わない。社員へのシェア強要はしない
西丸:大きな編集方針としては、メルカリを知らない読者にとっても価値のあるコンテンツであること。「メルカリで働くことって楽しそうだね」「メルカリの社員ってユニークだよね」と思ってもらえることを目標にしています。その際に意識しているのが感情のフローです。メルカリを知らない状況から興味を持ってもらい、マッチングするまでに3つのフェーズがあると考えていて、それを具体的な課題として落とし込み、コンテンツ制作をしています。
西丸:例えば、「知らない」から「興味」のフェーズであれば、社会的に見てメルカリで働く意義は何かがテーマになります。「他社との圧倒的な差別化ポイントは?」や「自分にできそうな仕事か?」などです。それが「興味」から「マッチング」のフェーズになると、もう少し具体的にメルカリで働くことをイメージできるようにします。「社長や社員たちが絶対に大事にしていることはなにか?」とか「社員たちはどんなやりがいを感じているのか?」。これらをときに失敗事例なども交えながらコンテンツにしています。
西丸:またメルカンでは、テキストコンテンツ以外にもさまざまな企画があります。ボイスコンテンツやLIVE配信コンテンツ、映像コンテンツなども。だからこそ「コンテンツプラットフォーム」という名称で運営されているんです。
西丸:そしてみなさんが気になる結果や効果についてですが、メルカンを通じて4つあると思ってます。ひとつは「採用」。例えば、メルペイの今西重明(リスク管理担当)にインタビューした記事は、メルペイ及びメルカリグループのリスク管理への姿勢を見せました。この記事、PVはそこまで伸びなかったのですが、読んでくれた人がメルカリに応募してくれて、実際に採用することに成功しましたね。
西丸:次に「認知拡大」。育休を取得した人に取材した記事を出したところ、新聞にも取り上げられました。メルカンから他メディアへ。そういった認知拡大の役割も果たしています。
西丸:また「ソース」としても活用できます。日経新聞編集委員の奥平さんと小泉(取締役社長兼COO)のトークセッションがあったのですが、編集的視点を織り交ぜてメルカリの歴史を辿れる記事に仕上げました。そうすることで、新しくジョインするメンバーでもメルカリのカルチャーや歴史を後追いできます。
西丸:そして最後は「インナーコミュニケーション」です。今年、メルカリは人事評価制度を刷新しました。あえて、評価時期に入る直前に、制度刷新の立役者にインタビューを実施し、社内メンバーへの理解を促すことができました。もちろん社外の方が読んでも得するようなテクニックも施しましたが、この記事は最初から社内のメンバーに届くような編集を意識しましたね。
ここで西丸のプレゼンテーションは終了。メルカンの立ち位置や役割、そして効果に至るまでを余すところなく紹介しました。このメルカンというメディアが、採用という目的以外にもさまざまな役割を果たしていることがわかったのではないでしょうか。
「積極的に失敗する」歴代編集部員たちがメルカンの2年間を総括
続いて、福岡をモデレーターとしたパネルディスカッションへ。西丸に加え、初期の編集部員である松尾彰大(メルペイHR)と中澤理香(メルカリPR)の2人が登壇。事前に参加者から募集していた質問に回答します。最初の質問は「立ち上げ当初の課題と解決方法について」。
松尾:課題は山のようにあったんですけれど、いちばん大きな問題は社内認知がほとんどなかったことですね。先行事例が何もない状態からスタートしたので、「松尾って誰やねん?」とか「こんなことやる必要あるの?」と言われたこともありました。しかし、「新しくチャレンジすることだし、ダメだったらやめればいい」という姿勢からはじめたものでしたし、一つひとつまずはやっていこうとしてましたね。
中澤:今でこそ西丸と福岡が専任になっていますが、立ち上げ当時はみんな他に仕事があり、片手間でやっている状態だったので、正直大変でした。でも、それって明確な解決方法ってなくて。地道にコツコツがんばるしかないんですよね。
松尾:マネジメントする人間が誰もいなかったので、個々人のメインミッションが忙しい時期になるとどうしても疎かなることもありましたね。
福岡:次の質問は「インナーブランディングを行ううえで取り組むべきことは?」。メルカン立ち上げのときはどのようなことを意識していたのでしょうか。
松尾:メルカンの使い方をメンバーに知ってもらうのに半年くらいはかかったのですが、最初に何をしたのかというと、チームの紹介記事をメンバーに書いてもらいました。
中澤:創刊時は編集部に3人しかいなかったので、それで記事を量産するのは難しい。そこで他のメンバーにも手伝ってもらうことにしたんです。テンプレを用意して、チームごとに書いてもらうメンバーを決めてもらって……10記事くらいつくりましたね。
西丸:協力してくれるチームばかりとは限らないと思うんですけれど、どうやって巻き込んでいったんですか?
松尾:自分事化してもらうことが大切かなと思います。特にメルカリは、採用を人事頼みではなくチームごとに行なっていく風土があるので、一度でも良さを知ってもらえれば「メルカンは採用に使えるツールだ」と社内口コミで広まっていくので。
中澤:他に取り組んだことでよかったのは、社内から信頼されているメンバーを取り上げたことですね。そうすると、メンバーがその記事を積極的にSNSでシェアしてくれるので。
西丸:メルカリというと山田(代表取締役会長兼CEO)や小泉が注目を集めることが多いんですけれど、当然社内にはあまり社外に露出しないスタープレイヤーが数多く在籍しているんです。そういうメンバーを取り上げていくことで、より高い価値を提供できるようになりましたね。
福岡:3つ目の質問は「目標設定」。メディア運営やPRなどは定量化できないことも多いため、悩みを抱えている担当者も多いのでは。一体どのような指標を持ってメルカンの運営をスタートしたのでしょうか。
中澤:立ち上げ時は勢いだったので、「採用ブランディングに役立つはず」以外はそこまで細かく決めていませんでしたね。やってみて、何か課題が見えて来たところで考え直せばいいんじゃないかって。あんまり考えてばかりいても仕方ないので。
松尾:正直なことを言うと、私は1年もったらましだと思っていました。それくらい未来を予測して運営をしてなくて。それこそ、今ですら3ヶ月後にどうなっているかわかりません。でも、個人的な目標に紐づけたのは、新しく入社したメンバーが、入社1ヶ月後の面談でメルカンを読んでいるか。そこで100%を出せるように意識しました。
西丸:最近の話も補足ですると、現在は入社前後のギャップがあるかを質問していて、ポジティプなギャップはありだけど、ネガティブなギャップがあったら改善するようにしています。
松尾:あと、オウンドメディアというと広告費換算や採用費換算の話ってよく出るじゃないですか。うちはそういうことを考えてなくて。だからこそ、メルカリの社内やメルカリで働くことに興味を持ってくださる読者に対していかに有益な情報を提供できているかという本質的なところで考えられていると思います。それは小泉の理解があるからでもあるので、上司の存在は大きいかもしれません。
西丸:僕も今回のプレゼン資料を作成するにあたって、Google Analyticsに触れてみたんですけれど、そこで初めて月間30万PV以上もあることを知って……驚きました。それくらい数字に価値を置いていないんですよ。
福岡:続いては、失敗事例と成功事例について。メディア運営をしていくなかで、成功ばかりとはかぎりません。どのようなエピソードがあるのでしょうか。
松尾:もちろんたくさんあるのですが、いちばん大きいのはメディアの運営や記事の編集方針を属人化してしまったことでしょうか。私が今年になってメルカンの運営から離れることになったのですが、何をするにしても私に質問が来る状態になってしまったので、もう少し早い段階から引き継ぎの準備をしておくべきだったかなと思います。
福岡:コンテンツ関係での失敗はありますか?
中澤:たくさんありますね。でも、ほとんど覚えてないです。続かなかったシリーズもありますし。例えば、毎年クリスマス企画をやっているんですけど、12月末日の平日、午後からfacebookでLIVE配信をしたけれど、全然誰も見てくれなかったとか。今から考えたら、そんな忙しい時期に誰も見ないだろっていう感じなんですけれど(笑)。
松尾:そういう失敗をよしとしていた部分はありますね。お金かかる、かからないとかいろいろあると思うんですけれど、チャレンジできる土壌をつくることが大事なのかなと思います。
西丸:10回打席に入って、10回ホームラン打てるわけではないですしね。やることが大事。
福岡:それに続く質問として、記事掲載の判断や編集部としての目標設定をどうしているのかという質問も。
松尾:昔は切り口とか企画の内容で判断していましたね。文章や写真のクオリティについては二の次にして、とにかく更新する。現在の西丸と福岡の体制になってから、その部分についても対応できるようになっていると思います。そのあたり、今の編集部はどうなんですか?
西丸:メルカリってルールをあまりつくらない風土があるんです。でも、メルカンについてはメディアとしてのクオリティを保つためのルールづくりや、ファクトチェックをPRチームと一緒に行なっていく体制づくりも進めています。記事については、週に2〜3本はインタビュー記事など重めのコンテンツを用意して、それをストックしていければいいなと。毎日更新しているとタイムラインから流れてしまうので、もっと緩急をつけていきたいですね。
福岡:また、記事の管理体制についても質問がありました。最近はタスク管理ツールなども充実してきていますが、メルカン編集部ではどのようにしてスケジュールを管理しているのでしょう。
西丸:スケジュール管理は「Google スプレッドシート」、原稿は「Googleドキュメント」で管理しています。これらを関係者と共有し、各々がコメントを残していくようにしています。
松尾:タスク管理ツールを使っていた時期もあるんですけれど、期限が切られすぎると段々辛くなってくるのでやめました(笑)。
西丸:あとはSlackがうまく機能していると思います。例えば、編集部員が毎日更新する「メルカリな日々」というコンテンツに関しては、botがその日の担当者をお知らせしてくれるので、それで気づいて社内にネタを探しに行くこともあって(笑)。だから、18時とか少し遅めの時間に記事を出すことも多いです。
中澤:メルカンのSlackチャンネルは編集部員以外のメンバーもたくさん入っているので、社内の面白いネタを教えてくれるんですよ。そうすると、編集部で拾いきれないカンファレンスの情報や、社内で盛り上がったイベントの写真を送ってもらって、それを記事化したり。あと記事の確認も書いた人と編集部の2人でやりとりするのが基本なんですけれど、Slack内でオープンに共有もしているので、いろんなメンバーが自由に突っ込める。だから、たまに全員で校正している気分になりますね。すごく自由参加型の編集部です。
福岡:そして早くも最後の質問に。これから情報発信をしていこうと考えている参加者から「毎日更新するのはハードルが高いのでは?」と疑問が上がりました。
中澤:立ち上げのときに松尾とよく話していたのは、「とにかくダサいオウンドメディアにはしたくないよね」ということでした(笑)。その“ダサい”の定義もいろいろあると思うんですけれど、私たちとしてはすぐに更新がストップするようなことはしたくないと。
松尾:当時はすぐにストップしてしまうオウンドメディアが多かったんですよ。莫大なお金をかけてオウンドメディアを立ち上げたのはいいけれど、1か月もしないうちにスパッと更新が止まって、半年後に1本だけポンと出るみたいな。それは嫌だよねって。
中澤:当時参考にしたのはトレタ(Toreta)さんが運営していた「TORETA(トレタ)ブログ」。「毎日ひとし」という、社長の様子を毎日更新しているコンテンツがすごく面白くて、担当していたPRの方に話を聞きに行ったんです。それでどうやって書いてるのか聞いてみたら、「時間がないときは5分で書くこともある」と言っていて、それくらいの心構えでいいんだなとほっとしました(笑)。だから、「メルカリな日々」については質にはあまりこだわらず、とにかく毎日書くことを目標にしました。
松尾:「無理だったらやめたらいいじゃん」という気持ちでとりあえず続けましたね。昨日と今日が一緒みたいな、ニュースが何もない会社は魅力的に映らないと思ったので。
中澤:最初から質にこだわってしまうと続かないと思うので、まずは更新を続けることから始めてみるといいかもしれません。
西丸:毎日更新することって難しいことですよね。普通なら「業務的に負担です」と言われても仕方ない。でも、これまでやり続けてこれたのは、メンバー全員が情報発信の重要性を理解しているからに他ならない。それってとてもメルカリらしいなと思うんです。そのカルチャーは今後も守り続けたいと思いますね。
時間にして約3時間。2年間のすべてを集約して話すには、少し時間が短かったように思いますが、メルカンというコンテンツプラットフォームがどのように運営されているのかについて、充分に知れる機会になったのではないでしょうか。次回のミートアップ開催はまだ未定ですが、よりパワーアップしたかたちでみなさまにお会いできるように、努力を続けていきたいと思います。
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福岡夏樹(Natsuki Fukuoka)
株式会社メルカリ People Branding。インハウスエディター。陸上自衛隊を除隊後、編集プロダクションを経て、2011年に株式会社nanapi(現Supership)入社。ハウツーサイト「nanapi」のほか、起業家向けメディア「The First Penguin」立ち上げなどに携わる。2016年10月よりログミー株式会社でメディア運営に従事。2018年1月よりメルカリに入社。「メルカン」運営を担当。
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西丸亮(Ryo Saimaru)
株式会社メルカリ People Branding。インハウスエディター。福島県生まれ。大学院修了後、株式会社スマイルズへ入社。店舗運営やWeb社内報の運営・執筆に携わる。その後、株式会社CINRAに転職。クリエイティブ業界の求人サイト「CINRA.JOB」の企画・編集などに従事。2018年7月、メルカリに入社。「人」に関わるブランディング業務全般を担当している。
松尾彰大(Akihiro Matsuo)
株式会社メルペイ HR。インハウスエディター。大学卒業後、エン・ジャパンへ新卒入社。WEB・IT業界で働く人々の人生に特化したメディア「CAREER HACK」の立ち上げ、チーフエディターの経験後、2016年3月にメルカリに入社。HRグループ(現People Partners)にて採用に従事した後、2018年よりメルペイに参画。メルカン設立メンバー。
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中澤理香(Risa Nakazawa)
株式会社メルカリ プロダクトPRマネージャー。大学卒業後、ミクシィに新卒入社。新規事業に携わり、Webやアプリのディレクター等を務める。 2013年末に退社後、フィリピン留学を経てサンフランシスコでテックライターとして活動。 2014年7月より、Yelp Japanのコミュニティマネージャーに就任。イベント企画・運営やPR活動、レビュー執筆等を行う。2016年1月より、メルカリの広報に従事。
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