「メルカリにおけるChief Product Officer(以下、CPO)の役割を一言でまとめるのは、なかなか難しいですね」。そう笑いながら話すのは、メルカリCPO(Chief Product Officer)の濱田優貴。メルカリのプロダクト最高責任者である濱田が2018年1月に「CPO室」、さらに「Product Strategy(以下、PS)」「Innovation」を設立しました。これらのチームのミッションについて、濱田は「メルカリで一歩先のテクノロジーを使える体制をつくること」と語ります。テクノロジーの未来を見据えるチームを設立した経緯、そして濱田が考える「メルカリCPOとしてのミッション」とは?
CPOは「プロダクト開発のサポート役」
ーそもそも濱田さんはどういった経緯でCPOに就任したのでしょうか?
濱田:もともと僕は、メルカリのプロダクト全体を統括する立場としてメルカリに入社していました。肩書きがCPOになったことで、どちらかというと僕の役割を再定義し、より明確化したように感じています。メルカリにおけるCPOのミッションは「お客さまにとって便利で安心安全なメルカリをつくり続けること」。そのため、僕には2つの役割があると考えています。
・フリマアプリ「メルカリ」を徹底して客観視し、お客さまや社会の評価をフィードバック
・プロダクト開発組織の健全化
ー具体的にどういった役割でしょうか。
濱田:プロダクトが常に使われ続けているということは「お客さまに必要とされている」ことを意味します。これを実現するには、お客さまの声を聞くなどして「いま、メルカリはどういった立ち位置にあるのか」を客観視することが重要です。一方で、良いプロダクトをつくり続けるための環境を整えることもCPOの役割。そういう意味で、CPOはプロダクト開発に関することを何でも引き受けるサポート役と言っていいかもしれませんね。
イノベーションの種は、いつも突然現れる
ーそんな濱田さんは2018年1月、PSとInnovationという2チームを立ち上げました。これはメルカリCPOの役割に直結したものでしょうか?
濱田:先ほど、メルカリCPOの役割は「徹底して客観視すること」とお話ししました。そのためには、すでに顕在化しているお客さまの声や社会からの捉えられ方をキャッチし続けることと同時に、テクノロジーによるイノベーションの種を見つけ、試していくことも必要になると思っていて。
ー「イノベーションの種」ですか?
濱田:過去にヒットしたプロダクトのなかには「昔はあったけど、いまや姿形すらなくなってしまったもの」がたくさんあります。その多くが、新たなテクノロジーによって一気に市場を奪われてしまった結果、クローズとなっている。おかげさまでメルカリは多くのお客さまに使用されています。しかし、その状態がいつまでも続くかというと、そうとは限りません。たとえば、メルカリでは出品したいものをスマホで撮影すれば、AI(人工知能)が画像から商品カテゴリーなどを検出し、必要項目を自動で入力してくれます。それによって出品時のコストを大幅に削減できていますが、もしも頭の中で思い浮かべただけで出品が完了するようなテクノロジーが、メルカリより先に登場するかもしれない。「メルカリっていちいち写真を撮らなきゃ出品できないから面倒くさい!」と思われるようになり、最悪の場合「昔はあったけど、いまや姿形すらなくなってしまったもの」になる可能性すらあるのです。
ー「昔はあったもの」は、思い出そうとしてもなかなか難しいですね。
濱田:テクノロジーによるイノベーションの種は、いつも突然現れます。そして、お客さまの潜在的な「こんな機能があったらいいな」を叶え、価値観を大きく変えます。プロダクトの事業としての数字を日々追うことは重要です。でも、そんな日々の思考のなかでイノベーションの種を見つけるのは非常に難しい。なぜなら、イノベーションの種を見つけ出すには「一歩先の未来」を模索し続ける必要があるからです。いま、メルカリのJP版、US版、UK版それぞれにはオーナーとなるメンバーが全力で事業を伸ばし続けています。ならば、僕たちはテクノロジーの波をウォッチし、プロトタイプをつくり、検証し、「これならいける!」と新しい風を吹き込む役割を担えばいい。そこで2017年12月に設立した研究組織「R4D」に続き、2018年1月に誕生したのがPSとInnovationでした。
リサーチし、プロトタイプを開発するチーム体制
ーPSとInnovationはともに「一歩先の未来」を目指すチームですが、それぞれどういった動きをするのでしょうか?
濱田:PSとInnovationは、それぞれ役割は異なります。また、この2チームはあえて本体であるプロダクトチームから少し離れた「CPO室直下」というポジションになっています。その理由は先ほどお話ししたように、イノベーションの種は日々の業務のなかで見つけることが難しいからです。メルカリが「一歩先をテクノロジーの使える体制」にするため、遊軍のように動いています。
・Product Strategy(PS)・・・市場分析をリサーチし、必要な調査結果を精査する
・Innovation・・・上記の情報などを受け、プロトタイプを開発する
ーこの2チームは「一歩先のテクノロジーを使える体制」をどうやって実現しているのでしょうか?
濱田:そもそもイノベーションを起こすテクノロジーは、複数の要素が組み合わさってできています。さらにいうと、新しいものは常に登場しているので情報も膨大です。PSは、そのなかからメルカリに合うものに関してアンテナを向け、良い情報のみをキャッチしながら精査していきます。一方で、情報を集めるだけでは意味がありません。Innovationでは、PSが集めた情報などをもとにプロトタイプをつくり、効果検証を行います。そのため、このチームでは「あのテクノロジーはメルカリで使えそう」「実際につくってみよう」といったやりとりが続けられています。そして実装化が現実的になったら、Innovation内で開発も進めていく。このように2つのチームは密に連携しつつも別々な役割を担っているんです。
メルカリこそ、テクノロジーに貪欲であるべき
ー濱田さん個人として「一歩先のテクノロジー」にこだわる理由はなんでしょうか?
濱田:先ほど「テクノロジーによるイノベーションは、いつも突然現れる」とお話ししました。これは脅威に感じられるところもありますが、僕にとってはそこが最大の魅力だと思っていて。というのも、僕自身が何か新しいことを知ったり、試したりすることがとても好きなんです。特にテクノロジーに関しては「これによっていまの生活がもっと豊かになるかもしれない!」とワクワクするじゃないですか。お客さまにが、そんな気持ちになれるプロダクトをどんどん開発していきたいんです。
ーご自身の挑戦でもあるのですね。
濱田:そうですね。たとえば先ほどお話しした「頭で思い浮かべただけで出品」は、字面だけを見ると笑い話に思われるかもしれません。ですが、現在では「Brain-machine Interface(ブレイン・マシン・インターフェース)」と呼ばれる、脳波を読めるテクノロジーがすでに登場しています。現在はまだ実装に至っていませんが、本気で取り組むメンバーが現れれば、もしかすると来年にはメルカリの機能になっているかもしれない。そういった挑戦の場を、メルカリ社内でもっと増やしていきたい。だからこそ僕は、一歩先の未来に目を向け続けています。
ーメルカリは2017年のR4D設立時にテックカンパニーを目指すと話しています。メルカリのプロダクト全体を統括するCPOとして「テックカンパニー」をどのように定義していますか?
濱田:メルカリはミッションである「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」を実現するために、テックカンパニーになろうとしています。僕の定義するテックカンパニーとは、プロダクトにとって有効なテクノロジーをいち早く取り入れ、効果検証のサイクルをどんどん回せる企業。だからこそメルカリは企業としても、もっとテクノロジーに対して貪欲であり続けたいと思います。
プロフィール
濱田優貴(Yuki Hamada)
東京理科大学理工学部在学中に株式会社サイブリッジを立ち上げ、取締役副社長に就任。受託開発の責任者を始めM&A、新規事業の立ち上げなどに従事する。2014年10月に同社を退社後、同年12月、株式会社メルカリに参画。翌年1月執行役員就任、2016年3月取締役就任。現在、取締役CPOとしてフリマアプリ「メルカリ」のプロダクト全体を管轄している。
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