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インフルエンスから業務プロセス改革まで。メルカリが目指す「AI-Led Growth Company」への覚悟

2024-10-29

インフルエンスから業務プロセス改革まで。メルカリが目指す「AI-Led Growth Company」への覚悟

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私たちメルカリは、AIを戦略的に活用する「AI-Led Growth Company」を目指しています。プロダクトへの実装だけでなく、メルカリで働くメンバーの生産性向上においてさまざまな活用を試みてきました。

今回は、AI活用の基盤整備を行うCorporate Engineering チーム(以下、CET)の山下高範(@t-yama)、2024年7月に「生成AI頑張るぞ担当」としてメルカリにジョインしたハヤカワ五味(@gomichan)の対談を実施。

社内のAI活用とその普及を強力に推進するキーパーソン2名の対談から、メルカリのAI活用の現在地とこれからのビジョンを探っていきます。

この記事に登場する人

  • 山下高範(@t-yama)

    ソフトバンク株式会社でモバイル通信事業に携わった後、株式会社神戸デジタル・ラボにて社内ITシステムの導入・運用・セキュリティ対策などを担当。オムロン株式会社では、データ分析・機械学習を用いた製品の需要予測、全社IT戦略の策定などを経験。2022年5月より株式会社メルカリ Corporate Engineering Teamに参画。現在は、社内のAI導入や活用を推進する。

  • ハヤカワ五味(@gomichan)

    2015年頭に株式会社ウツワを創業後、ランジェリーブランド『feast』、フェムテック事業『ILLUMINATE』など、複数の事業を展開。2022年3月にはユーグレナグループに参画し、はたらく女性向けの新規事業開発に取り組む。24年4月に退職後、2024年7月にメルカリにジョイン。生成AIの利活用に関してSNSでも積極的に発信している。

メルカリのミッション達成にAI活用は不可欠だった

——メルカリはこれまで、さまざまなAI活用の取り組みを行ってきました。なぜAIの活用を重要視するのか、その意図や背景を改めて教えてください。

@t-yama:メルカリでは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションの達成に向けて、これから2030年までの間にどんなことに挑戦し、どんな社会をつくりあげていくのかを示すロードマップを掲げています。

その中の命題の一つが、「業務の安定運用と高度化」です。社内業務へのAI/LLM利活用推進によって、定常業務の質と効率を磨き上げる。それは、CETのRoadmapでも重要テーマの一つとして位置付けていました。

そうした経営方針がある一方で、我々のもとには社内のさまざまな部署から「業務を効率化したい」という相談が多く寄せられていました。同時に、「AIを使ってどんなことができるのか分からない」という声も非常に多かった。

@gomichan:世界的にAIやChatGPTの話題は盛り上がっていて、便利なのはわかっている。でも、実際の業務でどう活用すればいいのかは、イメージが湧かない…そんな人がすごく多かったですよね。

@t-yama:そうですね。そうした状況に対して、まず「AIで解決できる業務」と「そうでない業務」を振り分けるために、日常業務を「汎用的」「準汎用的」「限定的」の3つのカテゴリーに分類しました。

一つ目の「汎用的」業務は、議事録作成やメール返信など、全社員が日常的に行う作業を指します。次の「準汎用的」業務は、チーム単位の業務に関する作業です。最後の「限定的」業務は、個人レベルで行う固有の業務に関するものですね。いわば「その人にしかできない」業務、と捉えてもらうと良いかもしれません。

——カテゴリーごとに異なるアプローチを試みようと。

@t-yama:その通りです。「汎用的」業務は共通の仕組みやルール基盤を整備するなど、トップダウンかつ全社横断の取り組みを推進しやすいカテゴリーです。つまり、CETの出番でもある。

一方で、「準汎用的」「限定的」業務は会社全体の生産性向上を考える上で重要にもかかわらず、個別検討や最適化が必要な領域です。全社横断でのアプローチが難しく、できる限り「現場主導」で施策を進めるべき範囲だと考えました。

——具体的に実施してきた取り組みがあれば教えてください。

@t-yama:社内でAI/LLMを用いたプロダクト開発や全社の生産性向上をミッションとしたプロジェクトが複数立ち上がりました。

例を挙げると、次のような施策を行ってきたり、現在進行系で進んでいます。

  • Ellie(メルカリ社員専用のChatGPT)開発と普及
  • AI活用のアイデアを出し合うハッカソン開催
  • メンバーが使いやすい環境を整えるためのルールやガイドラインの整備
  • Gemini for Google Workspaceに特化したAI/LLM推進

約1年半前から導入している「Ellie」は、セキュアな環境で使用できる点が最大の特徴で、社外に公開されていない情報を扱う際にも安心して使えます。

しかし、「Ellieはどこで使えるんですか?」という質問が非常に多かったんです。つまり、そもそも存在自体が十分に認知されていない。もっと幅広い業務で活用できるはずなのに、本来のポテンシャルを活かしきれていないと感じていました。

AI活用の“モメンタム”形成が「生成AI頑張るぞ担当」のミッション

——そうした現状の中で、2024年7月「生成AI頑張るぞ担当」としてメルカリに入社したのがgomichanです。「生成AI頑張るぞ担当」とは、どのようなミッションを持っているのでしょうか。

@gomichan:端的に言えば「メルカリで働く人全員にAIを好きになってもらうこと」です。

私が見たいのは、エンジニアに限らず、あらゆる人がAIを活用する瞬間。“非エンジニア”の自分が身をもって実感したAIの利便性や可能性を発信していくことで、AIへのハードルも下がるのではないかと思っているんです。

そんな私が「生成AI頑張るぞ担当」として重視しているのが、「モメンタムの形成」です。

——“モメンタム”ですか?

@gomichan:はい。これまでブランドづくりやスタートアップでキャリアを積み重ねてきた知見から、新しい価値を伝え、人の心を動かすために必要なのは“モメンタム”——つまり、勢いとも言える推進力なんじゃないかと。小さな成功や進歩が積み重なることで、組織全体のエネルギーと成長のうねりになります。

メルカリがAI活用に向けて上昇気流に乗るためには、まずはAI/LLMの価値や利便性を理解してもらい、“好きになってもらう”ことが重要です。そのためにも、年内は「騒ぐ」と「盛り上げる」をテーマに活動し、“モメンタム”を形成したいと思っているんです。

——具体的にはどんなアプローチを検討しているのでしょうか。

@gomichan:モメンタム形成と維持には「定期的な学びの機会」や「進捗の可視化」など、いくつか押さえるべきポイントがあると思っています。

その上で、具体的に今考えているのは次の4つの施策です。

  1. 月5回程度の勉強会、全社イベントでの定期アナウンス
  2. Slackで事例共有チャンネル、スタンプを作成
  3. 社内にロードマップやイベントカレンダーを掲示
  4. 部署ごとの利用率の可視化とVPsへの週次共有

例えば私が主催する勉強会は、2024年9月から12月にかけて計25回の開催を予定しています。すでに実施した3回の勉強会の参加者は350人、つまり全社員の約17%が参加している計算になりますね。

@t-yama:その参加率はすごいですね!社内でのAI活用への関心の高さが伺えます。

一回自分の手でAIを触ってみて、実際に出力された結果を見ると、驚きや感動を味わえるはず。その体験を自ら積み重ねることこそが、AIへの深い理解と本質的な活用につながるんですよね。

@gomichan:そう感じます。勉強会ではAIを実際に触ってもらう時間を設けているのですが、参加者からは「こんなこともできるんだ!」という驚きの声が多く上がるんです。

あとは、メンバーによってAI活用の進捗度合いに差が出ないよう、初心者向けの会も開催しています。他にも、社内でのAI活用事例の可視化と共有、チームごとの成功体験のサポートなど、考えうる打ち手はとにかくチャレンジしてみようと思っていますね。

メルカリらしい「Bold」なAI活用と前向きな兆し

——これまでの取り組みを経て、お2人が感じる変化があれば教えてください。

@gomichan:メンバーのAIに対するリテラシー、解像度が格段に上がったと感じます。「AIにできること/できないこと」「AI/自動化の違い」への理解が進んできたというか。

例えば、セールスチームでは営業のサポートツールとしてAIを活用しようという動きが出ていて、顧客とのロールプレイングの練習にAIを使うといった具体的なアイデアも各部署から出てくるようになりました。

@t-yama:私としては、gomichanの存在の大きさを強く感じますね。基盤・システムを専門的に扱う部門では、「インフルエンス」に強みを持つ人が少ない。私たちが苦手なところをgomichanが率先して担ってくれるのは、本当に心強いですね。

@gomichan:そう言ってもらえるとやりがいを感じます!

——では、AI活用を推進する中で「メルカリらしさ」を感じた場面はありますか?

@gomichan:そもそもメルカリには、好奇心が強い人が多いですよね。メルカリが大切にするバリューの一つ「Go Bold」を体現するように、変化に柔軟で、新規性が高い物事に対して抵抗が少ない人が集まっていると感じます。

新たな商品やサービス、ブランドを普及、推進しようとする時、「アーリーアダプター」を見つけるのが鍵なのですが、そこで難航して頓挫してしまうケースが非常に多い。それは、私自身がブランドの立ち上げで痛感したことでもあります。

そうした意味でも、2,000人規模の社員がいるメルカリでは「アーリーアダプター」を見つけやすい。実際、各部署でAIを積極的に使い始めている社員が自然と出てきていて、彼らがハブとなって周りに広めてくれているんですよ。

@t-yama:AI活用を担うgomichanが、HR部門に配属されたのも興味深いですよね。「AIの利活用は人材育成やメンバーの成長に大きく寄与するものである」というメルカリの思想が強く反映していると感じます。

「AI-Led Growth Company」を目指し“覚悟”を持って変革に挑む

——最後に、AI活用推進について今後の展望をお聞かせください。

@gomichan:先ほども「モメンタムの形成」のお話しをしたように、年内は「騒ぐ」と「盛り上げる」がテーマです。AI活用のハードルの高さを払拭して「なんか楽しそう!」と思ってもらえるよう取り組みを進めていきます。

具体的には、チームごとの成功体験をどれだけ積み重ねられるかが私のミッションです。例えば、先ほど話したセールスチームのAI活用や、他の部署での具体的な成功事例を作り、共有していきたいと考えています。

@t-yama:AIが日々の業務プロセスの中に自然に組み込まれていて、確実に使われている。そんな状態が「AI-Led Growth Company」を目指すメルカリにとっての理想であり、目指すべき未来だと思うんです。そうでないと、「ちょっと使ってみた」程度で終わってしまいますから。

@gomichan:本気でその理想を追求するなら、既存の業務プロセスや、場合によっては組織構造まで抜本的に見直す必要もあるかもしれない。変革にあたって“痛み”を伴う覚悟もしなければいけないと思っています。

@t-yama:中長期的なメルカリの事業や組織成長という観点で捉えれば、その“痛み”を超える大きな費用対効果が期待できると考えています。これまで時間を割いていた定型業務の多くをAIに任せることで、メンバーはより本質的な仕事に集中できます。

@gomichan:AIは確かに新しい技術で、最初は戸惑うかもしれません。でも、一歩踏み出してみると、きっと新しい可能性が見えてくるはずです!

執筆:安心院彩 編集・撮影:瀬尾陽(メルカン編集部)

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