2018年5月31日をもってメルカリ アッテ(以下、アッテ)のサービス提供を終了します。
「メルカリ アッテ」サービス提供終了のお知らせ | 株式会社メルカリ
ソウゾウは、メルカリグループの新規事業の担い手としてアッテ以外にも複数のプロダクトをリリース・運営してきました。しかし、サービス終了はアッテが初めてです。
今回のメルカンでは、ソウゾウ代表の松本龍祐とプロダクトオーナーである八木達也が、アッテのサービス終了と新規事業開発について振り返りました。
プロフィール
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松本龍祐(写真左)
1981年生まれ。中央大学在学中より出版系ベンチャーの立ち上げやカフェ経営などを行う。 2004年より中国企業のSNS立ち上げに参画、2006年にコミュニティ企画・運営に特化したコミュニティファクトリーを設立。2009年>以降はソーシャルアプリ開発に特化し、写真をデコってシェアできるスマートフォンアプリ『DECOPIC』が2,800万ダウンロードを記録。2012年9月にヤフー株式会社へ会社を売却。その後同社アプリ開発室本部長を担当後、2015年5月よりメルカリにジョイン。主に新規事業領域を担当。
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八木達也(写真右)
2016年4月入社。サーバーサイドエンジニアとしてメルカリ アッテの開発に携わり、2017年10月からプロダクトオーナーに従事。二児の父。
時間と価値があると思うものを比較優位でつなげることで、暮らしを豊かに
− 16日にアッテのサービス提供終了お知らせがありました。
松本:はい。お客さまにはご迷惑をおかけして大変申し訳ないのですが、5月31日でサービスの提供を終了することになりました。そして約2年間、アッテを一緒に盛り上げてくださったみなさまにはとても感謝しています。ありがとうございました。アッテを通じて実現したかった世界をつくりきることはできませんでしたが、今後はメルカリグループ全体で経営資本を集中して、様々な価値提供の方法を検討していこうと考えています。
−アッテが目指していた世界というのは、どういったものですか?
松本:「家事手伝います」や「囲碁を教えます」など、スキルや時間、場所の近さを活かしてこれまで仕事じゃなかったことが仕事になる世界が実現できたらいいなと思っていました。時間の使い方や価値があると思うものを比較優位でつなげることによって、暮らしが豊かになる世界を目指していました。あとは、最初から難易度の高いトライだとは分かっていましたが、カテゴリーを絞らずプラットフォームとして幅広く「使う人それぞれが豊かに感じることが実現できる場」をつくろうと考えていました。
八木:僕はリリース当初からサーバーサイドエンジニアとして開発を続け、半年前からプロダクトオーナーをやっていたんですが、松本さんとは少し違う観点も考えていました。自分がアッテを利用する中で「近所の人と知り合いになってネットワークが広がる」ことをユニークだと感じていたんです。少数で小さなつながりが継続的に広がっていくと地域のネットワークになり、暮らしやすくなったり助け合えるんだと実感して、それをアッテが後押しすることでみんなの生活を豊かにしたいと考えていました。
松本:アッテが始まった2016年3月頃は、ソウゾウのメンバーはまだ15人ほどで、ソウゾウ=アッテ、アッテ=松本でした。それから2年が経過する中で組織もプロダクトオーナーも変化して、プロダクトが目指す方向性も少しずつ変わってきていました。お客さまの利用ケースなどをもとに変化もさせながら数字も伸ばしていたのは良かったと思います。
サービス終了は100%ロジカルに数値だけでは判断できない
−現在のソウゾウはアッテを含めて4つのプロダクトの運営、そしてteachaなどのリリースも控えています。この2年で状況はどう変わりましたか?
松本:ソウゾウの設立当初は、「スタートアップのメルカリがさらに新しい会社を作って別のチャレンジをやるのか!」という驚きがあったと思うのですが、今では当時に比べてさらに組織拡大が進んでいます。その中でソウゾウは、次の一手を期待されるというポジションに変化したんじゃないでしょうか。ソウゾウメンバーも100名以上になってリソースやチャレンジの機会は増えましたが、その分まわりの期待値も上がってきていると感じています。
八木:そうですね。僕は2017年の夏に2ヶ月の育児休暇を取得していたのですが、その間にも変化の速さを感じていました。復帰後はメンバーが20人くらい増えていて、別の会社だった人たちが丸ごと入社しているということもあったり。
−終了の決断をする際にどんなことを考えましたか?
松本:新規事業の終了は、100%ロジカルに数値だけでは判断できないんだなと我ながら実感しました。愛着もありますし、何か存続させられる術はないか?と検討し尽くしました。ただ、圧倒的に伸びてメルカリグループとして親和性のある新規事業の手段を考えないといけない中で、アッテを存続させるための術を考えていてはフェアじゃないし、正しくないなと。一方で、事前に撤退基準をガチガチに決めていればいいかというと、開発チームがその基準を超えることにとらわれて、大きな成長ができなくなる懸念もあります。じゃあどうすればいいのか。一概に言えることではないのですが、数値だけでは判断せずに、合理的な打ち手を試し尽くしたかも踏まえて本質的な判断をしていくといいのかな、と今は思います。
八木:現場としては目標に向かってのびのびとやらせてもらえるともちろん嬉しいですが、基準が決まっている方が明確で気持ちが楽なこともありますよね。とはいえ、独立性高く飛躍的な成長を続けるためには、現場メンバーが目標を見失わないような目線をつくりながら、ある程度の定量的な基準があるといいですね。
松本:現在コーポレート部門で、プロダクトの健康診断の下地になるような定量基準やそれを共有する仕組みを考えています。
−プロダクトオーナーとして振り返ってどうですか?
八木:よかったことは、他に事例がない課題解決の成功を信じて進んでいたことです。そして数値も伸びていたこと。一方で、会社から求められている成果とのバランスをもっととれるとよかったのかなとも思います。仮説をシンプルにして早く確かめて、実現できたらまた次の仮説を試せると、期待値を超えながら経営陣とも話を進められたこともあるかもしれません。アッテは複数の仮説を並列で確認しようとして、さらに確認できないまま次の仮説を確かめる、という状態になってしまったこともありました。口に出すと当たり前なのですが、イシューを見極めて解決を繰り返すことの大切さを感じています。
今度も挑戦が生まれやすく、かつ成長しやすい仕組みの整備を
−ソウゾウのバリューに「Move Fast」があります。アッテはサービス提供終了となりますが、それでも前へ進むために今後も新規事業を進めていくということでしょうか?
松本:もちろんです。新しいことをやる速度をさらに上げてトライアンドエラーをし続けることで、ソウゾウのミッションである「Building the next ordinary」を実現していくつもりです。先日メルカリ含む全社員が集まる場でアッテ終了の発表をしたとき、CEOの山田進太郎が「ナイストライでした。拍手しましょう。」と締めるシーンがありました。数多く挑戦することをよしとする文化は引き続き変わりません。新規事業にチャレンジし続ける限りサービス終了も起こりうる事ですが、新しいプロダクトや挑戦が生まれやすく、かつ成長しやすい環境や仕組みの整備も急いで進めます。
八木:アッテを通じて、地域や地元という場所がもつパワーや、人と人の結びつきを強く実感しました。サービスの最後の日まで、お客さまや関わってくださったすべての方にご迷惑のかからないようチームでしっかりと対応していきます。これまで使っていただいたみなさん、本当にありがとうございました。
松本:あらためて、ご利用いただいていたお客さまには、このような形になってしまって心苦しく思います。そしてリリース以来多くのお客さまから、アッテを通じて近所の人と交流することや、つながることの感謝を伝えていただくことがあり、たくさんの力をもらいました。これからもソウゾウは、みなさんに「ありそうでなかった」価値を届けられるようなプロダクトづくりやチャレンジを続けていきます。