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「だれでもすぐに、かんたんに」使えるサービス創造へ。新たな体験価値を届けるための『メルカリ ハロ』のAI/LLM活用とは

2025-3-31

「だれでもすぐに、かんたんに」使えるサービス創造へ。新たな体験価値を届けるための『メルカリ ハロ』のAI/LLM活用とは

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スキマバイトアプリ『メルカリ ハロ(以下、ハロ)』は、パートナー(求人企業)の急な人手不足に対応し、同アプリを利用するクルー(求職者)が空いた時間で手軽に働けるスキマバイトアプリとして、多くの方に利用いただいています。

ハロでは、パートナーとクルーの双方に新しい仕事体験を届けるべく、さまざまな効率化に取り組んでいます。テンプレートを選択して入力すれば求人文章が自動生成される「かんたん求人作成」機能、個々人のハロの利用履歴に基づいた求人のパーソナライズ機能など、新たな体験価値の提供に向けて、AI/LLM(Large Language Model)の活用を進めています。

そこで今回は、ハロのAI/LLM活用の現在地と見据える未来について、ハロのCEOを務める太田麻未(@Asami )とVPoEを務める曹楨(@godriccao)、MLエンジニアの紫藤佑介(@shido)の3名に話を聞きました。

この記事に登場する人

  • 太田麻未(Asami Ota)

    早稲田大学理工学部卒業。新卒で楽天株式会社に入社し、楽天市場や楽天EdyのエンジニアやPMを経験。その後、株式会社リクルートライフスタイルにて、ID決済事業の事業立ち上げを経験。2015年にEmotion Intelligence株式会社に営業として入社。2016年に同社の代表取締役CEOに就任。2019年に台湾本社のAppier.incに会社を売却。2020年にSHOWROOM株式会社にて新規事業立ち上げ後、2021年株式会社メルカリ経営戦略チームに参画。2022年7月株式会社ソウゾウにてCOO、2023年7月より執行役員 VP of Work、2024年1月より執行役員 CEO Work。インド映画とフレンチブルドッグをこよなく愛する。

  • 曹楨(Godric Cao)

    大学卒業後、新卒で村田製作所に入社しSoftware Engineerを経験。2015年に楽天に入社し、Global Point Platformの開発を担当した後、スタートアップ企業で越境EC事業全般の立ち上げや旅行記サービスの開発を行う。2017年11月にメルカリグループに参画し、「メルペイ」の立ち上げに従事。決済、ID、KYC、加盟店、Growth等グループの基盤系チームのEMとMoMを経験。2023年11月から「メルカリ ハロ」の新規事業立ち上げに従事し、現在メルカリ執行役員 VP of Engineering Workを務める。

  • 紫藤佑介 (Yusuke Shido)

    2019年入社。大学で計算機科学・機械学習を専攻した後、新卒でメルカリへ入社。TnS領域でMLエンジニアとして違反商品検知などに携わり、テックリードを務める。その後「メルカリ」のリコメンデーションシステムのロジック改善に従事し、現在は「メルカリ ハロ」でMLエンジニアを務める。

ハロが実現する「だれでもすぐに、かんたんに」の世界

── まずスキマバイト市場におけるハロの位置づけを教えてください。

@shido:スキマバイト市場における重要な特徴の一つが「即時性」です。パートナーは人手が必要になってから可能な限り早く人手を確保したい。一方で働き手も、今すぐ働ける仕事を探している。この双方のニーズに応えることが重要です。

もう一つの特徴が「多様性」です。スキマバイトと一言で言っても、実際の現場は多岐にわたります。飲食店でのホール業務から倉庫での軽作業、イベントスタッフまで、実にさまざまな仕事があります。私たちはそのなかで「だれでも、すぐに、かんたんに」をコンセプトに、あらゆる仕事とのマッチングを実現することを目指しています。

@godriccao:他社のスキマバイトサービスと比較したときの大きな違いは、新しい可能性との出会いを重視している点です。多くのサービスがリピーターの確保に重点を置き、同じ仕事を繰り返し行うことで業務効率を上げていく戦略を取っています。一方で私たちは、初めてご利用いただくクルーの方々にも魅力的な体験を提供し、さらに新しい可能性との出会いを創出することを重視しています。

── その実現のために、どのような取り組みを行っているのでしょうか?

@Asami:私たちの強みの一つは、メルカリグループのテクノロジーを活用できる点です。メルカリで培ったユーザー行動分析の知見や、AI/LLM技術の活用ノウハウを、ハロのサービスにも応用しています。特に重要なのが、初期フェーズからのデータ活用を意識したサービス設計です。

@shido:ただし、サービスの立ち上げ初期にはさまざまな課題がありました。例を挙げると、クルーの方々の行動パターン等が十分に把握できていないなかで、適切な仕事をどう推薦するかなどが挙げられます。また、パートナー側の急なニーズにどう対応するか。そういった課題に対して、まずは必要最低限の機能を整備し、そこから段階的にAI/LLMの活用を広げていく戦略を取りました。

@godriccao:私たちが特に重視しているのが、テクノロジーと人の力のバランスです。たとえば、新規パートナーの開拓では、営業担当者が実際に足を運び、詳細なニーズをヒアリングします。その情報をデータとして蓄積し、AIによる分析や提案に活かしていく。このサイクルを回すことで、より効率的な営業活動にサポートしたいです。

AI/MLチームの始動と、データ駆動の機能開発

── AI/ML(Machine Learning)チームの立ち上げについて、詳しく教えてください。

@Asami:2024年7月から10月にかけて、まず戦略の策定を行いました。この期間で特に重視したのが、データの収集・分析、技術の導入タイミング、そして効果測定の方法です。

データ収集・分析に関しては、非常に緻密な設計が必要でした。クルーの行動データを例に挙げると、求人の閲覧パターンから実際の応募行動、就業状況、働いた後のフィードバック、さらにはリピート率まで、一連のユーザージャーニーを追跡できるかたちにする必要がありました。これは単純なログ収集では実現できない、複雑な設計が求められる部分でした。また、これらのデータはクルーのパーソナルデータであるため、プライバシーの観点などでも慎重な取り扱いを求められるものでもあります。

@godriccao:パートナー側のデータも同様に重要です。求人掲載のパターンや給与設定の傾向、マッチングの効率、クルーの定着率、さらには満足度まで、あらゆる角度からデータを収集し分析できる環境を整えています。これらのデータを総合的に分析することで、より効果的なマッチングの実現が可能になってきています。

── すでに実装されている機能について、特徴的なものはありますか?

@shido:代表的な「かんたん求人作成」機能は、実は改善を重ねて現在の形になっています。当初は求人文章の長さと読みやすさのバランス、必要な情報の過不足、パートナーごとの個性の表現、そしてクルーにとっての魅力の伝え方など、さまざまな課題がありました。

これらの課題に対して、LLMのモデルを段階的にチューニングしていきました。たとえば応募率の高い求人の特徴を分析し、その要素を自動生成時に組み込んでいく。また、業種や職種によって重視される情報が異なることもわかり、それに応じたテンプレートの最適化も行っています。

@Asami:安全面での取り組みも、技術と運用の両面から強化を進めています。不適切な求人の検知では、まずキーワードベースの基本チェックを行い、次にLLMによる文脈理解を含めた詳細チェック、さらに過去の事例との類似性分析を行います。そして、最後に人による最終確認を加えることで、スピーディーな審査と高い安全性を両立させているんです。

サービスの特性上、クルーの保護や各種法令等の遵守を重視し、テクノロジーも活用しながら社内体制の強化を図っています。

3つの軸で進める価値創造への挑戦

── 今後の機能強化について、より具体的に教えていただけますか?

@Asami:私たちは現在、クルー向け、パートナー向け、そして社内向けという3つの軸で機能強化を進めています。クルー向けには、まず初期登録の簡素化に取り組んでいます。必要最小限の情報入力でサービス利用が簡単に始められるようにしながら、クルーの利用状況に応じて行動データ等を分析していく仕組みです。

同時に、初めてスキマバイトの仕事をする方の不安を解消するため、仕事内容の詳細な説明や実際の作業環境の情報提供も充実させています。さらに、クルーの方々の経験に応じた仕事提案も行っており、初心者向けの案件を明確化したり、段階的なスキルアップを提案したりする機能の開発も進めています。

@godriccao:パートナー向けの開発で取り組んでいきたいことの一つが、ダイナミックプライシングです。これは技術的に非常にチャレンジングな領域なんですよね。同じ仕事であっても、アプローチできるクルーが日々変動していて、環境要因などさまざまな要因によって需要が変動します。複数の要因を総合的に考慮しながら、最適な給与設定をパートナーに提案できるアルゴリズムの開発を計画しているのです。

@shido:営業支援の領域でも、段階的な機能開発を進めています。現在はセールス担当者のトレーニング支援や基本的な営業活動の自動化に取り組んでいますが、今後は最適なパートナーへのアプローチタイミングの予測や、パートナーごとにパーソナライズされた提案内容の生成なども実現していく予定です。さらに将来的には、AI/LLMを活用したパートナーへの架電システムの導入も視野に入れています。

次世代の働き方プラットフォームを目指して

── 技術投資の具体的な内容について教えてください。

@godriccao:現在、私たちは3つの技術分野への投資を進めています。まずLLMは比較的早い段階で成果を出せる分野として、求人文章生成の高度化や不正検知の精度向上、カスタマーサポートの効率化などに活用しています。
AI分野では、より中期的な視点で求人のパーソナライゼーションの構築検討を、そして最も長期的な投資として、スポットワーク業界特有なニーズのためのアルゴリズムの開発にも取り組んでいます。

@shido:これらの技術投資を実践的な価値に結びつけるため、マッチング成立までの時間やクルーの継続利用率、パートナーの満足度など、具体的な指標を設定して効果を測定しています。

── 最後に、ハロが描く未来像についてお聞かせください。

@Asami:私たちは、AIによる意外性のある仕事提案や、潜在的な適性の発掘、新しい働き方との出会いなど、クルーの方がワクワクするような発見性を重視したプラットフォームを目指しています。
同時に、個人の特性に合わせた情報提供やキャリア形成のサポート、ライフスタイルに応じた提案など、関係部署と連携しパーソナルデータのプライバシー観点でのケアや公平性・バイアスもしっかり考慮しつつ、高度なパーソナライゼーションも実現していきたいと考えています。さらには、同じ志向を持つクルー同士の繋がりや、パートナーとクルーの信頼関係構築など、コミュニティとしての側面も大切にしていきたいですね。

@godriccao:私たちが目指しているのは「新しい働き方のスタンダード」の創造です。従来の正社員・パート・アルバイトという枠組みに収まらない、より柔軟で多様な働き方を見出したいなと。テクノロジーの力を活用しながら、一人ひとりが自分らしい働き方を見つけられる。そんなプラットフォームを作っていきたいと考えています。

単なる求人マッチングプラットフォームの枠を超えて、働き方の可能性を広げ、新しい価値を生み出していく──そんな未来を、私たちは技術の力で実現していきたいですね。

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