2025年6月11日から、社内へ向けたラジオ形式トークセッション「リーダーズと語る!AI/LLM舞台裏 Open Door」がスタート。第2回のゲストは執行役員 CTO Japan Businessを務める木村 俊也(@kimuras)、そしてモデレーターは前回に引き続きAI/LLM室のハヤカワ五味(@gomichan)が務めます。
収録では、生成AI導入推進をリードするに至るまでに感じていたある種の「絶望感」、そしてその背景にある考え方など、AI技術の進化や導入のスピード感に不安を感じているメンバーをも巻き込むトークが繰り広げられました。
まるでその場で対話を聞いているかのような臨場感で、その模様をお届けします。
*この記事は当日の音声をもとにAIツールを活用し構成、執筆を行っています
この記事に登場する人
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木村俊也(Shunya Kimura)
2007年より株式会社ミクシィにてレコメンデーションエンジンの開発やデータ活用に関する業務を担当。そのほか、機械学習を活かした広告開発やマーケティングデータ開発にも携わる。2017年よりメルカリにて研究開発組織R4Dの設立を担当し、AIを中心とした幅広い研究領域のリサーチを担当。その後、AIと検索エンジン領域のエンジニア組織を設立しDirectorに就任、メルカリへのAIの導入をリード。2022年7月より、社内のプラットフォーム開発を統括するメルカリ執行役員 VP of Platform Engineeringを担当。2024年7月より現職。
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ハヤカワ五味 (Gomi Hayakawa)
2015年頭に株式会社ウツワを創業後、ランジェリーブランド『feast』、フェムテック事業『ILLUMINATE』など、多数の事業を展開。2022年3月にはユーグレナグループに参画し、はたらく女性向けの新規事業開発に取り組む。24年4月に退職後、2024年7月にメルカリにジョイン。生成AIの利活用に関してSNSでも積極的に発信している。
CTO @kimuras の生成AI活用術
@gomichan: 早速なのですが、@kimurasは、普段どのように生成AIを活用されていますか?
@kimuras: ChatGPTが出てからというもの、仕事でもプライベートでも、たくさん使っていますね。特に、「Deep Research」は毎日必ず使っています。
@gomichan: ちなみにどんなことを聞くんですか?
@kimuras: 僕は全社、Marketplaceと Fintech のCTOをやっているんですが、飛び交う話の中には、瞬時にニュアンスを掴みきれないものもあるんです。ですが各種生成AIツールのおかげで、昔は追いつけなかった議論にタイムリーに追いつけるようになりました。
あとは最近、技術発展のスピードが信じられない早さなので、そこも「Deep Research」を使って調査しています。それと、「Notebook LM」は超ヘビーユーザーですね。
@gomichan: 「Notebook LM」はどう使われるんですか?
@kimuras: 基本的に、自分が調査してまとめたドキュメントを夜に読ませておいて、次の日の朝の通勤で音声出力して聞いたり、ミーティングの前に議事録を読ませて、「どういう議論にしようかなと考えたりしています。最近は、Xにいいアップデート情報が流れていることが多いので、それらも音声出力して、帰りの電車で聞いていますね。
@gomichan: なるほど。前もってまとめておいて、通勤中にまとめて聞く、と。
@kimuras: だいぶインプットの効率が上がりましたね。
「絶望」からのポジティブな転換
@gomichan: @kimurasはAIに出会ったのがすごい早かったのではないかと思うのですが、AIツールが本格的に出始めたタイミングって、ぶっちゃけどう感じられてたんですか?
@kimuras: 生成AIの歴史って結構長くて、ChatGPTが出る前も、実はChatbotって流行っていたんですよ。例えばseq2seqといった技術を使っていたんですけど、今のようにうまく会話ができなかったんです。それが、多分10年前ぐらい。
@gomichan: 10年ですか。
@kimuras: 当時も画像生成に関してはまだまだ未来があるなと思ったんですけど。会話に関しては「内容のクオリティをあげるのが難しくて、商用利用は難しいんじゃないかな」という印象でした。でも、ChatGPT 3.5が出たあたりで、「あれ?なんか状況が変わってきたぞ」と思って。もちろん、ChatGPTも言語モデルなので、知識としてソースを食わせない限りは、「事実に基づかないそれっぽいこと」を話してきてたんですけど。
@gomichan: いわゆるハルシネーションですよね。
@kimuras: そう。それでも、「こんなに会話が成立するんだ」って衝撃的で。1年ぐらい前から使い始めたのが始まりですね。
@gomichan: ChatGPTの登場は2022年末なので、意外にもう2年が経っていますね。そこから、かなりの変化があったと思います。今日是非伺いたいのですが、私が入社した2024年7月頃って、社内でAIに興味を持っている方がほぼいなかったんです。その頃の心境ってどんな感じだったんですか?
@kimuras: ぶっちゃけると、当初はある種の「絶望感」を感じていたんですよね。絶望には、ポジティブな絶望とネガティブな絶望があると思ってて、それが入り混じったような絶望感がその時にあった。
@gomichan: それはどういった背景で?
@kimuras: LLMができることが多すぎて、多くの人がこれまで培ってきたスキルや経験が、あらゆる職種でもう必要なくなるんじゃないかという絶望に近い感覚があったんです。人類にとって、働く価値・人として生きていく価値が問われるような、大きなインパクトをこの新しい技術が生んでしまうんじゃないかと、1年前は強く不安に思いました。
@gomichan: 不安という意味では、社会全体としても強かったと思いますね。
@kimuras: 歴史的に、人間がこうした技術の進歩を不安に思うことって、ずっと過去から今まで、継続的にあるんですよ。それ自体はネガティブではなく、むしろ未来を守るためにあると思うんですけど。だからその恐怖心をどう乗り越えられるのかなって思い悩んできたのがこの1年ですね。
使い始めてすぐやめちゃうと、変に怖いと思ってしまって損なので「浸透させていく」という感覚を持っていくと、一気にポジティブになる。怖さや不安があったとしても、使い続けていれば、どこかでこのブレークスルーがくると思います。
「プロンプトに始まり、プロンプトに終わる」
@gomichan: 私、最近1周回ってプロンプトがめっちゃ重要だなと思っているんです。例えば素晴らしい仕事をしている専門職の人の、業務フローや過程、考え方にこそ価値があるなと思っていて。
@kimuras: まさに、いいプロダクトを作って、より価値の高いものをお客さまに提供していくとなると、そもそもの専門的なプロセスの知識がないと辿り着けないんですよね。
@gomichan: そう考えると、メルカリとして我々はどういう方向に向かっていくんですかね?
@kimuras: いい質問ですね。基本的には、それぞれのタスクを最適化して、より考えることに集中できるようにすること。このあたりは皆さんも想像通りの変化だと思います。ただ、プロダクトをリリースするまでには全社が一丸となっていることが重要なので、変化が起こるのはプロダクト・エンジニアリングサイドだけじゃないっていうのは、これまでも言っている通りです。
@gomichan: 例えばセキュリティ部門もそうですね。どこが欠けてもダメです。
@kimuras: コンプライアンス・リーガル観点のチェック、カスタマーサービスなども含め、全社が一丸となってサービスを作る。専門知識の敷居も少しずつ下がってくるので、コラボレーションももっと増えてくると思うんですよ。
@gomichan: うんうん。
@kimuras: コラボレーションが増えると何が起こるかって言うと、全メンバーがもっとサービスの提案やモックアップ作成を試して、みんなで新しいサービスや価値を作っていくみたいなことが起こると思うんです。職種関係なく、全社員がお客さまに価値を提供するっていう感覚がもっと強くなるし、そのための提案ももっと増えてくる。
@gomichan: なるほど。一人ひとりの社員という視点だと、どういう風にしていくのがいいんですかね?
@kimuras: とにかく「AIを使いこなす」こと。まずは自分の領域でAIを使いこなして、それによってエンパワーされた結果、他の領域とかにも踏み出して活用してみる。一人ひとりが自分のロールと新しい技術に向き合って、本気で最適化していかないと次のステップにいけないと思ってます。
@gomichan: @kimurasはよく「Deep Dive(物事を深く理解するために掘り下げる)」という言い方をされると思うんですけど、具体的にはどういうイメージでしょう?
@kimuras: 基本的には、当たり前だけどプロンプトを使いこなすこと。まずはAIを本当の意味で「ツール」として使えるようになってほしいから、メリット・デメリットを理解できるまで徹底的に使いこなして、どんな業務をするにあたっても、まず「AIでこれできるんじゃないか?」と常に問いかけることが重要です。最近では、エンジニアの手を借りずにAIを活用して開発している事例もたくさん出てきますし、「自分はエンジニアじゃないから」と尻込みせずに、情報をキャッチアップしてチャレンジすることが大事だと思いますね。
@gomichan: 結局、現場を理解している人の方が、業務理解がある分プロンプトのクオリティが高いんですよね。
@kimuras: 本当にその通りで、AI/LLMの時代っていうのは、エンジニアではない人たちであっても、自分たちの力である程度のものは開発できる時代になるので、やっぱり全員が向き合ってほしいです。
@gomichan: 「思考フローを言語化する」「トライアルアンドエラーしながら調整していく」意味でのプロンプトの重要性を、最近改めて感じます。普通にやっていれば、60点までは自然に行けると思うんですけど、最後にクオリティを底上げするためにはブラッシュアップが必要だなと思いますね。
私が最近作った一番自信のあるプロンプトは、自分の代わりに自分の好きそうなネタについて考えてくれるものなのですが、自分の思考の流れをトレースしてAIにやらせる形にしたら、私が半日かけて至ったアウトプットが4往復くらいで出てきて、面白いなと思いました。
@kimuras: いいですね!過去の会話・インプットによって蓄積されたメモリーがあるってことも重要だと思うんですよね。使い倒した結果、AIツールがパーソナライズされて、それが財産になる感じ。
「LLMの活用って何したらいいんですか?」って、質問をよく受けるし、僕も考えたけど、やっぱりプロンプトに始まり、プロンプトに終わるのかもしれないと最近思い始めています。
「一緒に学ぶ」ことで、メルカリを成長させたい
@gomichan: 新しい技術を学ぶことに怖さを感じるメンバーがいる時、リーダーとしてどうサポートすればいいか、何か具体例はありますか?
@kimuras: 僕は、やっぱり「楽しさを伝える」のが一番かなと。そもそも、自分自身がある程度使い倒して楽しさを分かってないと「あなたの将来の働き方に影響するんだよ」ということも伝わらないんですよね。
生成AI自体が勉強のサポートにすごく役立つので、まずは「どうしたらいい?」という質問をAIに聞いてみても面白いかなと思います。
@gomichan: 活用事例の多様化だけでなく、モデルやツールの性能が月単位で進化して、情報のキャッチアップに疲れている人も多いと思います。どう付き合っていくのが良いと思われますか?
@kimuras: この変化のめざましさには私も疲れてますよ(笑)。追いつかないですよね。なので、メンバーが自発的に#ai-randomっていうslackチャンネルで情報を発信してくれてるの、めちゃくちゃ嬉しくて。もう自分だけで追うのって限界あるじゃないですか。だから、みんなで情報をシェアし合えることは、会社のいいところだなと思います。今となっては、当初感じていた一人で戦う孤独感ではなく、「仲間」を感じてます、最近。
@gomichan: 確かに!それぞれの得意分野によって、ナレッジを持ち寄ってもいいかもしれないですね。
@kimuras: AI推進というからには、まずはそこから始めないとね。継続的な成長の源泉には、常に新しいチャレンジがあるなと思ってて。時には、「それやりすぎじゃないですか?」「ちょっとリスクあるんじゃないですか?」みたいな意見が出てくるかもしれないんだけど、コンプライアンスは守りつつも、やっぱり新しいチャレンジを推奨するカルチャーを、さらに盛り上げていきたいですね。
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