2025年6月6日、メルカリの東京オフィスにて、「Cursor MeetupTokyo」が開催されました。世界各地で開催されているCursor Meetupの日本版として、企業単位でのCursor導入事例のLTや、Cursorチームからの日本ユーザーへの特別メッセージなど、充実したプログラムで実施。
メルカリ社員が運営に携わった本イベントには、なんと現地、オンライン参加合わせて6,000人以上の応募が集まりました!
AI開発ツールへの関心の高さを改めて示した本イベント。当日の様子を各セッションのハイライト、メルカリのセッションを通してお届けします。
イベントの全体像と各セッションハイライト
まずは、プログラムの中から5組のセッションのハイライトを紹介していきます。
ノンエンジニア向けCursorエージェントtips(みやっち氏/株式会社EXPLAZA)
「もう俺は2度と絶対スライドを自分で作らない」
そう語るみやっち氏。Cursorを「AI付きメモ帳」として捉える斬新な視点で、技術者でなくても活用できる可能性を示しました。
特に注目を集めたのが、Cursorを活用して推し小説を書く、ワークショップの成果。ワークショップに参加した350人の参加者全員が、技術的背景なしにCursorを使いこなせるようになったと言います。
「スキルの高さではなく、思いの強さが価値を持つ世界へ」
まさに、AIを活用した新しい可能性が見えたセッションでした。
ゲノミクスとCursor:進化と制約のあいだ(小井土大氏/東京大学)
研究分野でのCursor活用には、明確な光と影が存在します。東京大学助教の小井土大氏は、その両面を率直に語りました。
「Cursorは明らかに私の個人情報等を用いない機械学習、研究を加速している」
そう評価する一方、個人情報を含むゲノムデータ分析では使用不可、という現実的な制約も。米国国立衛生研究所(NIH)の最新ポリシーを例に、研究現場の厳しい現実を説明しました。
ゲノムデータのような究極の個人情報を扱う場合、AIへの入力自体が「データの第三者提供」と見なされ、使用が禁止されているのです。つまり、最先端のAIツールがあっても、もっとも活用したい場面で使えないというジレンマが……。多くの研究者が直面している「技術の可能性」と「プライバシー保護」の両立という根本的な課題が浮き彫りになりました。
Cursor 15分クッキング Vibe Coding入門(ナル先生)
月20万円をAIツールのサブスクリプションに投じる実践者、ナル先生。アンドレイ・カーパシー氏が提唱する「Vibe Coding」の実演を予定していましたが、通信トラブルにより、一時セッションを中断せざるを得ない事態に。
しかし、ナル先生はこの状況を見事に逆手に取りました。「こういうトラブルが面白いんすよ、実は」と軽快にトークで場をつなぎ、「今の時代、インターネットがないと我々は無力ですね」という痛快な指摘で、会場を沸かせたのです。
予期せぬトラブルを楽しむ姿勢が、ライブイベントならではの醍醐味を体現しました。
セキュリティSaaS企業が実践するCursor運用ルールと知見(瀧澤哲氏/Cloudbase)
セキュリティ企業、Cloudbaseの瀧澤氏からは、企業がCursorを安全に使うための実践的なアドバイスが共有されました。
まず警告されたのが、MCPサーバー(Cursorと外部サービスを連携させる仕組み)の危険性です。悪意のある開発者が作った連携ツールを使うと、知らないうちに機密情報が盗まれたり(ツールポイズニング攻撃)、最初は安全でも後から悪質な機能が追加されたり(ラグプル攻撃)する可能性があるとのこと。
Cloudbaseでは「お客様の情報は絶対にAIに入力しない」というシンプルなルールを徹底。ただし、それだけでは開発効率が落ちるため、「信頼できる公式ツールのみを使う」「バージョンを固定して勝手な更新を防ぐ」といった実用的な対策を併用しているそうです。
「便利さを追求するだけでなく、会社のルールや法律、そして何よりお客様のことを考えながらAIを活用することが大切」
セキュリティを守りながら生産性も向上させる、バランスの取れたアプローチが印象的でした。
大手企業のAIツール導入の壁を越えて:サイバーエージェントのCursor活用戦略(Günther Brunner氏)
サイバーエージェントのGünther氏の事例は、大企業がAIツールを導入する際の現実的な課題と解決策を示すものでした。
サイバーエージェントは、従業員1万人以上、エンジニア3,000人、子会社100社以上という巨大組織です。自由な社風は革新的な一方で、全社的なツール導入には大きな障壁となっていました。それは、Cursorの推進においても同様です。
そこでGünther氏が採用したのが「外圧」を利用する戦略でした。今年2月、同社が主催した外部イベント「AI Code Agents祭り」が、視聴者数2万人を超える大きな反響を呼ぶと、それまで無関心だった社内のメンバーから「うちでもCursor使えないの?」とDMが殺到したのです。外部で話題になると気になる――この心理を巧みに利用した作戦でした。
メルカリ2,000人展開の実践事例 導入から活用へのリアルな道のり
次に、メルカリのセッションをご紹介します。メルカリからは、Android エンジニアの @kuu と EM の @komatsu の2名のエンジニアが登壇。それぞれの視点から、組織的なAI活用の実態を語りました。
スライドの全容はこちらから
メルカリの Cursor利用状況
メルカリ最初の登壇者は@Kuu。メルカリでのCursorを含めた、AIツールの利用状況が紹介されました。まず、@Kuuはメルカリの申請プロセスを紹介。そのシンプルさは、多くの参加者を驚かせました。
「社内のSlackbot の一つであるIT Service Agentに『Cursorが欲しい』と投稿して、『はい』という回答をもらうだけ。もちろん、申請書も理由書も一切不要です。Oktaにも同時に登録されるため、SSOも含めた登録の自動化がされています」
この柔軟な環境が生んだのは、500人以上が参加する活発なコミュニティでした。社内のCursorわいわいチャンネル(雑談チャンネル)では日々知見が共有され、Cursor以外にもGitHub CopilotやDevin、内製LiteLLMを通じた各種ツールなど、エンジニアが自由に選択できる豊富な選択肢が用意されています。
しかし、順調に見える導入にも課題はありました。
「Cursorは、GitHubやJiraの情報にアクセスできて、初めて100%の力を発揮するんです」
@Kuuがそう指摘するように、セキュリティリスクとの向き合い方は、ツール活用において重要なテーマです。そこでメルカリが採用したのは、セキュリティチームが確認した公式MCPサーバーと、社内ニーズに合わせた内製MCPサーバー群という2つのアプローチでした。
これらを1つのリポジトリにまとめることで、安全性を保ちながらボトムアップでの開発を促進する仕組みを作り上げたのです。
組織全体で AI-Native になるために
@Kuuから@komatsuへバトンタッチすると、さらに大胆なメルカリの取り組みが紹介されました。
「1週間、手でコードを書くのを一切禁止」
50人のエンジニアが参加したPCP LLM Week。
そこで掲げられたという唯一のルールに、会場がざわつきます。タイプミスの修正も、たった1行の変更も、すべてCursorで行わなければならなかったという厳しいルール。一見不自由にも見えるこの徹底ぶりには、理由がありました。
「期間を決めてイベント化することで、組織として『中長期のために、短期的な生産性の低下を許容する』という大胆な意思決定ができるんです」
その結果は、期待を大きく上回るものでした。満足度92%、継続使用意向96%という数字以上に印象的だったのは、参加者の意識の変化です。
「参加前は全くCursorに触ったことがなかったけれど、もうなくてはならないものになった」
「Cursorをどう活用できるか、タスクごとに考えるようになった」
参加者から届いた声は、単なるツール導入を超えた本質的な変化を物語っていました。
さて、エンジニアリングマネージャーとして、今回PCP LLM Weekを企画・運営した@komatsu。「3つの重要な学び」を共有しました。
まず「強制力の重要性」。自走力の高いエンジニアが多い組織であっても、組織的な取り組み期間を設けることで、全員がAIに真剣に向き合う機会を創出できたといいます。
次に「情報共有の活性化」。Slackでの活発な知見共有が想定以上の効果を生み、継続的な学習コミュニティに発展したそうです。
そして「スキルレベルの標準化」。全員で同じ体験を共有することで、組織全体のAIリテラシーが底上げされ、共通言語で議論できる基盤が構築されました。
「メルカリではCursorをはじめ、様々なAIツールが息をするように使われています。こうした施策の積み重ねで、All for Oneに、そしてAI-Nativeになるための努力を、組織全体で続けていきます」
実は日本は、世界第3位のCursorユーザー数
イベントの締めくくりとして登壇したのは、Cursor AmbassadorのKinopee氏。「ミスターきのぴー」と海外のAI関係者から呼ばれ、Cursorの本の執筆や雑誌での特集記事を手がけるなど、日本のCursor普及の中心人物です。
この日、Kinopee氏が紹介したのは、Cursorチームから届いたビデオメッセージでした。デザイン責任者のRyuu氏とCEOのMichael Toll氏からのメッセージは、日本のユーザーへの感謝と期待に満ちたものでしたが、その中で明かされた事実に会場がどよめきました。
「日本は世界第3位のCursorユーザー数」
実はKinopee氏が去年サンフランシスコのミートアップに参加した際、日本は世界第4位だったそうです。「アメリカ、中国、インド、日本の順で4位。正直悔しいなと思っていたんですよ」とKinopee氏。それが今回3位に上昇していたことが判明し、日本のCursorコミュニティの勢いを改めて実感する瞬間となりました。
おわりに
熱狂に包まれたまま幕を閉じた「Cursor Meetup Tokyo」。現地・オンライン合わせて6,000人以上もの方々が参加しました。この数字が示すのは、日本のエンジニアたちのAIツールへの期待と、新しい技術を積極的に取り入れようとする前向きな姿勢です。
特にメルカリが実践している「導入」から「活用」への取り組みは、同じような課題を抱える多くの企業の皆さんにとって、何かしらのヒントになれば嬉しく思います。
次回のイベントでまたお会いできることを楽しみにしています!
Cursor Meetup Osaka 概要 5月から世界各地で Cursor Meetup が開催されています。日本でも世界に負けず、Cursor ユーザが集まってお祭りをしましょう!今回は、企業単位で Cursor を導入したユーザ事例のLTとユーザによるLT、Cursorチームからの日本ユーザへの動画メッセージ紹介後、ユーザ同士の交流会を予定しています。 日程: 2025/08/23(土)14:00 – 19:00 会場:エムオーテックス株式会社 住所:〒532-0011 大阪府大阪市淀川区西中島5丁目12-12 エムオーテックス新大阪ビル オンライン配信: Youtube Live(配信環境確定したら募集開始します) 主催:AIエージェントユーザー会(AIAU) >>応募はこちらから |
文:仲 奈々
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