
メルカリが掲げる「AI-Native」の実現に向けて、すでにほとんどのメンバーがAIを日常業務に取り入れはじめています。しかし、メルカリが真に目指したい「AI-Native」がどのような状態や人を指すのか、理解しきれていない方もいるのではないでしょうか。
メルカリの「AI-Nativeな人」は、実際にどのようにAIを活用しているのか。今回話を聞いたのは、事業者向けのECプラットフォーム『メルカリShops』などを運営するB2C(Business to Consumer)事業で、セールスオペレーションとセールスプランニングを担う@kawatyさん。AIをセールス業務に積極的に取り入れ、楽しみながら使いこなしている姿が印象的でした。本記事では、そんな彼の挑戦の背景と現在地に迫ります。
「AI-Native」とは何か。セールスの仕事はどう変わるのか。データを誰もが扱える時代において、それでもなお求められる「人の役割」とは何か。熱量の高い対話を通して、そのヒントを紐解きます。
この記事に登場する人
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川田 拓馬(@kawaty)
2010年に新卒で大手家電メーカーの販売会社に入社し、営業・マーケティング業務に従事。その後、楽天グループ株式会社に転職し、通信事業におけるMVNOサービスに携わるとともに、MNO事業の立ち上げを経験。メルカリ参画後はセールス領域を中心に、メルペイでの加盟店開拓における収益試算などの営業支援を担当。その後、メルカリShopsにてパートナーセールスやセールスオペレーションを経験し、現在はPlanning & Operationsチームにて、セールスプランニングおよびオペレーションの両面から営業戦略や仕組みづくりを担当。
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堀内 ゆり乃(@Yurino)
2024年10月に新卒採用チームのインターンとして入社。内定者インターンとしてAI/LLM OfficeにてAI Task Forceの運営に従事。2026年4月に新卒入社し、現在は新卒採用担当部に所属。
非エンジニアでもここまでできる──セールス×AI実践録
@Yurino: kawatyさんはセールス領域でAIを使いこなしているとお聞きしましたが、AIを使い始めたきっかけは何だったんですか?
@kawaty: 2024年の夏〜秋ごろ、社内で開かれた生成AIの勉強会に参加したのがきっかけです。そこで「生成AIは文章やアイデアを作れる」という基本を学び、まずはGeminiに気軽に質問するところから始めました。そうやって少しずつ触っていく中で、「業務そのものも変えられるのでは」と思うようになっていきました。
当時の業務の中で、事業者の法人番号は国税庁サイトで1件ずつ調べる必要があり、かなり手間がかかっていました。そこで、AIと相談しながら進めて、法人番号APIを使い、スプレッドシート上で半自動的に取得できる仕組みを作りました。最終的にはGASまでつなげることができて、これが最初の大きな実務活用でした。

@Yurino: そこから一気に広がっていったんですね。
@kawaty: はい。子どもが初めて逆上がりができたときみたいな感覚でした。「自分でもできるんだ」とハードルが一気に下がり「これもできるかも」「あれもできるかも」と思うたびに、AIと相談しながらさらに活用していきました。
@Yurino: 現在のセールスプランニングの業務ではどのようなAIの使い方をしていますか?
@kawaty: セールスプランニングの役割は、データを使って営業メンバーやマーケティングを支える仕組みづくりです。指標のトレンドや、マーケ・営業費用の使われ方を分析して、全体の数字をつないでいきます。その中でAIは主に3つに使っています。
- 考え方の壁打ち
- SQLの作成
- スプレッドシートの操作
SQLの作成にはCursorを使っていて、自然言語での指示でもかなりのところまで書けます。以前は取りたい情報に対してどうSQLを書くか考えたり、エラー対応に時間がかかっていたんですが、今は自然言語でやり取りしながら短時間で進められるようになりました。同じ時間でも思考する回数が大きく変わるので、この差は時間とともに広がっていくと感じています。
@Yurino: かなり業務のスピードが変わりそうですね。
@kawaty: 本当に変わりました。最近だと、Claude Codeでのスプレッドシート操作が特に印象的でした。例えば100行以上ある表に対して「ここに昨対比の列を入れて」と伝えるだけで、数式も崩さずに追加してくれるんです。
やりたいことをざっくり伝えるだけで、データにアクセスして結果が返ってくる。このスピードの変化が一番大きいですね。
@Yurino: 一方で、ユニークな使い方もされていると聞いていて、そのあたりもぜひ詳しく教えてください。
AIを“将軍化”する──楽しみながら使いこなす新しい働き方
@kawaty: 僕、漫画の『キングダム』が大好きで、Claude Codeのサブエージェントを将軍たちに見立てて使っています。自分自身は「大王」という立ち位置で、右腕となる存在や複数の将軍に指示を出すイメージです。
たとえば「B2C事業の2月の売上が一時的なものか、構造的な変化が起こった結果なのか知りたい」といった問いを投げると、複数のエージェント(将軍)にタスクが分担され、並列で分析を進めます。それぞれが役割に応じてデータを見て、最後に統合されたレポートが返ってくる、という流れです。
@Yurino: 本来一人でやる分析を、職能が異なるメンバーのチームで分担しているみたいな感覚ですね。

@kawaty: そうですね。将軍ごとに役割を分けていて、
- 全体を俯瞰する役
- 分析を分解して指示を出す役
- 他のエージェントの盲点を突く役
といったように細かく設計しています。こうすることで、一つの視点に偏らず、複数の観点から検討できるようにしています。結果として、使ったSQLも含めて、一定のフォーマットでアウトプットが返ってきます。
@Yurino: その将軍たちは、どのように作っているんですか?
@kawaty: 将軍ごとに、口癖や思考スタイル、これまでの「戦い」から学んだ思想まで細かくプロンプトに入れて、キャラクターを作っています。さらに、社内のグレードも反映させていて、右腕や将軍たちは自分より高いグレードに設定しています。なので自分より優秀なメンバーに業務を任せているような構図ですね(笑)。
また、エージェントが従うべきルールとして、
- 事実ベースで報告する
- わからないことは「わからない」と言う
といったルールを、将軍向けの「軍法」として定めています。
@Yurino: 自分の世界観で楽しみながら使いこなしているのが伝わってきます!
@kawaty: こういう仕掛けがあることで、自然とAIに触りたくなるんですよね。遊びや工夫を通じて、結果的に業務への活用の幅が広がっていくと感じています。
データの先に残る価値──セールスは「背中を押す存在」へ
@Yurino: チーム内にAIを広げていくうえで、大切だと思うことはありますか?
@kawaty: AI活用が進む条件は、身近な人が使っている状態を作ることだと思います。よく会話する相手が使っていると、自然と影響を受けるので、その環境をどう作るかが重要です。
一方で大きなハードルになるのが最初の設定です。@Kyohei さんの記事にもあったように、難しいことから始めるのではなく、できるだけすぐ使えるところから始めるのが大切です。ただし、最低限の設定はどうしても必要になります。だからこそ、その最初の一歩を一緒に越えられるかが重要だと思っています。チームでもやり方を共有しているので、まずは気軽に声をかけてもらえる存在でありたいですね。
@Yurino: これからAIでチャレンジしたいことはありますか?
@kawaty: メルカリShopsの事業者の方が、AIを使ってより簡単に売上を伸ばせるようにしたいです。たとえば「今月はこの売上を達成したい」「使える予算はこれくらい」と入力すると、最適な販促やタイムセールのタイミングまで提案されて、そのまま実行できるような状態です。今はメルカリのセールスメンバーがサポートしていますが、将来的には事業者の方が管理画面から直接AIに相談して、そのまま販促までできるのが理想ですね。
@Yurino: AIが分析から実行まで一気通貫でできるようになると、セールスにはどんな役割が残ると思いますか?
@kawaty: これからのセールスは「背中を押す存在」になっていくと思います。お客さまのビジネスを一緒に良くしていくパートナーという軸は変わりませんが、その中でもより「信頼される存在」に寄っていくはずです。
AIによって、ROIや施策の効果といった意思決定に必要な情報は、誰でも簡単に出せるようになりますし、打ち手も資産として蓄積されていきます。ただ、情報が増えるほど選択肢も増え、逆に「どれを選ぶべきか」の判断が難しくなる。だからこそ最後は、「この人に相談したい」と思ってもらえるかどうかが重要になると思っています。
@Yurino: 確かに、情報そのものの価値は下がりそうですね。
@kawaty: そうなんです。だからこそ、自社にとって都合のいい情報だけでなく、課題や前提も正直に共有するなど、相手の中に入り込むような関わり方が重要になると思っています。そうしたコミュニケーションの積み重ねによって、「この人は信頼できる」という評価が築かれていくのだと思います。AIが「こうすべき」と示しても、最終的に「どう思う?」と人に判断を求める場面は、これからも残り続けるはず。だからこそ、最後に頼られる存在であるかどうかが、これからのセールスの価値になると思っています。
データはすでに揃っているけれど、最後に背中を押してほしい。自分の中では答えが出ていても、「それでいい」と言ってもらいたい。そんな役割に、これからのセールスは近づいていくのだと思います。

@Yurino: kawatyさんにとってAI-Nativeな人とは何だと思いますか?
@kawaty: 第一想起がAIであること。簡単に言えば、何か課題や疑問に直面したときにまずAIに聞く・任せることが自然な選択肢になっている状態のことです。僕はインターネットネイティブと呼ばれる世代ですが、「ネイティブ」とは、無意識のうちに何を最初の選択肢にするか、ということだと思っています。
たとえば、連絡を取るときにメールではなくLINEやInstagramのDMを使う、といった感覚と同じで、何かやりたいことや考えたいことがあるときに、検索ではなく、まずAIに相談することが自然な選択肢になっている状態がAI-Nativeに近いのではないかと考えています。
@Yurino: 最初の選択肢として自然にAIが出てくるかどうかがポイントなんですね。
@kawaty: もちろん、興味を持つことと実際に使ってみることの両方が必要で、最初は検索が先でも、どこかでAIが第一選択になる瞬間が来るのではないかと思っています。自分自身もまだ試行錯誤している途中ですが(笑)。
@Yurino: では、AIを使いこなしたい方へのメッセージをお願いします。
@kawaty: 最初から完璧に使いこなす必要はなくて、気になったことをその都度AIに聞いていくうちに、自然と慣れていくものだと思います。乗り越え方に正解はありませんが、まずAIでやってみようと思うこと自体が一歩だと思っています。正直、CursorやClaude Codeを触っている自分がちょっとかっこいいと思っている部分もあって(笑)。そういう小さなモチベーションも、挑戦のきっかけとしては十分だと思っています。
@Yurino: 実はこの記事もCursorで初稿を作成しているのですが、編集しているときに「自分、ちょっとかっこいいな」と思ったりします(笑)。
@kawaty: 分かります!画面を分割してサイドディスプレイに映していると、エンジニアみたいだと思えるんですよね。そういう“ミーハーさ”も含めて、楽しみながら続けることが大事だと思っています。皆さんも、自分なりのモチベーションを見つけて、ぜひチャレンジしてみてください。
@Yurino: ありがとうございました!

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