昨年エンジニア界隈で好評を博した伊藤直也氏(現一休CTO @naoya_ito)がホスト役を務める #naoya_sushi にメルカリCTOの柄沢聡太郎(@sotarok)が登場してから約1年。
今回はホスト役をsotarokが務める形で #naoya_sushi のオマージュ企画がメルカンで実現。対談から1年経った今、前編ではお互いCTOの立場となった近況を語り合いました。
お互いCTOになって1年ぶりのsushi対談が実現!
sotarok
1年ぶりですね。今回は前回と立場を変えて僕がホスト役です。
まず乾杯しましょうか。
naoya
うまい! (よろしくお願いします)
sotarok
顔が赤くなる前に話しちゃいましょう。
いきなりなんで一休に入ったか、の話になっちゃうけど…2年口説かれてやる気になったんですか?
naoya
ま、そうですね。
一休では入社より前に2年間技術顧問をやっていたわけだけど、2年も顧問という立場で好き勝手正論を言ってましたからね。だんだんと、さすがに口ばかりじゃなく責任取らなきゃいけないなあって気持ちになりますよね (笑)
以前に取材を受けたマイナビさんの記事でも出ている話なんだけど、とあるエンジニアが辞めそうになって。それを止めたんだけど、そのとき「君が技術顧問やってくださいとお願いしてきたのに『僕辞めるんで』とかそんな簡単に言わないでよ」って話してね。説得の甲斐もあって彼は踏みとどまってくれたんだけど、こういうことを経るとどんどん一蓮托生みたいになってきますよね。
「人には辞めるなって言ったくせにいつまで顧問っていう限定的な立場でコミットしてるんですか?」って。
もちろん彼がそう言ってるわけじゃないんだけど、なんか自分の中からそういう心の声が聞こえてきてね。
sotarok
2年好き勝手言ってたやつが全部自分に返ってきた、と(笑)
naoya
そうだね。ブーメランです。
技術顧問は経験の切り売り商売
sotarok
コレ皮ごとイケるんだ…枝豆がここまで旨いとは…
一休に入った経緯ってnaoyaさん自身あまり発信してなかったと思うけど、今日は聞いても良いんですかね。
naoya
もう大丈夫。真面目な話とぶっちゃけ話、両方ありますけど。真面目な方はですね・・・
これまでやってた技術顧問というのはある種、経験という貯金を切り売りする商売なんですよね。だんだんと貯金がなくなっていくんです。
技術顧問だけをやっていると当然、現場感はうすれていく。一方で技術もマネジメントも、時代ごとで求められるスタイルは変わっていきますよね。
sotarok
はい。
naoya
そう。だから長年それだけでやっていると、自分の経験と世の中のズレが大きくなって、むしろ迷惑かけるだろうなと思ったんですよね。意思決定を間違いそうだなと。だからそんなに長くやるべき仕事ではないなと最初から思っていました。
sotarok
それはいつごろから?
naoya
始めてみてすぐそう感じました。今は価値があるだろうけど、3年5年後は難しいだろうなって。
たとえば技術の話題でいくと、僕が初めて顧問をお願いされた頃は、GitHubで Pull Request で開発する・・・とかはまだそれほど一般的ではなかったんですよ。
僕はOSSの開発や、GitHub Enterpriseを使った経験が多少あったから、そのトレンドを少しだけ先取りしていて、そこにコンサルティングの価値があったんです。
でもいまはもうふつうですよね。当たり前とはいかないまでも、GitHub を使うのにわざわざ人に背中を押してもらう必要もないでしょう。これだけ世の中に事例があるんだし。
こういう貯金的なものがだんだんと減ってなくなると、最終的には頭の良さだけの勝負になるんですよね。そうすると自分の場合は、その辺は武器じゃないんで、大変そうだと単純にそう感じました。
sotarok
真面目な話、続けていいですか?
最近技術顧問やってる人ちょくちょく見ますけど、一つの会社にフルコミットして経験値伸ばしながら、顧問するみたいな選択肢もありますよね。実はメルカリでは副業を推奨していて、他社で技術顧問をやっているメンバーもいるんです。
naoya
それはすごくいいと思っています。むしろ積極的にお勧めしたい。
僕がやってた類の技術顧問は、ある意味マネジメントの一種なんですけど、マネジメントを同時期に複数社みていると、共通すること、しないことが見えてきて、マネジメント業務の相対感がわかるようになるんです。
同じ問題が起こっている組織で同じアプローチして解決したら、それは良い線、汎用的な解決策なんだなということがわかるし、逆に、同じアプローチでうまくいくとこいかないことも発見できたり。
マネジメントの問題解決って、ひとつの会社で同じ問題が何度も起こることは少ないですよね。なので一社だけだとそれが定番の問題なのか、そうじゃないのかは判断しづらい。そこが複数をみていると相対化されるんですよ。
じゃあ複数社経験したいといって、別の会社行きます!なんて本末転倒ですしね。顧問という形で他も見るのは現実的ですごくいいと思います。
それがマネージャーとしての大きなブレイクスルーになるなあと。僕自身、貯金は減った一方で顧問時代の2、3年でマネジメントスキルはかなり上がったなと思ってます。
正論を言ってくれるエンジニアの存在はありがたい
sotarok
じゃあ、いま一休のCTOはマネージャーとしての集大成みたいなものでもあるんですね。
naoya
大袈裟に言うと、そうですね。
この3年くらいの顧問経験の集大成。
技術顧問のいいところって、ブーメランとして自分に跳ね返ってこないポジションで、理想論を言うとしたらこうだなと振る舞えるところなんですよ。
だから「なんのシガラミもなかったらこうする」っていうのを考え続けられる。でも組織の中にいるとどうしてもシガラミがある…シガラミのない中での正論思考が鍛えられる。
でもそればっかりやっていると正論おじさんになっちゃうからね…(sotarokをチラ
sotarok
僕は若いときから正論おじさんだよ!
naoya
その話前もしたよね (笑)
いかに正論しか言わない面倒な若者だったか。
sotarok
今もみたいだけど(笑)
naoya
今もいわれるんです?
sotarok
どちらかというと、、、僕は下に甘くて上に厳しいらしいんですよ。
naoya
マネージャーからすると一番面倒なタイプだね (笑)
でもそういう人がマネージャーになると、マネジメントされる側はとてもやりやすいですよね。
sotarok
マネジメントレイヤーには正論ですね。ただ前ほど若くはないので、正論はこうだよねっていうのを話したうえで議論するくらいにはなってますよ。
自分も何でもいう若者から、言われる側、より上のレイヤーに言うようになる立場になって思ったのは、そういう自分を客観的に見れるなって。
若者は騒いでる、それはあのころの自分だって(笑)
そのときに当時の上司はどういう反応しているのかなっていうふうに考えると、すごく客観的に自分を見れることがある。
naoya
そうだね 。
そしてかつての同僚とかが歳を取ってその悟りをひらくと、突然「あのときnaoyaさん言ったことわかりました!」とか言ってきたりします。
sotarok
イイじゃないですか。
naoya
いやあ、遅いよって (笑)
結構気を揉んだりいろいろ消耗しながらやってたそのときに言ってくれたら、結構救われたのになあって。
naoya
これは日本酒飲みたいですね。
sotarok
まだ日本酒は早いですよ。
僕は結構正論を言ってくれる人の存在は嬉しくて、マネージャーになると現実もわかるし、会社の事情もわかる中で、正論だけでは進められないと思うじゃない。
その時に正論言ってくれるひとがいるのはね。言いたいことを言える場を用意したりとか、そのためにはどうしたらいいかとか考えたり。
naoya
そういうのに耳を傾けるのは大変ですけど、重要ですよね。
マネージャーはリアルタイムでのフィードバックが少ないから、自分がやっているアプローチがメンバーにとってよいものかベンチマークするのが難しいですから。
sotarok
自分の上司からもね。厳しいフィードバックはくれるけど、、、褒められにくい立場ですからね…
naoya
そうそう。いいとこは褒めて欲しい (笑)
そういうこと言うと、また「naoyaさん承認欲求ほんと強いですよね」とか言われてしまいますけど。
sotarok
承認欲求は満たされないね(笑)
あと、又聞きで褒められるってケースありますよね。投資家とか経由で突然褒められたり(笑)
naoya
ああ、それね。というか、それ僕との話でもありましたよね。
メルカリ代表の山田進太郎とプライベートで会ったときに「sotarokさんがCTOになってどうですか?」って聞いたら、「すごくいい」って言ってて。
「最初は苦労してたみたいだけど、抜群だね」って。
へえ、と思ったんだけど、たぶん進太郎さんも本人にそこまではっきりは言ってなさそうだなと思ったから、後日 sotarok さんに伝えたんですよ、僕が。
そしたら sotarok さん「マジすか!ありがとうございます!」ってね。
なんで僕が人の会社の代表とCTOの間つないでるんだろうって思ったけど (笑)
そういう場で言うことって本当に本心でしょうからね。
sotarok
嬉しいですね。
naoya
半年くらい前ですね。
sotarok
そうそう。一休の皆さんもnaoyaさん褒めてあげてくださいね(笑)
CTOの就任からメルカリと一休の開発組織はどう変わってきたのか?
naoya
あのときといまでメルカリの組織もかわってきたんじゃないですか?
sotarok
明確に3ヵ月くらいで変えたことがあって、自分の中でもトライアンドエラーを繰り返して、これはうまくいったなって瞬間を重ねた感じですね。それまでは、取締役とかから「遠慮しているんじゃないか」というフィードバックも多かったけど。大胆に行動して解消した感じかな。悩める3ヶ月を経て。
naoya
なるほど。
3ヶ月、必要な期間でもあったんじゃないですか? 新しく後から入って知りもしなかったひとたちと働いて、初日から遠慮なくバッサリやったら、やられた方は「なんだよ!」ってなっちゃうだろうし。信頼関係の構築には時間が必要でしょう。
sotarok
彼の言うことについて行っていいんだっけ?っていうのは当然メンバーの不安としてはあるはずだから、その信頼を最初に取りに行くのは大事だったかなと思う。3ヶ月もかけないでもっとスピード感もって見せていくべきだったかなって反省もありつつ。
naoya
まあ、3ヵ月くらいはかかるんじゃないかな。
僕も今で4ヶ月くらいだけど、3ヶ月くらいで何か決めようとすると、どうしても勘や当てずっぽうになっちゃうんですよね。
入社前には課題だなって思ってたことが、実際に見ていると、実はこの会社ではさほど問題でもなかったりするなんてこともあるし。入社早々いきりたって「これが課題だ!」とぶち上げても、自分だけが問題だと思ってるだけなことがある。
sotarok
ツールの使い方とかそういう部分でありそうですよね。
今までの自分の経験と違う面があると、最初は違和感がありますよね。メルカリで言うと、例えば Redmine の使い方。これまで経験してきたものと全然違っていてびっくりしました。
naoya
そうだね。
ツールなんかは特に、自分が変化に慣れてないことを問題だと錯覚してしまうことがあったりしますよね。
一休だと「ディレクター」とか「プロダクトマネージャー」とかそういう肩書きの人がいなかったとかもいい例ですね 。
組織的には営業、マーケティング、エンジニア。うちマーケティングも人は少ないしどちらかというと営業からマーケティングになりましたという組織なので、極端に言うと営業とつくる方、以上! みたいな感じなんです。間に「企画部門」とかないんですよね。
当初僕はそれを見て、普通は企画部門とかあると思うんだけど、と思っていて。企画部門がないからエンジニアがかなり幅広いことをやってるんですよ。「普通、エンジニアってこういうところまではやらないかもなぁ」と思っていました。例えば・・・利用規約を変える調整ごととかね。
でも3ヵ月くらいみてると、エンジニアがこれだけ幅広くやっているのは事業へのコミットメントの度合いが高いから、ということがわかってきたんです。オーナーシップを持っていろんなことをやっているというか。
「エンジニアもビジネス感覚持て」みたいなことを一般的には説教したりするわけですけど、そういうことが少ないんですよね。
sotarok
それが当たり前だからみんな持ってるんだ。
naoya
そうそう。みんな数字もよく見てるし、ビジネスとして成立させるためにはこういうことも必要だって議論しています。
こういうのも、入ってきた初日にいきなり「プロダクトマネージャーが必要だ!」とか叫んでいたらだめだったと思います。一方で企画部門やプロダクトマネージャーがいないことでの弊害もあるだろうから、一般的なありかたとしてそういうポジションが必要というよりは、一休の現状に合わせたらどこをどこまで切り取ってポジションを作るか考えるのが重要になんです。
結果、いわゆる企画部門ではなく「エンジニア出身のディレクター」という人をエンジニア組織の中で任命して、かつ本人と期待値をきちんと摺り合わせるとか、そういう形でやることにしました。エンジニアの次のキャリアのひとつとしてのディレクター・・・みたいな。
話してみたら、そういうことがやりたかった、という人たちも実際いまして。
そういうギアチェンジができたのも僕も3ヶ月くらい経ってからですよ。結果的には冷静に周囲を見渡してから行動できてよかったですね。
「楽しいこと」「やりたいこと」「やるべきこと」
sotarok
それいいですね。ギアチェンジ。
ところで、いままではCTOになった理由の「真面目な話」でしたけど、「ぶっちゃけ話」ってなんですか?
naoya
うーん、技術顧問という役割に飽きちゃったんですよね (笑)
おすすめしといてなんだけど、顧問顧問と言われる人が増えてきて、、、
sotarok
コモディティ化しちゃった?
naoya
「技術顧問ブーム」とか言われちゃって。 なんだよそのブームっていう。そんなもんブームとかいって浮かれてちゃいかんなあって・・・なんとなくそういう雰囲気が嫌でね。
sotarok
それでいうとCTOこそまさにじゃない?
naoya
一時前に「CTOブーム」みたいな雰囲気ありましたね。火付け役とか僕は言われちゃうんですけど、火をつけたつもりはない (笑)
だいたい CTO のコモディティ化って何なんですか。会社に一人しかいないのにコモディティとは一体!
世の中で肩書きどおりに「CTOだ」と認めていい働きぶりをしている人なんて、そんなにたくさんいないんじゃないですか・・・あ、すみません、これカットで!
冗談はさておき、性格が天邪鬼なんでしょうね。それでそろそろ顧問は引き際かなと。
sotarok
言いたいことはよくわかるかも(笑)
前にプライベートでnaoyaさんと飲んだときに、「またCTOやるんだ、ようやるな、また」って言われた記憶が…
naoya
言った言った。
クロコスでも CTOやっていたのに、よくまたやるねって。
sotarok
いただきます!
今週ずっとお酒を飲んでなかったから…最高だね…
naoya
うまい…めっちゃうまい
sotarok
すっきりしてる…クリアな…あ、スーパー旨い…
naoya
まだ寿司に行ってないのに!
えーと、CTO大変だよねって話ですね。まぁ大変だよね (笑)
当たり前だけど責任大きいし。
sotarok
でも、楽しくないですか?
naoya
僕は実は「楽しい」という感覚がちょっとわからなくて…
仕事が楽しいですかという質問よくあるけど、本当にみんな「楽しい」って思っているのかなって。
辛いということではないですよ。
僕の場合、楽しくてやってるかどうかが重要じゃなくて、やるべきことをやれているかどうかが重要なんですよね。
多分、仕事の「楽しい」ってゲームしてるとか映画みてるとか、私的なプログラミングをしているとか、そういうのとは性質が違いますよね? やるべきことをやっての達成感が得られている・・・それを「楽しい」と表現するのかしら。
sotarok
天邪鬼ですね!
naoya
だって、「楽しい」「楽しくない」を基準にしたら CTO の仕事なんてやってられなくないですか?
少し話しがずれちゃうんですけど、最近ときどき思うことが一つあって。僕らみたいなWebエンジニアってすぐ「コード書きたい」って言うじゃないですか。そして「ずっとコードを書きたい」と宣言することをみんな喝采しますよね。35歳過ぎてもコード書いているのは最高だ!って。
若いころは自分もそう思ってたけど、近頃はときどきそれに疑問を持つんです。
プログラミングをするのって、どんな場面でも無条件に正しいの?って。たしかにプログラミングは楽しい。コードをたくさん書けた日は「充実していたな」って感じます。やりたいことがやれている。
でもね、マネジメント視点に立つと、コードを書くことにこだわらないほうがユーザーにとっていい場面って、本当にいっぱいある。プログラムを書くよりも、ユーザーと会話する方がいい場面、問題をきちんと見極める議論をした方がいい場面。エクセルやパワーポイントと睨めっこした方がいいという場面もたくさんあります。
そう考えるとコードを書く書かないとか、あまり自分の行動を縛らない方がいいじゃないかと思うときもある。そのとき一番やるべきことをやる。それがサービス志向と言うんでしょうか。
自分がやりたいこと、「楽しい」ことをベースにしちゃうと、やりたくないけどプロダクトが伸びるためにやったほうがいいことを、どう捉えたらいいかわからなくなるんじゃないかなあって。
なので、僕はやりたいこと楽しいことではなく、やるべきことをやる・・・という風に考えるようにしています。
CTOの仕事も会社やチームにとってやったほうがいいと思うからやっている。
1on1のミーティングとかだって、別に僕は人の話をきくのが得意ってわけでもない、好きでもない。
でも1on1やると、いろんな発見がある。やるべきだし、やったらよかったなって思うからやっている。
「やりたいか?」って言ったら正直人と話すの苦手だなあと思うし。僕の相談をむしろ聞いてほしいときもある (笑)
sotarok
それはどこに軸を持ってるのかの話でしかないのかなと思ってて。僕らExecutive(執行役員)って立場だとなおさらだけど、会社をうまくいかせることをやりたい。最終的には。だからそれは結局やりたいことなんじゃないの。
naoya
どうかなあ。
自分にとってはやるべきこと。必ずしもやりたいこととやるべきことって一致しない。やりたいことじゃなくて、やるべきことは何かと自問する姿勢は大事だなと思ってます。じゃないと一致しなかったとき辛くない?常に一致してる?
sotarok
それがやりたいことだって思い込んじゃうかも。
naoya
ああ、それはいいですね。そういうメンタルコントロールができるのは羨ましい。
sotarok
でもツライこともいっぱいありますしね。評価とか。話きくまではいいんだけどね。
naoya
人事評価、大変ですよね。どれだけ制度を頑張って作っても全員は満足しないし。
評価は極論すると一番の人しか嬉しくないんだよね。2番目以降は嬉しくない。
自分がうまく評価されれば嬉しいし、そうでなければ辛い。だからどうしたって、辛いと思う人が出てくる。
自分のチームの一部の人たちに辛いと思わせてしまう・・・それを「やりたいこと」ときかれたら違いますよね。でも、ときにはそれが必要なときもある。
トップダウンに変えるべきことを変える
sotarok
やるべき、やりたいこと論はこの辺にして。
一休に入って変えたこととかありますか?制度面とか。
naoya
制度上は目に見えてはないです。なぜなら制度とかあまりないんです。それこそエンジニアの評価基準を少し追加したくらいかな。
一休は結構ボトムアップな会社でね。もともと創業者の森前社長が「好きにやれ」というタイプの人だったんですよね。マイクロマネジメントの「マ」の字もないという。それで自然と会社がメンバーが自分で考えて行動する組織になっていったみたいなんですね。奇跡的な話ですけど。
結果、ルールが少ないし、そもそも人数もそんなに多くないですからね。大きな制度で疲労を起こしているのものはそんなに感じないです。
どちらかと言えば逆にボトムアップすぎて、トップダウンじゃないとなかなか実現が難しいことを実行できないところが弱みだったんですよ。
それを榊さんという新社長が変えてきたんだけど。やっぱり最初はそれなりに摩擦もあったみたい。トップダウンでバーンとやったというよりは、普通の会社なら普通にやってそうなこと・・・戦略をクリアにしたり、フォーカスを定めたり、そういうことなんだけど。
そしてそれをやったことで業績がすごくのびたんだよね。伸びしろが大きいところに手を付けられたから一気に伸びて。
この辺りの話はエンジニアも一緒で、多少痛みを伴う意思決定とかがちょっと苦手だった。
sotarok
たとえば?
naoya
まだ技術顧問の時代だけど、デプロイの全体のフローを変える、とか、技術標準をきちんと整えましょうとか。技術基盤だけをみるチームを作りましょう、とか。
こういうのはなかなかボトムアップでは起こらない。話が横断的だし、大きいですからね。多少トップダウンで、「このチームで決めたものをベースにフィードバックをもらってやっていきましょう」と指示することで進める。特に標準化などのルールに関しては「決め」ですからね。
sotarok
ネガティブな反応は少なからず出るしね。
naoya
そうそう。でも、新しいワークフローにはいつかみんな慣れるわけですから。
sotarok
技術顧問から自分も実行する側にかわって、言うこと変わりました?
naoya
変わらないように気をつけてます (笑)
顧問のときとCTOになってからとで、言ってることが変わっていたら困りますよね。
中の人になった瞬間、「naoyaさんの発言にキレがなくなったね」とか言われたら・・・
sotarok
勤務時間とかは …?
naoya
うーん、毎日会社に行くのって、大変だなって (笑)
「naoyaさんは、一休に入ってもゲームばっかりやって仕事しないんじゃないかって思ってました」ってエンジニアからめっちゃ言われました。
naoya
逆にsotarokさんはメルカリに入ってがっと変えたことある?
あ、でも一休と会社の年齢がちがうから、変えるというより、やっぱりつくらないといけないことのほうが多いのか。
sotarok
社員が働きやすくするための制度設計などは、コーポレート部門がけっこう頑張ってますね。
ただ弱かったのは全体目線でのツール選定かな。
僕が入ったときはめちゃくちゃで…全社はYammer、プロダクトはSlack使って、USとかはSkypeとかでってかんじで…全然標準化していなかった。
naoya
あー、あるあるだ。
sotarok
そう。それで去年末くらいかな、全拠点全員Slackに変えました。
そして今年の7月からはDocumentツールの統合。Wikiも自分がつくったCrowiにまとめようと進めてます。それまではプロダクトチームはQiita、全社はGoogle DocsやGoogle Sitesだったんですけど。今ちょうど移管中ですね。チーム間の情報分断をなくしていこうと言うのが本質的に解決したい問題で。
naoya
こういうコミュニケーションツール問題は、やっぱりトップダウンですよね。要するに標準化だし。
ちなみにSlackは僕も一休全社で使おう!というのはやりました。いまは社内のコミュニケーションは全員がSlackになりました。
sotarok
エンジニアとかは自分が使ってて気持ちがいいツールは知ってるんだよね。だから「プロダクトチームだけこうする」とかは結構進んじゃう。でも全体最適みたいなことをやり切るのは誰かが引っ張らないと。
そいういうのが自分のバリューの発揮というか、全社目線で動くのが大事かなって思っていて。
naoya
わかります。
でもやっぱり気を遣うよね、なんでいままでこうだったので変える必要あるの?ってなりますしね。なぜ Slack なのかというのに、ものすごくロジカルな理由が必ずしもあるわけじゃないから…いかに敵を作らずに納得してもらえるか。
sotarok
みんなやっぱり頭がいいから、客観的に見て多少使いづらいツールだったとしても、賢く使ってたりするの。自らを適応させて。
たとえば仕事上に必要なスレッドを適宜つくってチームとして仕事したり、そのツールに良くも悪くも適応していくんだよね自然と。
で、そういう風に適応してるから、それを変えるとなると当然難しい。だから、Slackだったらこういうチャンネルつくればいいんだよっていう、これまでの使い方と変わるところで業務の進め方のマッピングをしてあげたりして。
naoya
へえ、丁寧にマイグレーションしたんですね。僕らはそこまでケアしなかったな…
sotarok
そうですね。僕はこういうの慎重なほうですね。丁寧すぎる節があるかも。
naoya
そんな大人になったんですね…。
sotarok
CSのマネージャーとリーダーを集めてSlack講習会を開いたり、練習チャンネルつくったりしましたね。
naoya
へえ。見習わなきゃ。
sotarok
(あぁぁ…このかぼちゃめちゃくちゃおいしい…)
まだお寿司出てきてないのにかなり話しちゃいましたね。
【取材協力】
restaurant.ikyu.com
後編こちら↓
両社のこれからの組織について二人が話を進めていきます