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【8つのキーワードからひもとく】メルカリの10年、そしてUnleashする可能性と未来──第2回「お客さま体験」

2023-2-8

【8つのキーワードからひもとく】メルカリの10年、そしてUnleashする可能性と未来──第2回「お客さま体験」

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    株式会社メルカリは2023年2月に創業10年を迎えました。この大きな節目に「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる(Circulate all forms of value to unleash the potential in all people)」というグループミッションを新たに策定しました。

    メルカンでは、このグループミッションに込められた意図、そしてこれからの私たちの目指すことを「【8つのキーワードからひもとく】メルカリの10年、そしてUnleashする可能性と未来」という連載形式でお伝えしていきます。これからのメルカリを牽引するキーパーソンたちの言葉から、改めてメルカリという有機体(組織)の現在と未来を紡いでいき、これからの10年に私たちが社会にどのような貢献をしていけるかを思考します。

    第2回のキーワードは「お客さま体験」です。執行役員 CPO MarketplaceのAki Saarinen(@akis)、Customer Experience TeamをリードするDavid Ghijben(@david)、Data-Driven TeamをリードするHyungjin Kim(@hyungjin)の3名に、メルカリがこれまでどのような「お客さま体験」をしてきたのか、そして新たなグループミッションの元、なにを目指すのかを聞きました。

    この記事に登場する人


    • Aki Saarinen(@akis)

      8歳でプログラミングに出会い、それ以来ずっと「素晴らしいプロダクトをつくること」を目指し続けている。いくつかのベンチャー企業を経て、2019年10月にメルカリへ入社。現在はCPO(マーケットプレイス)として、グローバルプロダクトチームを率いて、お客様に優れた体験を提供している。


    • David Ghijben(@david)

      楽天やファーストリテイリングでの経験を活かし、メルカリサイトの再開発をリードするため、2020年2月にメルカリに入社。現在はカスタマーエクスペリエンスの取り組みをリードし、クラス最高のエクスペリエンスでお客さまをエンパワーすることにフォーカスしている。


    • Hyungjin Kim(@hyungjin)

      メルカリのData-Driven プロダクトのディレクター。2021年にSearch & Discoveryのプロダクトリーダーとしてメルカリに入社後、DeNAやLINEなど日本の大手IT企業で培った、AIやデータのプロダクトリーダー経験を総動員している。現在は、メルカリのお客さま、マーケットプレイス、そして自身のポテンシャルを最大限に引き出すために、プロダクトの成熟度に挑戦し、プロダクト主導の成長をリードしている。

    世の中の様々な物事を循環させることに一層フォーカスしていく

    ──まずは新たに策定したグループミッションについて、「お客さま体験」という観点からどのように考えているか教えてください。

    @akis:まずはこれまでのミッションと、新たに策定したグループミッションのつながりについてお話ししていきたいと思います。人間の歴史にはこれまで多くの発明や開発がありました。狩りをするところからはじまり、農業を開発したことで食糧を生活の近くに持ってきた、そこが人間の生活に大きな変化を与えたタイミングでした。そこからさらに生産につながっていき、事業や産業などが作られたことによって、コミュニティや国の発展につながってきました。こうした流れの中で、売り買いがはじまり、マーケットプレイスは生まれてきたものだと思います。

    メルカリが世に出た2013年は、スマートフォンが飛躍的に普及しはじめた頃で、モノの売り買いやシェアが加速した時期でもありました。メルカリが掲げてきたミッション「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」は、まさに私たちが提供するマーケットプレイスで、かんたんに、安心・安全に取引を行えるようにするということであり、マーケットプレイスの機能と役割を拡張するというのが、これまで注力してきたことでした。

    新しいグループミッションは人々の可能性を広げるところを重視しています。それは循環型の経済や社会に目が向けられているものでもあります。いまは、多くのモノを生産して消費するのではなく、リユースにより重きを置くことが求められる時代です。リユースという観点では、これまでもメルカリとしても注力してきましたが、新しいグループミッションはそこをより洗練させ、広げていくものだと思います。マーケットプレイスでモノを売り買いするだけではなく、世の中の様々な物事を循環させることにフォーカスしていくことが重要だと思っています。

    私たちは、これまで様々な観点からプロダクトの機能を向上させてきました。安心・安全に使えるということは、これからも変わらず重要なテーマであり、同時に「売り買いをかんたんにすること」でもあります。そしてこれからは、かんたんに使えるということを通じて、循環型社会に参加できるようなプラットフォームをメルカリを通して提供していきたいと考えています。

    Aki Saarinen(@akis)

    @hyungjin:日本版のマーケットプレイスだけに焦点を当てて言及しますと、日本において個人が売り買いできるCtoCマーケットプレイスは数多くありますが、メルカリはある意味スタンダード(基準)として見られていると思います。今では「メルカリをまったく知らない」という人がほとんどいないぐらい、日本における存在感が高まりました。新たなスタンダードを作っていくという意味で、グループミッションで描かれていることに、本気で目を向けていく良いタイミングだと感じています。

    @david:先ほど、マーケットプレイスの成り立ちについての話がありましたが、もっとはるか昔からマーケットプレイスの「はじまり」はあったのではないかと思います。おそらく、狩りをしていた時期から人間はモノの取引をしていたのではないでしょうか。自分が獲得したモノを人に渡し、その引き換えに何か別のモノをもらう、そうしたモノの交換が発生していたと思います。ですから、マーケットプレイスというのは、人間が太古から行ってきた営みを拡張するようなものだと思います。

    Akisが言っていた通り、新たに策定されたグループミッションはより広く、そしてある意味で抽象的なものになっていると思います。そのグループミッションの元に、私たちが獲得していきたい未来はマーケットプレイスに限定したものではく、ブロックチェーンやビットコインなど、そういった領域にも拡張していくものです。今はそうした未来を切り開くために準備をしている段階です。

    また、ここ1年は「メルカリShops」にも注力しています。ビジネス事業者側で、売れ残り品になってしまうようなモノは、チャリティーで寄付したり、あるいは廃棄されてしまうかも知れません。そうしたモノがこれまでの流通とは別に取引できる、アウトレットの役割として場を作っていく必要性も感じています。それが実現されれば、ESGの観点からも社会貢献ができますし、より大きな目的としての「循環型社会の実現」のためのプラットフォームを作り出していけると考えています。

    「価値」という概念にはいろんな解釈があると思います。お金も「価値」ですし、ポイントも「価値」、ビットコインも「価値」。私たちは「価値」という観点から、提供できるアセットをいくつも持っています。一つのモノとお金のやり取りという「対」の関係だけではなく、投資ができるようなプラットフォームも構築したいと考えています。

    これからメルカリをはじめとするマーケットプレイスと、メルペイ・メルコインを含むフィンテックのサービスをどうつなげていくかが重要になってきます。いまはまだ分かれている部分があるとは思いますが、両方をシームレスに行き来できるような仕組みが重要になっていますし、双方がプロダクトに自然に組み込まれている状態を作っていきたいです。

    最後に、現在アプリ内でお客さまにより「ワクワク」していただける取引画面をどう実現させていくかについて考えています。例えば、入金がされたときに「やった!」というようなアプリ内通知を出して、小さな成功体験を積み上げたり、次に取引で得た「価値(お金)」の活用方法を「ビットコインに投資できますよ」といった提案がアプリ側から通知されるといった機能です。このように、タッチポイントのパーソナライゼーションを進めることによって、一連の体験にさらなる価値を付与し、お客さま体験の向上につなげようと考えています。

    David Ghijben(@david)

    @akis:実際に、2022年9月にリリースされたGroundUp App(※開発コード名)を通して開発力が向上したということは触れておきたいですね。こちらはAndroid・iOSの両方に適用しているもので、開発スピードがより速くなることで、お客さま体験を向上させる施策の推進を加速させられます。2022年はここにとても時間をかけました。

    これからの未来を描いていく中で、どのようにお客さま体験を向上するかのアイデアは既にいろいろと出ています。中でも、Davidが話していた「ワクワク」はかなり大事なポイントになります。私はメルカリを使うことそのものが、かなり感情に訴えかける部分があると思います。何かを買ったり売ったりすることは、ポジティブな感情が揺り動かされる楽しいことだと思います。いいものを安く買うことというのはとても重要なので、取引をすることに喜びを感じるお客様はとても多いと思います。そのワクワク感を拡張していきたいですね。

    また、何かを売るときの動機として、モノをお金に換えたいという気持ちはもちろんあると思いますが、何らかの「コミュニティに参加したい」という気持ちがあるのではないかと思います。それは誰かに必要とされる感覚、あるいは社会に貢献しているような感覚を潜在的に求めていると思います。「モノが循環していること」が重要というよりは、「循環させていることによって得られる体験や感情」というところがとても重要だと思います。その気持ちが促されると循環がよりなめらかになると思います。ですから、取引をすることを「タスク」や「業務」というふうに感じさせるのではなく、「やりたいこと」の一つにできたら素晴らしいですよね。

    お客さまにより良いものを提供しなければ、ビジネスの成長にはつながらない

    ──冒頭のマーケットプレイスの成り立ちの話は非常に興味深かったです。ものづくりにおいて「なぜ私たちがやるのか」という根源的な問いについて、開発組織内でよく議論されるのでしょうか?

    @akis:プロダクト開発に関わっているチームのメンバーたち、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、データアナリスト…みんな基本的にクリエイティブな人間だと考えています。カスタマーサポートをはじめ、いろんなチームと仕事をしていますが、「なぜこの仕事に取り組んでるのか」を深く考えてほしいと伝えています。その「Why」を軸に据えて、お客さまのバリューとビジネスバリューをつなげてほしいのです。なぜなら、お客さまにとってより良いものを提供しなければ、ビジネスの成長にはつながらないからです。どのようにしてこのつながりを作っていくかについては、チームのそれぞれ役割の中で考えていますが、大切なのはそこをいかに定量化するかです。KPIやメトリックス(基準とすべき尺度や指標)を通して、お客さま体験の向上をデータによって定量化していくプロセスを踏んでいます。

    お客さまの反応というのは出してみないとわからないことがほとんどです。チームにはいろんなアイデアを考えてもらい、それを提案していく、その一連の研究を通してお客さまの反応をデータとして積み重ねて、インパクトがあったかを測るサイクルを作っています。
    また、お客さまへのインタビューも重視しています。時として難易度の高い抽象的な問いかけもあります。そこからどうやって物理的にプロダクトにつなげていくのか、それは至難の技です。簡単なことではないけれど、より俯瞰した観点から見直すことで、より良いプロダクトにつながるアイデアの種になると思います。

    こうした複雑な要素をどのように実証し、定量化していくのか、それを考え抜くことを大切にしています。そして、さまざまなフィードバックから、さらに改善していく…これにはもう終わりがないんですね(笑)。

    @hyungjin:Akisが言ってくれたとおりです(笑)。私も、お客さまのバリューとビジネスバリューは遠いものではないと思います。お客さまに提供すべきバリューというのは、お客さまがマーケットプレイスの中において、成功体験を積み重ねることだと考えています。

    その成功体験は、人によって細かな定義が違うと思いますし、このマッチングのプロセスがとても難しい部分です。複雑な課題に対してソリューションを作っていく必要があり、だからこそ精度の高いデータが求められる。いままさに、チーム間で共通のメトリックデータを構築しようと考えています。「どのようにお客さまのバリューを作り出すか」といった共通認識をデータの観点から作りたいと考えています。

    これからは、一人ひとりのパワーや声に注目が集まる時代だと思います。ですが、一人ひとりの可能性はコンテキストや環境に縛られてしまうのもまた事実です。マーケットプレイスがどのように機能しているかによって、個々人の成功体験というのは変わってきます。マーケットプレイスのデータをより深く分析し、ビジュアライズすることで、お客さま一人ひとりをUnleashできるのではないかと思います。

    Hyungjin Kim(@hyungjin)

    @david:各チームで様々な機能を持っていますが、今後はユーザーリサーチにさらに力を入れていこうと思います。私たちが提供できるバリューをより可視化し、どのようにアプローチしていくのかの研究に注力したいと考えています。また、カスタマーサポートチームとの連携もより深めていく予定です。機能の変更や向上にあたって、VOC(Voice of Customer:お客さまの声)を汲み取っていくのがいっそう重要になりますし、開発チームにもこういったインプットがより届くようにしたいと考えています。

    そもそも、お客さまの成功体験には2つの面があると思います。リスティングでの成功体験、そして購入の成功体験ですね。出品してリスティングされるお客さまにとっての成功体験をもっと作っていきたい、それにはメッセージングを変えることによって工夫できる余地はまだまだあると思います。また購入するお客さまからしても、メルカリShopsをプロダクトにシームレスに組み込むことによって、よりよい体験を提供することができます。

    私としてはやはり「ワクワク」した気持ち、そういった感情をプロダクトに導入したいと思っています。とはいえ、なにか踊っているキャラクターが出てくるような、大げさなものにはしたくはなくて(笑)。お客さまにとっての「ちょっとした喜び」を作り出したいと思います。

    @akis:私たちがどのようなメカニズムを使用して議論を促しているかというと、結論としてはチームで自律的に考えるということです。トップダウンで何かを実行するのではなく、UXの研究だったり、データからお客さまの行動を分析したり、実際のお客さまの声からどういった感情を持ってマーケットプレイスに参加しているの知見を得たり、それらを総合的に考えてデザインしています。

    お客さまの想像力を促すことが、可能性を広げることにつながる

    ──グループミッションからお客さま体験を考えたとき、「インクルーシブ」であることがとても重要だと思います。これまでメルカリはワンプロダクトの中での拡張を続けてきました。とは言え、デジタルデバイスの中での表現には物理的な限界もあると思います。かんたんさ、親しみやすさ、それとワクワクにどうつなげていくのでしょうか?

    @hyungjin:まさに昨日もこの話をしました(笑)。とてもチャレンジングな部分ですよね。ユニバーサルなプロダクトを作ろうとするときに考えるべきは、新しいお客さまと既存のお客さまがいるということです。特に既存のお客さまはある種エキスパートというか、非常に使い慣れている方たちです。この異なる経験を持つお客さまに提供すべき機能を自動的にバランスする方法はありません。ですが、ここまで何度も語られてきたとおり「お客さま目線」で物事を考えるのが重要です。なぜなら、お客さまはとても賢く、プロダクトにどのような価値を見出すのか、直観的かつ重要な意見を持っている人だからです。

    例えば、ホーム画面のリニューアルを考えたとき、新しいお客さま向けの情報や案内が充実していると、既存のお客さまにとってはあまり良い機能にはなりません。新しいお客さまと既存のお客さまのバランスをとって機能を展開していますが、メルカリに限らず、広い意味でのマーケットプレイスはとても速いスピードで進化していますし、新しいお客さまであっても、既にメルカリに関して詳しい方もいらっしゃると思います。

    @david:ヒューマンデザインの観点から、何が適切なのかという理解を深める必要がありますよね。お客さまが求めているものは「深く考えずに使える」ということだと思います。現在のプロダクトの中では、お客さまが考えて判断しないといけない場面がまだあると思います。より良い選択肢を提供しつつ、自然なジャーニーを作ることが必要です。

    @akis:大きな挑戦になると思いますが、機能を「取り除く」ことも重要です。シンプルなプロダクトを新しく作り変えるのではなくて、既存の機能を継承しながら機能を取り除くといった作業も必要です。これまでもいろんな機能を実装し、それと同じくらい多くの機能を削除しました。仮説を立てて、懸命に作ってきましたが、効果がないとわかった時点で取り除くという判断が常に求められます。もちろん誰にも好まれなかった機能はないと思うのですが、より多くのお客さまにリーチするプロダクトを作り続けるには、全てをキープしておくと非常に複雑なものになります。

    Hyungjinが先ほど言っていたとおり、新しいお客さまに対しても寄り添えるプロダクトの在り方を探求しています。それには、私たちのサービスを使ったことがないお客さまにとって、プロダクトが「どう見られているのか」という視点から考える必要があります。ただし、あまり深く考えすぎると、より複雑なものになってしまうので注意が必要です。「みんなにとって使いやすい」ものを意識しすぎると、「誰にとっても使いにくい」ものになってしまう可能性を孕んでいます。

    また、プロダクトの機能を作っていくとき、一番効果のある施策は「お客さまがよりクリエイティブになれる」ようなものだと思います。お客さまの想像力を促すようなものですね。「この新しい機能を使って、これをしてください」と明記されていることは、一見ユーザーフレンドリーのように思えますが、あらかじめ可能性を限定するようなものは多くのお客さまにとって使いたいと思えないものになりやすいです。お客さま自身が「どう」使っていきたいかという余地を作り出すことも重要です。

    例えば、お客さまのプロフィール欄を見ていると、多くの方が限られたスペースで工夫しながら、自分のことを表現していますよね。自分についての紹介だったり、アイテム一覧の統一感だったり、実は自分を表現するスペースがあります。インクルーシブなプロダクトを作るにあたって重要なのは、プラットフォーム内でお客さまが自由に自己表現できる場所を提供し、お客さまの可能性を拡張することなんです。

    とは言え、ここは難しいところです。お客さまがどう機能を使うかは予測できない部分があり、正直なところ予測しようとしない方が良いと思います(笑)。私たちが機能の開発をするなかで、その機能がどう使われるか議論を重ねますが、すべて考えていた通りに使っていただくことは難しいです。それより、私たちの取るべきアプローチとしては、お客さまをエンパワーできる機能を作り出してリリースし、それをお客さまがどうクリエイティブに使うかを観察する。自分たちがやるべきことをやり、役割をきちんと果たしていれば、お客さまはその機能をうまく活用して、楽しみや喜びを見いだしてもらえるはずです。

    @david:アプリの規定の中で、それぞれが想像力を膨らませて、クリエイティブに使っていただいてるのを見るのはとても面白いですよね。

    @akis:そうですね。商品画像の限られたスペースに情報を盛り込ませるような工夫には、いつもはっとさせられます。メタデータの部分にも改善すべきことはあると考えさせられます。私たちとしてはできるだけシンプルな機能を用意して、お客さま自身でそこを拡張させていけるように導くことが重要です。これまで、メルカリが多くのお客さまから支持していただいた理由もまさにここだと思います。なので、これからもこうした軸をずらさずに、お客さまの可能性を広げていく。それこそが私たちの成長につながると信じています。

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