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日本No.1の生産性と創造性を有する企業を目指して——AI/LLMの「活用」から「自走する業務改善」を推進するCETの現在地

2024-10-23

日本No.1の生産性と創造性を有する企業を目指して——AI/LLMの「活用」から「自走する業務改善」を推進するCETの現在地

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いま、AI/LLMによる技術革新は世界的に大きなインパクトをもたらしています。私たちメルカリもAIのポテンシャルを重要視し、プロダクトへの実装だけでなく、社内の業務改善やメルカリで働くメンバーの生産性向上においてさまざまな活用を試みてきました。

そうした、業務改善や生産性向上の観点で、AIツールの導入や活用を推進しているのが、「技術力と実現力でメルカリの可能性を広げる」というチームミッションのもと活動する、Corporate Engineering Team、通称「CET」です。

CETが主導したAI/LLMの活用は、さまざまな形で成果を出しはじめています。たとえば、バックオフィスの問い合わせ業務の工数削減に大きく寄与しました。これからのCETはどのような活動方針のもと、AI/LLM活用をさらに推進していくのか、キーパーソンたちの言葉から探ります。

この記事に登場する人

  • 進谷浩明(Hiroaki Shintani )

    東京大学大学院工学系研究科修了。日本HP(現 Hewlett Packard Enterprise)にて、基幹系・情報系システム開発におけるシステムエンジニア、プロジェクトマネージャーを経験。その後、南カリフォルニア大学経営学修士(MBA)修了を経て、2012年に楽天グループ株式会社に入社。社長室及び楽天市場開発部門にてECプラットフォームの海外展開等に携わった後、2017年にアメリカに赴任し、アメリカ地域のコーポレートIT部門を再編、その後5年間に渡り統括。2022年に帰国後、本社のグローバルIT部門をヴァイスジェネラルマネージャーとして率いた後、2023年10月に株式会社メルカリに参画、執行役員CIOに就任。

  • 小泉剛(Tsuyoshi Koizumi )

    Corporate Engineering Team Director。株式会社リンコムにて、プログラマーとしてWebグループウェアの開発に従事、株式会社アドバンテッジリスクマネジメントにてIT企画・事業企画を担当。その後、エムスリーデジタルコミュニケーションズ、チームスピリットを経て、2020年9月にメルカリのAccounting Products Teamにプロダクトマネージャーとして入社。Corporate Engineering Team のいくつかのManagerを経て、2024年3月より現職。

  • 山下高範 (Takanori Yamashita)

    ソフトバンク株式会社でモバイル通信事業に携わった後、株式会社神戸デジタル・ラボにて社内ITシステムの導入・運用・セキュリティ対策などを担当。オムロン株式会社では、データ分析・機械学習を用いた製品の需要予測、全社IT戦略の策定などを経験。2022年5月より株式会社メルカリ Corporate Engineering Teamに参画。 現在は、社内のAI導入や活用を推進する。

「業務の安定運用と高度化」の貢献のためにAI/LLM活用からアプローチする

──まずは、現在のCETの取り組みから教えてください。

@hiroshin:FY25.6(2024年7月〜2025年6月)において、メルカリHD(Holdings)は、「メルカリの価値循環エコシステムの拡大」を実現するため、「ルールメイキング」「リソース配分」「パーセプションチェンジ」「業務の安定運用と高度化」、これら4つを果たすべき重要命題として設定しました。

私たちCETは、「業務の安定運用と高度化」に大きく貢献する必要があると考え、Roadmapに描かれている「定常業務の品質面・効率面を更に磨き上げると共に、AIの利活用や積極的なDX化によって業務のあり方を根本的に変えることで、安定性と効率性を大幅に高める」ことにコミットするための基本方針を設定しました。

CETの基本方針は「IT基盤とITサービス管理」「アプリケーション基盤とコーポレートシステム」「組織と組織運営」、これら3つの領域の高度化を推進すること。これらの実現に向け、現在、2つの観点からAI/LLMを活用したアプローチを行っています。

進谷浩明(@hiroshin)

1つは、生成AIを最大限に活用したセルフサービスの実現です。これにより、従業員体験を大幅に改善し、かつIT組織の生産性向上を目指します。例えば、PCの交換、各種ツールへのアクセス権の付与・削除、メーリングリストの作成など、ITスタッフがマニュアルに従い行っているサポート業務を生成AIエージェントに置き換えることで、ITスタッフの業務負荷を軽減しつつ、既存のルーティン中心の仕事からより創造性の高い仕事にシフトしていくことが可能になります。

2つめは、AI/LLMの活用により従業員の業務生産性を向上させること。これは内製開発と外部ソリューション活用の両面からアプローチをしています。

ユーザーが自己収集・自己解決できる仕組みを目指すべく、社内問い合わせ向けのAI Chatbotを内製で開発しました。詳細は開発を担当したISSAさんから説明してもらいますが、メルポータル(ServiceNow上に構築したナレッジベース)やSlack、Confluenceに蓄積したメルカリに特化した知識データを取り込み、ユーザーの質問に対して適切な回答を出力することができます。

また、議事録や資料作成などに関わる膨大な工数を削減すべく、外部ソリューションの「Gemini for Google Workspace」のPoC(Proof of Concept:概念実証)を、t-yamaさんのリードで行っています。Google Workspaceは日々の業務で頻度高く使っているソリューションですので、ユーザーからの期待も大きく、「バック・トゥ・スタートアップ」の精神で大幅な前倒しを目指してプロジェクトを推進しています。

業務でのAIの重要度の理解が進むることで、大きなインパクトを生む

──実際、CETではどんなことが進んでいるのでしょうか? ISSAさんは前回「経理や人事労務チームへの「ふわっとした質問」に対して、回答をAI/LLMを用いて自然言語で自動返信する作業に取り組んでいる」ことを明かしていただきましたが、AI Chatbotの開発の背景や進捗について改めて教えてください。

@ISSA:社内(経理・リーガルなど)の問い合わせ業務には、工数がかかっていました。ユーザーからの問い合わせを読み、メルポータルやSlackにアーカイブされた情報と照らし合わせる必要がありますし、経理やリーガルのメンバー全員が全ての質問に的確に回答できるわけではありません。ユーザーの立場からも回答がくるまでに時間がかかりますし、問い合わせの度にメルポータルを開いて、検索して、的確な回答を見つけることは手間がかかると感じますよね。

これらの課題を解決するための決定的なAI/LLMソリューションは、当時、世間的にも確定しておらず、手探りな状況からスタートしました。様々な技術調査を行った結果、RAG(Retrieval-Augmented Generation)が最も望ましいソリューションであると目星をつけ、開発を進めました。その後約1ヶ月ほどでプロトタイプを開発して、経理チームの業務に導入したところ手応えがあり、翌月から本格稼働をはじめました。

現在、社内Slackの5チャンネルで稼働させている状況です。最も効果が高い経理のチャンネルでは、45.7%の工数削減効果が生まれました。

高い効果が生まれた要因は、2つあると考えています。1つは、「質問からデータを検索して回答する」というAIの動きを助けるために、参照元のデータを整理…つまりはメルポータル上のドキュメントを経理のメンバーと綺麗にしたこと。

もう1つは、回答データをチェックして、うまく回答できていない質問を洗い出したことです。メルポータル上に回答がないものを経理のメンバーにフィードバックをして、用意していただきました。我々からすれば当然のことなんですが、「AIはデータが大事」だと理解していただくことが非常に重要だと感じました。

「自分たちの仕事が楽になる」という実感を得ることで、次は「ドキュメントを綺麗にしよう」というモチベーションが湧き、回答の精度は上がり続けます。また、回答が「どのように読まれているのか」「解決に役立ったのか」を可視化できるようになったこともAI/LLMならではだと感じています。

今後は、回答精度やフィードバックの自動化、参照元データの拡大、例えば Confuluenceなどの対応をしていきたいと考えています。

小泉剛(@ISSA)

AI/LLMの「活用」から「自走する業務改善」を目指す

──t-yamaさんは「Gemini for Google Workspace」の導入を推進されてますが、業務のコアとなるアプリケーションのAI/LLM利活用をどのように捉えているのでしょうか?

@t-yama:抽象的な話になりますが、AI/LLMは「道具」だと思っています。この「道具(AI/LLM)」をどのように業務にフィットさせるか、普及させていくのかがポイントだと捉えています。

AI/LLMの魅力は、これまで「生産性向上」を実現する際に必要とされていた伴走者(専門家など)が必ずしも必要でないことです。例えばデータ活用やDXの場合、専門家が伴走しながら業務を改善していく必要があり、社内の中で順番待ちが発生してしまう状況でした。その場合、必然的に優先度の高い業務から改善が検討されるため、個人レベルの業務まで改善が行き届かないことがほとんどでした。

一方で、GeminiなどLLMを使用したツールは、ユーザーが個人レベルで試すことができ、フィードバックから改善までの流れがスピーディーかつシンプルなので、「生産性向上」と相性が良いと思っています。特に会社全体でGoogle Workspaceを利用しているため、Gemini for GoogleWorkspaceを活用することで、各機能とのシナジーが生まれやすく、過去のリソースを参照しやすいというメリットがあります。

山下高範 (@t-yama)

社内での検証では、非エンジニアのメンバーでも積極的に使ってくれる方が非常に多いと感じました。一般的に「自動化」や「AI化」に取り組むとなると、「自分の業務がなくなってしまうかも…?」と捉える方がいると思いますが、メルカリではポジティブに活用する人が多く安心しました。

とはいえ、あくまで「道具」ですから、機能や特性を知らないとうまく使うことができません。なので、まずはGemini for GoogleWorkspaceを普及していくなり、使って理解してもらうことをファーストステップとして考え、その次のステップで、業務にフィットさせることを目指します。

どのような業務にフィットさせていくのか、どう良くしていくのかを自分たちで考えることができる環境が整っているので、メルカリメンバーそれぞれが目指す便利な「道具」にしていきたいと思っています。

@hiroshin:我々CETは「技術力と実現力でメルカリの可能性を広げる」というミッションを掲げています。AI/LLMを最大限に活用して「生産性や業務効率を劇的に向上させる」ことは、我々のミッションを体現することだと思っています。これらの活動を通して、日本No.1の生産性と創造性を有する企業となる、その礎をつくっていきたいと考えています。

執筆:石川優太 編集・撮影:瀬尾陽(メルカン編集部)

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